著者
佐藤 和秀 孔 幼眉 王 喜栄 ぱん 国良 趙 玉友 李 山 荒木 信夫 佐藤 國雄 山口 肇 KONG Youmei WANG Xirong PANG Guoliang ZHAO Yuyou JI Shan 季 山 〓 国良 北村 直樹
出版者
長岡工業高等専門学校
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

中国大陸東北部は水循環、大気循環の立場からも日本への大きな影響を有している。中国内においては経済発展に伴う種々の雪氷災害が問題となっている。このような状況の下に日本と中国の共同研究を企画し、中国東北部の雪氷災害に関しての本研究を実施した。本研究による成果の概要は以下の通りである。1.黒龍江省の地勢と気候特性黒龍江省の西北部と北部および東南部に山地があり、広大な松嫩平原と三江平原を有している。黒龍江省は季節凍土と多年凍土が存在し、冬は長くて寒く夏は短い。1月の平均気温は省内の北西から南東にかけて-30℃から-18℃で、7月の平均気温は+18℃から+22℃である。降水時期は夏期に集中し、冬期の降水量は少ない。三江平原北西部の宝泉嶺国営農場に無人気象観測装置を設置し、気温、地温、日射量、風向、風速等の測定を行った。1992年冬期の気温はかなり規則正しい日変化を示し、最低気温-36℃を記録した。そのスペクトル解析は1日と1〜2週間の卓越周期を示した。1〜2週間の卓越周期は日本でもみられた、シベリア高気圧の勢力に影響した季節風の変動に対応するものと考えられる。総距離2000km以上のルートで測定した積雪深分布の単純平均値は約17cmであった(1994年2月の例)。雪質は新雪、クラストで汚れた堅いしもざらめ層、発達した骸晶上のしもざらめ層に区分できた。調査ルート上の積雪は概ね似た構造であったことから黒龍江省の降雪時期と冬期の気象-積雪環境を推定できた。日本と比べ、著しい寡雪で寒冷気候が特徴である。2.雪氷、低温災害特性(1)涎流氷:山地部で湧水が冬期の寒期によって凍結し、氷丘となって発達する。この現象を中国では涎流氷と呼んでいる。これが道路上まで発達して各地で交通障害をもたらしている。本研究でも黒龍江に近い山地部に観測され、幾つかの涎流氷について調査を行った。崖際に発達するもの、平坦地であるが泉や河川などに関連して発達するものなど、場所と発達条件によって幾つかの種類に分類できた。防止対策については、大がかりな対策工法でほとんど解決できると思われるが、中国における雇用等の問題を考えると同時に安価な対策方法をとる必要性を提案した。また防壁などの素材として日本のトンネルなどに使用されている新素材の利用も提案した。(2)地ふぶきと吹きだまり:日本に比べ積雪量は非常に少なく、地ふぶきによる吹きだまりから生じる道路交通障害、及び吹きだまりによる春の畑の耕作の遅れなどが問題となっている。道路地形や並木と吹きだまりの形態の関係を調査した。並木と道路間の距離、道路の高さ、風向を考えた並木の位置などを考慮すれば、かなりの対策となる。また農場地における防風林と風速分布および吹きだまりの関係を測定調査した。本研究の期間では短かすぎ、防風林の構造と適正配置の結論を出せなかった。今後、観測例をふやし継続する必要がある。(3)道路および構造物の凍結特性:哈尓濱から中国国境に至る数カ所で道路および構造物の凍結調査を実施し、橋脚の凍上や建築物のクラック、ダム取水塔コンクリートの劣化が観測された。しかし寒冷地における凍害対策はかなり進んでおり、財政的問題を除けば、基礎の設計や地盤改良技術、コンクリートの配合設計などの技術的問題はかなりクリアされている。(4)酸性雪(雨):黒龍江省の各地で採取した降積雪の化学分析を行った。1994年の例では総サンプル数44のpH単純平均値は61、同時期の長岡のそれは4.7であった。またCa^<2+>とMg^<2+>の含有率が非常に高かった。この地域のアルカリ性の土壌が強風で舞い上がり降積雪中に取り込まれたこと、冬期暖房の主役の石炭の燃焼による灰などの比重の重い煤煙が発生源近くに落下し、アルカリ性を強めたことが推定された。同時に石炭の燃焼によって発生する揮発性の硫黄酸化物などの微粒子は大気中に拡散し長距離輸送され日本にも飛来するものと推定される。今後も国境を越えた共同研究が必要である。その他、凍土地帯のメタン濃度、融雪水の地中浸透と水質変動などに関して多くの知見が得られた。3年間の最後の年である本年度は、共同観測研究結果について日本でシンポジウムを開催し、成果報告書を刊行した。
著者
阿部 照男 横川 伸 〓 仁平 針生 清人 飯塚 勝重 続 三義 今東 博文 羅 歓鎮
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

