著者
藤野 敦子
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

二つの分野における研究成果が挙げられる。一つは、非正規の働き方の家族形成に及ぼす影響に関しての日仏比較である。日本では、非正規の働き方が家族形成に負の影響をもたらしていることが明らかとなった。今一つは、歴史的な観点から、児童労働が生じる経済メカニズムを考察した。日本の場合には、労働需要サイドや労働供給サイドの原因だけではなく、雇用制度,ジェンダー問題などによっても児童労働が生じていたことが明らかとなった。
著者
小黒 千足 笹山 雄一
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.27, pp.101-106, 1984-03-25

文部省科学研究費(海外調査)によってなされたマーシャル群島の動物相調査において,1982年8月8日同群島マジュロ環礁より2個体のジュズベリヒトデに属するヒトデが採集された.これらはFromia nodosa A. M. CLARKと同定されたが,原記載は西インド洋で得られた1個体の固定標本によってなされたもので,既知の他の3個体もいずれもセイロン島以西産であり,この報告は太平洋における本種の最初の記録である.
著者
川田 進
出版者
大阪工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は以下の二つの仮説を実証することを目的とした。「チベット問題を読み解く鍵は東チベットにある」。「東チベットの宗教上を読み解く鍵は漢人信徒にある」。前者の仮説証明は概ね達成することができたが、後者は継続調査が必要である。調査対象地域は当初四川省カンゼチベット族自治州とアバ羌族チベット族自治州を予定していた。しかし、研究期間中に「2008年チベット騒乱」が発生したことにより、青海省内のチベット人居住地区も調査対象に加えた。「2008年チベット騒乱」について、その動向を時系列に追い、発生の原因と特徴をつかむことができた。中国共産党の宗教政策を検討するためにラルン五明仏学院とヤチェン修行地にて定点観測を実施した。統一戦線活動の実態を知る上で、ゲダ5世・ゲダ6世と中国共産党の政治的結びつきを明らかにした。
著者
Kim Tae-Yung Shon Hyun-Joo Joo Yi-Seok MUN Un Kyong KANG Kyung Sun LEE Yong Soon
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.753-759, 2005-08-25
被引用文献数
93

米国とカナダにおいてのみ認められていた鹿の慢性消耗性疾患(CWD)の発生が, 韓国Chungbukの農場で飼育されていたカナダから輸入された鹿にも認められた(2001年8月8日).CWDのサーベイランスと疫学調査により, 輸入された144頭(CWD発生農場由来鹿72頭, 同鹿と共に輸入された鹿72頭)のうち, 93頭(CWD発生農場由来鹿43頭, 同鹿と共に輸入された鹿50頭)については, 30農場で飼育されていることが報告された.2001年10月4日と8日にCWDの追加的調査を行なった.同居鹿をと殺した結果, カナダから輸入されたその他の鹿にも感染が確認された.水平感染が懸念されたので, 1997年にカナダから輸入された93頭および同居していた韓国産の鹿についてと殺し, 検査を行なった.韓国産の鹿には感染が認められなかったが, 2004年11月20日に再びCWDが発生し, これについては調査中である.
著者
橋床 泰之 原口 昭 小池 孝良 波多野 隆介 玉井 裕 宮本 敏澄 堀内 淳一 宮本 敏澄
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

寒冷地の森林帯では窒素供給源が不明である。この「窒素ミッシングリンク」と呼ばれる「謎」を解明するため,東シベリア・永久凍土帯のグイマツ林床と北欧森林限界帯のスプールス林あるいはカンパ林で現地調査をおこない,土壌が持つ窒素固定能を探った。現地土壌微生物群集は土壌環境を反映した条件下で強いアセチレン還元を示した。16S rDNAを標的としたDGGE菌相解析では,Clostridium属細菌およびDugnella属細菌(γ-Proteobacteria綱)の活動が示唆され,植生によって主要な機能性菌相が大きく異なった。森林限界付近の森林土壌ではアセチレン還元力が小さく,逆に森林のない亜北極ツンドラ土壌で高いことが分かった。森林限界に近い北方林では,生態系全体の物質循環スケールが土壌単生窒素固定細菌による特徴的アセチレン還元能を制御し,ピースや菌根菌を系全体でのより協働的な窒素固定と樹木への効率的窒素供給が行われていることが強く示唆された。
著者
中嶋 正之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎
巻号頁・発行日
vol.99, no.385, pp.7-14, 1999-10-22

