著者
寺川 裕史 牧野 勇 正司 政寿 中沼 伸一 酒井 清祥 林 泰寛 中川原 寿俊 宮下 知治 田島 秀浩 高村 博之 二宮 致 北川 裕久 伏田 幸夫 藤村 隆 尾山 武 井上 大 小坂 一斗 蒲田 敏文 太田 哲生
出版者
医学図書出版
雑誌
胆と膵 = The Biliary tract & pancreas (ISSN:03889408)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.481-485, 2014-05-01

症例は56歳, 男性. 検診にて膵頭部腫瘍を指摘され, 当科紹介となった. 腹部USでは膵頭部に多房性嚢胞性病変を認め, 内部は多彩なエコー輝度が混在するモザイク状であった. CTでは膵外に突出する境界明瞭な多房性嚢胞性病変として描出され, 嚢胞壁および隔壁に造影効果を認めた. MRIにおいては自由水の信号と比較してT1強調像ではより高い信号, T2強調像ではより低い信号, 拡散強調像ではより高い信号を呈しており, 粘調度や蛋白成分の高い内容物の存在が示唆された. 年齢, 性別, 画像所見およびCA19-9高値などを総合的に評価し, lymphoepithelial cyst (LEC)を第一に疑った. 他の膵嚢胞性疾患が否定できないため切除生検としての腫瘍核出術を施行し, 病理学的にLECと診断した. 詳細な画像検査に加え, 性別やCA19-9値などを総合的に評価することにより, 膵LECを疑うことが可能であると考えられた.
著者
中川 美緒 樋口 智子 寺岡 由貴 曽我 賢彦
出版者
一般社団法人 日本造血細胞移植学会
雑誌
日本造血細胞移植学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.36-42, 2019
被引用文献数
3

<p> 口腔粘膜障害の創部保護を行い,疼痛を緩和する医療機器 「エピシル<sup>®</sup> 口腔用液」(ソレイジア・ファーマ株式会社,東京)が2018年4月に保険適用された。しかし,本邦で本機器の疼痛緩和効果および使用感等についての報告はない。そこで本院で造血細胞移植を受け,口腔粘膜障害の疼痛を訴えた4名の患者を対象とし,症例研究を行った。使用後5分において,4人のうち3人でペインスコアが減少し,その後30分から120分にかけて口腔内疼痛は概ね同等で推移した。2名が味覚の変化および刺激感について,1名が不快感について 「少し気になる」 と回答したが,使用後2時間の評価時間の後,全員が継続使用を希望した。有害事象および機器としての不具合の発生はなかった。エピシル<sup>®</sup> 口腔用液は,造血細胞移植患者を対象として,疼痛をはじめとする口腔粘膜障害による不快感を緩和することを示唆した。</p>
