著者
小牧 瞳 伊藤 晃一
出版者
千葉大学大学院人文公共学府
雑誌
千葉大学大学院人文公共学府研究プロジェクト報告書 = Chiba University Graduate School of Humanities and Study of Public Affairs Research Project Reports (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.324, pp.41-52, 2018-02-28

[要旨] 本稿は、千葉大学教育学部藤川研究室で12年にわたり継続されている「読書会」と呼ばれる活動についての報告である。本「読書会」では、哲学書等の難解な文献を参加者で一文ずつ解釈するとともに、担当者が次回の「読書会」までに、「読書会」の中で行われた議論を論文調にまとめる、「プロトコル」と呼ばれるものを作成する。藤川研究室では、この「プロトコル」作成という営みを大切にしてきた。前半は、現在行なっている「読書会」の様子の記述し、「読書会」発足の経緯と、現在までの変遷をまとめた。後半は、本読書会と、世間一般に呼ばれている典型的な読書会と、大学等で一般的に行われている文献購読形式の演習との違いを、ゲーミフィケーションの知見を用いて比較検討した。他の読書会のゴールは文献を読み、議論することであるが、当「読書会」は「プロトコル」作成が一つのゴールと認知されており、それが参加者のモチベーションを支えている。
著者
久永 明人 伊藤 隆 新沢 敦 横山 浩一 喜多 敏明 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.501-505, 2002-01-20
参考文献数
9
被引用文献数
3

閉塞性睡眠時無呼吸症候群に半夏厚朴湯が有効であった1例を経験した。症例は32歳の男性で, 21歳頃よりいびきと睡眠時無呼吸を指摘され, 27歳時に口蓋垂軟口蓋咽頭形成術を受けたが改善なく, 日中の過度の眠気を自覚するようになり来院した。「咽中炙臠」と考えられる咽喉部不快感を認めたため半夏厚朴湯エキス (ツムラ, 7.5g/日) を投与し, 2週間後には咽喉部不快感が消失した。1ヵ月後にはいびきが消失し, 日中の過度の眠気が自覚的に改善した。投与前と投与5ヵ月後に終夜睡眠ポリグラフィを施行したところ, 無呼吸指数は19.2から10.3に, 無呼吸低呼吸指数は19.2から12.8に改善していた。本例の経過から, 半夏厚朴湯が上気道抵抗を上気道下部において減弱させた可能性があると推察した。
著者
奥脇 昭嗣 伊藤 宏 岡部 泰二郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1977, no.10, pp.1462-1468, 1977
被引用文献数
5

アンモニアーアンモニウム塩-炭水化物混合溶液によりマンガンノジュールを処理し,銅,ニヅケル,コバルト,マンガンおよび鉄の浸出率を求め,最適浸出条件および浸出機構を検討した。 チタンライニング製内容積11のオートク1レーブに炭水化物としてブドウ糖,デンプンあるいはホルムアルデヒド0~591,ユール(平均粒径o.05~o.44,4種)10~1009/1およびアンモニア濃度0~7。5N,アンモニウム塩濃度0~1009μのアンモニアーアンモニウム塩混合溶液500 mJを入れ,温度60~160。C,時間0~6 hr,かきまぜ速度500 rpmの条件下で浸出した。ブドウ糖の場合,微細なノジュールから1時間以内に銅,ニッケルおよびコパルトを80%以上の高収率で浸出するための条件は温慶80。C,ブドウ糖/ノジュール重量比0.16,アンモニア濃度1,5N,アンモニウム塩濃度409μであった。マンガンと鉄の浸出率を抑制するためには,銅,ニッケルおよびコパルトの浸出率は少し低下するが,アンモニウム儘としては炭酸塩が非常に良好であったげデンプンおよびホルムアルデヒドの場合,ブドウ糖の場合よりはるかに高温で浸出する必要カミあり,最適温度は160。Cであった。 銅,二撃ケル,コバルトおよびマンガンの浸出挙動はつねに-体であるから,浸出機構としては,アンモニアーアンモニウム塩混合溶液においてノジュール中の酸化マンガン(y)が還元され,てマンガン(III)アンミンが生成し,それにともなって銅ニッケル,コバルトがアンミン化浸出されるものと考えられる。
著者
伊藤 徹男
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第16回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.103-106, 2019 (Released:2019-06-14)

