著者
嶋内 佐絵
出版者
東京都立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

日本における国際的で学際的な学士課程プログラムに関する研究成果を書籍の1チャプターとして準備し、2022年6月に刊行予定である。また韓国およびオランダにおける国際的で学際的な学士課程教育プログラムに関する研究調査をまとめたものの内容をアップデートした上で修正を加え、章執筆と本の編集作業を行った(編著書として2022年6月に刊行予定)。訪問調査自体は2019年のコロナ流行前に行ったものだが、研究会や文献調査を通じて分析やデータの補強を行い、また書籍の編集作業を通して共著者と議論を重ね、学士課程教育をグローバルスタディーズの枠組みで分析するという視点で、韓国・日本・オランダの比較検討を行った。成果物は2022年度の実績として発表予定である。また本研究と関連し、国際的な大学教育プログラムにおける教員のオートエスノグラフィーとして、Yusuke Sakurai, Sae Shimauchi, Yukiko Shimmi, Yuki Amaki, Shingo Hanada & Dely Lazarte Elliot (2021) Competing meanings of international experiences for early-career researchers: a collaborative autoethnographic approach, Higher Education Research & Development, DOI: 10.1080/07294360.2021.2014410 を刊行した。
著者
高雄 啓三 吉田 知之
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は脳発達期における RNA 編集異常がシナプス結合選択の異常をもたらし、それが高次脳機能異常を伴う発達障害の原因であるという仮説に基づき、どのような因子がRNA 編集異常とシナプス結合選択の異常をもたらすのか同定し、その制御機構を明らかにする。シナプスをオーガナイズする因子の遺伝子はこれまで20種類程度知られているがその多くが脳で発現、RNA に転写される際に編集され、多様なタンパク質が作り出されることでシナプスは多様となる。本研究では、精神疾患モデルマウスの RNA 編集を調べ、その制御機構と精神疾患との関係を明らかにする。
著者
赤池 孝章 加藤 篤 前田 浩 宮本 洋一 豊田 哲也 永井 美之
出版者
熊本大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

ウイルス感染病態において誘導型NO合成酵素(inducible NO synthase,iNOS)から過剰に産生されるNOは、共存する分子状酸素(O_2)や酸素ラジカル(活性酸素)などと反応し、パーオキシナイトライト(ONOO^-)などの反応性窒素酸化物の生成を介して、宿主に酸化ストレスをもたらす。一方で、感染炎症における酸化ストレスは、生体内で増殖するウイルスそのものにも加えられることが予想される。RNAウイルスは、一回の複製でヌクレチド残基あたり10^<-5>〜10^<-3>という頻度で変異し、極めて高度な遺伝的多様性を有しており、様々な環境中のストレスにより淘汰されながら分子進化を繰り返している。この様なウイルスの多様性は、これまで主にRNA複製の不正確さにより説明されてきたが、その分子メカニズムは今だに不明である。そこで今回、NOよりもたらされる酸化ストレスのウイルスの分子進化への関わりについて検討した。このため、変異のマーカー遺伝子としてgreen fluorescent protein(GFP)を組み込んだセンダイウイルス(GFP-SeV)を用いてNOやパーオキシナイトライトによるウイルス遺伝子変異促進作用について解析した。その結果、in vitroの系において、パーオキシナイトライトはウイルスに対して非常に強い変異原性を示した。さらにiNOS欠損マウスおよび野生マウスのGFP-SeV感染系において、野生マウスではiNOS欠損マウスの7倍程度高いウイルス遺伝子変異率が認められた。これらの知見は、ウイルス感染・炎症反応にともない過剰に産生されるNOやパーオキシナイトライトが、ウイルスの変異速度を高め、その分子進化に関与していることを示唆している。
著者
伊藤 康一 石原 康宏
出版者
徳島文理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

症候性てんかんの治療戦略上、脳浮腫発症制御は重要であるため、五苓散による予防的治療の可能性を検討した。重積発作(SE)側頭葉てんかんモデルマウスの海馬、扁桃体で、SE後初期の一過性BBB透過性亢進が血管原性脳浮腫を誘導したことを明らかにした。これらの指標に対して、五苓散はSE後、1日3回(300 mg/kg)経口投与に2日後に有意な抑制効果が認められた。さらにSE2日後、有意に増加したアクアポリン4、炎症性サイトカイン発現量は、五苓散投与で有意に抑制された。また、SRS出現はSE10日後でも観察されなかった。本研究において、五苓散のSE後脳浮腫に対する臨床適用の可能性を示した。
著者
神原 広平
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

細胞の水の通り道を形成するタンパク質アクアポリンに着目し、シロアリの水代謝システムの解明を試みた。2種のシロアリから新たにアクアポリン遺伝子を獲得し、そのうちイエシロアリでは唾液腺に2タイプのアクアポリンが共発現することを明らかにした。唾液腺を低張液や高張液に浸漬すると速やかに膨潤収縮したことから、これらのアクアポリンは水透過の役割を担うと考えられた。また、銅や亜鉛の存在下では膨潤収縮が認められず、水透過能が金属イオンで阻害される可能性が示唆された。RNA干渉法でアクアポリンの機能を阻害したところ職蟻の排泄に変調が生じたことから、シロアリアクアポリンは消化排泄系に寄与すると考えられた。
著者
空井 護
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