著者
三木 文雄 生野 善康 INOUE Eiji 村田 哲人 谷澤 伸一 坂元 一夫 田原 旭 斎藤 玲 富沢 磨須美 平賀 洋明 菊地 弘毅 山本 朝子 武部 和夫 中村 光男 宮沢 正 田村 豊一 遠藤 勝美 米田 政志 井戸 康夫 上原 修 岡本 勝博 相楽 衛男 滝島 任 井田 士朗 今野 淳 大泉 耕太郎 青沼 清一 渡辺 彰 佐藤 和男 林 泉 勝 正孝 奥井 津二 河合 美枝子 福井 俊夫 荒川 正昭 和田 光一 森本 隆夫 蒲沢 知子 武田 元 関根 理 薄田 芳丸 青木 信樹 宮原 正 斎藤 篤 嶋田 甚五郎 柴 孝也 池本 秀雄 渡辺 一功 小林 宏行 高村 研二 吉田 雅彦 真下 啓明 山根 至二 富 俊明 可部 順三郎 石橋 弘義 工藤 宏一郎 太田 健 谷本 普一 中谷 龍王 吉村 邦彦 中森 祥隆 蝶名林 直彦 中田 紘一郎 渡辺 健太郎 小山 優 飯島 福生 稲松 孝思 浦山 京子 東 冬彦 船津 雄三 藤森 一平 小林 芳夫 安達 正則 深谷 一太 大久保 隆男 伊藤 章 松本 裕 鈴木 淳一 吉池 保博 綿貫 裕司 小田切 繁樹 千場 純 鈴木 周雄 室橋 光宇 福田 勉 木内 充世 芦刈 靖彦 下方 薫 吉井 才司 高納 修 酒井 秀造 西脇 敬祐 竹浦 茂樹 岸本 広次 佐竹 辰夫 高木 健三 山木 健市 笹本 基秀 佐々木 智康 武内 俊彦 加藤 政仁 加藤 錠一 伊藤 剛 山本 俊幸 鈴木 幹三 山本 和英 足立 暁 大山 馨 鈴木 国功 大谷 信夫 早瀬 満 久世 文幸 辻野 弘之 稲葉 宣雄 池田 宣昭 松原 恒雄 牛田 伸一 網谷 良一 中西 通泰 大久保 滉 上田 良弘 成田 亘啓 澤木 政好 三笠 桂一 安永 幸二郎 米津 精文 飯田 夕 榊原 嘉彦 螺良 英郎 濱田 朝夫 福山 興一 福岡 正博 伊藤 正己 平尾 文男 小松 孝 前川 暢夫 西山 秀樹 鈴木 雄二郎 堀川 禎夫 田村 正和 副島 林造 二木 芳人 安達 倫文 中川 義久 角 優 栗村 統 佐々木 英夫 福原 弘文 森本 忠雄 澤江 義郎 岡田 薫 熊谷 幸雄 重松 信昭 相沢 久道 瀧井 昌英 大堂 孝文 品川 知明 原 耕平 斎藤 厚 広田 正毅 山口 恵三 河野 茂 古賀 宏延 渡辺 講一 藤田 紀代 植田 保子 河野 浩太 松本 慶蔵 永武 毅 力富 直人 那須 勝 後藤 純 後藤 陽一郎 重野 秀昭 田代 隆良
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.914-943, 1987
被引用文献数
2