2003年から3カ年間取り組んだ「中国『西部大開発』と地域社会の変容」という研究プロジェクトで、現代中国社会が抱える枢要な問題は貧富の格差とくに貧困対策であることが明らかになった。それを受けて2006年から本研究プロジェクト「中国内陸部における貧困対策に関する研究-「移民新村」政策を中心にして-」が開始された。陝西省延安市農村部における現地調査(2006-07年)、西北大学陝西経済発展研究センター委託による農家個別訪問アンケート調査(2006-07年)、甘粛省農村部現地調査(2007年)、山西省農村部現地調査(2008年)、内モンゴル自治区赤峰市農村部現地調査(2009年)、2度にわたる日中国際シンポジウム(2008年延安市、2009年東洋大学)などの研究成果として明らかになったのは、中国社会にとって単なる貧困対策を中心とする段階は終わり、今後特に求められているのは、農村全体の底上げ、農民の生活改善、農業の構造改革ということである。それを象徴するのが「新農村建設」というキーワードである。
著者
〓 春明 越田 淳一 森山 典子 王 暁丹 有働 武三 井上 興一 染谷 孝
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.865-874, 2005-12-05
被引用文献数
10

九州各地の堆肥化施設23カ所から,牛糞,鶏糞,生ゴミおよび下水汚泥を原料とした堆肥計29点を採取し,糞便汚染指標菌(大腸菌群,大腸菌およびサルモネラ菌)について培養検査した。1)これら堆肥試料のCECは31.4〜79.0cmol_ckg^<-1>の範囲(平均55.4cmol_ckg^<-1>)で,炭素率(C/N比)は7.6〜25.4の範囲(平均15.3)にあり,他の性状と合わせ,多くが完熟堆肥であると判断された。2)デスオキシコーレイト寒天培地により大腸菌群が29点中11点(38%)から検出され10^2〜10^6cfug^<-1> dry matterの菌数レベルであった。大腸菌群陽性堆肥試料4点のうち3点からの分離株は,大腸菌群に属するE. coli, E. vulneris, Pantoea sp., Buttiauxella agrestisと同定された。しかし,Serratia marcescensのみが分離された試料が1点,本菌とE. coliが分離された試料が1点あった。大腸菌群には属さない腸内細菌科の細菌であるS. marcescensは赤色色素を生産するため,分離培地上で大腸菌群の赤いコロニーと誤認されたものと推察された。一方,得られたE. coli5株は,病原大腸菌免疫血清試験ですべて陰性であった。3)堆肥試料12点についてクロモカルト・コリフォーム培地による大腸菌の直接培養検査およびMLCB寒天培地によるサルモネラ菌の検出を試みた結果,大腸菌はいずれの試料からも検出されず,サルモネラ菌は2点(17%)から検出され,その菌数は10^3cfug^<-1> dry matterのレベルにあった。4)堆肥原料(牛糞,鶏糞,生ゴミ等)8点のうち大腸菌群およびサルモネラ菌がいずれも6点(75%)から,大腸菌が5点(63%)から検出され,菌数はいずれも10^2〜10^8cfug^<-1> dry matterであった。5)堆肥製造施設6カ所における堆肥化過程での糞便汚染指標菌の消長を7例について追跡した結果,糞便汚染指標菌が減少して製品中で消失する場合,いったん消失するが製品で再度検出される場合,全く消失しない場合,原料から製品まで検出されない場合の4通りが観察された。発酵温度が高くてもサルモネラ菌などが生残する場合があり,その原因について,再増殖や交叉汚染の可能性を考察した。6)上記の諸結果に基づき,堆肥の製造過程における温度管理や交叉汚染防止などの適切な衛生管理の重要性を指摘した。
著者
福田 アジオ 周 正良 朱 秋楓 白 庚勝 巴莫曲布む 劉 鉄梁 周 星 陶 立ふぁん 張 紫晨 橋本 裕之 福原 敏男 小熊 誠 曽 士才 矢放 昭文 佐野 賢治 小林 忠雄 岩井 宏實 CHAN Rohen PAMO Ropumu 巴莫 曲布女莫 陶 立〓
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

