著者
白谷 正治 寺嶋 和夫 白藤 立 佐々木 浩一 伊藤 昌文 杤久保 文嘉 斧 高一 後藤 元信 永津 雅章 小松 正二郎 内田 諭 太田 貴之 古閑 一憲
出版者
九州大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

本取り纏め研究では、プラズマとナノ界面の相互作用ゆらぎに関する学術的成果を統合・発展させて、より汎用性のある学術大系に結びつけることを目的としている。計画研究代表者を研究分担者として、各計画研究における研究成果を取り纏めるとともに、領域内連携により表れた3つの研究項目に共通する基本原理を統合して体系化する。基本原理の体系化に際しては、すべての研究に関する議論を一度に行うと議論が発散する可能性があるため、ゆらぎ・多相界面・バイオというテーマを設定した個別の研究会を開催し研究分担者が成果を統合した後、シンポジウム等で領域全体での成果統合を行った。平成26年度に取りまとめた、平成21-25年度に新学術領域で得られた成果の概要は以下の様に要約される。これらの成果を成果報告書およびホームページで公開した。ゆらぎに関しては、超高精度トップダウンプロセスの確立(ゆらぎの制御)について、エッチングプラズマに関する実験とシミュレーションの研究グループが連携して、エッチング表面形状揺らぎの機構を解明した。ここでは、揺らぎ抑制法について、従来の物理量を一定にする方法から、物理量に制御した揺らぎを与えて抑制する方法へのパラダイムシフトを起こす事に成功した。また、高精度ボトムアッププロセスの確立(ゆらぎの利用)では、超臨界プラズマに関する実験とモデリングの研究グループの連携により、超臨界プラズマにおける密度ゆらぎ機構を解明し、従来法では得る事ができない高次ダイアモンドイドの合成に成功した。予想以上の顕著な成果として、気液プラズマに関する実験とモデリングの研究グループの連携により気液界面プラズマにおいてナノ界面が存在することを発見した(多相界面プラズマ)。また、高いインパクトを持つ成果として、バイオ応用プラズマ関連の研究グループの連携により、大気圧プラズマ反応系の世界標準を確立することに成功した。
著者
伊藤 一馬
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度は、前年度までの成果をうけて、以下のことを行った。まず、北宋の神宗期に将兵制が成立するまでの過程や背景を、対外情勢との関連に着目して検討した。北宋の将兵制は、決して画一的・均質的に成立したのではなく、陝西地域・河北地域8東南諸路のそれぞれで対峙する勢力への姿勢に応じた背景や過程をもって成立したことが明らかとなり、とりわけ、西夏と対峙して軍事衝突が頻発していた陝西地域は、北宋における軍事的な先進地域となり、その情勢は将兵制成立に見られる如く河北・東南地域にも影響を与えたことを確認した。このような軍事政策の観点に立てば、陝西地域は当時の国際情勢における「結節点」であったと言える。次に、黒水城遺趾から出土した「宋西北辺境軍政文書」中の「赦書」の語が見える109-28文書・109-98文書を手がかりに、南宋成立直後における中央政府と陝西地域の動向ならびに双方の動向を検討した。それにより、北宋から南宋への移行期に、金軍の侵攻に対して陝西地域は領域を維持し、建炎四年まで頑強に抵抗し続けていた。それを可能にしたのが、南宋成立直後における中央政府との連絡の復活であり、赦書という皇帝の"お墨付ぎ"を背景にした軍備再建であったのである。神宗期に成立した将兵制が、北宋末期から南宋初期に至るまで陝西地域で定着していたことは「宋西北辺境軍政文書」から明らかであり、このような将兵制が軍備の再建にも大きく寄与したと考えられるのである。
著者
ミケカ チョモラ 新井 宏之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J95-B, no.2, pp.130-137, 2012-02-01

本論文では携帯電話基地局近傍の環境発電で動作する温度センサを提案している.基地局近傍での電界強度測定から環境発電に利用できる電界強度を推定し,その値をもとに温度センサシステムを設計する.そして,効率の良い受電回路として,ノッチを有する円形マイクロストリップアンテナと接地抵抗を最適化した整流回路によるレクテナを作成し,直流への変換効率として53.8%を得た.試作した温度センサは基地局近傍で取得したデータを間欠的に無線伝送できることを明らかにしている.
著者
夫馬 進
出版者
京都大學文學部
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.41-131, 1991-03-29