Clavulanic acid (以下CVAと略す) とticarcillin (以下TIPCと略す) の1: 15の配合剤, BRL28500 (以下BRLと略す) の呼吸器感染症に対する有効性と安全性をpiperacillin (以下PIPCと略す) を対照薬剤として, welI-controlled studyひこより比較検討した.<BR>感染症状明確な15歳以上の慢性呼吸器感染症 (慢性気管支炎, びまん性汎細気管支炎, 感染を伴った気管支拡張症・肺気腫・肺線維症・気管支喘息など) およびその急性増悪, 細菌性肺炎, 肺化膿症を対象とし, BRLは1回1.6g (TIPC1.5g+CVA0.1g) 宛, PIPCは1回2.0g宛, いずれも1日2回, 原則として14日間点滴静注により投与し, 臨床効果, 症状改善度, 細菌学的効果, 副作用・臨床検査値異常化の有無, 有用性について両薬剤投与群間で比較を行い, 以下の成績を得た.<BR>1. 薬剤投与314例 (BRL投与161例, PIPC投与153例) 中, 45例を除外した269例 (BRL投与138例, PIPC投与131例) について有効性の解析を行い, 副作用は293例 (BRL投与148例, PIPC投与145例) について, 臨床検査値異常化は286例 (BRL投与141例, PIPC投与145例) について解析を実施した.<BR>2. 小委員会判定による臨床効果は, 全症例ではBRL投与群78.8%, PIPC投与群79.4%, 肺炎・肺化膿症症例ではBRL投与群 (79例) 82.1%, PIPC投与群 (73例) 79.5%, 慢性気道感染症症例ではBRL投与群 (59例) 74.6%, PIPC投与群 (58例) 79.3%の有効率で, いずれも両薬剤投与群間に有意差を認めなかった.<BR>3. 症状改善度は, 肺炎・肺化膿症症例では赤沈値の14日後の改善度に関してPIPC投与群よりBRL投与群がすぐれ, 慢性気道感染症症例では胸部ラ音, 白血球数, CRPの3日後の改善度に関してBRL投与群よりPIPC投与群がすぐれ, それぞれ両薬剤投与群間に有意差が認められた.<BR>4. 細菌学的効果はBRL投与群68例, PIPC投与群57例について検討を実施し, 全体の除菌率はBRL投与群75.0%, PIPC投与群71.9%と両薬剤投与群間に有意差は認められないが, Klebsiella spp. 感染症においては, BRL投与群の除菌率87.5%, PIPC投与群の除菌率16.7%と両薬剤群間に有意差が認められた. また, 起炎菌のPIPCに対する感受性をMIC50μg/ml以上と50μg/ml未満に層別すると, MIC50μg/ml未満の感性菌感染例ではBRL投与群の除菌率69.6%に対してPIPC投与群の除菌率94.7%とPIPCがすぐれる傾向がみられ, 一方, MIC50μg/ml以上の耐性菌感染例ではPIPC投与群の除菌率12.5%に対して, BRL投与群の除菌率は66.7%と高く, 両薬剤間に有意差が認められた.<BR>5. 副作用解析対象293例中, 何らかの自他覚的副作用の出現例はBRL投与群5例, PIPC投与群11例で, 両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>6. 臨床検査値異常化解析対象286例中, 何らかの異常化が認められた症例は, BRL投与141例中45例 (31.9%), PIPC投与145例中28例 (19.3%) で, 両薬剤投与群間に有意差が認められた. 臨床検査項目別にみると, GPT上昇がBRL投与140例中26例 (18.6%), PIPC投与140例中14例 (10.0%), BUN上昇がBRL投与128例中0, PIPC投与127例中4例 (3.1%) と, それぞれ両薬剤投与群間での異常化率の差に有意傾向が認められた.<BR>7. 有効性と安全性を勘案して判定した有用性は, 全症例ではBRL投与群の有用率 (極めて有用+有用) 76.3%, PIPC投与群の有用率の74.8%, 肺炎・肺化膿症症例における有用率はBRL投与群81.0%, PIPC投与群75.3%, 慢性気道感染症症例における有用率はBRL投与群70.0%, PIPC投与群74.1%と, いずれも両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>以上の成績より, BRL1日3.2gの投与はPIPC1日4gの投与と略同等の呼吸器感染症に対する有効性と安全性を示し, とくにβ-lactamase産生菌感染症に対しても有効性を示すことが確認され, BRLが呼吸器感染症の治療上有用性の高い薬剤であると考えられた.
著者
中川 淳一郎 李 兆亮 布施 貴司 室谷 卓 伏見 知浩 渡部 貴士 野村 文彦 田原 憲一 呉 教東 山吉 滋 小玉 尚宏 阿部 孝
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.613-616, 2008-05-31 (Released:2008-07-01)
参考文献数
22