平成計年〜3年度にわたり中国江南地方において実施した本調査研究は当初の計画どおりすべて実施され、予定した研究目的に達することができた。江蘇省常熟市近郊の農村地帯、特に白茆郷を対象とした揚子江下流域のクリ-クに広がる中国でも典型的な稲作農村の民俗社会の実態とその伝承を記録化することができ、また浙江省の金華市および蘭渓市や麗水市における稲作の民俗社会を調査することが出来た。特に浙江省では中国少数民族の一つであるシェ族の村、山根村の民俗事象に触れることができ、多大な成果を得ることが出来た。2年度は前年度の調査実績を踏まえ、調査地を浙江省に絞り、特に蘭渓市殿山郷姚村、麗水市山根村、同堰頭村の3か所を重点的に調査した。ここでは研究分担者は各自の調査項目に従って、内容に踏み込み伝承事例や現状に関するデ-タを相当量収集することができた。また、この年度には中国側研究分担者8名を日本に招聘し、農村民俗の比較のために日中合同の農村調査を、千葉県佐倉市および沖縄県読谷村の村落を調査地に選び実施した。特に沖縄本島では琉球時代に中国文化が入り込み、民俗事象のなかにもその残存形態が見られることなどが確認され、多大な成果をあげることが出来た。3年度は報告書作成年度にあたり、前年度に決めた執筆要項にもとずき各自が原稿作成したが、内容等が不備がありまた事実確認の必要性が生じたことを踏まえ、研究代表者1名と分担者3名が派遣もしくは任意に参加し、補充調査を実施した。対象地域は前年度と同じく蘭渓市殿山郷姚村、麗水市山根村の2か村である。ここでは正確な村地図の作成をはじめ文書資料の確認など、補充すべき内容の項目について、それを充たすことが出来た。さらに、年度内報告書の作成をめざし報告書原稿を早急に集め、中国側研究分担者の代表である北京師範大学の張紫晨教授を日本に招聘し、綿密な編集打合せを行った。以上の調査経過を踏まえ、その成果を取りまとめた結果、次のような点が明らかとなった。(1)村落社会関係に関する調査結果として、中国の革命以前の村落の状況と解放後の変容過程に関して、個人の家レベルないし旧村落社会および村政府の仕組みや制度の実態について、また村が経営する郷鎮企業の現状についても記録し、同じく家族組織とそれを象徴する祖先崇拝、基制について等が記録された。特に基制については沖縄の基形態がこの地方のものと類似していること、そして沖縄には中国南方民俗の特徴である風水思想と干支重視の傾向があり、豚肉と先祖祭祀が結びついていることなどから、中国東南沿海地方の文化との共通性を見出し、日中比較研究として多大な成果をあげることが出来た。(2)人生儀礼および他界観といった分野では、誕生儀礼に関して樟樹信仰が注目され、これは樹木に木霊を認め、地ー天を考える南方的要素と樹木を依り代と見立て、天ー地への拝天的な北方的要素が融合した形と見られる。また成人儀礼ではシェ族に伝わる学師儀礼の実態や伝承が詳細に記録され、さらに貴州省のヤオ族との比較を含めた研究成果がまとめられた。特に中国古代の成人式の原始的機能が検出され、また先祖祭祀との関わりや道教的要素の浸透など貴重なデ-タが集積された。その他、中国民俗の色彩表徴の事例などの記録も出来た。(3)民間信仰および農耕儀礼として、年中行事による季節観念と農業生産との関係、農耕社会における祭祀の心理的要因や農耕に関する歌謡によって表出された季節的意味などに焦点をあて、ここではさらに日本の沖縄との比較を含めて分析された。さらに建築儀礼に関しても詳細に報告され、沖縄の石敢当を対象に中国との比較研究もまとめられた。(4)口承文芸および民俗芸能については稲作起源神話の伝承例を初めとし、江南地方の方言分布とその特徴ならびに文化的影響の問題について、さらに金華市と沖縄の闘牛行事の比較研究などに多大な成果を得ることが出来た。(これらは報告書として刊行予定)
著者
稲葉 継雄 松原 孝俊 金 〓実 田中 光晴 新城 道彦 入江 友佳子 小林 玲子 花井 みわ 槻木 瑞生 天野 尚樹 三田 牧 アンドリュー ホール
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