比較政治学では,デモクラシーを政治体制の型と理解するのが一般的である。本研究はそうした比較政治学分野の理論的研究として,デモクラシーの下位型である現代デモクラシーの正統性の強化を目的とした。本研究では,現代デモクラシーが選挙を中心にして構成される,論理的一貫性を備えた政治体制型であることを確認するとともに,同じくデモクラシーの下位型としてレファレンダムを中心に構成される古典デモクラシーにデフォルト・ステイタスを認め,現代デモクラシーをそれよりも劣位に置く常識的な理解は,現代の政治の基本構造を踏まえれば成り立たないことを論証した。
著者
空井 護
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は,政治的代表関係理解の刷新を通じて現代デモクラシーのより豊かな理論的描像を構想し,それにより現代デモクラシーの再正統化と再活性化を図ることを目的とした。しかし現代政治の基本構造を精査してゆくなかで,「政治的代表」ステイタスの付与による政治的決定者の規範化という研究方略の困難性が明らかになるとともに,論理的な一貫性(「間接性の均衡」)において,実は現代デモクラシーが古典デモクラシーに対して一定の優位性を誇れることも明らかとなった。古典デモクラシーから現代デモクラシーに対する今日の強力な非正統化圧力を軽減する論理を析出できたことが,本研究の主たる成果である。
著者
松本 征仁 位高 啓史 岡崎 康司
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

近年ヒトiPS細胞やES細胞から膵ベータ細胞への作出方法が報告され、糖尿病の再生医療の実現に向け見通しが立ってきた。しかし、幹細胞を用いる細胞補充療法は、造腫瘍性の可能性が完全に排除されていない事に加えて、莫大なコストの削減や免疫制御等の問題が残されている。本研究は従来の実績に基づいたRNA送達による直接変換を誘導する新たな治療法の開発を目指す。また分化転換の分子機序の解明について様々な側面から細胞の表現型の変遷移行に関する網羅的な情報の収集を行い、細胞の分化的可塑性について議論の一石を投じたいと考える。
著者
齋藤 滋 山田 拓司
出版者
富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

早産ならびに子宮内膜炎は炎症性疾患である。最近の研究により炎症性疾患では腸内細菌叢が変化し炎症を惹起させることが判ってきた。そこで両疾患の腸内細菌叢をメタゲノム解析した。群間比較では有意な変化を示すgenus/speciesは検出できなかったが、早産例でEscherichia/Shigellaが多い症例が一部認められ、子宮内膜症ではMegamonasの増加やParabacteroidesの減少が認められる例もあった。今後、病態との関連性を明らかにしていく必要がある。
著者
菅原 路子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

リンパ浮腫は,皮下組織へのリンパ液滞留により四肢に強いむくみをきたす疾患である.現時点において病態メカニズムは不明であり,完治を目指すための指針はない.リンパ浮腫患者の皮下脂肪組織は,肥大化かつ繊維化することが報告されており,それに伴う細胞外基質の弾性特性の変化がリンパ浮腫病態に及ぼす影響を考慮することも重要である.しかし,以上の複合的要因を考慮したリンパ浮腫の病態メカニズム解明への取り組みは皆無である.そこで本研究では,リンパ浮腫組織を模した化学環境および力学環境を考慮し,皮下脂肪組織の肥大化・繊維化メカニズムを解明する.さらには,リンパ浮腫完治のための指針を確立することを目指す.
著者
深山 陽子
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、近年生産現場で問題となっているトマトの生理障害である水疱症の発生メカニズム解明と発生予測式の作成を目的とする。具体的には、トマト植物体の水分動態(水ポテンシャルの変化等)に着目し、水疱症への関与を調べることでその発生メカニズムを明らかにする。さらに水疱症が発生する要因の閾値を求め、発生予測式を作成する。これらの結果を基に潅水方法や環境制御法の改良を行う。本研究によって水疱症が発生しない潅水方法や環境制御方法が確立されれば、安定的な生産技術として生産現場に普及することが期待できる。
著者
関根 健雄
出版者
小山工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

アクティブラーニング型授業を実践する中で、英語そのものの理解ではなく、辞書の解説や内容と図表との関連性が理解できない学生が多く存在し、学習効果が高まらないことがある。そこで、「リーディングスキルテスト」とTOEIC/TOEIC-IPを実施しその結果や関連性を検証し、学生の読解力の実態と効果的な授業改善を行い、英語読解と基礎的読解力双方の向上を目指す。同時に、効果的な教科横断型授業や、一斉授業で「つまづき」を感じている学生への学習支援、リメディアル教育の推進・充実に寄与することを目的とする。
著者
塚原 康子
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、近代日本において特異な役割を担った雅楽について、(1)近代の皇室祭祀との関係、(2)唱歌・儀礼歌など近代歌謡の創出との関わり、(3)公開演奏会・万国博覧会を通じた雅楽の国内外への発信、(4)近代の神社祭祀と雅楽の普及、に焦点をあてて解明した。主要な成果は『明治国家と雅楽』(有志舎、2009年)として刊行したほか、重要な史料である楽師日記の一部を『明治四年芝葛鎮日記翻刻・解題』(科研報告書、2011年)にまとめた。
著者
伊東 孝 大沢 昌玄 山浦 直人 伊東 孝祐
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

