著者
齋藤 邦明 山本 康子 村上 由希 齋藤 ゆみ
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

ストレスは精神神経疾患や生活習慣病など様々な疾患の引き金の一つとして考えられているが、ストレスによる疾患発症の詳細なメカニズムは未だ解明されない部分が多く残されている。本研究では個々のストレス状況を把握し、負荷が少ないIT 技術を用いた利便性の高い設問形式を用いて、ストレス評価法の構築と新規ストレスバイオマーカー検索の可能性について検討した。設問集を用いたストレス解析については、CES-D、GST28などをベースとして、データをIT 技術による算出する方法を確立し、同時に種々の臨床データと経時的に血清等のバイオリソースを高品質で保管管理できるシステムが構築された。本システムが構築された事により、健常人および慢性疾患患者の個々人レベルでの追跡が可能となり、データ解析の際に臨床で問題となるノイズの軽減が可能となった。さらに、高ストレス群と低ストレス群でのプロテオーム解析の結果より、両群間で差のあるいくつかのタンパクが認められた。すなわち、高ストレス群と低ストレス群共に例数を重ねてターゲットタンパクを絞り込み、特異性のあるタンパクを詳細に解析して複数のターゲットタンパクを組み合わせることでストレス度を判定できる新しいバイオマーカーを確立できる可能性の充分ある事が判明した。設問紙を利用することにより、ストレスの総合的解析が可能となり、ストレス軽減方法の開発に寄与できるものと考えている。すなわち、客観的側面からの分析(類似回答パターンの有効性の検討)として、回答から類似の回答パターン(数種類)に分類し、ストレス度が高いパターン、ストレス度が低いパターンを構築したシステムから抽出し、クラスタ分析など統計的解析と血液等のストレスバイオマーカーを加える事による精度の高いシステム構築が可能であることが示唆された。
著者
波多野 想
出版者
琉球大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

日本統治期の台湾で開発された鉱山に関しては、従来、台湾内を中心に、地理学・地質学・建築史学など多方面から研究が行われてきた。特に、本課題の研究対象である金瓜石鉱山は、地形的・地質的特質や鉱山施設の建設過程など、鉱山の物質的側面を中心に研究成果が蓄積されてきた。しかし、これまで、植民者と被植民者が限られた空間に併存する植民地特有の現象を含め、植民地鉱山の空間的形成過程に焦点をあてた研究はみられない。そこで本研究は、植民地の社会政治的状況と地理空間の関係に着目し、差別や不平等を伴いつつ編成されたと推測される金瓜石鉱山の土地の利用と所有、および鉱山施設の建築的実態を考察し、植民地における鉱山景観の特質を明らかにすることを目的とする。特に本研究では、日本統治期に作成された地籍図や土地登記簿によって当時の土地利用と所有の状態を復原する一方で、図面類、文献資料、古写真などを用い、金瓜石鉱山に建設された鉱山施設の配置を考察する。
著者
森 公章
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では遣唐使の特質を唐文化移入のあり方や入唐後の動向を通じて検討し、その成果は既発表論文とともに著書『遣唐使と古代日本の対外政策』(吉川弘文館)として上梓することができた。また平安中・後期の日中関係を解明する材料として入宋僧成尋の『参天台五臺山記』の校訂本作りと記事の分析を進めるとともに、成尋に至る入宋僧の系譜を考究して論文化し、これらの成果を報告書の形で刊行することで、広く学界共有の研究基盤を呈することに貢献したものと考える。
著者
松崎 浩之 笹 公和 堀内 一穂 横山 祐典 柴田 康行 村松 康行 本山 秀明 川村 堅二 瀬川 高弘 宮原 ひろ子 戸崎 裕貴
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

南極ドームふじアイスコア中の過去72万年にわたる宇宙線生成核種記録を加速器質量分析で分析した。特徴的な宇宙線イベント(ラシャンプ、ブレーク、アイスランドベイズン)を詳細に解析したところ、宇宙線生成核種(特にベリリウム10)の記録が、グn一バルなイベントの記録となっていることが証明された。これにより、古環境研究における、より信頼性の高い年代指標を確立する道が拓けた。
著者
日野 真吾
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本申請課題では、βグルカン受容体であるdectin-1を用いた定量系を構築し、この定量系を用いることで、体内および細胞内に取り込まれたβ-グルカンがマクロファージにより貪食された後、活性酸素種によって非酵素的に分解されることを明らかにした。また、この分解されたβ-グルカンはマクロファージ活性化能を保持したまま再放出されることも明らかになった。
著者
加藤 哲郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の成果は、書き下ろし単著『「飽食した悪魔」の戦後ーー731部隊と二木秀雄「政界ジープ」』(花伝社、2017年)中に発表した。同書第3部「731部隊の復権と二木秀雄の没落」中に第2章「シベリア抑留と米ソ情報戦」を設け、「ドイツ240万人、ハンガリー50万人、日本60万人の強制奴隷労働」「洗脳教育と民主運動」「帰還者米軍尋問ーー陸軍プロジェクト・スティッチと空軍プロジェクト・リンガー」「陸軍プロジェクト・スティッチで見つかった『ソ連スパイ』352人」「『人間GPS』としての米空軍プロジェクト・リンガー」等について、詳述した(269-284頁)。
著者
渡邊 貢次 中垣 晴男
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

