著者
地頭薗 隆 下川 悦郎 松本 舞恵 加藤 昭一 三浦 郁人
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部演習林報告 (ISSN:03899454)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.33-54, 1995-10-20

鹿児島県は1993年幾度となく豪雨に見舞われた。これによって県内のあちこちで斜面崩壊・土石流による土砂災害が発生し,大きな被害がでた。8月6日の災害直後,鹿児島市とその北部域の垂直空中写真が撮影された。空中写真判読に基づき,斜面崩壊・土石流の発生分布とそれによる侵食土砂量について解析を行った。得られた結果をまとめると次のようである。1)空中写真判読区域(南北方向20.6km×東西方向15.8km,面積約325km^2)に発生した斜面崩壊・土石流は大小合わせて6,500個以上にのぼった。それらの約60%は侵食域の面積が300m^2未満のものである。2)斜面崩壊・土石流による侵食域分布図に200m間隔でメッシュをかけ,200×200mグリッド内の斜面崩壊・土石流の個数を求めた。グリッド総数8,137個のうちグリッド内に斜面崩壊・土石流が1箇所以上存在するものは全体の約26%に相当した。斜面崩壊・土石流が10個以上存在するグリッドは甲突川中流域および思川中流域に集中している。3)空中写真判読区域を5区域に区分し,それぞれの区域の斜面崩壊・土石流による侵食域の面積を求めた。さらに,侵食域面積に平均的な侵食深を乗じて各区域の侵食土砂量を計算した。8月1〜2日豪雨で約1,600箇所の斜面崩壊・土石流が発生した思川流域では約500×103m^2(約8,000m^3/km^2)の土砂が侵食された。8月6日豪雨で約3,700箇所の斜面崩壊・土石流が発生した甲突川流域では約655×10^3m^3(約6,000m^3/km^2)の土砂が侵食されている。また多くの死者やJR日豊本線,国道10号の大きな被害が発生した姶良カルデラの西壁でも約55×10^3m^3(約7,000m^3/km^2)の土砂が侵食されている。4)空中写真判読区域を表層地質で大まかに3区域に区分し,それぞれの区域の斜面崩壊・土石流による侵食域の面積,土砂量を計算した。その結果,火砕流堆積物の非溶結部であるしらす区域で約942×10^3m^3(約5,OOOm^3/km^2),火成岩類区域で約224×10^3m^3(約3,O00m^3/km^2),堆積層区域で約202×10^3m^3(約4,O00m^3/km^2)であった。
著者
成尾 利秋 佐々木 文善 香川 守 堀江 力 小熊 勝 菊子 吉宏
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会年次大会講演予稿集 (ISSN:09191879)
巻号頁・発行日
no.27, pp.511-512, 1991-07-28

We have developed a new ghost reduction equipment for TV relay station using GCR signal with high performance. By using this ghost reduction equipment, multi-path interferences were improved more than 6dB (D/U).
著者
堀江 昭夫 石井 惟友 栗田 幸男 田中 教英 細迫 有昌
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.529-540, 1980-12-01

長期間に血栓が多発し, 門脈圧亢進症状を示し, 心不全で死亡した54歳男の剖検症例の報告である. 臨床経過は11年にわたり, 上腸間脈動脈血栓, 食道静脈瘤や牌腫が認められた. 末梢血の全血球成分は平均して多く, 血小板数は通常40万以上であった. 剖検時, 骨髄は細胞成分に富み, 3系統の造血亢進像が認められた. 肝硬変を含め, 肝に線維化像はみられなかった. 門脈に合流する静脈には多発性血栓形成像があり, 新旧の梗塞を示す粗大結節状の牌腫, 食道脈瘤なども認められた. 冠状動脈血栓の器質化にともなう左心室心筋の線維化と心尖部に動脈瘤がみられた. 典型的な血管内凝固症候群では血小板数の減少がみられ, 特発性門脈圧亢進症や非硬変性門脈線維症には肝線維化巣が認められることによって, 本症と鑑別される. 本症は臨床検査所見ならびに剖検所見を. 綜合してhemopoietic dysplasiaの範疇に入ると考えられる.(1980年8月6日受付)
著者
沢田 勇 原田 正史 織田 銃一
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.54, pp.19-27, 1995-12-25

1994年7月24日から8月6日までの間,南中央シベリアの2箇所にて3属7種からなる29種のトガリネズミ類が採集された.消化管を剖検した結果,9属12種の条虫類が寄生していた.その条虫類はSoricinia longisegmentalis,Ditestolepis diaphana,D.secunda,D.sp.,Lineolepis skrjabini,Skrjabinacanthus jacutensis,Neoskrjabinolepis singularis,Staphylocystis(Staphylocystis)naganoensis,Vampirolepis novosibirskensis,Cucubilepis skrjabini,Choanotaenia crassiscolex及びC.baicalensisであった.これら条虫類の寄生率は29頭のトガリネズミ類の62%であった.今回は前調査で寄生がみられなかった4種の条虫類(Skrjabinacanthus jacutensis,Cucubilepis skrjabini,Ditestolepis secunda,Choanotaenia baicalensis)について記載した.
著者
岡田 守人 伊藤 彰彦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

