著者
尾崎 昭弘 今井 賢治 伊藤 和憲 向野 義人 白石 武昌 石崎 直人 竹田 太郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.779-792, 2006-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
39
被引用文献数
1

「耳鍼に関するこれまでの研究の展開」を主テーマとしてセミナーを行った。セミナーでは、近年の国内外の耳鍼の展開、作用機序や臨床効果のレビューを行い、知見を総括した。耳鍼による肥満の基礎研究では、耳介と視床下部-自律神経系の関連、耳鍼を受ける側の状態の違いに起因する個人差などが紹介された。さらに、作用機序では耳介の鍼刺激により白色脂肪組織 (WAT) に発現したレプチンが、末梢と中枢の両者に存在するレプチン受容体 (Ob-R) に結合して、摂食を抑制することなどが紹介された。耳鍼の臨床効果については、肥満に関する欧米の知見を中心に紹介された。しかし、欧米の論文のレビューでは共通した治療方法、評価指標などが乏しかったため、総合的な結論を下すには至らなかった。鎮痛効果や薬物依存では、臨床効果が期待されたが、禁煙では否定的であった。
著者
今井 正 出濱 和弥 坂見 知子 高志 利宣 森田 哲男 今井 智 山本 義久 岡 雅一
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.273-280, 2016-09-20 (Released:2017-09-20)
参考文献数
27

ろ材の洗浄工程での硝化細菌の活性を維持するために,セラミックスろ材のアンモニア酸化能力に及ぼす乾燥の影響を調べた。25℃でろ材のアンモニア酸化活性測定後,それを海水から出して25℃の異なる3条件(湿度30%と60%の空気中,袋に入れて湿度飽和)で保存した。ろ材を30日目まで保存した後,再度アンモニア酸化活性を測定した。最初の活性と比較して,湿度30%と60%で保存したろ材の活性は,それぞれ6日目と21日目に半減した。湿度30%で保存したろ材の活性は7日目に失われたが,湿度60%では30日目にも3.2%の活性があった。湿度飽和状態では,ろ材は30日目でも約50%の活性を持っており,ろ材のアンモニア酸化細菌と古細菌は最初の状態と同様であった。湿度飽和で保存したろ材を海水に戻し,アンモニア源を添加すると,その活性は3日後に回復した。よって,洗浄工程においてアンモニア酸化活性を維持するためには,ろ材の乾燥を防ぐ必要がある。
著者
加藤 雅康 林 克彦 前田 雅人 安藤 健一 菅 啓治 今井 努 白子 隆志
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.229-235, 2011-05-15
参考文献数
15

近年,クマの目撃件数が増加しており,クマが生息する山間部付近の病院ではクマ外傷を診察する機会が増加することが予想される。当院で過去2年間に経験したクマ外傷の4例を報告し,初期治療での注意点について考察する。クマ外傷は頭部顔面領域に多く,顔面軟部組織損傷の治療にあたっては,眼球,鼻涙管,耳下腺管や顔面神経などの損傷を確認し,損傷の部位や程度に応じてそれぞれの専門科と共同で治療を行うことが必要となる。また,細菌感染や破傷風の予防が必要である。当院で経験した4例と文献報告でも,創部の十分な洗浄と抗菌薬治療,破傷風トキソイドと抗破傷風人免疫グロブリンの投与により重篤な感染を生じることはなかった。しかし,頭部顔面の創部と比較して四肢の創部は治癒に時間がかかった。クマ外傷の診療にあたっては,顔面軟部組織損傷と感染症予防に対する知識が重要と考えられた。
著者
浅野 泰仁 今井 浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告アルゴリズム(AL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.41, pp.1-8, 1998-05-20
参考文献数
6

単一始点最短路問題(SSSP)を解くためのアルゴリズムとしては、Dijkstraのアルゴリズムが有名である。過去、Dijkstraのアルゴリズムを高速化する研究が多く行われてきたが、ソート問題に相当するボトルネックのため、線形時間を達成することはできなかった1997年、M.Thorupが整数枝重み無向グラフでのSSSPを線形時間で解くアルゴリズムを発表した。しかしこのアルゴリズムで使用されている複雑なデータ構造のいくつかは理論通りには実装できない。本研究では、Thorupのアルゴリズムを現在の計算機上で実装するための変更を提案した上で、実際にThorupのアルゴリズムの実装をおこなった。さらに、既存のアルゴリズムとの比較実験および各部分の実行時間計測をおこなった。SSSP is one of the well known classic problems in graph theory and Dijkstra's algorithm for SSSP is also quite popular. Several improvements of Dijkstra's algorithm have been studied, however, they could not accomplish a linear-time owing to its sorting bottleneck. In 1997, M.Thorup proposed a linear-time algorithm for the SSSP on undirected and integer edge weight graph. However, we can not implement this algorithm naively on computers today since the data structures used in the algorithm need a word of huge length. We propose modifications to implement Thorup's algorithm and implement this algorithm. Moreover, compare execution times of the implementation and famous algorithms.
著者
河上 淳一 後藤 昌史 松浦 恒明 寄谷 彩 政所 和也 永松 隆 今井 孝樹 烏山 昌起 原田 伸哉 工藤 憂 志波 直人
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11783, (Released:2020-09-08)
参考文献数
26

