著者
加治屋 健司 池上 裕子 牧口 千夏 粟田 大輔
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

オーラル・ヒストリーの方法を用いて、1960年代の日本における前衛美術に関する研究を再構築した。地方の美術活動を視野に入れながら、合計47名の美術関係者(美術家、デザイナー、写真家、建築家、音楽家、美術評論家、画廊主、団体職員など)に90回の聞き取り調査を行った。戦後日本の前衛美術運動は、地方の文化や社会、ジェンダーの問題、国内外の他芸術の動向と深く関係しながら、多様な考えと形態を伴って展開したことを明らかにした。
著者
山城 雄一郎 大塚 宜一 永田 智 清水 俊明
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

インフォームド・コンセントの得られた川崎病患児14例中9例の小腸粘膜から,患児末梢血単核球を有意に刺激する4種のグラム陰性桿菌,3種のグラム陽性球菌,3種のグラム陰性球菌を検出した.このうち患児2例からはスーパー抗原活性を有するS.aureusが検出された.また検出された細菌のうち1種は偏性嫌気性菌で通常の咽頭/後鼻腔,便培養では得られない細菌群であった.これらの培養上清を同一患児血清と反応させ,Western blottingにより反応した蛋白成分をIgG抗体を用いて検出した.その結果,9例全例からγグロブリン投与前の血清で検出されなかった各細菌の産生物に対するIgG抗体が投与後の血清にて検出されていた.以上より,小腸粘膜から検出された細菌の産生物が,患児単核球を増殖させ,何らかの免疫学的活性をもたらしていること,しかもその細菌産生物の産生時期は川崎病急性期であること,γグロブリンによりその中和抗体が供給されたことより,川崎病が治癒を迎えた可能性が大きいことが推測され,これら細菌産生物が川崎痛の原因物質であることを強く示唆する結果と考えられた.これらのうち2例から得られた56kDa,47kDa,37kDaの3種のバンドについてのみアミノ酸分析が行い得たが,これらはいずれも細菌の内因性蛋白であった.以上のことから,川崎病の病原菌は単一なものではなく極めてheterogeneousなものであることが推察された.
著者
澤田 純男 古川 愛子 中村 晋 鍬田 泰子 後藤 浩之
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

固体である地盤を伝播する地震波は重力の作用を無視するが,流体に近い性質を持つと考えられる液状化地盤では重力の作用を無視することができるとは限らない.重力の作用を考慮した数値解析手法によって,液状化地盤を伝播する波をシミュレートしたところ,せん断剛性の低下に対応して表面波が流体中の重力波に似た性質をもつようになること,またスロッシング現象が顕著になることを明らかにした.
著者
長崎 百伸 小林 進二 山本 聡 本島 厳
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

新しく開発した入射システムを用い、Heliotron Jにおいて70GH_z第2高調波X-modeによるECCD実験を行い、EC駆動電流が磁場配位に強く依存することを実験的に示した。平行運動量を保存する理論計算結果は実験結果と定量的に良い一致を示し、捕捉粒子の効果について明確な結論を与えた。NBIプラズマで励起される大域的アルフベン固有モード(GAE)にECCDを印加したところ、GAEを抑制することに成功した。モード強度はある磁気シアの強さにおいてモード強度が急激に減少することがわかり、モードの安定化に磁気シアの閾値があることを実験的に示した。
著者
荒井 隆行
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

我々は今まで、音声の生成機構を直感的に理解できるような「声道模型」や「肺の模型」などを製作し、子ども向けの科学教室から大学での講義や講演に至るまで幅広く活用し、その有効性を実証してきた。模型にはそれぞれ一長一短があり、どの型が最善であるかは一概には言えない。そこで本研究では、目的や対象ごとに現状を調査してそれに基づいた改良を行うと共に、それまで実現できていなかった目的や対象に適した模型の設計・使用法の開発を行い、それらを評価した。
著者
和田 宗久
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、その大きな柱として、まず、会社法および金融商品取引法(以下「金商法」とする)の下で、上場会社の取締役等が責任を負う場合、とりわけ経営判断の誤りに関して責任を負う場合と、監視・監督にかかる職務に関連して責任を負う場合に焦点を当て、研究を行った。また、責任制度の重要な機能である損害のてん補という観点から、当初の研究目的から派生して出てきた問題である、「会社自身の株主に対する責任のあり方」についても研究を行い、いずれの研究についても一定の知見を得ることが出来た。
著者
西薗 貞子 赤澤 千春 溝上 慎一 大西 弘高 林 優子
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