商用データベースへのアジアや新興国の特許情報収録が不充分な中でWIPOのPATENTSCOPEやASEAN PATENTSCOPEには、各国特許庁が有する特許情報が収録され、利用できるようになった。これまで、商用データベースにおいては収録国も限定的で、また収録言語も主に英語情報であった。PATENTSCOPEには、中国や韓国など東アジアやASEANその他新興国の特許情報が原語ではあるが収録されるに至った。その内容の詳細は、別途「アジア・新興国特許調査における無料データベースの実力検証」という形で報告予定であるが、本発表ではこれら原語データベースを検索するに当たり必要となる「原語」をどのように抽出するかを紹介する。商用英語データベースにおいては、中国特許情報なども書誌・要約だけなく、請求の範囲や全文まで機械翻訳ないしは人間翻訳による英語情報が収録されるようになったが、英語情報には誤字・脱字だけでなく誤訳も存在し、調査担当者も英語情報を補完する目的で各国特許庁データベースにアクセスして原語検索や査読をするようになりつつある。もちろん、若干の検索漏れなどが許される出願前調査や先行技術情報の把握などでは、日本語や英語で検索できる(サーチャーにはフレンドリーな)システムを使うことで充分な場合もあるが、当該国で事業展開を図る場合の権利侵害調査や無効化資料調査においては、網羅的な調査が求められるので、機械翻訳などによる日本語や英語での調査では充分とは言えない場合もある。現状では、多くの調査担当者(サーチャー)は英語以外の各国原語の読み書きができないと思われるので、そのような各国原語を理解できない状況の中で、どのように原語を抽出し、検索式を立てればよいかの指針となれば幸いである。
著者
伊藤 友一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

将来経験するであろう事象について想像する能力は,エピソード的未来思考(以下,未来思考)と呼ばれている。うつ病臨床群では,未来思考において構築されるイメージの具体性が低下するという特徴が確認されている。うつ病の治療においては,場面想定法など未来思考を含んだ治療が存在するが,そもそもイメージする能力の低下が治療効果に影響していることが考えられるだろう。したがって,うつ病における未来思考の特徴について,より正確な理解が求められている。抑うつ感は過去の事象に対して,不安感は未来の事象について抱くものとされる。また,うつ病臨床群や不安症臨床群においては,ネガティブな事象に自動的に思考が向かってしまうという症状が知られている。このことから,過去・未来といった時間的概念とネガティブ・ポジティブといった感情価が結びついてしまっているために,ネガティブな自動思考が生じやすくなっている可能性が考えられる。例えば,未来とネガティブという概念が結びついていたならば,未来思考の際に自ずとネガティブな思考になってしまうことが考えられる。そこで,まずは健常者を対象に,潜在連合テスト(implicit association test)と呼ばれる課題を用いて,時間概念と感情価の連合について検討した。結果として,健常者においては,抑うつ傾向や不安傾向の高低に関わらず,未来に対してポジティブ,過去に対してネガティブな概念が相対的に形成されていることが示された。また,不安の種類(全般性不安と社交不安)による概念的連合の違い(具体的には,「社交不安傾向が低い場合には,全般性不安傾向が高いほど未来をポジティブに捉えられなくなる」というパターン)は見られたものの,抑うつ傾向高群と不安傾向高群の間に有意な概念的連合の違いは確認されなかった。 今後は,臨床群で実際にどのような連合が形成されているかを検討する必要がある。
著者
伊藤 友計
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科スラヴ語スラヴ文学研究室
雑誌
Slavistika : 東京大学大学院人文社会系研究科スラヴ語スラヴ文学研究室年報
巻号頁・発行日
no.21, pp.30-47, 2006-09-30