がん浸潤部において高発現が確認されたNotch2とSix1について機能解析を行い、Notch2-Six1転写カスケードとして2分子が協調的に一連の遺伝子群の発現を活性化し、肺上皮細胞においてepithelial-mesenchymal transition, EMTや核の腫大を促進させることにより肺腺癌の悪性化が進展する可能性を明らかにした。新たにGGO/ Solid混在の肺腺癌症例において2分子の免疫組織染色による発現パターンと臨床データとの関連性の検討を行い、2分子が浸潤部で高発現を認める肺腺癌症例は浸潤部で高発現を認めない症例よりも悪性度が高い可能性が示唆された
著者
梶川 正弘
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.37-48, 1988-03-01

The severe disaster caused by gusts and hailfalls occurred in the southern inland of Akita Prefecture on August 6,1985. This report deals with the outline of meteorological conditions, damages and characteristics of the gusts in relation to the hailstorms. The following main results were obtained : l) The gusts accompanied with hailfalls were brought about by well-developed thunderstorms related mainly to the unstable stratification by advection of upper cold air. 2) The damaged area by the gusts is about 5 km in north-south direction and about 4 km in east-west direction. The degree of damages is remarkable in western and southwestern side of the hailfall area. Furthermore, the gusts show a divergent tendency in the direction of mainly west, southwest and south from the damaged area by hailfalls. Therefore, it seems that the damages by gusts was caused by the downburst accompanied by well-developed cumulonimbus. 3) Most of the damages were the injury of heads of rice plants and trellises and blossoms of hops by hailfalls and gusts.
著者
副田 義也 樽川 典子 嶋根 克己 藤村 正之 牧園 清子 小高 良友 株本 千鶴 樫田 美雄
出版者
金城学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

社会的行為としての死の研究。医師、看護師、メディカル・ソーシャル・ワーカー、近親者などと死にゆく者との相互作用のなかで、死を観察、分析、研究した。とくに、緩和ケアのありかた、医師と看護師の役割分担、医療スタッフと近親者とのコミュニケーションに焦点をあわせつつ、聞きとり調査をおこない、事例研究をおこなった。制度としての葬儀の研究。国内では、高度成長期以降の葬儀業界のありかたを、葬祭業者の専門職化と資格の制度化を中心に、調査、研究した。また、創価学会で近年注目される友人葬の事例を収集し、研究した。外国では、フランスにおける葬祭業の成立と展開にかんする歴史社会学的研究、中国の客家人の葬儀と死生観の事例研究をおこなった。文化としての追悼の研究。太平洋戦争時における市民から出た大量の死者を追悼する施設の調査・研究に主力を集中した。東京・沖縄・広島における戦争博物館の比較考察、対馬丸記念館の調査・研究がおこなわれた。ほかに、沖縄の陸軍病院壕、周南市回天記念館は、軍人戦死者の追悼施設として追加調査された。死の社会学の全体構想の研究。以上の3部門の研究をふまえ、内外の死の社会学的研究文献の分析・総括をあわせて、死の社会学の体系化が試みられた。全体社会、組織・集団、相互作用、社会制度、文化、パーソナリティ、社会的行為の7つの主要概念の有機的連関を利用して、死の社会学の7部門が構成された。(研究成果報告書、11ページ参照)。
著者
盛田 健彦 杉田 洋 磯崎 泰樹 吉野 正史 松本 眞 岩田 耕一郎 川下 美潮 滝本 和広 須川 敏幸 仲田 均
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

初年度は、繰り込まれたRVZ誘導変換に対して、代表者の先行研究で既に得られていた局所型中心極限定理を、応用上重要な関数を含むクラスに拡張した。2008年度以降に予定していたタイヒミュラー計量に付随した自然な拡散過程の構成については、当初予測していなかった難点にぶつかったが、幸いにしてディリクレ空間の方法によりタイヒミュラー空間のブラウン運動と思しき拡散過程の候補に至ることができた。
著者
小松 彦三郎 清水 克彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

この間の精力は、ほとんど2008年8月に東京で開催した関孝和三百年祭記念数学史国際会議の組織とこの会議録編集に費やされた。研究代表者自身は、関による連立代数方程式の未知数消去の理論(1683)及びその後の日本人数学者による研究の詳細とその独自性を明らかにした。これらは、従来、江戸時代の関流数学の伝統と、これをほぼそのままに受け入れた近代の数学史家の解釈によって理解されてきたが、今日の目では批判に堪ええない。この他、ケルビン卿(1855)とヘヴィサイド(1887)の電信方程式に対して新しい解法を与えることができた。
著者
清水 浩 高野 愛
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.8-13, 2008-03-01
被引用文献数
2 4

