著者
大野 二郎
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.283-290, 1978-06-30 (Released:2009-03-27)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

To estimate the accuracy of the optical thermometry, data for emissivities are indispensable. Recently the reliability of the optical thermometry instruments has increased, as seen in the steel making processes. In these processes the near-infrared wavelength is commonly used for detection of the temperature of a radiating surface. But there are little studies about the emissivity of Fe in this wavelength region. In this paper the temperature dependence of spectral emissivity of Fe and related transition metals are studied experimentally and theoretically.The analysis of temperature dependence may clarify the fundamental properties of the emissivity of metals. For example it is observed that the emissivity of Au increases with temperature both in the visible and infrared regions. In the visible region the increase in emissivity can be explained by a shift of the optical absorption edge of a bound electron and in the infrared region the increase is explained by a change in electrical conductivity.The emissivity of transition metals such as Fe in the near-infrared region is affected doubly by the dispersion of bound electrons and by that of free electrons. To analyse this property, the author introduced a classical Drude-Lorentz dispersion model, based on the following study.By the analysis of total emissivity, it is proved that the ratio λτ/σ in the Drude model is independent of temperature difference, where λτ is the characteristic wavelength and σ is the static optical conductivity.By the measurement in the visible region, it is found that emissivities are proportional to λ-2, Where λ is the wavelength. This property is similar to the reflectivity spectrum obtained by the Lorentz dispersion model. This may justify the adoption of Lorentz model to calculate the emissivity of metals.The most interesting phenomenon of the emissivity in the near-infrared region is the presence of so called “X point”, or zero temperature coefficient, which is reported by many researchers. This phenomenon is recognized as the essential property of the emissivity of metals. By using Drude-Lorentz model, the X point can be interpreted as follows:Under the constraint of the dispersion parameters (Ki>10, λτ/σ=constant), Lorentz dispersion acts on the emissivity in the visible region and Drude dispersion acts on it in the infrared region separately. The boundary of these two dispersion models appears in the near infrared region, and in this region, the emissivity is little affected by changing the dispersion parameters, or the minimum temperature variation occurs.Thus it is concluded that the essential characteristics of emissivity for transition metals is not the presence of the X point, but the week-interaction between the Drude dispersion term and Lorentz dispersion term. It is clarified that the temperature variations for the observed emissivities of transition metals could be closely agreed from the visible to infrared wavelength regions with the Drude-Lorentz model.
著者
近藤 祐未 板垣 順平 渡邉 誠介
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.2_49-2_56, 2020-09-30 (Released:2020-10-05)
参考文献数
23

大学による地域連携活動は、いまや自明の理となっている。とりわけ、学生が主体となった活動は、自治体や企業も注目しその成果も期待されている。一方で、活動の主体となる学生にとっては成果だけでなく、自身にとっての経験や達成感、自信、スキルなど、活動を通して何を得られたか、が重要となる。しかし、地域連携活動に関する既往研究の多くは、活動終了時に実施される単発的な振り返りやアンケートをもとにその学習効果について議論されたものが多く、長期的な視点による地域連携活動の学習効果について分析・検討されたものはみられない。筆者自身が取り組んだ長岡造形大学大学院の「地域特別プロジェクト演習」では活動を進める時々に、辛いやしんどいといった意見が多くあったが、活動が終了してからしばらく経ってからの何気ない会話では、その印象や捉え方に変化がみられた。そこで本研究では、「地域特別プロジェクト演習」を研究対象として、実施者である学生の視点から活動の記憶や印象を手掛かりに、省察の変化の過程について検討し、その変化の要因を明らかにすることを目的とする。
著者
矢澤 健 吉村 作治
出版者
東日本国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

古代エジプト中王国時代の末期には、ナイル川デルタ地帯でのアジア人勢力拡大に伴い、エジプト北部を本拠地にしていた統一王朝が衰え、エジプト南部に移動した後に新たな王朝が勃興したと考えられている。しかし、当該時期の文字資料は断片的であり、変遷の過程については不明な点が多い。このような状況を打開するために、本研究は主に考古学的アプローチから王朝交替プロセスの解明を目指す。通時的変遷・共時的関係の分析から当該期の物質文化の流れを包括的に把握し、いつ、どのような過程を経て王朝の交替が起こっていたのかを具体的に解明する。
著者
南 雅代 淺原 良浩 山本 鋼志
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