Настоящая работа является продолжением предыдущей статьи того же автора ""Ирония и гротеск Н. Заболоцкого"" (SLAVISTIKA XVIII; Кафедра славянских языков и литератур Токийского увив. 2002.). Область дискуссии даиной статьи - поздний период творчества Н. Заболоцкого (1932-1958). Конкретные объекты рассмотрения, - ""Я не ищу гармонии в природе"" (1947), ""Портрет"" (1953), ""Прохожий"" (1948), и ""Некрасивая девочка"" (1955). Как часто отмечают исследователи Заболоцкого, в глаза читателей бросается сильное отличие его позднего творчества от раннего. Если учесть, что и сам поэт поставил четкое разделение между ними в его ""Литературном завещание""(1958), здесь ничего удивительного нет. По этому поводу можно согласиться с таким выражением ""путь от неофутриста к поэзии души"" в творчестве 3аболоцкого (Е. Эткинд). Для его раннего творчества ключевые слова-""ирония"" и ""гротеск"", тогда как для позднего- ""этика"" и ""нравственность"" Однако, какие бы большие изменения не происходили с его творчеством, не менялась одна характерная черта поэта : Заболоцкий -поэт зрительный. При этом очень важно понять, что и его взгляды на объекты со временем подвергались изменению. В раннем творчестве его стихотворение- словесное описание его особого, ""остраненного"" видения. В позднем тоже поэт четно наблюдает мир. Но тут уже его глаза стремятся смотреть еще глубже, внутри объекта изображения, его зрение превращается в ""проницающий"" взгляд. Хорошим примером этому служат три последние стихотворения из вышеуказанных.
著者
伊藤 慎吾 市川 亮介 本庄 薫平 河合 雅也 田代 良彦 丹羽 浩一郎 石山 隼 杉本 起一 神山 博彦 高橋 玄 柳沼 行宏 小島 豊 田中 真伸 五藤 倫敏 冨木 裕一 坂本 一博
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.142-143, 2014-06-14 (Released:2014-06-21)
参考文献数
5
被引用文献数
1