(1) 男女大学生(計1477名),男女60-80歳(計319名)を対象とし,それぞれの小学生時,20歳時の歯科保健意識について世代間で比較検討した。20歳時には大学生の方が高年代者より甘味に対する制限をしているが,逆に間食は多い。時代背景から高年代者は,小学生時のかかりつけ歯科医が非常に少なく,早期治療も行き届かなかった。また,小学生時に歯磨き無しも約25%みられるなど,歯科保健意識の不十分さが認められた。また,8020に自信のある大学生男子は33%,女子は24%と差がみられた。(2) 高校生について同様の調査を行い,学校保健委員会で活用した。調査により,高校生の健康への意識は全体的に向上していることがわかったが,歯および歯疾患への関心が薄いようであった。これを全学的に紹介し,歯科保健意識の啓蒙活動としたした。(3) 歯科保健指導を実践した小中学校(13校)へ訪問し,養護教諭からその内容を聞き取り調査した。その結果,重点的に行われているのは,学校行事,委員会活動,学級活動,個別指導の順であった。3項目以上にわたって指導効果ありと評価したのは6校であり,中には,多くについて効果なしの評価もみられた。また,家庭での指導に保護者の多くが参加したのは1校のみであり,家庭での歯科保健の啓発の必要性を認識した。(4) 子供達に好まれている嗜好飲料(清涼飲料,乳性飲料,ジュース,スポーツドリンク,コーヒーなど)のグルコース・シュクロース量を分析し,同一商品の1981年,1985年の成分データと比較した。その結果,.糖質量はほとんど変化ないが,シュクロース量の減少がみられた。このことは,砂糖の低減化,低カロリー化,甘味料の普及を反映している。
著者
野村 玄
出版者
大阪青山短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本年度は、まず宮内庁書陵部・東京大学史料編纂所・東京都立中央図書館特別文庫室において史料調査を行った。宮内庁書陵部では、貞享度大嘗会に関する史料を収集するとともに、写真撮影・複製を行った。東京大学史料編纂所では、同所所蔵の「備後福山阿部家文書」のうち、京都所司代の職掌日記を調査した。虫損が甚だしかったが、同所と協議し、写真複製が可能なものについて撮影・複製を行った。東京都立中央図書館特別文庫室では、同室所蔵の「木子文庫」について調査し、とくに近世の天皇の葬送儀礼に関する史料について写真撮影・複製を行った。また、史料調査の他に、「天子御作法」の具体像を明らかにする観点から、宮内庁侍従長の許可を得て、東山御文庫に保管されている『後桃園天皇宸記』について翻刻作業を開始した。先行研究によると、後桃園天皇は内廷関係と外廷関係に分けて日記をつけていたことが判明しているが、その内容についてはこれまで具体的な検討がなされてこなかった。本研究では、裁可の際の天皇の発言内容や作法、議奏への指示内容などが克明に記された外廷関係の日記から順に翻刻を開始することとした。その結果、第1回めの翻刻作業において、天皇の発言は案件毎に決められていたこと、なかでも官位叙任申請に対しての「留置」という発言が天皇の権能を考える上で重要であること、天皇に披露される文書様式に「四ツ折」と称されるものがあることなどが明らかとなった。この『後桃園天皇宸記』のほか、『桃園天皇宸記』についても翻刻作業を進めていき、近世の天皇の所作・作法について原則を見出すことができればと考えている。
著者
川島 富士雄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、世界貿易機関(WTO)に加盟した東アジア諸国、特に中国、カンボジア及びベトナムにおけるWTO上の義務・約束の履行状況(市場開放)と市場経済化・競争促進に向けた国内法整備状況(市場経済化)の双方を同時並行的に検討し、両者の相克・連動といった相互作用を明らかにすることで、グローバル経済時代における「市場」をめぐる国内法及び国際法的諸問題の相互関係を解明することを目的とするものである。3ヵ国のうちカンボジアとベトナムにおける競争法は未制定又は運用が活発でないため研究の主な対象となり得なかったが、2008年8月より施行された中国独占禁止法の運用状況(民事訴訟を含む。)及びその課題をつぶさに把握し、かつ、表面的に現れてくる法執行現象の背景を明らかにすることに成功したほか、これらを国際経済法上の法現象を合わせて研究することで、「国家資本主義」又は「国家積極主義」とも批判的に描写される中国の政府と市場の関係、とりわけ国有企業等に対する優遇策に対する法的規律という今後の研究において重要となる視点を抽出することに成功した。本研究の具体的な成果として、8本の論文、6回の学会発表及び2冊の共著がある。
著者
鎌倉 やよい 深田 順子 米田 雅彦 熊澤 友紀
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