・骨中のストロンチウム(Sr)同位体比が、生育地の地質のSr同位体比を反映することを、現生動物・魚と地質のSr分析から確認した。・鎌倉由比ケ浜遺跡から出土した人骨・歯、獣骨のSr分析を行なった。骨中のSrは続成Srに置換されていたが、歯エナメル質は食物Srを保持しており、人の生育地(地質)の推定に使えることを示した。・骨Srの考古学研究に必要な地質Sr同位体比マップの作成にとりかかった。・微少量の骨試料による高確度^<14>C年代測定のための検討を行った。
著者
横山 順一 髙木 健志
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学学術情報 (ISSN:21894825)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.87-92, 2018

児童虐待や貧困,孤立死等の深刻な社会問題をはじめ、子育て支援や高齢者・障がい者の介護等、日常生活の中には多様な福祉的課題が発生している。社会全体の複雑化、多様化、グローバル化が進む今日、支援を必要とする対象やサービスは、量的な拡大と質的な複雑さを増している。わが国にはこうした課題の解決のために、様々な福祉的支援のメニューが整備されてきたが、単にサービスや制度が増大するだけでは、真にニーズを有する当事者達に、その支援の手が差し伸べられるわけではない。そこで、注目したのが、自助・自己責任が声高に言われる今日、多様な福祉的課題を抱えながらも他者に支援を求めない、あるいは支援を求められない当事者たちの存在である。また、与えられた支援を受け入れるだけの必要な力を当事者が有しているのかといった視点も含めて、当事者の特性を考慮に入れた上で支援のあり方を検討する視点を見直し、研究を積み上げることが求められている。そこで、本稿では、福祉的課題を抱えた当事者の「支援を求める力・受け入れる力」の可能性に着目し、自助・自己責任の時代における新たな支援のあり方を構想することを目的に考察した。Including serious social problems such as child abuse and poverty, the isolated death, a problem of a variety of welfare occurs in the everyday life such as the care of child care support and an elderly person, the person with a disability. An object and the service to need support today when complexity of the Great Society, diversification, globalization advance add to quantitative expansion and qualitative complexity. A menu of the support of various welfare has been maintained for the solution to such problem in our country, but a hand of the support is not held out to people concerned having needs truly only by merely service and systems increasing. Therefore it is the existence of people concerned whom "I do not demand support" from others while what I paid attention to has a problem of a variety of welfare or "support is not demanded" from. In addition, I review a viewpoint to examine the way of the support after having taken the characteristic of the person concerned into account including a viewpoint whether the person concerned has the necessary power that only accepts given support, and it is demanded that I pile up a study. In this report, I paid my attention to possibility of "the power of help-seeking & the powerto receive for the support" of the person concerned with a problem of the welfareand considered the way ofthe new support in the times of self-act, the self-responsibility for the purpose of elaborating a plan.
著者
久永 真央 津田 孝雄 大桑 哲男 伊藤 宏
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.57-61, 2011 (Released:2012-02-13)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

労働環境や生活環境において,生体内に取り込まれた化学物質の皮膚からの放出に関する研究は少ない.そこで皮膚ガスを採取し,ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)で分析を行い,生体内への化学物質の取込みを推定することを目的として本研究を行った.皮膚ガスの採取は,労働環境や生活環境の異なる被験者10名(男性7名,女性3名)の左手から行った.被験者の皮膚ガス中に,ベンゼン,トルエン,キシレン,2-エチル-1-ヘキサノール,p-ジクロロベンゼンなどを確認した.有機化学実験をしている異なる2 つの研究室の被験者間に,2-エチル-1-ヘキサノールの濃度平均値の有意差を認めた.またトルエン濃度が,他の被験者に比べ有意(P<0.05)に高い被験者がいた.この被験者がガス関連事業所で働いていたことから,職場での暴露によると推測された.労働環境や生活環境の違いにより,皮膚ガスに含まれる化学物質には,人により差があることが示唆された.
著者
前野 利衣
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.126, no.7, pp.1-33, 2017