A 68-year-old woman was admitted to the hospital with lower abdominal pain. Abdominal CT revealed a long linear high-density foreign object measuring about 3 cm long, which had penetrated the wall of the sigmoid colon. Emergency endoscopy was performed, because the patient was diagnosed as having possible penetration of the sigmoid colon by a fish bone. The emergency endoscopic examination revealed a fish bone penetrating the sigmoid colon, which was removed with grasping forceps. The removed bone measured 3 cm in length and was believed to belong to a sea bream. The patient was treated conservatively without any complications. For intestinal perforation and penetration caused by a fish bone, such as in our case, endoscopic treatment may be considered as the treatment procedure of first choice.
著者
三木 文雄 生野 善康 INOUE Eiji 村田 哲人 谷澤 伸一 坂元 一夫 田原 旭 斎藤 玲 富沢 磨須美 平賀 洋明 菊地 弘毅 山本 朝子 武部 和夫 中村 光男 宮沢 正 田村 豊一 遠藤 勝美 米田 政志 井戸 康夫 上原 修 岡本 勝博 相楽 衛男 滝島 任 井田 士朗 今野 淳 大泉 耕太郎 青沼 清一 渡辺 彰 佐藤 和男 林 泉 勝 正孝 奥井 津二 河合 美枝子 福井 俊夫 荒川 正昭 和田 光一 森本 隆夫 蒲沢 知子 武田 元 関根 理 薄田 芳丸 青木 信樹 宮原 正 斎藤 篤 嶋田 甚五郎 柴 孝也 池本 秀雄 渡辺 一功 小林 宏行 高村 研二 吉田 雅彦 真下 啓明 山根 至二 富 俊明 可部 順三郎 石橋 弘義 工藤 宏一郎 太田 健 谷本 普一 中谷 龍王 吉村 邦彦 中森 祥隆 蝶名林 直彦 中田 紘一郎 渡辺 健太郎 小山 優 飯島 福生 稲松 孝思 浦山 京子 東 冬彦 船津 雄三 藤森 一平 小林 芳夫 安達 正則 深谷 一太 大久保 隆男 伊藤 章 松本 裕 鈴木 淳一 吉池 保博 綿貫 裕司 小田切 繁樹 千場 純 鈴木 周雄 室橋 光宇 福田 勉 木内 充世 芦刈 靖彦 下方 薫 吉井 才司 高納 修 酒井 秀造 西脇 敬祐 竹浦 茂樹 岸本 広次 佐竹 辰夫 高木 健三 山木 健市 笹本 基秀 佐々木 智康 武内 俊彦 加藤 政仁 加藤 錠一 伊藤 剛 山本 俊幸 鈴木 幹三 山本 和英 足立 暁 大山 馨 鈴木 国功 大谷 信夫 早瀬 満 久世 文幸 辻野 弘之 稲葉 宣雄 池田 宣昭 松原 恒雄 牛田 伸一 網谷 良一 中西 通泰 大久保 滉 上田 良弘 成田 亘啓 澤木 政好 三笠 桂一 安永 幸二郎 米津 精文 飯田 夕 榊原 嘉彦 螺良 英郎 濱田 朝夫 福山 興一 福岡 正博 伊藤 正己 平尾 文男 小松 孝 前川 暢夫 西山 秀樹 鈴木 雄二郎 堀川 禎夫 田村 正和 副島 林造 二木 芳人 安達 倫文 中川 義久 角 優 栗村 統 佐々木 英夫 福原 弘文 森本 忠雄 澤江 義郎 岡田 薫 熊谷 幸雄 重松 信昭 相沢 久道 瀧井 昌英 大堂 孝文 品川 知明 原 耕平 斎藤 厚 広田 正毅 山口 恵三 河野 茂 古賀 宏延 渡辺 講一 藤田 紀代 植田 保子 河野 浩太 松本 慶蔵 永武 毅 力富 直人 那須 勝 後藤 純 後藤 陽一郎 重野 秀昭 田代 隆良
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.914-943, 1987
被引用文献数
2