今年で26回目となるSIGGRAPH'99は,8月8日(日)から13日(金)まで,アメリカ合衆国Los Angelsのダウンタウンに程近いコンベンションセンタで行われた。SIGGRAPHはACMに属する一つの研究会であり、CG(Computer Graphics)やInteractive技術に関する国際会議であり、最新のVirtual RealityやMultimediaに関する最新の試みなどが発表される。本研究会ではチュートリアルとしてSIGGRAPH'99の報告を行う。
著者
平川 一彦 荒川 泰彦 岩本 敏
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

我々は、半導体量子構造を強いテラヘルツ電磁場の中に置き、その量子伝導を制御することを目的として研究を行った。主な成果は以下の通りである;1)半導体超格子に強いテラヘルツ電磁波を照射することにより、高電界ドメインの発生を抑制することに成功した。2)量子ドットにナノギャップ電極を形成することにより、量子ドットとテラヘルツ電磁波の強い結合を実現し、テラヘルツ光子支援トンネル効果により単一電子の伝導を制御することに成功した。
著者
川手 竜介 早川 正士 Molchanov Oleg A.
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.95, no.190, pp.1-8, 1995-07-27

地震前兆電磁気現象のうちULF電磁放射が注目されている。即ち、スピタック地震及びロマ・プリータ地震の前に明瞭にULF電磁放射が観察されているからである。本報告では1993年8月8日のグアム地震に対してグアム地磁気観測所でのULFデータに基づいた解析結果を報告する。磁界のH(水平)成分とZ(鉛直)成分との比(即ち偏波)を最大限に活用し、スペース波動と地震電波との分離に成功し、地震の1〜2週間前に1度目の強度増大があり、又数日前から再度の上昇があるという特性を明らかにした。これらの諸特性は予知への大きな指針を与えよう。
著者
高橋 昭久
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

温熱処理においてγH2AXに比べてATMのフォーカスの減衰が速いこと、DNA-PKcs、Chk2のフォーカスは遅れて認められることを明らかにした。また、NHEJ修復欠損株に比べてHR修復欠損株は温熱感受性になることを明らかにした。温熱耐性にPolβが関与していることを明らかにした。さらに、温熱耐性獲得時にγH2AXおよびその他のDSB認識リン酸化タンパク質のフォーカス形成率が減ることを明らかにした。
著者
片桐 泉
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.334-337, 1999

従来から知られている虹ビーズを用いた人工虹では,副虻はできない。しかし,虹ビーズを貼り付ける台紙に反射する板を用いると,二重に虹ができることを,科学クラブの生徒が発見した。そしてさらに,四重の人工虹へと発展した。この新しい虹ができる原理を考察し,実験値と比較したところ,妥当性が確かめられた。また,クラブの生徒たちの発見の喜びを,授業で一般の生徒に体験させる試みを行ったところ,非常に活発な授業となった。
著者
市村 哲 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.955-963, 1992-07-15
被引用文献数
9

今や電子メイルはコミュニケーション媒体としてオフィスなどで広く用いられるようになってきたところが既存の電子メイルは 一方向にメッセージを転送するための手段を提供しているにすぎず 人間の対話や協調活動そのものを支援する機能を備えていないこの問題に対し 人間の意図を正確に伝えることができるような電子メイルシステムを構築するという方向からアプローチを行ったわれわれは メッセージを受け取った受信者がどのように振る舞えばよいのかを送信者がナビゲートできる仕組みを電子メイル上に実現し PilotMailシステムと名付けたPilotMailを使用することにより 送信者は誤りなく意志を受信者に伝えることができ また 電子メイル上での人と人の情報交換作業が迅速かつ柔軟に虹るシステムは オブジェクトを転送する機能と クラス階層化管理機能をサポートしており Objectworks/Smalltalk上で実装されたさらに 会話の遷移モデルに基づく会話管理機能とプロシジャを転送できる機能を融合し より人間の協調構造に密着した対話支援を可能にしたPilotMailはグループの協同作業を支授することが目的であり これまでにわれわれが行った利用実験から 協同作業促進のために有効であると評価された本論文では 設計思想 特徴的機能 システムの適用・評価について論じる
著者
立野 清隆
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.99-149, 1953-03