患者が抱える千差万別の課題に対応するには,見えない解を浮き立たせる学習が必要であり,IBLの事例教材作成がカギとなった。IBL学習methodを活用した実践的アセスメント能力向上のための教育支援プログラムは,「実践的アセスメント能力向上のための教材」を使った演習の実施によって,妥当性・有効性を評価し,IBL学習が ①少ない情報から問題を発見し,仮説を設定する力,②仮説を検証する力を養う効果があることを再確認した。さらに,作成したIBL教育プログラムの概念モデルを,WEB利用で展開できるIBL学習支援システムとして開発した。
著者
押切 友也
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究では、局在表面プラズモン共鳴を利用した光電極を用いて、窒素の固定化によるアンモニアの光電気化学合成に関する研究について推進してきた。チタン酸ストロンチウム単結晶基板を用い、金ナノ粒子の担持により局在表面プラズモン共鳴による光捕集効果を付与し、さらに助触媒としてルテニウムを用いた電極を用いて可視光の照射により窒素を還元してアンモニアを得ることに成功した。さらに、反応の選択性及び活性向上のため、既報の計算化学による予測を基に原子の吸着エネルギーに着目し、助触媒として窒素吸着しやすい遷移金属を用いたところ、反応活性は6倍程度増大し、またほぼ選択的にアンモニアが得られた。
著者
野中 哲士
出版者
吉備国際大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

状況依存的な行為の理解に向け、日常技能の再獲得過程を検討した。四肢麻痺者が獲得した書字の検討では、同一の字を書く場合でも身体運動には変動が見られると同時に、その変動が筆圧等の書字に重要な変数の安定化に寄与しており、獲得されたのは運動パターン自体ではなく、環境とのリンクを柔軟に生成する能力だったことが示唆された。また高齢者の立位時の姿勢動揺の時間構造が定期的な運動によって変化する可能性が示唆された。
著者
山崎 裕治
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

水産重要資源であるヤツメウナギ類の資源管理・保全を目的として,分子生態学的手法を用いた性成熟制御機構の解明を目指した.分子遺伝学的解析の結果,正の淘汰を受けた遺伝子領域の存在が示唆され,そこに含まれる機能遺伝子の転写調節に影響をもたらすことが期待される構造変異の存在を明らかにした.また,生態調査を加えることで,性成熟制御に関わる成長や脂肪蓄積に,餌資源が重要な要因となっていること,および資源維持には,集団間の交流が必要であることが示された.
著者
古川 哲史
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

薬物の心毒性は、創薬の開発中止・市販薬のリコールの重要な原因となっており、そのアッセイ系、特に開発早期段階のin vitroアッセイ系の確立は製薬業界から大きな期待が寄せられている。今回、多電極アレイ(MEA)システムとソニー株式会社が開発した動くベクトル(MVP)法を用いて、心筋細胞の電気活動と収縮能を同時にアッセイするシステムを構築した。ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いて、陽性・陰性変力作用をもつ既存薬の作用を高精度にアッセイできることを確認した。最近抗がん剤の心毒性が問題となっているが、同心毒性をin vitroでアッセイすることができた。
著者
杉原 潤之輔 松井 敦典 大森 義彦
出版者
鳴門教育大学
巻号頁・発行日
1987