脳卒中急性期には誤嚥性肺炎発症のリスクが高い。肺炎発症と唾液中分泌型免疫グロブリンA(sIgA)・炎症性サイトカイン(IL-6)・上皮成長因子(EGF)・口腔内細菌との関係を検討した。脳卒中患者14名(79.5±9.0歳)を対象に、非肺炎群6名、肺炎群8名に分類した。唾液を第5~13病日の隔日10・14・18時に採取し、ELISA法・real-time PCR法で測定して群間比較した。その結果、唾液中sIgA(唾液中sIgA濃度×唾液量)は肺炎群に有意に高かった(ANOVA ; p<0.01)。IL-6・EGFは群間比較では差を認めず、EGF濃度はsIgA濃度と相関を認めた(rs=0.574-0.900)。非肺炎群の2名に肺炎球菌の増加を認め、肺炎群では抗生物質が投与されて、肺炎球菌・常在細菌とも減退して(6名)、緑膿菌の増殖(4名)を認めた。
著者
三輪 敬之 上杉 繁 大崎 章弘 板井 志郎 渡辺 貴文 石引 力
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

居場所づくりの支援には, 無意識の領域にまでコミュニケーションを拡大する技術が必要になる. そこで, 身体と存在的に非分離な影が, 場の創出的メディアとして働くことを示すとともに, 影を使った二領域的通信原理を基に, 人々の間に存在的なつながりが生まれる居場所のコミュニケーション支援とそのネットワーク化に必要な基盤的技術の開発を行い, 場のコンテクストや間合いの創出に着目して, その有用性を確認した.
著者
高村 武二郎 深井 誠一
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,青紫色花シクラメンと紫色花シクラメンの花弁slip部分では,いずれにおいてもマルビジン3,5ジグルコシドを主要アントシアニンとするものの,青紫色花シクラメンでは,花弁細胞の高いpHにより花弁が青色化していることを明らかにした.また,シクラメンにおいて花弁のpHが高くなり青色化する形質は,単一の劣性遺伝子に支配されている可能性が高いことを示唆した.
著者
常川 光一
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

あらゆる無線通信端末にアクセス可能な「統合された室内無線アクセスシステム」を提案した。主要なアイデアは「ディジタル信号を直接複数のアンテナに給電し、空間合成/フィルタ効果を用いて所望信号を所定の端末近傍に形成する」ことにある。まず、基本技術であるアンテナ配置/構成法、キャリブレーション手法について検討した。次に、システム構成法を検討し実用化に向けた設計指針を明らかにした。また、デモ機として「ユビキタスシーリングライト」を試作した。
著者
村瀬 忍 松下 光次郎 池谷 尚剛
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、黙読時の視線の動きが言語処理に関わる神経活動を反映することを利用して、視線計測を用いた吃音評価方法を検討することを目的とした。成人吃音者5名および成人非吃音者15名を被験者として、意味的逸脱のある日本語の文章の黙読における視線の動きを測定した。その結果、標的語の注視時間は、吃音者において長い傾向があることが明らかになった。本研究ににおいては、吃音者は非吃音者の言語処理特性の違いについても追試を行った。その結果、吃音者は非吃音者に比較して、言語処理に時間がかかっている可能性が示唆された。さらに、この吃音者と非吃音者との時間的な相違は、視線計測の方法でも捉えられる可能性が示された。
著者
石橋 大輔
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

プリオン病はヒトを含む各動物種に見られる難治性の中枢神経変性疾患である。現在、ヒトやウシにおける感染、ウシからヒトへの感染が大きな社会問題となっており、世界中でプリオンワクチンおよび治療法の開発が行われているが、実用化までには至っていない。なぜなら正常型プリオン蛋白(PrP)は生体内の宿主蛋白であり、免疫寛容という大きな問題点があるためである。本研究では、実用化に向けたプリオンワクチンの開発を検討し、有用性のある免疫抗原の作製に成功した。
著者
桜井 芳生 大山 小夜 新 睦人 片岡 栄美 加藤 源太 藤山 英樹 石川 洋明
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

延10回程度、ネットワークデータを収集できた。まずは、ネット形成の要因を分析した。就活意識、使える金、階層意識、化粧代の類似が、友人が形成されるさいに、大きな影響をもっていることが確認された。ネット構築後分析に関しても、Christakisらと同様、われわれは、「ネットワーク指標」以外の具体的タイ関係を重視して分析を継承した。当初の予想と異なって、いわゆるネットワーク指標、とくにボナチッチ中心性が大きな影響をもっていることが確認できた。また、恋愛、髪の色、幸福感、英語学習意識の伝播が確認できた。
著者
吉永 慎二郎
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