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
田仲 一成 WU Zhen
出版者
財団法人東洋文庫
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

日本の祭祀芸能を中国との対比において研究することを目的とし、先に提出した実施計画に基づいて、重要な調査地点を順次に訪問し、フィールドワークを実施した。まず2011年5月、(1)高知県吉良川町の御田祭り、次に同年5月から6月にかけて、(2)岐阜県能郷の猿楽、(3)同高山市の春季祭礼、(4)奈良法隆寺の10年1度の聖霊会(行道行列)、(5)奈良春日大社の「呪師走りの翁」(6)大阪住吉大社の御田植神事などを、連続して調査記録した。また、2012年9月には、(7)奈良市豆比古神社の古式翁舞、(8)京都市宇治田原町の三社宮座神事を,同11月には、(9)愛知県東栄町小林の花祭りを調査した。これにより、日本の古代祭祀、中世祭祀、近世祭祀について、広く考察することができた。具体的に言えば、まず古代祭祀については、(4)法隆寺の聖霊会により、古代に大陸から日本に渡来した伎楽系の仮面の実態を考察し、さらに(5)翁芸の源流とみなされている法呪師による「呪師走りの翁」を考察して、日本芸能の基礎となる部分の理解を深めた。次に中世芸能については、(2)能の原始形態を伝える岐阜県能郷の猿楽、(1)夢幻能の初期形態を示す吉良川の小林の幽霊、(7)翁の中世的発展を示す奈良豆比古神社の3人翁舞、さらに(8)中世宮座の原初形態を示す宇治田原町の神事などを考察できた。さらに近世祭祀としては、岐阜高山市の操り人形の精巧な演出を考察し、近世町衆の祭祀芸能の典型を考察できた。これにより、2009年11月に研究を開始して以来、古代祭祀、中世祭祀、近世祭祀のすべてにわたり、展望を得た。今後は、これを踏まえて、(1)古代祭祀における大陸芸能の影響、(2)中世祭祀における宮座組織と中国の宗族組織との異同比較、(3)近世祭祀における市民社会の成熟度の目中比較などの課題にとりくみたい。また、日中両国語による報告書の刊行を計画している。
著者
篠嶋 妥 市村 稔
出版者
一般社団法人 軽金属学会
雑誌
軽金属 (ISSN:04515994)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.2-8, 2005 (Released:2006-02-24)
参考文献数
29
被引用文献数
2 2

Dendrite growth of Al-Zn binary alloy in one directional solidification process was simulated using the phase field method. The development of Zn composition profile and phase field were calculated and the effects of temperature gradient G and growth velocity V on the morphology of crystal growth were investigated. The obtained results dynamically showed that the curvature radius of the tip of the primary dendrite arm, R, became small and the number of the arms per unit length increased (i.e. the spacing between the primary dendrite arms, λ1, decreased) with increasing growth velocity V. The quantitative relationship between λ1 and V and that between the spacing of the secondary dendrite arm λ2 and the solidification time t were determined as λ1 α V-0.5 and λ23 α t, respectively. It was found that the values of R and the exponent of V for R agree well with the dendrite growth theory.
著者
山辺 規子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、まずイタリア各地の都市について、実際に都市の称揚につながった都市の公共建造物、城壁、大きな教会(托鉢修道会教会、守護聖人の教会、司教座聖堂)などの景観を確認する。そのうえで、その景観の形成過程を調べ、さらにそれがいかに描かれているかを検討して、イタリア支配者層が持つ空間支配のありかたを示す。第二に、各都市に拠る支配者層が自らの支配権を誇示するために、職人や芸術作品、工芸品などの技術などを共有して、いわば支配者層の文化ネットワーク空間を構成することを検討した。
著者
宮田 仁美
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

TLR4は、最近肝線維化に関与していることが示され、水腎症モデルマウスにおける腎線維化にも関与しているのではないかと仮定し研究をすすめた。野生型、欠損、低発現マウスに分けて、片側尿管結紮にて水腎症マウスを誘導し血行動態的な変化、ならびに組織学的、分子生物学的な変化について比較を行った。欠損マウスならび低発現マウスにおいては、線維化の進行が有為に遅れたがその作用は早期に限られた。
著者
加藤 英子 南部 育志 小島 康生
出版者
Primate Society of Japan
雑誌
霊長類研究 = Primate research (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.39-52, 1999-05-01
被引用文献数
1 2