十七世紀のモンゴル高原には、ハルハ=モンゴルという集団が左翼(東方)と右翼(西方)に分かれて遊牧していた。これまでの研究では、左翼の知見に基づいてハルハの全体像を描いてきたが、実像を知るには右翼の研究が必要である。そこで本稿では、右翼のチベット仏教界を取り上げ、ハルハの全体像の解明に挑戦し、以下の点を明らかにした。<br>当時のハルハの高僧と言えば左翼のジェブツンダンバ一世が有名であるが、右翼をなす三王家(ハーン家、ジノン家、ホンタイジ家)にも転生僧がそれぞれおり、彼らは当主に次ぐ莫大な属民を有し、清・チベット・ロシアと交渉する等、政治的に重要な役割を果たしていた。ハーンらがこうした転生僧を重用したのは、転生僧が十六世紀後半のチベット屈指の学僧の系譜に連なる高僧であっただけでなく、彼らがそれぞれ右翼三王家の当主の近親者であったからだと考えられる。<br>右翼におけるハーンと転生僧との政治的な提携関係は、左翼のトゥシェート=ハーン・ジェブツンダンバ兄弟の連携と酷似しており、従来特異な事例とされてきた左翼の聖俗連携の体制は、実はこの時代のハルハ全体に共通するものだったことが明らかになる。<br>かかる権力構造のパターンは、右翼のホンタイジ家で発展したものである。初代ホンタイジには側近として外交交渉を担う高僧がおり、第二代ではその外戚の高僧が同じ役割を果たし、第三代では当主の弟である転生僧が活躍した。つまり、十七世紀後半の全ハルハに現れた聖俗連携の権力構造は、左翼ではなく右翼において、十六世紀から三代かけて代替わりごとに発展してきたものだったのである。<br>以上本稿では、十七世紀後半のハルハにはボルジギン氏族の当主とその近親者たる高僧による聖俗連携の権力構造が現出し、そのパターンは右翼で成立したことを明らかにした。

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1919年05月27日, 1919-05-27
著者
鈴木 彩
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.32-47, 2014-05-15 (Released:2017-06-01)

「婦系図」が新派劇に脚色された際に加えられた「湯島天神境内」の場面を、後に泉鏡花が書き改めたことは、お蔦と主税の物語に焦点を当てた劇化への追従と見做されてきた。だが初期の上演には原作を意識した部分も多く、鏡花の「湯島の境内」はそこに原作に関わる要素を加え、他の場面との接続を円滑にしている。原作とは異なるようにみえる主税像も、河野家との対立関係においては原作の主税の立場に通じる。また鏡花の「湯島の境内」を加えた新派劇と、後の「婦系図」の改訂も相似形を成し、原作を志向した「湯島の境内」の書き改めが、「婦系図」の新たな形態を提起した可能性も考えられる。「婦系図」の劇化は原作から断絶したものではなく、原作テクストとの関係の中から捉え直される必要がある。
著者
坂田 完三 水谷 正治 清水 文一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

東方美人茶(Oriental Beauty)はチャノミドリヒメヨコバイ(Jacobiasca formosana,通称ウンカ)に吸汁されたチャ葉から作られる香り豊かな烏龍茶である。この高級烏龍茶の製法の秘密の解明を目指し、天然物化学と酵素・遺伝子の両面から研究を進め、下記の成果を得た。1)本烏龍茶製造時のウンカの関与の詳細な実態調査を行い、実際にウンカの加害チャ葉が使用されていることを確認した。2)ウンカ食害有りと無しのチャ葉からそれぞれ烏龍茶を製造し、製造工程の各段階においてサンプリングを行い、官能検査、香気分析を行った。そして、加害葉から作られた茶は遙かに香気の豊かなものであることを確認した。さらにこの茶の香気特性も明らかにし、hotrienolおよび関連化合物の2,6-dimethyl-3,7-octadiene-2,6-diolはウンカ加害だけでも生成していることが明らかとなった。3)ウンカ加害および製造工程で誘導される遺伝子をMegasort法によるディファレンシャルスクリーニングにより網羅的に取得した。ウンカ加害および製造工程でのストレスにより非常に多くの遺伝子の発現が変動していることが明らかになり、その中にはストレス応答遺伝子が多数同定された。4)それらのうち、ストレス応答物質であるraffinoseやabscisic acidの生合成に関わる遺伝子に着目した。これらの遺伝子の発現量は製造工程中最初の日光萎凋で急激に増加した。それらの化合物の消長を明らかにするためHPLCにより定量的分析を行ったところ、これらは日光萎凋の段階で急激に増加することを確認した。以上のように本課題により、東方美人茶の香気特性を明らかにし、ウンカ吸汁および製造工程での様々なストレスにチャ葉が防御応答した結果、東方美人茶は香り高い茶となっていることを明らかにした。
著者
大石 太郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.18-24, 2015 (Released:2015-06-25)
参考文献数
26
被引用文献数
2