小児の異物誤飲は日常的に遭遇する疾患であるが,通常多くの異物は自然排泄される。今回,大量誤飲されたおもちゃの磁石が消化管内でループを形成し,滞留した症例を経験したので報告する。患者は11歳,男児。既往歴:自閉症。10日くらい前から嘔吐,上腹部痛が出現し,近医で内服加療を受けていたが,症状が持続するため当院に紹介となった。来院時の腹部単純X線写真で,上腹部に多数の金属棒を認めループを形成していた。X線写真所見と異物誤飲の既往歴より,異物はおもちゃの磁石と考えられた。内視鏡下に胃に穿通した8本の磁石を除去した。小腸内に残存した6本の磁石は腹部X線写真で経過観察し,自宅退院後の第21病日自然排泄を確認した。複数個の磁石誤飲では,消化管の穿通・穿孔などをきたす危険な異物となりうるため,可能な限り内視鏡的摘出を試み,できない場合には厳重な経過観察を行うべきと考えられる。
著者
阿南 豊正 天野 いね 中川 致之
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.74-78, 1981-02-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
28
被引用文献数
2 5

緑茶(荒茶)を130℃で30分および160℃で30分加熱し,化学成分の変化を調べた結果,アミノ酸類,ビタミンC,遊離還元糖の減少が著しいのに対し,全窒素やカフェインはほとんど減少しないことが明らかとなった。次に,緑茶加熱中の成分変化に対する各成分の相互作用の影響を調べるため,テアニン,グルコース,(-)-エピカテキン,カフェインを各々組み合わせてセルロース粉末と混合し,130℃で30分および160℃で30分加熱し,各成分含量および熱水浸出液の吸光度を調べた結果,テアニンとグルコースの相互作用の影響が最も大きく,ついで(-)-エピカテキンとテアニンの相互作用の影響が若干認められた。
著者
岩崎 和樹 浅川 大地 中川 和昌 中澤 理恵 坂本 雅昭
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0078, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】重量物持ち上げ動作(以下,リフティング動作)は,腰痛受傷率が最も高い動作であるとされており,腰痛の一因とされる体幹表層筋の過剰な筋活動を伴いやすい。また,体幹深層筋の機能低下は代償的戦略として体幹表層筋の筋活動を増加させることが推測されている。本研究では,体幹深層筋に対する継続的な運動が体幹表層筋の筋活動量に及ぼす影響を検証することを目的とした。【方法】対象は腰痛の既往のない健常男性10名(年齢20.7±0.7歳,身長171.2±4.2cm,体重62.4±5.2kg)とし,継続的な運動の実施が可能であった7名を分析対象とした。介入内容は体幹深層筋に対して3種類の運動を4週間にわたり可能な限り毎日実施してもらい,その前後で腹横筋機能評価とリフティング動作時の筋活動量を測定した。腹横筋機能評価には,圧バイオフィードバックユニット(CHATTANOOGA社製)を使用し,腹臥位でのDraw-inによる腹圧の変化を計測した。リフティング動作時の筋活動量の測定には表面筋電図計(酒井医療社製マイオリサーチXPテレマイオG2 EM-601 EM-602)を使用し,両側腹直筋,外腹斜筋,広背筋,胸部および腰部脊柱起立筋の筋活動量を測定した。動作課題は体重の30%の重量物のリフティング動作とした。開始肢位は足底が全面接地した膝関節最大屈曲位の時点とし,終了肢位はリフティング動作後,体幹と下肢が完全伸展位をとった時点とした。筋電図計測は,計測開始2秒後に検者の合図で動作を開始し,終了肢位から2秒経過した時点で計測終了とした。動作は3回試行し,全3回の筋活動量の平均値を代表値とした。運動方法は①腹臥位・背臥位でのDraw-in保持,②四つ這い姿勢から対側上下肢の挙上,③背臥位で臀部を挙上し体幹と大腿を一直線に保持する運動の3種類とした。統計学的解析は,エクセル統計Statcel Ver.3を使用し,介入前後の各代表値をWilcoxonの符号付順位和検定にて比較検討した。尚,有意水準は5%とした。【結果】腹横筋機能評価は,介入前-5.0±9.0mmHg,介入後-7.1±3.4mmHgであり,介入後に圧の減少傾向を認めた。リフティング動作時の筋活動量は,右広背筋では30.4±10.3μVから24.1±9.1μV,左広背筋では34.4±10.3μVから22.7±8.5μVと両広背筋で介入後有意な減少(p=0.018)を認め,有意差はないものの右外腹斜筋以外の全筋で減少傾向がみられた。【結論】体幹深層筋に対する4週間の運動介入により,体幹表層筋の活動量は抑制されることが示唆された。体幹深層筋機能向上により,リフティング動作時に動員されていた体幹表層筋の筋活動が減少したことが推測される。これらより,今回実施した運動はリフティング動作時の腰痛予防プログラムの一助になる可能性が示された。
著者
中川 佐和子 吾妻 俊彦 横山 俊樹 牛木 淳人 田名部 毅 安尾 将法 山本 洋 花岡 正幸 小泉 知展 藤本 圭作 久保 惠嗣 椎名 隆之 近藤 竜一 吉田 和夫 浅野 功治 山崎 善隆
出版者
The Shinshu Medical Society
雑誌
信州医学雑誌 (ISSN:00373826)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.365-370, 2008 (Released:2010-10-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