基本的に朝鮮・台湾・南洋など各地域研究の形で進行してきた植民地教育研究の枠組みを変え、研究協力体制を簡便に構築できるネットワークを形成することが目的である。いわゆる「外地」と呼ばれた地域の実地調査を進め、コリアン・ディアスポラを巡る問題を教育史を通して糾明し、さらに、各地域の研究者が一同に会する研究会を開催したり、世界韓国学研究コンソーシアム(UCLA、SOAS、ソウル大学校、北京大学、ハーバード大学、オーストラリア国立大学などで組織)を活用することで研究のネットワーク化を進めた。
著者
渡辺 〓修
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

我が国では、犯罪現象と人権意識の変化にもかかわらず、「自白をとるか、とられないか」という次元での争いが、捜査から公判そして学界における主たる関心になっている。刑事手続における「55年体制」的思考である。本研究は、刑事手続のかかる運用と理論を克服し、新たな犯罪情勢に対応する捜査権限のあり方、起訴の基準、公判手続のありかた、有罪・無罪の認定基準、そして、これらに対応した被疑者・被告人の防御権の充実を模索することを目的として行った。その結果、次の点について研究をまとめることができた。(1)違法収集証拠排除法則の適用のありかた。(2)外国人被告人事件の公判廷の運用開演。(3)聴覚障害者事件と刑事裁率の限界を明確にすること。(4)事実認定の適正化。(5)検察官上訴権の制限による刑事裁判の全体としての適正化。
著者
西川 長夫 米山 裕 高橋 秀寿 今西 一 麓 慎一 石原 俊 宮下 敬志 李 〓蓉
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

近代としての「帝国」を、その世界的な支配秩序の形成過程に巻き込まれてきた人びとの経験の場から実証的・理論的に捉え直すことを目的とした本研究では、それぞれの「植民地」における個々の歴史的実態を解明するためにフィールドワークを重視した。日本国内と韓国での複数回にわたる国際シンポジウムの開催と現地調査、およびそれらを踏まえた研究交流を通じて「帝国/植民地」の形成過程に関する比較分析を蓄積し、グローバル化時代における「国内植民地主義」の更なる理論化を準備した。
著者
桂 〓一
出版者
京都府立大学
雑誌
西京大学学術報告. 農学 (ISSN:03709329)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.97-106, 1956-09-01

1. Phytophthora capsici LEON.菌の游走子嚢の発芽は, 游走子による間接発芽と発芽管による直接発芽との2型がある。2. 游走子嚢の間接発芽は水を得てから25℃で4&acd;8分にして始り, 20°&acd;21℃で15分後に1.4%の発芽が認められた。そして間接発芽はほゞ45分余で大部分が完了するのに対し, 直接発芽は20°&acd;21℃でも28℃でも約1時間半後から始まつた。3. 游走子嚢は水がなければ発芽することは出来ないが, 直接発芽は関係空気湿度100%に20時間おかれたものに1.8%認められた。4. 游走子嚢は茄子, 蕃茄, 胡瓜, 玉葱, 梨, 柿, 枇杷の搾汁原液中で間接発芽がおこらないが, 直接発芽は玉葱を除く他の何れでも認められた。5. 蕃茄果実汁液の100倍液はpH5.4であつたが, 游走子嚢が開口せずに游走子が殻内で被嚢するものが多く, しかも被嚢胞子が発芽して游走子嚢の殻壁を貫通するものがあつた。6. これと同じ現象が蒸溜水にN/10HClを加えて調整したpH5.0と5.6との間の酸性溶液の中で起つから, 間接発芽は酸性溶液に対して著しく敏感であり, pH4.8以下の酸性溶液では間接発芽は阻害せられた。なお塩基性の側における間接発芽はpH11.0&acd;11.2でもなお17.1%認められた。
著者
山田 英代 玉置 伸〓
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.61, no.483, pp.199-210, 1996
被引用文献数
6 5

This paper aims to analyze the changes in the structure of households with the elderly by the time trends, using census data. The conclusions afe as follows: 1. The ratio of the male of the single have been increasing at the middle ages, and that of female have been increasing at the sinior ages. And the most of the male of the single is under 50 years old, while over50 percent of the female of the single is over 50 years old. 2. The number of the elderly couple housuholds have been increasing rapidly. And the number become twice that of young couple in 1990. 3 The ratio of the stem family have been decreasing in all age groups. And that of households which are consisted of old elderly and their child's couple have been increased.
著者
伊牟田 敏充 本間 靖夫 〓見 誠良 池上 和夫 波形 昭一 渋谷 隆一 斉藤 寿彦
出版者
法政大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