全国の災害復興の実施実態を網羅的に把握した上で、特に関東大震災、飯田大火、静岡大火、山中大火、鳥取大火、室戸台風など災害復興実施都市の復興プロセスの時系列変容過程の把握を行った。また、罹災状況と復興事業の関係(区画整理実施有無)についても把握した。併せて、災害復興を支える組織と技術者について、関東大震災、戦災、旧都市計画法期の災害復興の実態から解明した。当初、民的性格と呼ばれる組合施行で災害復興が行われていたが、事業費や技術者など公共団体からの手厚い支援の下で事業が進められていた。また、関東大震災復興に従事した技術者が、その後発生した災害復興に携わり事業を推進したことが判明した。
著者
清水 克哉 河口 沙織 高野 義彦 石河 孝洋
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2020-08-31

電気抵抗ゼロで電流が流れる超伝導現象は低温でおこるものとされてきたが、近年の高圧力技術と計算科学の進歩によって、高圧力の条件下では室温でも超伝導になる「室温超伝導体」の実現への期待が高まってきた。本研究は、室温超伝導体を高圧力下で合成すること、超伝導体によるデバイス回路を高圧装置内で動作させることを目的に掲げ、室温で動作する超伝導デバイスの作成へつなげる。我が国の高圧力を用いた超伝導物質合成技術、計算・数理データ科学、結晶構造解析技術、精密デバイス化技術を集結し、室温超伝導の実現にとどまらず、その超伝導を実用へつなげることを目指すものである。
著者
石河 孝洋
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2021-04-01

高圧力下におけるランタン(La)-水素(H)系で550ケルビン(277℃)の室温超伝導が観測されたという論文が2020年6月にプレプリントサーバ上で報告された。水素供給源のアンモニアボラン(NH3BH3)がLa-Hと化合して超室温超伝導が引き起こされた可能性があるが、組成・結晶構造などの詳細は全く明らかになっていない。組成や構造は形成エネルギー凸包を構築することで決定できる。本研究では、進化的アルゴリズムを使って凸包の構築を高速に行える独自の手法をLa-B-N-H系に適用させて安定水素化物を探索し、550ケルビンの超伝導に対応する水素化物の特定と更なる新奇室温超伝導水素化物の発見を目指す。
著者
長谷川 豪
出版者
久留米大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ナノ粒子状レアメタルの発癌リスクをin vitro発癌試験により検討した。先端産業界で有用なインジウム、ジスプロシウム、タングステン、モリブデンについてAmes試験を行い、ナノ粒子状酸化ジスプロシウム、酸化インジウム、酸化タングステンに変異原性を見出した。Bhas42細胞を用いた形質転換試験では、酸化インジウムと酸化ジスプロシウムに形質転換能を認めたが、粒径による活性の差異は認められなかった。
著者
渡邊 晶規 小島 聖 細 正博
出版者
名古屋学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

関節拘縮の治療と予防に対する低出力超音波パルス治療(以下LIPUS)の効果を、実験動物を用いて組織学的側面から検討した。LIPUS照射により、不動化によって生じた後部関節包のコラーゲン線維束間の間隙の狭小化が改善を示し、関節拘縮に治療に有効である可能性を明らかにした。一方、関節拘縮予防を目的とした介入結果においては著明な差を認めず、LIPUSの有用性を明らかにすることは出来なかった。
著者
細野 邦広
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

膵がんは人口の高齢化と食生活の変化に伴い近年、罹患数は増加し続けているが、早期診断が困難であり今後有効な予防法の確立が求められている。今回の研究では膵がんにおけるメトホルミンの化学予防効果を、オルガノイド解析や膵発がんモデルマウスを用いての動物実験、および膵がん患者を対象とした臨床パイロット試験により検証し、遺伝子発現解析や蛋白解析を行うことによりメトホルミンの作用機序を解明し、メトホルミンの膵がん化学予防の実現化を目指すものである
著者
永井 良三 相澤 健一 苅尾 七臣 今井 靖
出版者
自治医科大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2020-07-30

新しい治療法やデバイス、バイオマーカーが相次いで臨床現場に導入されている。しかしその有効性と安全性は必ずしも評価されていない。これをリアルタイムに行うためには、大規模リアルワールドデータを欠かせない。申請者は最近、全国7拠点施設の異なる電子カルテ情報を連結して統合するデータ集積システムを完成した(CLIDAS)。また、申請者らはこれまで様々なクリニカル質量分析装置を活用し、トランスオミックス解析により、多くのバイオマーカーの測定系を開発してきた。そこで本研究では、臨床ビッグデータとトランスオミックス解析を統合し、新しい心臓病学パラダイムを構築する。