A 56-year-old woman was found to have a solitary mass shadow on chest radiograph in a health examination. Transbronchial examination on two occasions did not yield any diagnostic findings. Both the high level of CA19-9 and the increasingly large shadow were suspected to be indicative of lung cancer, so we performed left lower lobectomy. The pathological examination of the resected lung revealed a granulomatous lesion without malignant findings. A few colonies grew on a liquid medium, and were identified as Mycobacterium avium by PCR. After operation, the increased CA19-9 leval normalized gradually. There are few reports presenting a solitary pulmonary mass shadow and high CA19-9 level due to nontuberculous mycobacterial disease.
著者
シャルマ ラジ ハリ 中川 一
出版者
京都大学防災研究所 / Disaster Prevention Research Institute Kyoto University
雑誌
京都大学防災研究所年報. B = Disaster Prevention Research Institute annuals. B (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.683-690, 2005-04-01

本稿は,豪雨時を対象とした表層斜面崩壊のモデリングについて示したものである。斜面の安定性は土層内の水分の消長に大きく依存するため、これを精度よく表現し得るリチャーズ式を導入している。降雨実験により、モデルの適用性を検討した後、無限長斜面を仮定した3層からなる斜面の安定性を、リチャーズ式によって評価される土壌水分の消長を考慮して検討している。この斜面安定性の解析法を木津川上流域のタコラ谷に適用し、実際の豪雨時斜面崩壊箇所との比較検討により、本モデルの適用性が確認された。さらに、透水係数、土層厚、安息角、土粒子密度など、モデル中のパラメータが崩壊発生個数に与える影響について感度分析を行い、斜面安定解析において重要なパラメータを特定している。
著者
中川 一 里深 好文 大石 哲 武藤 裕則 佐山 敬洋 寶 馨 シャルマ ラジハリ
出版者
京都大学防災研究所
雑誌
京都大学防災研究所年報 (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
no.50, pp.623-634, 2006

本研究では,インドネシア国第2の河川であるブランタス川の支川レスティ川流域における土砂流出特性を明らかにするために,雨量観測,土壌侵食の観測,河川における濁度や流量等の水理量の観測を実施するとともに,衛星データを用いた植生指数の分析を行っている。さらに,植生指数と降雨に伴う土壌侵食との関係から土砂流出のモデル化を行い,観測データとの比較検討によりモデルの妥当性を検証した。その結果,本モデルにより降雨・土砂流出特性がある程度再現できることが確認された。そして,植生指数によって耕地の攪乱等の人的行為を把握し,これを降雨による土壌侵食量の評価に応用することで土砂流出に与える人為的インパクトを定量的に把握することが可能であると推察された。
著者
佐倉 統 福住 伸一 中川 裕志
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.4Rin138, 2019

<p>この論文の目的は,人とAIが一緒に写っている写真を対象にしてそれらの構図を分析すること(図像分析)が,人−AI関係の文化的相違の解明に資すると示すことである.試行的に得られたインターネット上の画像から,日本由来の写真では人とAI/ロボットは横並びに位置してこちらを見ていることが多く,欧米由来の写真では人とロボットがお互いに向き合っている構図が多いことがわかった.共視論研究(北山,2005)によれば,日本の浮世絵の母子像は何か別の物(第三項)を一緒に注視していることが多く,西洋の絵画ではこのような共視は少ないという.このような"共視"は人では生後9か月から見られるようになる.浮世絵の母子関係と同じパターンが人−AI関係にも見られるのだとすると,それはAIやロボットが人間の子供と同じく何物か(第三項)を共同注視することのできる存在,それだけの認知能力をもった存在として日本では無意識に認知していることを示唆する.欧米ではAI/ロボットはもっと人に従属する存在として位置づけられているのではないか.今後より体系的な図像分析をおこない,東アジア内での国際比較(日韓台)をおこなう必要がある.</p>
著者
中川 照彦 土屋 正光 勝崎 耕世 小原 洋一 諏訪 清史 福田 修一 福島 芳宏
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.685-692, 2002-06-25

