著者
岡田 信弘 高見 勝利 浅野 善治 只野 雅人 笹田 栄司 武蔵 勝宏 常本 照樹 佐々木 雅寿 加藤 一彦 稲 正樹 木下 和朗 新井 誠 齊藤 正彰
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

衆議院と参議院の多数派が異なる、いわゆる「ねじれ国会」が出現した結果、日本の国会における立法活動は混迷状態に陥った。本共同研究は、この混迷状態の制度的・政治的要因を探りつつ、そうした状態を解消・克服するための方策を従来の二院制に関する憲法学的研究とは異なった視角からの分析を通して明らかにすることを試みた。具体的には、従来の類型論的・解釈論的研究に加えて、統治構造論を視野に入れた実証的な比較立法過程論的研究を実施した。
著者
今泉 飛鳥
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、第二次世界大戦以前の東京府の機械関連工業を対象に、経済発展に産業集積の存在がもたらした効果とその変化を明らかにすることである。本年度は分析結果を博士論文等の形でまとめる計画であった。実際に11月末に博士論文を提出し、3月に学位の認定を受けた。今年度中の研究の具体的内容は主に以下の4点であり、すべて上記博士論文に収録されている。(1)先行研究のサーヴェイと研究枠組みの整理本研究の土台となる先行研究整理を行った。そこでは特に人文地理学の分野の研究を参考にしながら、空間経済学と近年の産業集積論双方に目を配り、集積地から集積内企業が受け取り得る効果を「集積のもたらすメリット」として総合的に整理した。比較的狭い範囲の産業集積内部に注目してきた従来の集積論を客観化することにより、産業集積と広域の工業分布や「都市化の経済」との関係を論じる足掛かりをも得ることができた。(2)産業集積の実態東京市芝区に存在した機械工場(大塚工場)の経営資料を用い、産業集積内に立地する企業がどのような取引ネットワークを構築していたかを明らかにした。この成果は4月と9月のコンファレンスにおいて報告した。また、1910年代に相次いだ東京における機械工業関連の組合の結成過程を分析し、産業集積との関連を考察した。(3)危機に際する集積の効果の働き方1920年代に開始された都市計画用途地域制を事例に、産業集積が突発的なショックや継続的な制約に対して示した反応の解明を通して集積のメリットの実証を試みた。この成果を『経営史学』に発表(掲載決定済)した。(4)長期的・全国的俯瞰1902年から35年の4冊の『工場通覧』を包括的にデータ化し、戦前期日本の産業立地とその決定要因を分析した。この結果は8月の国際経済史学会(於ユトレヒト)において報告した(なお、同様のデータを用いた共同研究2つにも参加し、現在論文を作成中である)。
著者
野呂 雄一 井 研治 久野 和宏
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.741-746, 1988-10-01
被引用文献数
3

正弦波信号を用いて、線形システムの伝達関数を測定するには、その出力信号である正弦波の周波数、振幅、位相の三つのパラメータを正確に測定しなければならない。しかし、実際の測定においては、信号の周波数は既知な場合も多い。本論文では周波数が既知である場合、これを利用してデータのサンプリングを信号に同期させて行い、得られたデータにDFTを適用して振幅と位相を高精度に測定する手法について述べている。そして、高調波歪の除去法や測定精度について詳しく考察する。特に測定精度についてはデータ数とSN比との関係を数学的に明らかにし、データ数が多い場合やSN比が高い場合に振幅と位相の測定誤差が同一の近似式で与えられることを導出した。また、最後に、本手法を用いた測定例として吸音材の音響インピーダンス測定の結果を示した
著者
松尾 一郎
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

細胞内ペプチドN-グリカナーゼ(PNGase)は不要糖タンパク質からN-型糖鎖を遊離させる酵素であり、タンパク質の品質管理機構に関わる分子として注目されている。本研究ではPNGase活性を高感度に検出するために、還元末端にクロロアセタミド基を、非還元末端側の4位にプロパルギル基を有するキトビオース誘導体をデザイン、合成した。クリック反応により蛍光性置換基を導入、得られたプローブはPNGaseの脱糖鎖活性をμMオーダーで阻害した。
著者
柳瀬 陽介
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.1-10, 2002-09-30