Clavulanic acid (以下CVAと略す) とticarcillin (以下TIPCと略す) の1: 15の配合剤, BRL28500 (以下BRLと略す) の呼吸器感染症に対する有効性と安全性をpiperacillin (以下PIPCと略す) を対照薬剤として, welI-controlled studyひこより比較検討した.<BR>感染症状明確な15歳以上の慢性呼吸器感染症 (慢性気管支炎, びまん性汎細気管支炎, 感染を伴った気管支拡張症・肺気腫・肺線維症・気管支喘息など) およびその急性増悪, 細菌性肺炎, 肺化膿症を対象とし, BRLは1回1.6g (TIPC1.5g+CVA0.1g) 宛, PIPCは1回2.0g宛, いずれも1日2回, 原則として14日間点滴静注により投与し, 臨床効果, 症状改善度, 細菌学的効果, 副作用・臨床検査値異常化の有無, 有用性について両薬剤投与群間で比較を行い, 以下の成績を得た.<BR>1. 薬剤投与314例 (BRL投与161例, PIPC投与153例) 中, 45例を除外した269例 (BRL投与138例, PIPC投与131例) について有効性の解析を行い, 副作用は293例 (BRL投与148例, PIPC投与145例) について, 臨床検査値異常化は286例 (BRL投与141例, PIPC投与145例) について解析を実施した.<BR>2. 小委員会判定による臨床効果は, 全症例ではBRL投与群78.8%, PIPC投与群79.4%, 肺炎・肺化膿症症例ではBRL投与群 (79例) 82.1%, PIPC投与群 (73例) 79.5%, 慢性気道感染症症例ではBRL投与群 (59例) 74.6%, PIPC投与群 (58例) 79.3%の有効率で, いずれも両薬剤投与群間に有意差を認めなかった.<BR>3. 症状改善度は, 肺炎・肺化膿症症例では赤沈値の14日後の改善度に関してPIPC投与群よりBRL投与群がすぐれ, 慢性気道感染症症例では胸部ラ音, 白血球数, CRPの3日後の改善度に関してBRL投与群よりPIPC投与群がすぐれ, それぞれ両薬剤投与群間に有意差が認められた.<BR>4. 細菌学的効果はBRL投与群68例, PIPC投与群57例について検討を実施し, 全体の除菌率はBRL投与群75.0%, PIPC投与群71.9%と両薬剤投与群間に有意差は認められないが, Klebsiella spp. 感染症においては, BRL投与群の除菌率87.5%, PIPC投与群の除菌率16.7%と両薬剤群間に有意差が認められた. また, 起炎菌のPIPCに対する感受性をMIC50μg/ml以上と50μg/ml未満に層別すると, MIC50μg/ml未満の感性菌感染例ではBRL投与群の除菌率69.6%に対してPIPC投与群の除菌率94.7%とPIPCがすぐれる傾向がみられ, 一方, MIC50μg/ml以上の耐性菌感染例ではPIPC投与群の除菌率12.5%に対して, BRL投与群の除菌率は66.7%と高く, 両薬剤間に有意差が認められた.<BR>5. 副作用解析対象293例中, 何らかの自他覚的副作用の出現例はBRL投与群5例, PIPC投与群11例で, 両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>6. 臨床検査値異常化解析対象286例中, 何らかの異常化が認められた症例は, BRL投与141例中45例 (31.9%), PIPC投与145例中28例 (19.3%) で, 両薬剤投与群間に有意差が認められた. 臨床検査項目別にみると, GPT上昇がBRL投与140例中26例 (18.6%), PIPC投与140例中14例 (10.0%), BUN上昇がBRL投与128例中0, PIPC投与127例中4例 (3.1%) と, それぞれ両薬剤投与群間での異常化率の差に有意傾向が認められた.<BR>7. 有効性と安全性を勘案して判定した有用性は, 全症例ではBRL投与群の有用率 (極めて有用+有用) 76.3%, PIPC投与群の有用率の74.8%, 肺炎・肺化膿症症例における有用率はBRL投与群81.0%, PIPC投与群75.3%, 慢性気道感染症症例における有用率はBRL投与群70.0%, PIPC投与群74.1%と, いずれも両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>以上の成績より, BRL1日3.2gの投与はPIPC1日4gの投与と略同等の呼吸器感染症に対する有効性と安全性を示し, とくにβ-lactamase産生菌感染症に対しても有効性を示すことが確認され, BRLが呼吸器感染症の治療上有用性の高い薬剤であると考えられた.
著者
貝沼 茂三郎 伊藤 隆 津田 昌樹 古田 一史 三潴 忠道 嶋田 豊 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.463-467, 2004-07-20
参考文献数
8
被引用文献数
4 10

我々は面状発熱体を使用した新式の電気温鍼器を作成し, 健常人男性2人で, 温鍼器を人体腰部に当て, 放熱温度に関する測定を, 旧式の豆電球方式の電気温鍼器と比較検討を行った。その結果, 旧式と新式を比較すると, 旧式の2段階が新式の5チャンネルに相当することがわかり, また温鍼器中央温度は, 旧式と新式で立ち上がりは同じでほぼ同様の曲線を描き, 10分後には140℃程度に達した。しかし, その後旧式では, 温鍼器の中央温度が上昇し続けたのに対し, 新式ではプラトーに達し, 新式の方が安全性に優れていると考えられた。また19例を対象に, 新式の5チャンネルで有効方剤と電気温鍼耐久時間の関係を検討すると, 10分未満では陽証, 30分以上では陰証 (特に烏頭, 附子含有方剤) の方剤が有効であった。耐久時間と証に一定の相関が認められたことより, 新式の電気温鍼器は証の決定に有効な補助手段に成りうると考えられた。
著者
伊藤 雅之 上村 博昭 Masayuki ITO Hiroaki KAMMURA 尚美学園大学総合政策学部 Shobi University
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
no.27, pp.1-26, 2018-12