1997年~2001年の5年間に,SLAP lesionに対し鏡視下上方関節唇修復術を行った野球選手の投球障害肩17例17肩を対象とした.全例男性で,手術時年齢は平均25.1歳(16~51歳)であった.ポジションは投手11例.野手6例.レベルはプロ野球3例,社会人野球3例,大学野球1例,高校野球5例,草野球5例であった.鏡視下上方関節唇修復術はSnyderの手技に準じて行い,後療法では特に術後3カ月以降の投球メニューについて詳述した.徒手検査ではcrank test,anterior apprehension肢位での疼痛,三森テスト.O'Brien testが有用であった.12カ月以上フォローアップできた13例中11例(85%)で完全復帰を果たした.術後復帰までの平均期間は.投手8.4カ月,野手6.8カ月であった.鏡視下上方関節唇修復術の手術成績は良好であり,上腕二頭筋長頭腱関節唇複合体の解剖学的修復という面からも,本術式は推奨できるものと考える.
著者
中川 大海 岩澤 有祐 松尾 豊
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.1Q3J203, 2019 (Released:2019-06-01)

近年,教育と情報技術の融合が進む中で,生徒の過去の学習行動を元に習熟度を推定する,知識獲得予測(knowledge tracing)の研究が活発化している.オンライン教育サービスの普及によるデータの大規模化も伴い,深層学習の活用によって従来より高い精度での予測が可能になったことが知られているが,既存の深層学習を用いた手法はでいずれも知識特有の構造を十分に考慮したモデルが設計されておらず,モデルの予測精度や予測の解釈性・妥当性が損なわれている.本研究では,知識構造をグラフ表現を用いて定式化し,近年発展が進む,深層学習を用いてグラフを扱うGraph Neural Networkを拡張したモデルによって,これらの問題の解決を図る.実験では,提案手法が既存手法に比べて,高精度かつ妥当性と解釈性の高い予測を行えることを,オープンデータを用いて実証的に検証し,またデータから学習されたグラフ構造を分析することで,効率的な知識構造の設計に関して考察する.
著者
重松 誠 菅 純子 西田 嘉英 澤井 英子 小川 雅史 中川 文夫
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.56-61, 2003-02-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
26
被引用文献数
2 2

Cancer chemotherapy and radiation therapy-induced stomatitis often involves symptoms severe enough that the oral ingestion of food may become difficult. We therefore prepared a polaprezinc (zinc N- (3-aminopropionyl) -L-histidine) suspension dispersed in sodium alginate solution (P-AG) as a specific treatment and agent for the prophylaxis of severe stomatitis, and examined the chemical and physico-chemical stability of P-AG for clinical use.The chemical and physico-chemical stability of P-AG was established from its appearance, the percentage polaprezinc content and viscosity immediately after steam sterilization and uniformity after being left to stand for14 days at 25 and 5°C. Similarly, these parameters were examined in photostability testing (40°C, 2000lux) for14 days at the same time. As a result, a change in appearance was observed after steam sterilization according to photostability testing. However, the percentage of polaprezinc contents did not decline after either steam sterilization, photostability testing or after being left to stand for 14 days regardless of the storage temperature. On the other hand, the viscosity of P-AG declined after steam sterilization according to the findings of photostability testing.
著者
大和田 道雄 秋山 祐佳里 畔柳 洋子 中川 由雅 石川 由紀 櫻井 麻理
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.216, 2005