1.62年度は,現代における四国偏路の実態を把握することを第1課題とし,1番札所における観察調査といくつかの先行研究の検討から以下の知見を得た.(1) 偏路の年齢は50〜60歳代が全体の2/3を占め,若年層は少い.(2) 交通手段としては自家用車利用の偏路が最も多いが,人数としては団体バス利用者が最多である.(3) 徒歩巡拝者は全体の5%未満で,全行程徒歩による巡拝者はさらに小少とみられる.(4) 日程的には,日帰り偏路が多く,宿泊を伴う場合も,何回かに分けて回る人が多い.(5) 1回きりではなく,何回も回る人が多い(3回以上35%).2.上記の一般的傾向に加えて,特に徒歩巡拝者に焦点をしぼって一歩踏み込んだ調査を行い,以下の知見を得た.(1) 調査対象として選んだ徒歩巡拝全国友の会のメンバー61名(平均年齢 65.1歳,男子25名,女子36名)は,1番から23番に至る阿波ー国162キロの行程を6泊7日・1日平均10時間歩行のペースで全員完歩した.(2) 道中最も苦しかったコースとして11番〜12番・20番〜21番の山道をあげた人が67%と多かったが,最も気に入ったコースとして同じ道をあげた人が同じように67%いたことは興味深い.(3) 徒歩巡拝者のために旧へんろ道を昔のまま状態で保存して欲しいという要望が強く,道中印象に残ったものとして古い丁石や道標をあげた人が多い(51%).(4) この企画は88ヶ所を4期に分けて全行程徒歩巡拝するものであり,全員が第2期に当る次回も参加予定である.
著者
矢内 利政 城所 収二 宮澤 隆 志村 芽衣
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

通常のバッティングではバットの芯付近でボールの中心を打撃することにより高い打球速度が獲得でき、バントにおいてはバットの芯とそのやや先でボールの中心を打撃することにより打球速度は低くなるという現象を力学的に説明することを目的とした。その結果、①ヘッド速度が一定の条件でも、スイング速度と並進速度の組み合わせにより打球速度、及び打球速度を最大化するインパクト位置は変化することが明らかになった。これらの現象は, スイング角速度、重心速度、インパクト位置の条件の変化に伴いバットの反発係数が変動することに加え、ボールとバットが有する運動量が互いの間で転移する方向と大きさの変化により生じることが示された。
著者
山根 功 高野 進 二宮 重史 入江 吉郎
出版者
高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

中性子散乱実験の為の中性子源には、これまで原子炉が使用されてきた。しかし、世界的な傾向として原子炉は老朽化しており、これに代わる加速器を用いた大型のパルス中性子源の開発研究が必要になった。新しい中性子源は、高速に加速された陽子(正電荷をもつ素粒子)とタングステン等の重金属との核破砕反応で発生する中性子を利用する。本研究は大強度の陽子ビームを安定に供給するための加速器技術を日本、米国及び英国の三ヵ国で共同研究するものである。主な問題点は、ビーム負荷に打勝って安定な加速を行うこと、空間電荷力によるビーム不安定を回避すること、及び避けられないビーム損失をどのように処理するか、の3点である。現在世界最高の陽子ビーム出力をもつ加速器は、英国ラザフォードアプルトン研究所のISISシンクロトロンで、出力は160キロワットである。この加速器に、3ヵ国の共同出資で開発した非常に低い出力インピーダンスをもつ新しい高周波加速装置を平成14年度に導入し、次世代の大型パルス中性子源に必須の技術である「ビーム負荷及び空間電荷力を制御する新しい方式」を確立することが本共同研究の目的である。平成12年10月、英国よりセカンドハーモニック加速空洞及びバイアス電源が、また米国より陽極電源が高エネルギー加速器研究機構に搬入され設置が完了した。日本の担当である新しい高周波増幅器は平成13年2月に製作を完了した。これは高い電圧利得と広帯域を有しながら、出力インピーダンスはカソードフォロワーと同程度(約20オーム)という極めてユニークな装置である。3月には米国の共同研究者2名を招聘しシステムの全体調整試験及びシステムパラメータの測定を行った。また、空間電荷力を考慮した加速器内粒子のシミュレーションを行う為に、カナダより専門家一人を招聘した。
著者
石丸 隆 山口 征矢 小池 義夫 栗田 嘉宥 吉田 次郎 神田 穣太 田中 祐志 土屋 光太郎 北出 裕二郎 茂木 正人 堀本 奈穂 平譯 享 笠松 伸江
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

海鷹丸による,2回の南大洋インド洋海区における学際的な研究航海を実施した。生物関係では,陸棚から外洋における魚類の分布組成,中・深層における魚類や動物プランクトンの分布,動物プランクトンの分布変動と南極周極流周辺に形成されるフロントの位置との関係等を明らかにした。物理学分野ではケープダンレー沖において新たな南極底層水形成海域を発見し,深層水の分布とその変動,形成機構等に関する知見を得た。
著者
井元 清哉
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