キク(<I>Chrysanthemum morifolium</I> Ramat.'Reagan')を対象として, +10 DIF(DT:25°C/NT:15°C), 0 DIF(20/20), -10 DIF (15/25)の環境下での伸長成長量を画像計測システムで非接触連続計測(それぞれn=5)を行なった. その結果, いずれのDIF条件においても暗期の伸長成長量が明期よりも大きいという結果となり, これまでに差動変圧器など接触型計測装置での報告と一致した. 一日当りの伸長成長パターンについては暗期開始後約1時間に顕著な伸長があり, これは長くは持続せず暗期開始約2時間後には傾きが緩やかになるが, 約4時間後に再び若干上昇する傾向が観察され, これはDIF値が大きくなるほど顕著であった. 明暗期それぞれにおける伸長成長量は, 明期ではいずれのDIF条件でも顕著な伸長は認められなかったが, 暗期ではDIF値が大きいほど, つまり暗期温度が低いほど伸長成長が大きくなるという結果を得た. 本研究での結果と過去の知見との考察より, 明期の温度がそれに続く暗期の伸長成長に大きな影響を与えていると推察された.
著者
柳沢 良三 井上 滋彦 板倉 宏尚 岸 洋一 藤丸 純一 和田 順子
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.690-693, 1992-05-20

症例は70歳女で,1990年1月26日,排尿困難と頻尿を主訴に当院を受診.コリン作動薬を投与するも効果なく,4月6日に尿閉をきたした.膀胱鏡にて尿道および膀胱頚部の挙上を認め,導尿後も下腹部に小児頭大の腫瘤を触知した.排泄性尿路撮影では膀胱後部腫瘤を認め,鎖尿道膀胱造影で膀胱頚部と近位尿道の前方への偏位を示した.CTスキャンとMRIにて膣上方に位置し,膀胱を前方に圧排する内容液状の骨盤内腫瘤を認めた.1990年8月6日,子宮全摘除術を施行.病理診断は結核性子宮内膜炎であった.術後は排尿障害は消失し,鎖尿道膀胱造影上,膀胱頚部と尿道の偏位は消失した.本邦34例,欧米110例の婦人科疾患による尿閉を集計し,婦人科疾患による尿閉の機序を検討した.妊娠後屈子宮,子宮脱,子宮筋腫,卵巣嚢腫,処女膜閉鎖,膣閉鎖等の頻度が高かった.結核性子宮留膿腫による尿閉症例は,これまでに報告をみない.
著者
山岡 道男 浅野 忠克 阿部 信太郎 高橋 桂子 樋口 清秀 稲葉 敏夫 真野 芳樹 樋口 清秀 稲葉 敏夫 淺野 忠克 阿部 信太郎 高橋 桂子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本の高等学校の経済教育内容と大学のそれとの不連続の現状を明らかにし、大学生の経済学習を効果的かつ効率的に行わせるための課題を、日本の大学のカリキュラムに見られる特徴から指摘した。また高校生と大学生のパーソナル・ファイナンスに関する知識の程度を調査するためのテストを実施して結果を分析した。さらに大学生の経済リテラシーついて、日本・米国・韓国・フィリピン・ニュージーランドで共通問題を使ってテストを実施し、その結果の国際比較から日本の大学生の経済理解の実態を明らかにした。
著者
林 薫 三舟 求真人 田口 厚
出版者
長崎大学風土病研究所
雑誌
長崎大学風土病紀要 (ISSN:00413267)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.87-95, 1962-06

1961年6月採用した長崎及び佐世保市内の幼稚園児及び小学児童791名の血清についてpolio中和抗体の分布を調査し,長崎市では地区によって各型抗体の獲得状態に著明な差が認められたが,佐世保市ではこのような地域差を認めなかった.長崎市でpolio中和抗体獲得の最も低い幼稚園児60名,小学児童60名,合計120名についてSabin型弱毒polio生ワクチンの服用前及び50日後の中和抗体を同一人について比較し,I型及びIII型抗体獲得よりII型抗体のそれが優勢であることが判かった. Polio中和抗体を証明しなかった生後2乃至7ケ月の乳幼児18名に弱毒生ワクチンを服用せしめ,35日後に中和抗体を測定したところ,なお18名中11名は抗体を保有していなかったが,6ケ月後の検査では殆んどすべての幼児が2種以上の抗体を保有していて,僅かに2名が抗体を有していなかった.そして抗体獲得は幼稚園児及び小学児童の場合と同じくII型が優勢であった.1961年7月以前まで長崎県下でpolio患児が散発し,そのうち教室へ送付をうけた検体からI型virus 5株,III型virus4株を分離したが,後者は離島に発生した患者から分離されたものであった.また,1961年8月6日発熟し,一時的下肢脱力症を伴なった1熱性疾患児の糞便から一定のMS細胞変性virusを分離し,未だ確実な同定には至っていないが,この種のvirusの侵淫を調査し,病原的意義の検討が必要と思われた.擱筆に当り恩師登倉教授の御鞭達と御校閲に深謝し,また実験に協力した山口泰世嬢に謝意を表します。Neutralizing antibodies against polioviruses of 471 sera collected from children from 5 to 8 years of age, were examined in Nagasaki city in June 1961, and incidence was found at 71.5% in type I, at 55.7% and 64.4% in type II and III on the average, showi