_I_ 研究目的<BR> 近年,我が国の大都市では,夏季の夏型気圧配置時において異常高温が出現する傾向がみられるようになってきた。これは,都市域の拡大や排熱量の増加,および地表面の透水層や緑地の減少等によるヒートアイランド強度が強まったことも考えられるが,夏型気圧配置のパターンや出現頻度が変わってきたことも事実である。特に,名古屋と大阪では,1990年以降,東京に比較して異常高温の出現率が高まる傾向にある。そこで,本研究はその要因を夏型気圧配置の出現傾向と大気大循環場から探ろうとするものである。<BR>_II_ 資料および解析方法<BR> まず,異常高温の出現頻度が増加傾向を示す1980年以降の夏型気圧配置分類を行った。夏型気圧配置は,北太平洋高気圧の張り出し方によって出現頻度が最も多い南高北低型と東高西低型,全面高気圧型,およびオホーツク海高気圧型に分類した。さらに,北太平洋高気圧の張り出しが亜熱帯ジェット気流の緯度的・経度的位置,およびトラフ・リッジに対応することから,チベット高原を中心にしたユーラシア大陸に形成される南アジア高気圧の関係を把握するため,NCEP/NCARの再解析データから200hPa面における南アジア高気圧の盛衰との関係を求めた。<BR>_III_ 結 果<BR> 名古屋・東京・大阪の過去約45年間における35℃以上の出現日数を時系列で表し,移動平均に直した結果,2000年以降は東京が4_から_5日であるのに対し,名古屋と大阪は15日以上出現するようになった。これは,1970年当時に比較して約3倍である。これらの異常高温日数は,年による変動が大きくほぼ6年周期で現れる。その原因は明らかではないが,1994年から1995年にかけての名古屋では37℃以上の異常高温が5日近くも現れた。この時の気圧配置は1994年が全面高気圧型,1995年は南港北低型が多く支配した年である。したがって,1994年は全国的に猛暑となったが,1995年に関しては名古屋特有の暑さであった。これは,名古屋が南高北低型の気圧配置時において北太平洋高気圧の西縁部にあたるため,南西の風が鈴鹿山脈を越えてフェーン現象をもたらすからである。南高北低型が現れる時の上層気圧場は,200hPa面における南アジア高気圧の中心がイランモードになっていて,東アジアがわずかに北東シフトしている。その結果,日本付近は亜熱帯ジェット気流がリッジを形成しており,西日本に高気圧が張り出しやすい状態になっていた。これに対し,全面高気圧が多く現れた1994年は,南アジア高気圧の中心がイランとチベットの両方にあって,日本列島が広く大陸からの高気圧に覆われている。このため,北太平洋高気圧の西への張り出しが容易となるだけであなく,上層は大陸からの高気圧に覆われて猛暑年となったものと思われる。したがって,名古屋の猛暑傾向は,イランを中心とする南アジア高気圧の盛衰に左右されていることが判明した。
著者
福富 聡 中川 宏治 石塚 満 宮崎 勝
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.1090-1094, 2006-05-25
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

症例は53歳,男性.自殺企図により刃渡り20cmの刺身包丁で腹部を刺し当院に緊急搬送された.腹部CT検査では,胆嚢内腔の高吸収域と腹腔内液体貯留が認められ,胆嚢損傷,腹腔内出血と診断した.全身状態が安定していたため保存的治療を選択した.第5病日の血液検査でT. Bil, CRP値が増加傾向を示し,腹部CT検査で胆嚢周囲の液体貯留の増加を認めたため,経皮経肝胆嚢造影により損傷部位を確認しPTGBDチューブを留置した.以後,腹腔内における液体貯留は減少し,全身状態および肝機能の増悪もみられず,第24病日に退院となった.<br> 腹部鋭的外傷による胆嚢損傷は極めて稀である.本邦では全例に開腹手術が行われており,合併症なく保存的に治癒したのは自験例が初めてであった.胆嚢損傷例に対しPTGBDは有効な手段であり,症例を選んで適切な管理を行えば,開腹手術は必須ではないと考えられた.