1.『昭和財政史資料』など未公刊資料を収集し, 分析して, 研究成果の一部として次のような諸点が得られた. なお, 利用予定であった史料の一部(賀屋文書)の公開が遅れたため, 最終的取りまとめには時日を要する予定.2.第2次大戦下の金融構造は, 昭和初年や戦後高度成長期のそれとは異質であり, 公債消化と軍需金融を二本の柱とした資金統制計画に基く「割当型」の金融構造であった. リスクの大きい軍需金融のため興銀・戦時金融金庫が媒介機関となり, 普銀・生保等の資金が「迂回」的に利用された.3.資金調整から金融統制へと大蔵省による「上から」の統制は深まったが, それを支えたのは金融機関間の協調的行動(金利協定, 国債保有, 共同融資, 社債シンジケート団の拡大)であった. 時局共同融資団は典型例.4.日銀は伝統的中央銀行とは異質のものとなった. 兌換停止された日銀券は1941年に管理通貨となった. 日銀は国債を無制限に引受け, 国債管理機関となったほか, 商業金融主義を放棄して産業金融調節者となった.5.大戦下に銀行合同が徹底して推進され, 都市二流銀行・農工銀行・地方信託が消滅した. 地方では一県一行がほぼ完成, 貯蓄銀行が消滅した. 銀行規模の拡大・店舗網の整理・資産の整理によって経営が「合理化」され, 資金コストが低下し, 国債消化・低金利実現につながった.6.軍需企業との直接的関係の薄い金融機関(地銀・貯銀・生保・勧銀・産組中金など)は資金に余裕が生れ(戦時的資金偏在), その資金は国債消化に誘導されたほか, 金融債消化により迂回的に軍需企業へ流された.7.太平洋戦争は米英との為替取引を不可能とし, 1932年以降の為替管理は変更を余儀なくされ, 正金銀行の機能が弱化した. 円系通貨圏内決済のみ残ったが, 日銀・台銀・鮮銀・南方開発金庫・外資金庫等の特殊金融機関の連帯的行動で円系通貨を支えた.
著者
〓 斗燮 小井川 広志 村岡 輝三
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は昨今の東アジア経済の構造転換を「直接投資時代」への移行段階として規定し、その本質を企業連携、産業金融、地域協力という三つの局面において総合的な把握を試みた。この場合、直接投資の雁行型拡大により好調を続けてきたアジア経済が1997年タイの通貨危機以降、地域全体が構造的な危機を露呈している現状に鑑み、以下の三つの追求すべき課題を設定した。(1)「アジア型発展」モデルが90年代の後半に急激に機能不全に陥った理由は?。再び成長基調に乗せるための条件と問題点は何か。(2)経済成長の持続化ためには成長段階に合わせて人材の質を高める必要があるが、学校教育と企業内教育とどちらが有効であろうか。(3)「アジア型発展」モデルは、究極的には日本企業による企業内国際分業の展開及び高度化にその本質がある。今後の直接投資は、大企業よりは中堅中小企業による国境を越えた成長戦略がカギになるものと考えられるが、彼らの国際化を支える競争優位や企業文化とは何か。以上の三つの課題に対する我々の答えは以下の通りである。(1)「アジア経済」の成長は、アメリカ、日本、アジア諸国の3者(トライアングル)による技術、資本、地域協力の枠組みに内在する「協力」と「緊張」の好循環によるもの。しかし、昨今の通貨危機のなかで既存のトライアングルが持つ弱点がはっきりしてきた。特に、金融・通貨面での対応能力が脆弱である点が明らかになった。対応策としては、地域経済路力機構(ASEANやAPEC)の機能強化、共通通貨や通貨圏の設置などが不可欠であるが、問題は2大勢力の円(日本)と人民元(華人経済)が共通目的に向けて協力できるかである。(2)日本の高度成長は質の高い人材を長期安定的に供給できた点に負うところが大きいが、教育投資による経済的効果に関する定量分析によれば、いわゆる学校教育による労働生産性の増加効果はそれほど大きくない。企業内教育(OJTを含む)の重要性を示唆する結果である。(3)中堅企業の国際化がアジア経済を再び成長軌道に乗せるには非常に重要なファクターである。高い競争力を持つ中部圏の製造企業11社に対するヒヤリング調査から以下の点が確認された。第一は、全体として国際化にはまだ消極的であること。第二は、ある特定技術分野に特化した専業企業が多いこと。第三は、カリスマ的な創業者による独特の組織文化を共有していること。第四は、上位文化として製造業や熟練の継承に好都合の地域文化(中部圏)が存在していること。アジア経済の再生には、こうした中堅企業の対アジア進出と組織文化の地域的な拡散が大きく寄与するものと考えられる。
著者
魚住 二郎 上田 豊史 徳田 倫章 安増 哲生 〓住 二郎
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