【目的】本研究の目的は,腱板断裂患者に対し患者立脚評価を用いた治療方針の予測をすることである。【方法】対象は腱板断裂患者229 名で,初診1 ヵ月以降の治療方針(手術または保存)を目的変数,患者立脚評価を説明変数とした決定木分析と傾向スコア分析を行い,治療方針のオッズ比を算出した。【結果】決定木分析にてもっとも手術療法が選択される手術療法傾向群と,もっとも保存療法が選択される保存療法傾向群に分け,それ以外を中間群とした。傾向スコア分析を考慮したオッズ比は,保存療法傾向群に対して手術療法傾向群で11.50 倍,中間群に対して手術療法傾向群で3.47 倍の手術療法が選択された。【結論】腱板断裂患者の治療方針の予測には,SST における4 つの質問の重要性が示唆された。
著者
今井 正武 平野 進 饗場 美恵子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.1105-1112, 1983 (Released:2008-11-21)
参考文献数
12
被引用文献数
8 7

野菜を漬けた糠床Tと対照床Cにおいて, 120日間熟成し微生物叢と成分の変化を追跡した.成分的変化としては,糖は30日までにほとんど消費され酸に変化した.脂質は増加し,ホルモルN,揮発性塩基性NはT床において60日間で急激に増加した.菌叢の変化としては初めEnterobacterを中心とするグラム陰性菌が優勢であったが, 30日以内にLactobacillus plantarum, Pediococcus pentosaceus, Pec. halophilusが菌叢の大部分を占めた.熟成が進むにつれ, T床では酵母,乳酸菌以外のグラム陽性菌,そしてProteus mirabilis, Klebsiella pneumoniae類縁菌を中心とするグラム陰性菌が多数検出され,それらのバランスが熟成臭に重要な影響を持つと思われた. 糠床中の食塩濃度は酸の生成やグラム陰性菌等の生育に密接な関係を持ち,酸や揮発性塩基性物質等のフレーバーに影響する重要な役割を持っていると考えられる.
著者
後藤 徹 田崎 淳一 東谷 暢也 今井 逸雄 塩井 哲雄 丸井 晃 坂田 隆造 舟木 健史 堀川 恭平 安部倉 友 宮本 享 木村 剛
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.465-470, 2013 (Released:2014-09-13)
参考文献数
7

症例は77歳, 女性. 脳梗塞の既往あり, 胸部大動脈瘤 (70mm) を指摘され当院受診した. 手術ハイリスクのためステントグラフト内挿術 (thoracic endovascular aortic repair ; TEVAR) を施行した. 術前評価にてAdamkiewicz動脈がTEVARに伴い閉塞することが明らかであり, スパイナルドレナージ (cerebrospinal fluid drainage ; CSFD) を挿入したうえで, TEVARを施行した. 外腸骨動脈の石灰化および狭窄のため大腿動脈からのTEVAR用シース挿入困難であり, 後腹膜アプローチにて総腸骨動脈からシースを挿入し, TAGステントグラフトを留置した. シース抜去時に血管壁を損傷したため, 術中から輸血を要し, 外科的に修復して閉腹した. 術後, 播種性血管内凝固症候群 (disseminated intravascular coagulation syndrome ; DIC) となり輸血を要したが, 翌日に意識混濁と右共同偏視を認め, CTで右急性硬膜下血腫を認めたため, 緊急開頭血腫除去術を施行した. 開頭術後は頭部再出血および出血による神経学的後遺症は認めず, 輸血治療によりDICは改善した. TEVAR施行後にendoleakは認めず, 術後47日目に転院となった.  TEVARによる重篤な合併症の1つに対麻痺があるが, その予防目的にCSFDは有用な手段である. 急性硬膜下血腫はCSFDの予後にかかわる重大な合併症であるが, TEVARにおけるCSFD後の急性硬膜下血腫の頻度は報告されていない. 今回われわれは, 早期発見と他科との連携により後遺症を残さず救命に成功した症例を経験したので報告する.
著者
今井 淳
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.365-378, 1997-10-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
47
著者
中村 友梨江 長瀬 敏郎 栗林 貴弘 今井 裕之
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2017年年会
巻号頁・発行日
pp.41, 2017 (Released:2020-01-16)