本研究の目的は、組織農業経営体(集落営農団体や農業法人)を対象として、経営先進性に焦点を絞った経営実態と販売先に関する地方別特性を明らかにすることである。分析データを収集するため、組織農業経営体を対象として、2018年6 月に郵送配布郵送回収による記名式アンケートを実施した。配布数は1,072件、回収数は286件であった。このうち、無記入で返送されたのが3 件、回答団体が記入されていなのが9 件あり、地方別の分析対象件数は274件である。経営先進性の全体傾向をみたところ、常勤雇用者の確保は喫緊の課題である。特に、中部地方では緊急性が高く、要因の究明と解決方法の検討を要すると思われた。次に経営先進性を比較したところ、「関東地方と近畿地方」において、「生産・栽培技術や加工技術のレベルアップ」と「販路が着実に拡大」で有意な差が観察された。いずれの指標でも、関東地方のほうが近畿地方よりもあてはまり度合いが高かった(先進性が高かった)。このことから、関東地方の組織農業経営体では大都市圏に位置していることを活かした直営の直売所での、ならびに実需者への売上が順調に拡大している一方で、近畿地方の組織経営体では大都市圏に位置しているメリットを活かしきれていない組織経営体が相対的に多いのではないかと推測された。
著者
佐藤 幹也 田宮 菜奈子 伊藤 智子 高橋 秀人 野口 晴子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.287-294, 2019-06-15 (Released:2019-06-21)
参考文献数
22

目的 全国の介護報酬明細個票(介護保険レセプト)から介護サービス利用額を利用時間に換算し,在宅要介護者のフォーマルケア時間を要介護度別に推計して在宅介護の公平性を検討した。方法 調査対象は2013年6月に介護保険在宅介護サービス(居宅系サービスと通所系サービスを合わせた狭義の在宅介護サービス,および短期入所サービスに細分化)を利用した全国の65歳以上の要介護者(要介護1-5)2,188,397人である。介護報酬の算定要件に基づいて介護保険サービスのサービス項目ごとにケア時間を設定し,利用者ごとに1か月間の利用実績を合算して得られたケア時間を30で除したものを1日当たりのフォーマルケア時間として,これを男女別に層化した上で要介護度別に集計した。結果 居宅系サービスと通所系介護サービスの狭義の在宅介護サービスおよび短期入所サービスを合算した1日当たりの総フォーマルケア時間は,要介護1で男性97.4分と女性112.7分,要介護2で118.3分と149.1分,要介護3で186.9分と246.4分,要介護4で215.2分と273.2分,要介護5で213.1分と261.4分であった。短期入所サービスのフォーマルケア時間は要介護度とともに増加したが,短期入所を除いた狭義の在宅介護サービスのフォーマルケア時間は要介護3で頭打ちとなり要介護4-5ではむしろ減少した。狭義の在宅サービスをさらに居宅系介護サービスと通所系介護サービスに細分化すると,前者は要介護度に応じて増加したが,後者は要介護3で頭打ちとなっていた。結論 在宅介護サービスの利用量を時間の観点から評価した本研究の結果からは,介護ニーズが増大する要介護4-5の在宅要介護者でむしろフォーマルケアの供給が減少しており,介護保険制度によるフォーマルケアは必ずしも介護ニーズに対して公平ではないことが分かった。在宅介護の公平性を保ちつつ介護保険制度の持続可能性を高めるためには,高要介護度者に対して時間的効率性の高い在宅介護サービスを推進するなどして高要介護度者のフォーマルケア時間を増加させるような施策を推進する必要があると考えられた。
著者
伊藤 亜希 小林 正治 松崎 英雄 田中 潤一 大畠 仁 高野 伸夫 齊藤 力
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.229-237, 2007-12-15 (Released:2011-02-09)
参考文献数
29
被引用文献数
3 8