近年,欧米諸国において国勢調査(センサス)の調査方法の転換が進んでいる.本稿では,カナダの2011年国勢調査における詳細調査票の廃止とその影響を解説することを目的とする.カナダ政府は2010年6月,プライバシー保護を理由に,それまで回答が義務づけられていた詳細調査票の廃止を決定した.それに代わって導入された全国世帯調査は回答が任意であり,回収率はカナダ全土で68.6%にとどまった.したがって標本に偏りがある可能性が高く,データの質は従来よりも低下し,時系列的変化の分析も不可能になった.
著者
松本 邦彦
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

今期は朝鮮学校と外国人教育をめぐる基礎的な資料の収集とともに、戦前期の植民地統治の一翼を担い戦後も言論界で活躍した人物でありながら、あまり注目をあびてこなかった鎌田澤一郎を中心に資料収集を進めた。まだ概略にとどまるが、鎌田の生涯と業績について以下にまとめておく。鎌田は1894年(明治27年)生まれ、学校教育は高等小学校までで、1979年に没するまで、公職や研究職、教育職には就かなかった経営者、ジャーナリストである。郷土徳島で文化活動を始め、兵役後に経済界に進出、さらに上京して出版業に進む。文化人や経済人との交友を深める一方で、鶴見祐輔、後藤新平、また鐘紡経営者・武藤山治の政界浄化運動を応援。鶴見を介して陸軍大臣時代の宇垣一成の側近となり、1931年の宇垣の朝鮮総督赴任とともに朝鮮に渡る。総督顧問をしつつ独自の研究所を設立し、講演や著作にて宇垣の「南棉北羊」政策を支持、宣伝をおこなう。1936年に宇垣が総督を辞したのちも朝鮮にとどまり、総督府支配の一翼を担ったが、南次郎総督らの創氏改名、内鮮一体政策を批判したことがあり、後年の鎌田は、これもあって戦後も朝鮮人からの感謝ありと誇っていた。敗戦後に鎌田はほぼ無一文で引揚げたが、文筆で宇垣の政界進出を支持する一方で朝鮮戦争を機に在日朝鮮人問題や日韓問題で精力的に発言し、李承晩の反日政策を批判、そしてその後の朴正煕の維新革命やセマウル運動を支持した。戦後の鎌田の主張が在日朝鮮人政策に与えた影響はまだ判然としないが、朝鮮支配が「宥和と培養」であったという主張(1950年『朝鮮新話』など)が、日韓交渉を決裂させた1953年の久保田発言に影響していた可能性が判明し、彼の戦後日韓政策への影響力は意外に大きい可能性も出てきている。
著者
市原 純
出版者
帯広大谷短期大学
雑誌
帯広大谷短期大学紀要 (ISSN:02867354)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.39-49, 2015-03-31 (Released:2017-06-16)
参考文献数
9

教育という営為は、本質的に権力性を帯びる。教育を原理的に考えようとするならば、権力性の問題と向き合わざるを得ない。本稿では、ミクロなレベルで、教育という営為に権力性の分析を内在化させる原理について、考察を試みる。三脇康生の理論によると、ミクロな場面での権力性分析は、教育者/分析者が後向きの想像力を持ち、制度における分析の内在性を維持し続けることによって可能になる。すなわち、教育者/分析者が自らの政治的な欲望を自己省察しながら、他人に対する想像力を更新し続ける「制度分析」が必要になる。本稿の後半では、ラボルド病院の実践を検討する。そして、人々の無意識の欲望が間接的に出会うことによって、人々の間に制度分析を喚起させる欲望が立ち上がることを確認する。教育者/分析者自身が、自己/他者の無意識の欲望と間接的に出会うこと。この出会いが先にあり、教育という営為は成立する。この出会いを意図的に組織化していく責任の根拠として、教育原理は言語化される。
著者
本 秀紀 愛敬 浩二 森 英樹 小澤 隆一 植松 健一 村田 尚紀 木下 智史 中里見 博 小林 武 上脇 博之 奥野 恒久 近藤 真 植村 勝慶 倉持 孝司 小松 浩 岡田 章宏 足立 英郎 塚田 哲之 大河内 美紀 岡本 篤尚 前原 清隆 中富 公一 彼谷 環 清田 雄治 丹羽 徹 伊藤 雅康 高橋 利安 川畑 博昭
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