コミュニケーション能力に関して,応用言語学においてはウィドウソンの論を例外として,個人内での意味交渉などの動的過程を説明する理論は形成されなかった。本論は哲学者デイヴィドソンの議論が,ウィドウソンの論を拡充し,第二言語教育に貢献するものであることを示す。デイヴィドソンの事前理論・即事理論の論証は,言い誤り・聞き誤りを多く含む第二言語コミュニケーションをうまく説明する。彼の理論は,特定のコミュニケーション成立からコミュニケーション能力を説明し,原則に基づいた認知的な推論の働きがコミュニケーションに大きく関与していることを明らかにしている点で,コミュニケーション能力論に独自の貢献をなしている。彼の議論は,コミュニケーションは,従来考えられていたように事前理論の共有によって成立するものではないこと,およびコミュニケーションを目指す教育は言語学的意味での「言語」を超えた教育となることを明らかにしている。
著者
佐々木 恒男
出版者
日本大学
雑誌
産業経営研究 (ISSN:02874539)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-9, 2001-03

バブルがはじけて10年,日本経済は未だに立ち直れないでいる.不良債権の償却は一向に進まず,企業倒産は相変わらず多く,失業率も高止まりでのままで,個人消費は冷え込んだままである.中高年の再就職はいうに及ばず,大高中の新卒の就職はいずれも振るわず,国民の間には将来に対する一種の諦めと無力感がみなぎっている.それにもかかわらず,政治は能転気なもので,コップのなかの権力闘争に明け暮れている.株式相場と為替相場だけは正直なもので,日本の政治と経済にすっかり愛想づかしをして,それらは続落の一途を辿っている.この先,日本経済は一体どうなるのだろうか.このような状況のなかで,声高に主張され続けてきたのが市場主義という新しいビジネス・ルールである.人為的な規制を撤廃して,すべてを市場の選択に委ねるというアメリカ流のビジネス・ルールがまるで魔法の杖であるかのように喧伝され,長引く不況に困り果てた日本の経営者がなりふり構わずこれに飛び付いている.市場主義というアメリカン・スタンダードがグローバル・スタンダードと勘違いした日本の経営者は,先人が営々として築きあげてきた信頼取引という日本のビジネス・ルールをいとも簡単に投げ捨てている.それは単にビジネス・ルールの変更だけに終わらず,日本社会全体の価値や文化の変容をも意味している.景気はいずれ変動する.好機が来ればいずれ反転し,破局があればいつか再生する.その時,不慣れな市場主義原理に振り回されてリスクを乗り切った積もりの日本の経営者は,会社不信,会社嫌い,人間不信に凝り固まり,未来に希望が持てず束の間の享楽に生きる大勢の老若男女のリベンジに仰天し,信頼という企業資産の喪失の重大さに愕然とするだろう.
著者
森 由利亜 稲畑 耕一郎 稲葉 明子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、中国西南部に存在するシャーマニズム(巫教)が中国の様々な宗教的伝統と密接な関係を保ちつつ共存する様が観察される中国西南部について、現地に大量に存在する文献資料に注目し、とりわけ道教との関連を重視しつつ追及するものである。研究成果報告書は、2004年夏の道真県河口郷梅江村張芳頤壇門の地府道場と、河口郷三〓村の楊海安壇門の衝儺活動の現地調査並びに聞取り調査の成果を中心に編集した。前者の地府道場では、壇門の構成や成員などの状況に加え、清微派の法事内容を確認し、具体的に"三天喪葬"法事の次第を一つ一つ確認した。後者の衝儺活動では、8月19,20日に河口郷に赴いて実際に衝儺活動に参加し、複数のデジタルデバイスで儀式を立体的に記録した上で、その後二日をかけて壇門の基本情報と衝儺活動式次第の内容の聞取り調査を行った。この調査を通じて、私たちは現地の研究者と協力しながら、いかにして儀礼の全体を記録し、いかにして当地の職能者とのインタヴューを行うかについての基本的な方法を確立することを得た。しかしながら、今回記録した儀礼の内部構造は、多様な文脈を有する多くの要素を内包しており、それらの分間yくの摘出には本調査は及んでいない。今後は、職能者とのインタヴューを重ねてこれらの儀礼の文脈を明らかにすることを試みたい。
著者
長井 浩 安藤 生大
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.76, no.763, pp.377-379, 2010-03-25