This study investigated the relation between personality characteristics and types of jaw deformities and evaluated the influence of orthognathic surgery on personality characteristics.The subjects consisted of 52 patients (16 males and 36 females) in whom jaw deformities were surgically corrected and the mean age at surgery was 26.3 years. They were divided into four groups based on the types of jaw deformities such as mandibular protrusion with or without maxillary retrusion, mandibular retrusion with or without maxillary protrusion, open bite and asymmetry.Personality characteristics were analyzed using Minnesota Multiple Personality Inventory (MMPI) and Rosenberg's Self-Esteem Scale before and six months after surgery, and the Kruskal Wallis test and t-test were used for statistical analyses.Preoperative MMPI scores were not significantly different from normal values of their generation as a whole, but the distribution of Depression Scale and Self-Esteem Scale scores among the four groups were significantly different. The Depression Scale score in the asymmetry group was higher than those in the other groups and the Self-Esteem Scale score in the asymmetry group was lower than those in the other groups. After surgery, the Depression Score decreased in the asymmetry group and the Self-Esteem Scale score increased in all groups except the open bite group.In conclusion, it is considered that patients with asymmetry are likely to have an inferiority complex and orthognathic surgery for such patients has a favorable effect on personality characteristics because the deformity and the change of full-face appearance are easily recognized by themselves.
著者
伊藤 直之 村岡 登
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.21-25, 2002-01-20
参考文献数
9
被引用文献数
3 1

一般家庭で飼育されている犬1, 542頭 (1カ月齢~17歳; 雄709頭, 雌833頭; 38品種) を対象に, <I>Isospom</I>のオーシスト検出状況を年齢, 飼育環境, 由来, 性別, 品種および糞便の性状とともに調査した. その結果, 1, 542頭中96頭 (6.2%) で<I>Isospom</I>オーシストが検出された. <I>Isospora</I> オーシスト検出率は, 1~6カ月齢群, 室内飼育群およびペットショップ・ブリーダー由来の犬で高かった. 性別による検出率の違いは認められなかった.品種では雑種において検出率が低く, チワワおよびパピヨンで高かった. 糞便の性状に関しては軟便ないしは下痢便の犬で検出率が高かった. さらに, 粘液や血液が混入した糞便を排泄している犬でも高い検出率が得られた.検出されたオーシストはその大きさから, <I>I. canis</I>および<I>I. ohioensis</I>であると考えられた.-
著者
伊藤 孝行 柴田 大地 鈴木 祥太 山口 直子 西田 智裕 平石 健太郎 芳野 魁
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

オンライン上のクラウド(Crowd)スケールの議論の支援が次世代の民主主義プラットフォームとして注目を集めている.大規模な合意を形成できれば,これまでには不可能だった,大規模な人数による意思決定が可能になる.そこで,筆者らは複数の実フィールドでオンラインの議論支援システムCollagreeを開発し,幾つかの社会実験を行い有用性を確認している.ここでは,炎上を防ぎながら議論を適切にリードするために人間のファシリテータがオンライン議論をファシリテートした.課題は,規模が非常に大きいことから,人手でファシリテーションを行うのが困難な点である.オンラインで24時間休むことなく議論を管理することは非常に難しい.そこで本研究では,自動ファシリテーションエージェントを実装することで,大規模な人数の人たちの意見を効率的に収集し,合意を形成するシステムを実現する.評価として,名古屋市と協力して,名古屋市次期総合計画の中間案に対する市民の意見集約の場の一つとして,本システムを導入した.その結果,自動ファシリテーションエージェントは予想以上にうまく動作し,参加者からの投稿数が増加する傾向が見られた.
著者
伊藤 修一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.220, 2009