The social relationships of 10 young adult males in a free-ranging group of Japanese macaques at Katsuyama, Okayama Prefecture, were examined pre- and post-fission. Before group fission, higher-ranking young adult males interacted less frequently with not only their mothers, but also with other matrilineally-related females than did lower-ranking males. Six-year-old males clearly formed two subgroups according to their relative rank, even though they did not form any clear subgroups at the age of two.<br>Higher-ranking males spent more time away from females of the group than did lower-ranking males. However, when it was time for artificial feeding, higher-ranking males obtained scattered food more frequently than lower-ranking males. After group fission, four of the five higher-ranking males and one of the five lower-ranking males remained in the main group, while three of the five lower-ranking males were in the fission group.<br>These differences in the social relationships of young adult males might reflect the female subgroups which appeared prior to group fission.
著者
小野 史貴 三澤 秀明 堀尾 恵一 大谷 泰志 土生 学 冨永 和宏 山川 烈
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

口腔内の白斑には前癌病変の白板症があるが,類似した症状の扁平苔癬と誤認する可能性がある.前者は白斑が均一であり,後者はレース状となる特徴があるが,初期診療を行う歯科医では判別が難しい場合がある.本研究では,口腔画像に基づき白斑形状を識別する診断支援システムの開発を行う.本稿では,ガボール特徴量を利用する効果について,識別実験を通してその有効性を検討する.
著者
網谷 祐一
出版者
京都大学文学部科学哲学科学史研究室
雑誌
科学哲学科学史研究 (ISSN:18839177)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-20, 2011-02-28

The species problem is the longstanding puzzle concerning the nature of the species category or how to correctly define "species." Many philosophers, as well as biologists, have attributed the recalcitrant nature of the species problem to the gap between the essentialistic nature of the species concept, on the one hand, and the vague boundaries of actual species, on the other. In this paper I will examine two possible readings of this account. On the first reading, the gap comes from the lack of non-essentialistic definitions of "species." The second reading suggests that the gap comes from biologists' psychological disposition to hold essentialistic conception of species, even when non-essentialistic definitions are available to them. Then I will argue that evidence favors the second reading over the first.
著者
高橋 智 和田 恵次 堀 道雄 幸田 正典
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

左利き遺伝子を持つ卵が左利き遺伝子を持つ精子と受精するのを阻止する不和合性遺伝子を考えた遺伝モデルにより,左利きホモが存在しないということ魚類の飼育交配実験の結果を説明した.捕食者が逆の利きの餌を捕食する交差捕食により左右性の比率が振動するとき,グループ産卵を行う魚でこの不和合性は有利となり進化する.また,ペア産卵を行う魚では不完全な不和合性が進化する.
著者
上坂 充 中川 恵一 片岡 一則 遠藤 真広 西尾 禎治 粟津 邦男
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