四. 時間性よりする存在の構成(脱我的思惟Ek-statisches Donkenによる存在の論理学の展開の試み)Die eigentliche Zeitlichkeit, die durch die Entschliessung der vorlaufenden Entschlossenheit erreichte wurde: d.h. der Dialog des Seins mit dem Nichts erlautert, indem er sich selbst als eine reine, Schemabildliche und selbstaffizierende Anschauung betrachtet, wie die Zeitigung der Zeitlichkeit die raumliche Vorstellung hervorbringen und das Sein im Anblickcharakter konstruieren kann, so dass wir sunachst den Begriff der transzendentalen Dynamik erreichten. Und die fundamentale Ontologie wird als die dialektische Entfaltung einer Anblick-bildlichen transzendentalen Dynamik, die die Zeitlichkeit als solche zeitigt, gefasst; und es zeigt, dass die Zeitigung der reinen selbst-affizierenden und Schema-bildlichen Zeitlichkeit die bildliche Fassung der reinen Idee der Zeitigung als solcher der Zeitlichkeit ist, und da gewinnen wir den Sinn des Daseins, der in die Zeitlichkeit reduziert ist: die Idee des Ek-sistenz. Damit wird das menschliche Seiende als solches von dem Ursprung der Selbster-schaffungen aus, (wir verstehen unter ihr das Werden des geschichtlichen Wesens des Seins) schopferisch wiedergewonnen; und dann zeigt sich zugleich auch die Philosophie der Geschichte des Seing, das systematische Ganz der reinen Erkenntnis, und konstruktiv entfalten wir den Ort des Ek-sistenz, den ek-sistenzlichen Raum, in dem ein menschliches Dasein zur Ek-sistenz wird und sich als Ek-sistenz vollendet, und versuchen wir, indem wir die dem jetzt und hier, stehenden und bleibenden Ich notwendig bestimmende Richtung der Transzendenz scharf erschliessen, die Losung des Grundproblems der Philosophie auf einen Schlag zu geben: wie man zu solch einem werden kann, das ein Mensch eigentlich gewesen ist.
著者
伊藤 武廣 宮崎 樹夫
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の成果は,直観幾何の学習と論証幾何の学習の間にある不整合の特定と,直観幾何の学習と論証幾何の学習を接続するためのカリキュラムの開発である。前者については,命題の全称性の認識における不整合と,中学校数学の論証幾何カリキュラムにおける「証明」の定義における不整合を特定した。後者については,内容知での接続のために,中学第1学年図形領域「空間図形」カリキュラムを開発するとともに,方法知「証明・説明」での接続のために,証明の学習の諸相を整理するための枠組みを開発した。
著者
山田誠一
雑誌
日医新報
巻号頁・発行日
vol.3639, pp.48-51, 1994
被引用文献数
1
著者
深瀬 浩一 藤本 ゆかり
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