<U>I はじめに</U> 東京湾アクアラインが開通してから11年以上経過した.<BR>アクアラインは千葉県木更津市と神奈川県川崎市との間を結び,開通前には両都市間の移動には約90分もかかっていたが,開通後には約30分と3分の1に短縮された.<BR>さらに,木更津市などから東京都区内や横浜・川崎駅との間を結ぶ,アクアライン経由の高速バスの路線網は拡大し続けている.そのバス利用者の増加率は毎年10%程度を維持している.<BR>このことは,自家用車を自由に利用できない者にとっても,東京や横浜方面と南房総との間の交通利便性が向上していることを示している.本研究では,木更津市内に通学するという,アクアラインの利用可能性が高い大学生を対象として,特に東京や横浜方面への移動におけるアクアラインの利用状況に注目して,個人の特性との関係について考察する.<BR><U>II 研究方法</U> 対象者は木更津市の清和大学に通学する学生である.このうち,発表者が担当する人文地理学Iの2008年7月3日の受講者を対象としている.対象者に対して,質問紙による調査を30分程度かけて実施し,68人から有効回答を得た.<BR>質問内容はアクアラインの利用に関するものと,都区内と横浜市内への訪問に関するものに分けられる.アクアラインの利用に関しては,アクアラインの認知とその利用の有無や頻度,利用した際の交通手段,出発地と最終目的地,その間の所要時間などについて質問した.<BR>都区内と横浜市内への訪問に関する質問は,アクアラインを利用するかどうかを問わずに,それぞれの地域へ訪問する際のルートとその所要時間を尋ねた.<BR><U>III アクアラインの利用とルート選択</U> <U>1) 対象者の特徴</U> 67人は千葉県内に居住し,そのうち,52人は木更津市と隣接する市原市や君津市,富津市,袖ヶ浦市から通学している.ただし,入学時に千葉県内へ転入した者は29人おり,このうち27人は木更津市に居住している.そのため,対象者は平均19.7歳であるが,高校卒業前から県内に居住していた者は平均16.5年現住地に居住しているのに対して,県外出身者は0.38年と短い.<BR>また,自動車運転免許所有者は28人であるが,このうち全く運転しない者が12人おり,免許を持たない者を含めると51人が日常的に自動車を運転しない.<BR>そのこともあって,29人が最終目的地として都区内に1度も訪れたことがなく,横浜市内へは40人が1度も訪問したことがない.また,両地域ともに訪問経験がない者は22人と,東京大都市圏縁辺に居住していることもあって行動圏の狭い者が少なくない.特に県外出身者は,都区内に訪れたことがある者は11人,横浜市内には6人のみが訪問経験があり,県内出身者よりも少ない.<BR><U>2) アクアラインの利用</U> 対象者のうち,60人はアクアラインを1度以上利用している.このうち定期的な利用者は6人である.他は44人がこれまでに往復で平均4.9回利用しており,このうち9人は10回以上利用している.<BR>こうした利用回数の,出身地による違いは小さいが,その利用内容は,出身地によって大きく異なる.県内出身者がアクアラインを利用して最もよく訪れる目的地は,都区内と,横浜市内7人を含む神奈川県がともに11人と最も多い.これらの地域へは,11人が食事や買い物を目的としない観光で訪れており,7人が食事や買い物を目的として訪問している.<BR>一方,県外出身者には,都区部や神奈川県が目的地だった者は8人と県内出身者と比べて少ない.17人は出身地との移動の際に利用しており,引越しなどで短い期間にアクアラインを利用する機会が多い.<BR>こうした目的地までは,県内出身者のうち,24人は他人が運転する自動車で移動しているのに対して,県外出身者は18人が高速バスで移動しており,その移動手段に違いもある.<BR><U>3) 東京・横浜方面へのルート選択</U> アクアライン経由のルートを選ぶ理由として,47人が早く目的地へ着けることを挙げている.実際,36人はアクアライン経由のルートのみを利用している.<BR>一方で,アクアラインを経由しないでその目的地まで行ったことがある者も22人と少なくない.このうち15人は鉄道を利用して移動している.アクアラインを経由した場合とそうでない場合の所要時間がわかる17人のうち,それを経由した場合の所要時間のほうが長い者は1人のみに過ぎない.<BR><U>IV おわりに</U> アクアラインの利便性はよく認知され,非日常的な行動圏の拡大に貢献している.ただし,自家用車に同乗できるかどうかという環境は,大都市圏中心部への行動に影響している.これは,この地域に居住する交通弱者にとっては,それが十分ではない可能性を示唆している.