- 著者
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小谷 幸
- 出版者
- 日本大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2017-04-01
1990 年代以降のグローバリゼーションの急速な進展,そして特に2008年のリーマンショック以降,労働法や社会保障制度及び労働組合の保護や規制から排除された「不安定な仕事」(precarious work)が世界的に急増し,格差の拡大,貧困層の増大を招いている。こうした状況に対し,米国では当事者組織であるワーカーセンターや労働組合,労働NGO,大学が連携組織(コアリッション)を構築し,市・州単位での最低賃金引き上げキャンペーンを成功させている。しかしながら,日本ではこうした連携組織は存在していない。そこで本研究の目的を,既存の労使関係システムから排除されたprecarious workに従事する労働者の直接的な処遇改善を目指す連携組織の,日本における構築可能性を検証することとした。調書に記載した研究計画に基づき,初年度である平成29年度は,①米国における連携組織の実態調査,②米国の参加型労働教育手法収集に基づく教育プログラムの整備,③日本における参加型教育プログラムの実践・評価,を実施した。①では,2013年度日本大学海外派遣研究員(長期)制度の支援を受けた研究活動を基盤とし,米国カリフォルニア州サンフランシスコ市,オークランド市における最低賃金引上げ運動に連携組織が果たした役割に関するフィールドリサーチを継続している。また,研究協力者の支援によりロサンゼルス市においてもフィールドリサーチを実施し,成果は研究会で発表した。②③では,米国の女性アクティビスト向けサマースクール(Summer Institute on Union Women)に参加し収集したプログラムに基づき,大阪で参加型労働教育ワークショップを実践した。