Wind turbines generate sustainable energy, however CO_2 is emitted during the various processes in the life cycle of a wind turbine. Therefore, it is important to take into account the latest data of the environmental impact in addition to applying megawatt scale wind turbines by the method of LCA. In this study, recent CO_2 basic unit (g-CO_2/kWh) was calculated under the conditions of that the life time of turbines is set to be 20 years and the life cycle includes manufacturing, construction, transportation and operation processes. The recalculation result of the domestic 2MW wind turbine constructed in Choshi area shows 10.8g-CO_2/kWh and 13.5g-CO_2/kWh under the conditions of average wind speed=6m/s, CO_2 emission rate of operation and maintenance=1.0%/year, the loss of transmission grid etc=5% in its life cycle. The important points of electricity produced by wind turbines are finding locations with good wind supply and application of large scale wind turbines. And the "product category rule" should be established for the standardized calculation of the Japanese CO_2 basic unit (g-CO_2/kWh) of the wind generator.
著者
長友 和彦 井上 修一 平瀬 清
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本・韓国・中国・台湾の教育研究機関・関係者と連携して研究を進めた結果、(1)三言語(日本語・韓国語・中国語)同時学習支援を支える三言語習得論・多言語多文化同時学習支援論・多文化共生論等の理論、(2)それぞれの国・地域における三言語及び多言語多文化同時学習支援に関わるさまざまな実践例、(3)三言語同時学習や多言語多文化同時学習支援のシラバスのあり方やその支援者・推進者の役割のあり方、等についての知見が得られた。
著者
多田 弘明 小林 久芳 秋田 知樹 松井 英雄
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の主要な成果は以下の通りである。(1)単体硫黄と金属イオンを含むエタノール溶液中で,TiO_2にUV光を照射することによって,TiO_2表面と良好な界面接合状態を有するCdS,PbS,MoS_2,Ag_2S量子ドットを形成することに成功した。(2)光析出法を用いて作製した金属硫化物量子ドット-TiO_2ダイレクトナノカップリング系の特徴を明らかにした。(3)光析出法,SAM法およびSILAR法で調製したCdS量子ドット担持メソポーラスTiO_2ナノ結晶薄膜を光アノードとして用いた量子ドット増感型太陽電池を作製した。疑似太陽光照射下(one sun)におけるセル性能評価を行った結果,光電変換効率は,2.5%(光析出法)>1.2%(SILAR法)>0.14%(SAM法)の順であることが判明した。
著者
志村 喬 杉山 範子
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.230-240, 1965-12-25

Frost resistance of nine different varieties of the tea plant was studied in different ways mainly as regards to seasonal change. The following results were obtained. Frost resistance of nine varieties tested is ranked in the following order ; Yabukita, U-22 (triploid) and U-24 (triploid) are very resistant ; Y-1, Y-3, Y-6 and Benihomare moderately resistant ; X-10 and X-12 are slightly resistant. Frost resistance increased with the decrease of water content in leaves, and simultanuously with the increase of osmotic concentration in the leaf cell. Frost resistance increased also with the increase of sugars content. Varieties with leaves containing more total sugars in midwinter were more resistant, although varieties with leaves containing more reducing sugars were not always more resistant. Tannins content in leaves had no definite relation with frost resistance. The increase of frost resistance has no direct relation with the content of total nitrogen and water soluble nitrogen, while water soluble protein increased with the increase of frost resistance, and varieties which contain more water soluble protain in leaves in midwinter are more frost-resistant