比較憲法研究・憲法理論研究を通じて、(1)先進諸国が「ポスト・デモクラシー」という問題状況の中でさまざまな問題を抱えていること、(2)各国の政治状況・憲法制度の差異等が原因となって、その問題の現れ方には多様性があること、の2点が確認された。そして、「ポスト・デモクラシー」の状況の下で国内・国際の両面で進行する「格差社会」化の問題は、今日の憲法制度・憲法理論において有力な地位を占める「法的立憲主義Liberal Democracy」の考え方では、適切・正当な対応をすることが困難であることを明らかにした。以上の検討を踏まえて、民主主義をシリアスに受け止める憲法理論の構築の必要性が確認された一方、「政治的公共圏」論を抽象論としてではなく、(日本を含めた)実証的な比較憲法研究との関連において、その意義と問題点を検討するための理論的条件を整備した。
著者
老泉 量
出版者
大谷大学
巻号頁・発行日
2020

元資料の権利情報 : CC BY
著者
荒牧 美佐子 無藤 隆
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.87-97, 2008-08-10 (Released:2017-07-27)
被引用文献数
3

本研究の目的は,末就学児を持つ母親の抱く育児への否定的・肯定的感情とその関連要因について明らかにすることである。子どもを首都圏の幼稚園・保育所に通わせる母親に質間紙調査を行い,有効であった733名の回答に基づいて分析を行った。育児への否定的・肯定的感情に関する項目として,住田・中田(1999)の尺度を用い,確認的因子分析を行った結果,育児への「負担感」「育て方/育ちへの不安感」「肯定感」とに分かれることが確認された。そして,各々の関連要因について分析を行った結果,主に以下のことが明らかになった:(1)「負担感」は,末子の年齢が高いほど高く,夫や園の先生・友人らのサポートが多いほど低い。また,幼稚園群の方が保育所群よりも,専業主婦の方が有識者よりも高い傾向が見られる。(2)「育ちへの不安感」は男児を持つ母親で高い傾向にあり,「育て方への不安感」は夫からのサポートが多いほど低い。「育て方/育ちへの不安感]ともに情報サポートが多いほど高い。(3)「肯定感」は,夫や園の先生・友人らのサポートが多いほど高い。以上,「負担感」「育て方/育ちへの不安感」「肯定感」の関連要因は一部重複しつつも,それぞれに違いがあることが確認された。
著者
長谷川 久弥 川暗 一輝 井上 壽茂 梅原 実 高瀬 真人
出版者
日本小児呼吸器疾患学会
雑誌
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 (ISSN:09183876)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.80-84, 2008-06-30 (Released:2011-06-07)
参考文献数
8

先天性中枢性肺胞低換気症候群 (オンディーヌの呪い, 以下CCHS) は睡眠時に低換気を呈する稀な疾患である。今回, 本邦におけるCCHSの実態把握のため, 全国アンケート調査を施行した。23施設から37例のCCHS症例の回答が得られた。主な結果は以下の通りである。症例背景: 男児18例, 女児19例, 在胎週数39.2±2.1, 出生体重2917±360g, 年齢4ヶ月-34歳。診断方法: 臨床症状37/37 (睡眠時低換気37/37, 覚醒時低換気9/37), 血液ガス分析25/37, 炭酸ガス換気応答14/37, 遺伝子解析 (PHOX2B) 13/37。合併症: Hirschsprung氏病13/37, 中枢神経合併症15/37, 他。転帰: 病院内死亡3/37, 入院中1/37, 在宅人工換気33/37 (死亡4/33, 施行中29/33), 治癒0/37。呼吸管理法: 気管切開21/37, 鼻マスク9/37, フェースマスク5/37, 横隔膜ペーシング1/37。今回の検討で本邦におけるCCHSの現状を把握することができた。CCHSの診断, 管理等は様々な方法が行われており, 統一されたものはなかった。今後, 症例の蓄積をすすめ, 適切な診断, 管理法を検討していく必要があるものと思われた。

5 0 0 0 OA 海国兵談

著者
林子平 著
出版者
図南社
巻号頁・発行日
1916