東京近郊を模倣した 5 地区からなる仮想都市を計算機上に構成し 、会社員・学生・在宅者の3カテゴリーの行動パターンに従う120万人の住民を配置し、学校・会社・商店などでの感染伝達をシミュレーションするためのエージェントベースシミュレーションモデルを構築した。ワクチン接種を実施しない場合の感染割合が30%となるように感染力を設定し、優先接種グループとして会社員、在宅者、ランダムの3通りをシミュレーションした。その結果、会社員に優先接種した場合には、大きな効果が見られた。
著者
坂井 康子 志村 洋子 岡林 典子 山根 直人
出版者
甲南女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日本語環境にある乳幼児の音声の分類とそれらの音響分析の結果により,乳幼児音声(喃語を含む)のリズムと抑揚についての知見を得た。加えて,乳幼児音声の「うた度」を評定する聴取実験の結果を分析し,「うた度」の高い音声の特徴を抽出した。以上のように乳幼児音声の分析をおこなった結果をもとに,保育士・教員養成において乳幼児音声をめぐって感得すべき,あるいは配慮すべき点について検討し,論文にまとめた。
著者
柏谷 増男 二神 透 朝倉 康夫
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究では大都市通勤鉄道の混雑緩和に着目して都心居住の実態分析及び都心居住推進のためのモデル開発を行った。まず,我が国大都市圏の通勤鉄道混雑は著しく劣悪であるが,輸送力の増強では対応し得なく,業務核都市等への分散策はかえって混雑を激化させる可能性があり,むしろ都心居住の推進をめざすべきことを指摘している.次に,大阪府を対象として,従業地分布や住宅立地等に見られる地域構造の変化と通勤交通の実態について1970年から1990年または1995年までの国勢調査(5年ごとに実施)データを用いて分析した.その結果,1970年代の大阪市製造業の衰退による工場跡地に高層共同住宅が立地する形で,1980年以降都心住居が顕著になったこと,1980年から1985年の都心3区通勤通学発生交通量は15%増加し,この値は府下市町村の値をも上回っていること,都心3区発生交通量の約60%は都心3区に到着しておりその場合の鉄道利用率は約25%であることが分かった.このことから都心3区居住の通勤通学者の増加は通勤鉄道需要の抑制に大きく寄与したと言える.また,通勤鉄道混雑の評価を利用者の行動にもとづいて分析することが困難なことを指摘し,むしろ通勤交通混雑を社会的制約として取り入れ,それにより低下した土地利用効率をつけ値総額の低下量で測定し,この値を通勤交通混雑の社会的価値とすることを提案している.研究に用いた基本モデルは交通混雑制約を持つ最適土地利用配分モデルであるが,このモデルのラグランジェ関数を分析し立地誘導指標を見いだしたうえで,この方法を大阪府北東部地域へ適用した
著者
中川 理 石田 潤一郎 小野 芳朗 丸山 宏 青井 哲人 大田 省一 木方 十根 清水 重敦 砂本 文彦 谷川 竜一 中嶋 節子 中野 茂夫 松山 恵 本康 宏史 山口 敬太
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

わが国の都市空間は、明治維新から太平洋戦争時までの間に実施された各種の都市基盤整備の事業によって再編された。この研究は、近代におけるわが国の都市空間の変容を、その事業が計画・執行される仕組みを理解することで解明する。都市基盤整備の事業は、国家、地方行政、地権者、共同体、民間資本などが多様な関係を築き実施されていた。そして、その関係は、学知や技術による客観的評価に基づく、一元的な制度システム(仕組み)に回収されていくようになったことがわかった。
著者
有田 広美 藤本 悦子 小林 宏光 大島 千佳
出版者
福井県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

手術を受けた高齢患者の集中治療室の睡眠・覚醒パターンはどのように変化し、どのような経過で元のサーカディアンリズムに戻るのかを明らかにすることを目的に、全身麻酔で手術を受ける患者を対象に手術3日前から術後5日まで客観的指標および主観的指標を用いて睡眠状態を測定した。その結果、術後は睡眠時間の奪取と分断が明らかになり、その障害は術後4日を経過しても元の睡眠リズムには戻らなかった。主観的指標の結果はアクチグラフの結果と一致するものであり、術後4日間は睡眠の質が低下することが示唆された。