糖鎖の機能を明確な物質的、構造的基礎に立って明らかにすることを目指し、固相法と固相-液相ハイブリッド法による糖鎖の迅速かつ効率的な合成法について検討した。4-アジド-3-クロロベンジル(ClAzb)基を持つ糖鎖を固相合成した後、アジド基と固相担持ホスフィン樹脂の反応により、ClAzb基を持つ目的化合物のみを釣り上げ、続いてDDQ酸化によって目的物を切り出す手法を用いてエリシター5糖の合成を行った。アスパラギン結合型糖タンパク質糖鎖の固相合成に向けた基礎的な検討を行い、(Bu_3Sn)_2を用いたラジカル反応によりトリクロロエトキシカルボニル(Troc)基を固相上で効率的に切断する方法を開発した。また固相上でN-Troc基の隣接基関与を利用した立体選択的グルコサミニル化を行うことに成功した。4,6-O-ベンジリデン保護マンノシルN-フェニルトリフルオロアセトイミデートを糖供与体として、TMSOTfを触媒として用いるβ-選択的マンノシル化法を見出した(α:β=1:9)。またN-フタロイル保護シアル酸のフェニルトリフルオロアセトイミデートを供与体に用いるα-選択的なシアリル化法も見出した。われわれは、タグとタグ認識分子の特異的なアフィニティーを利用してタグの結合した化合物を分離する手法を開発し、Synthesis based on affnity separation(SAS)と名付けた。本研究ではポダンド型エーテルをタグに用い、タグの結合した目的糖鎖を固相担持アンモニウムイオンに選択的に吸着させる方法を確立した。この手法を用いてルイスX糖鎖を含む10数種のオリゴ糖ライブラリーの合成を行った。免疫増強活性複合糖質リポ多糖ならびにペプチドグリカンについて、様々な部分構造や類縁体の合成を行い、それらの生物活性試験により、機能の解析ならびに生体の蛋白因子の相互作用について調べた。
著者
池上 高志
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.435-444, 2010-05-15
被引用文献数
1 2

Here we will discuss the Self-organization of autonomous embodied motion [5]. Despite being a major characteristic of living systems, Self-movement has never been viewed seriously as a central element of living systems. In fact, most current research focuses on 'structure' rather than 'movement'. The theory of autopoiesis [35] also does not examine biological movement directly. However, Self-movement often appears as a central theme in robotics research, its self-organization has scarcely been studied. Self-organization of Self-motion is important, because We need to understand the natural intelligence of living systems, opposed to artificial intelligence, its diversity and its root in evolution. As a means for approaching these challenges in robotics research, we designed a simple chemical system that synthesizes embodied autonomous motion: a self-moving oil droplet. This chemical system provides a new example of self-movement besides biological systems and mechanical robots.
著者
尾花 裕孝 古田 雅一
出版者
大阪府立公衆衛生研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

食品の放射線照射は、食品の微生物管理や品質保持に効果がある。本研究では、照射時のラジカル反応により脂肪成分が変性して照射特異的に生成する2-アルキルシクロブタノン類(シクロブタノン)を検知指標とする食品照射履歴を化学分析により検知する分析法開発を第一目的とした。加熱溶媒による効率の高い抽出、低温下の脱脂、固相カラム精製を組み合わせた前処理法により、EU公定法ではGC/MS測定までの前処理操作に約2日を要するが、それを7、8時間に短縮することができた。牛肉、豚肉、鶏肉、鮭などにγ線を照射し開発した分析法によりシクロブタノンを分析したところ、すべての試料で、照射線量とシクロブタノン生成の用量一反応関係を確認した。シクロブタノン生成量は試料の脂肪含有量が影響したが、脂肪の多い試料で0.5kGy、少ない試料でも1kGy程度の線量まで検出できる感度であった。加熱加工・調理の影響を検討するために、照射食肉を加工・加熱調理してシクロブタノン分析を行った。その結果一般的な加熱・加工では食品の内部温度は100℃以下でありシクロブタノンは安定であったが、加熱温度を200℃に上げるとシクロブタノンは消失した。従って加熱加工・調理後の照射食肉類の照射履歴も検知可能であることが判った。食肉類の照射は冷凍状態で行われることが多いが、低温時のシクロブタノン生成は室温に比べると少ないことが明らかになり、低温時には元の脂肪酸構成を反映しにくいシクロブタノン生成比率であった。1年の冷凍保存を目安に冷凍保存後も照射の検知ができるかを検討したところ、生肉類ではシクロブタノンは若干減少したが照射検知には支障はなかった。加工食品では生肉類よりも大きく減少する例もあった。また、室温保存と比較すると、冷凍保存の方がシクロブタノンの安定性は高かった。