昨年の年会にて結晶構造を報告した奈良県天川村産のレインボーガーネットについて,詳細な内部組織の観察からラメラ組織の成因を議論することを目的とし,薄片及び研磨片を電解放出型走査電子顕微鏡で観察した.Fine lamellaeはほぼアンドラダイト端成分の層とAlに富む層からなり,先行研究と同様に各層の幅には周期的な変化がみられた.幅が変化する場所はwavy lamellaeに一致する.また,fine lamellaeは幅が変化するところでクランク状に折れ曲がっており,結晶表面に対する高さが1周期分だけ変化する.これらの観察結果からwavy lamellae はfine lamellaeの厚さの変化によるモアレであること,fine lamellaeは平坦ではなく結晶面に対して山なりで階段状の斜面になっていることが明らかになった.さらにfine lamellaeがセクター境界の両側で一対一に対応しており,境界を越えて連続していることからfine lamellaeは成長縞であり,その形状はガーネットが成長したある時点での結晶表面の形状を反映していると考えられる.
著者
増村 千佐子 今井 貴夫 真貝 佳代子 滝本 泰光 奥村 朋子 太田 有美 森鼻 哲生 佐藤 崇 岡崎 鈴代 鎌倉 武史 猪原 秀典
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.72-78, 2017-04-30 (Released:2017-06-01)
参考文献数
15

The differential diagnosis for positional dizziness/vertigo, such as vertigo upon waking up or standing up, includes benign paroxysmal positional vertigo (BPPV), orthostatic hypotension (OH), autonomic dysfunction, and so on. A correct and efficient diagnosis of this condition is important. The purposes of this study were to clarify in which cases is a Schellong test the optimal means of diagnosing OH among patients with positional vertigo and to obtain specific answers to our original questionnaire on dizziness/vertigo among OH patients. All the patients who visited our office complaining of dizziness/vertigo between 2012 and 2015 were asked to perform the Schellong test and to complete our questionnaire. We used a conventional BPPV diagnostic maneuver to diagnosis BPPV. The results were analyzed statistically. A total of 309 cases returned analyzable questionnaire results. Overall, 38 cases were finally diagnosed as having certain BPPV based on the observation of positional nystagmus; 104 cases tested positive using the Schellong test. None of the items in the questionnaire were correlated with either a positive or negative Schellong test result. When 13 Schellong test-positive cases were excluded from the certain BPPV group, three answers to the questions in the questionnaire differed significantly between the certain BPPV group and the Schellong test-positive group. These answers were as follows: a waking up/lying down movement or rolling over in a supine position triggers vertigo, and a specific head position exacerbates vertigo. In conclusion, when a patient complains of vertigo upon waking up or standing up, the following two specific questions should be asked: “Is your vertigo triggered by waking up/lying down or by rolling over in a supine position?” and “Does a specific head position exacerbate your vertigo?” If a patient answers ‘yes’ to either of these questions and positional nystagmus is not observed, a Schellong test should be performed to diagnose OH.
著者
堀内 勇作 今井 耕介 谷口 尚子
出版者
JAPANESE POLITICAL SCIENCE ASSOCIATION
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.161-180,352, 2005-11-10 (Released:2010-04-30)

Political scientists have hypothesized that more policy information leads to a higher voter turnout. To empirically test this hypothesis, we conducted an Internet-based randomized field experiment during Japan's 2004 Upper House election. Japan's 2004 election is ideal for testing our hypothesis because political parties proposed formal policies or “manifestos”. We find that voters are less likely to abstain when they receive policy information about both ruling and opposition parties through their official party websites. The information effects are larger among those voters who were planning to vote but were undecided about which party to vote for.Additionally, our experimental approach avoids the problem of endogenous information acquisition, which is inherent when using observational studies to estimate the causal effects of information on voting behavior. Furthermore, we employ a randomized block design to ensure efficient randomization, and apply a Bayesian statistical model to account for non-compliance and non-response, the two prevailing problems of field experiments.