吉永の本研究は、春秋経は春秋左氏経が原型で(公羊経や穀梁経はこれより派生)、その「春秋左氏経」は、解経と凡例等以外の史伝文として今本左伝に残存する「原左氏伝」テキストから、抽出・編作の手法に拠り成立したものであるとの仮説を提示する。この仮説では全春秋左氏経文は、(1)抽出文、(2)抽出的編作文、(3)編作文、(4)無伝の経文という四種類型文に分類し得る。隠公~文公期の全経文の分析では抽出系即ち(1)抽出文(23.9%)と(2)抽出的編作文(25.9%) とが約49.8%、編作系即ち(3)編作文(17.7%)と(4)無伝の経文(32.5%)とが50.2%との結果となった。この結果は吉永の仮説を傍証するものと言える。またこの「原左氏伝」と「春秋左氏経」との関係は、『資治通鑑』と『資治通鑑綱目』との関係に比定し得ることを明らかにした。
著者
ファガラサン シドニア TAKAHASHI Lucia TAKAHASHI Lucia
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

The aim of the project was to dissect the contribution of the adaptive immune system in establishing the symbiosis between host and bacteria in the gut.We found that: 1) mice deficient for B cells, T cells or both, fail to support complex bacterial communities in the gut; 2) the reconstitution of T cell-deficient mice with CD4+ T cells expressing the transcription factor Foxp3 (Foxp3+ T cells) restores both the diversity and the phylogenetic structure of bacteria; 3) Foxp3+ T cells helped diversification particularly of the non-virulent Clostridia species, which were recently reported to induce Foxp3. This means that not only Clostridia induce Foxp3, but that the Foxp3+ T cells contribute to the persistence and diversification of Clostridia of the Firmicutes (the most diverse bacterial species in both mice and humans); 4) Foxp3+ T cells act outside and inside germinal centers, by preventing inflammation and by regulating selection of IgAs, respectively; 5) the coating of bacteria with selected IgAs was required to maintain the bacteria in the gut and to prevent the expansion of opportunistic species which could become pathogenic.The research was published in Immunity, 2014.
著者
日比野 晶子 (兵頭 晶子)
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究では、かつて狐が憑くなど<もの憑き>の概念で理解されていた状態が、日本近代において精神病という概念に置き換えられていく過程で、病者の処遇や治病にどのような変容が起こったのかを歴史的に検討した。本年度は最終年度として、これまでの成果を単著として刊行し、その延長上に近現代の「心理療法」の問題性について考察した論文を公表した。<もの憑き>は、神々や生き霊・死霊だけでなく、牛馬や五毅などの動植物も含め、自らを取り巻く全てのおりようとの<繋がり>に異変が起きた時に生じる事態であり、そのバランスを調整することで病気も治ると信じられていた。日本近代精神病学は、このような<繋がり>において理解されていた状態を、病者「個人」の遺伝や生活歴といった「素因」に基づいて必然的に発病する「精神病」なのだと再定義し、臨床化していった。こうした<存在>の病としての再定義は、「素因」の発生源とされる病者と家族に重い影を投げかけた。さらに私宅監置の制度化も加わり、精神病は文字通り「家」の問題として可視化され、かつては<繋がり>の異変の修復に参加していた近隣の人々からも、「危険」を忌避されるようになっていった。のみならず、病者が落ち着いている状態でも「潜在的危険性」を警戒すべきだと喧伝されたことから、罪を犯して世間を騒がせた精神病者は死ぬまで精神病院に監禁され、その一日も早い死が待ち望まれるようになる。このような、「個人」という<存在>と精神病に基づく「危険」を同一的に重ね合わせる発想は、今日の医療観察法にも、形を変えて引き継がれていると思われる。そして、潜在意識に隠された「個人」の「経歴(ヒストリ)」を読み解くことで症状を解決しようとする心理療法も、同じ轍を共有しており、人間が独りで生きている訳ではないという当たり前の事実を狭めてしまう可能性を持つと考える。
著者
六反田 豊 森平 雅彦 長森 美信 石川 亮太
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

朝鮮半島における主要河川の一つである漢江を主たる対象として、高麗および朝鮮時代において、人々が河川という水環境といかなる関係を築き、またそれがどのように変化してきたかを検証するために、関連資料の収集をおこなうと同時に、5回にわたり漢江流域での現地踏査を実施した。そして、その結果を、関連する文献情報とともに資料集にまとめて刊行した。また、日本国内の研究者と勉強会や意見交換の場をもち、水環境史研究の課題や方法についての認識を深め、朝鮮史研究における水環境史の構築のための研究基盤を形成した。