医学物理および医学物理士のあり方については、日本医学物理学会、日本医学放射線学会、日本放射線腫瘍学会や厚労省関連の諸委員会にて長年議論されている。代表者らが主な活動の場としている日本原子力学会や日本加速器学会などに加わっている多くの学生、研究者、理工系大学教員が医学物理に興味を持ちその発展に参画したいと考えている。それらの方々が、放射線医療の新科学技術の開発研究を行っている。アメリカではこの40年で5,000人以上の医学物理士が単調増加的に誕生しているが、それには新技術の開発と普及が定常的に行われたことの証でもある。今の日本ではライナックを始め、国産治療装置が撤退し、輸入品に席巻されている。「研究開発型」医学物理士に掛けた思いは、輸入品のメンテナンスのみでなく、欧米のような機器開発を伴った医学物理の学問の創成と人材育成である。その議論の場を円滑に運営するため、日本原子力学会に「研究開発的医学物理」研究特別専門委員会を設立した。議論の対象として以下のテーマを設定した。1.イメージガイドピンポイント照射システム開発(1)X線・電子線(2)イオンビーム(3)中性子(4)レーザー、2.生体シミュレータ開発(1)DDS(Drug Delivery System、薬品送達システム)設計(2)人体線量分布高精度評価(3)薬剤流れの解析(4)治療計画の高度化、3.教育プログラムの充実と人材育成(1)欧米を目指したカリキュラム(2)大学院生の奨学金(3)ポスドク制度(4)留学。ここまで4回委員会(9月4日午前、28日、11月1日、2月28日午前)と2回の研究会(第6,7回化学放射線治療科学研究会、9月5日午後、2月28日午後)を開催し、上記テーマについて深く議論を行った。結果、1については白金が入ってX線吸収と増倍効果のある抗がん剤シスプラチンミセル、金粒子を手術して注入せず注射でがん集中させて動体追跡できる金コロイドPEG、シンチレータとPDT(光線力学療法)剤を一緒に送達してX線PDTを行う、3つのタイプのX線DDSの開発が始まったことが特記事項であった。また陽子線治療しながらPETで照射部が観察できる国立がんセンターの手法も画期的である。2については、粒子法による臓器動体追跡シミュレーションの可能性、CTのダイコムデータ形式からのシミュレーションメッシュデータ生成、地球シミュレータを使ったDDS設計など、日本に優位性のある技術が注目された。放射線医療技術開発普及のビジネス価値の定量分析(リアルオプション法など)も実用化に向けて有用である。教育体制につては、特に北大、阪大、東北大、東大にて整備されつつあった。これら革新的研究テーマと人材育成プログラムを、すでにスタートした粒子線医療人材育成プログラムのあとに用意すべきである。その際国際レジデンシー(研修生)など欧米機関との連携も重要である。アメリカMemorial Sloan Kettering Cancer Centerがその窓口としての可能性が高くなった。本活動は日本原子力学会研究専門委員会としてもう2年継続できることとなった。特定領域研究相当のものを立案してゆきたい。
著者
笠井 昭次
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.49-70, 1993-12-25

会計(学)と簿記(学)との関係と言えば,一見,過去のテーマのように思われるが,しかし,けっしてそうではない。簿記教育の側面および理論研究の側面のいずれにおいても,今日なお,重要な意義を帯びているのである。まず前者の簿記教育面であるが,今日にもなお,資本等式が生きていると主張されることがある。財産計算の体系である資本等式は,とうてい,損益計算にかかわる今日の複式簿記実践の説明理論たり得ない。それにもかかわらず,そうした主張がなされるというのは,損益計算体系性の説明ということより,むしろ貸借複記に基づく複式簿記の自己完結的な機構そのものの説明が主題になっていると考えざるを得ない。つまり,簿記学という感覚での教育がなされているのである。ここに,会計(学)と簿記(学)との関係が問題になるのである。次に理論研究面であるが,今日,複式簿記が軽視されているにもかかわらず,現実に取り上げられているのは,損益計算書・貸借対照表等の複式簿記により産出される情報だけなのである。そうであれば,複式簿記機構の特質を理解しないかぎり,損益計算書・貸借対照表等の特質も明らかにならないはずである。したがって,この複式簿記の意義を今日の会計学のなかに適切に位置づけることが,どうしても必要になる。本稿は,複式簿記をもって会計の構造とみる立場から,会計(学)と簿記(学)との関係を論じている。
著者
田中 薫
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.111-125, 2006-03-20

「出版産業」は東京の一極集中であると言っても過言ではない。また、「出版は東京の地場産業である」という日本出版学会の会員もいる。したがって、東京から遠く離れた地である九州の各県で、主要都市を中心に出版活動を行っている出版社はきわめて少ない。そして印刷・製本という製作面でのハンディがあるほか、出来上がった出版物を、地方かから全国の書店に向けて発送するという流通問題に関しても、条件的には不利である。さらに出版活動を企業として成立させ、継続していくためには、慢性的な書き手不足の状態から脱し、確保し、さらに発掘し、養成していくことが不可欠であるという意味では、それらのこともまた大きなネックとなっている。そこで、まず九州7県の各県における出版状況の現状について把握することとし、沖縄の現在についても、視野に入れて見てみたい。そして、地方で出版活動を行うことに伴う問題点はどこにあるのかについても検討し、そのポイントをあぶりだしてみることとしたい。