シスプラチン(CDDP)は各種の悪性腫瘍に優れた抗腫瘍効果を示す薬剤であるが、腎毒性が用量規定因子となっている。より有効かつ安全なCDDPの投与を目的として、メチルプレドニゾロン(MP)によるCDDP腎毒性の軽減作用を検討した。ラットを用いた動物実験おいてCDDP投与の2-4時間前にMPを皮下投与するとBUN、血中クレアチニン(Cr)の上昇は有意に抑制された。その機序としてMPがCDDPの尿中排泄を促進し、腎組織プラチナ濃度を有意に減少させることを示した。また腎皮質スライス法を用いた実験により、MPはCDDPによる腎尿細管上皮細胞における糖新生能の抑制を軽減することによりCDDPの腎毒性発現を阻害する可能性が示唆された。これらの基礎研究の成果を基にMPのCDDP腎毒性軽減作用を臨床的に検討した。CDDPを含む化学療法としてMVAC療法を行った尿路上皮腫瘍14症例を対象とした。1コース目はMPを投与しないで対象群とし、2コース目はMP2,000mgをCDDPの数時間前に投与して治療群とした。腎毒性の指標として、尿中NAG、 GGTP排泄、血中Crの変化、クレアチニンクリアランス(Ccr)の変化を評価した。尿中酵素はCDDP投与翌日に有意に上昇し、その程度はMP群と対照群で有意な差は認められなかった。CDDP投与の1週後にみられた血中Crのわずかな上昇に関してもMP群と対照群で有意な差は認められなかった。しかし、CDDP投与1-2週間後のCcrは、対照群では約25%低下したのに対して、MP投与群においてはCcrの低下はなく、対照群と比較して有意差が認められた。MPのCDDP腎毒性に対する腎保護作用は、臨床的にも明らかにされた。MPとの併用によってCDDPの大量投与が可能になり、抗腫瘍効果の増強が期待される。
著者
石川 捷治 出水 薫 李 弘杓 中島 琢磨 平井 一臣 木村 朗 藤村 一郎 山田 良介 木原 滋哉 黒木 彬文 中村 尚樹 李 〓京 権 赫泰 金 暎浩 金 世中 余 信鎬 徐 炳勲 李 春根 許 殷
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

朝鮮半島における1945年「8月15日」を境とする政治・社会状況の変化について、当時の人々(日本人を含めて)の証言(記憶)と記録により歴史の具体像の解明にせまる。韓国・日本・その他の歴史博物館における「8・15」の位置づけに関する調査と文献資料の収集と分析を行い、現地での韓国人や引揚者などからの聞き取り調査を交えて、研究を進めた。その結果、それぞれ「転換期」にある韓国・日本の「歴史認識」の位相について明らかにすることができた。
著者
朴 〓用 李 昌勲 朴 相運 権 聖弼 崔 元哲
出版者
国際生命情報科学会
雑誌
Journal of International Society of Life Information Science (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.107-116, 2001-03-01

フランスの科学者J.Benvenisteは水の持つ記憶効果'memory effect'を同種療法(hoemopathy)でその可能性を見せた。日本の江本は水の結晶映像法を用いて波動による水の結晶特性の差を見せた。本研究では同様な方法を用いて磁場が水にどういう影響を及ぼすかに関する研究を行った。精製水、水道水、市販されている生水、磁化水、浄水器で処理した水、山からの自然水、などを対象に実験を行った。精製水には特性の差がほとんど現れていないが、ミネラルを含んだ水には六角結晶に差が現れる。ミネラルがあまり多い場合は逆に結晶成長率が落ちる。しかし、こういう実験には再現反復性に問題があるが、傾向性から水の六角結晶に磁場の影響があることが観察できた。