著者
佐々木 中
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.47-68, 2007-06-30 (Released:2017-07-14)

さまざまな宗教現象において、「享楽」と呼ぶべき何かがあると考えうる時点は少なくない。宗教の享楽とは何か。この問いに答えるための予備考察として、ジャック・ラカンの晩年に見られる「享楽の類型学」と呼びうる部分を簡潔に整理し、享楽の定義から始めて「絶対的享楽」「二つのファルス的享楽」および「対象aの剰余享楽」という、いくつかの享楽の類型を提示する。そして、それらの概念が明らかに「宗教的」なものと関係があり、宗教現象分析のための概念として使用可能であることを指摘する。また、彼が最後に提出した「大他者の享楽=女性の享楽」が、他の享楽を「超過する」ものであるばかりか、神秘家の伝統に関わるものとして、精神分析自体の「歴史的限界」を露わにすることを呈示する。
著者
佐々木 良輔
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.283_3, 2016 (Released:2017-02-24)

●近年、子どもの保健室利用数が増え、その訴求内容も多様化・深刻化している。そのため、養護教諭を複数配置にする等、定数増員が社会から要請されている。一方、男性の養護教諭の配置数が最近徐々に増えてきた。今後予想される養護教諭の採用数拡大に対し、男性もその需要に応えていく必要がある。●そこで本研究では、学校において子どもたちには絶好の保健指導の機会となりえる、救急処置(傷病の応急手当等)に焦点を当てる。中でも、男性養護教諭の救急処置に対する意識を明らかにし、今後、女性だけではなく男性ももっと積極的に養護教諭という職業として子どもの身体教育に携われるような学校環境を推進・構築するための資料の獲得を目的とした。●方法は、「第5回男性養護教諭友の会(2014年)」の参加者を対象に、“一次救命処置”・“応急手当”・“その他の対応”等を内容とした質問紙を用いて、集合調査を行うこととした。●まとめると、養護教諭に男女は関係なく、専門職として幅広い知識と技術を持つため研修を受け学び実践するべきであって、その上で、男性養護教諭は「父性」等といった“男性性”を活かし、児童生徒対応を行うべきであるとの結論に至った。
著者
堀内 由樹子 坂元 章 秋山 久美子 寺本 水羽 河本 泰信 松本 正生 村井 俊哉 佐々木 輝美 渋谷 明子 篠原 菊紀
出版者
NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-11, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
31

本研究では,ゲーム障害尺度であるIGDT-10 (Király et al. 2017, 2019)に基づいて,子どもから大人まで適用できる日本語版の尺度を作成した.IGDT-10の著者の協力のもと,原文の項目文をより平易な日本語の文章に変更することを行った.作成した尺度について,小中学生を対象とした学校での一斉回収による郵送調査(N=1006),高校生を対象としたウェブ調査(N=219),18–79歳の大人を対象としたウェブ調査(N=1308)の3つの調査により,信頼性及び妥当性の検討を行った.対象者は,年間でのゲーム利用者及び過去にゲーム利用をしたことがある経験者であった.結果として,クロンバックのα係数が3つの調査のいずれでも0.8を超えており,本尺度は信頼性があることが示された.また,確認的因子分析及び外的基準となる尺度及び変数との相関の結果から,因子的妥当性及び基準関連妥当性があることが示された.
著者
安田 康晴 佐々木 広一 坂口 英児 山本 弘二 吉川 孝次 友安 陽子 上杉 香鈴 二宮 伸治
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.806-815, 2022-10-31 (Released:2022-10-31)
参考文献数
20

背景:救急現場で使用されている眼球保護具の形状はさまざまであり,それら形状別の飛沫防御効果を検証する必要がある。目的:救急活動時に使用されている眼球保護具の形状による飛沫防御効果を検証し,適切な眼球感染防御対策について検討すること。対象:ゴーグルなど着用なし,眼鏡,全周カバー付きゴーグル,スポーツタイプゴーグル,シールドグラス,フェイスシールド,シールド付きヘルメット。方法:模擬飛沫発生装置により,救急活動での傷病者と救急隊員の距離・水平角・方位角別の眼球部の模擬飛沫付着を比較・検討した。結果:模擬飛沫の付着は本研究で用いたフェイスシールドでは認められなかったが,他の眼球保護具では認められ,眼鏡やスポーツタイプのゴーグル単体より,シールドグラスなどを併用することにより飛沫防御効果が高まった。まとめ:顔面全体を覆うフェイスシールドの着用や眼鏡やゴーグルにシールドグラスなどを併用することにより眼球への飛沫曝露リスクを軽減させることが示唆された。

3 0 0 0 OA 日本歌学全書

著者
佐々木弘綱, 佐々木信綱 共編並標註
出版者
博文館
巻号頁・発行日
vol.第4編 後拾遺和歌集 第1−20(藤原通俊奉勅編) 相模集(相模) 経信卿母集(源経信母) 高陽院歌合 源経信判−寛治8年, 1891
著者
中﨑 公仁 岡 真一 佐々木 祐典 本望 修
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.2, pp.93-97, 2015-02-20 (Released:2015-03-05)
参考文献数
17

われわれは基礎研究と臨床研究において, 脳梗塞に対して, 骨髄間葉系幹細胞の経静脈的投与により, 機能回復が得られることを報告してきた. 2007年より自家骨髄間葉系幹細胞を用いた, 脳梗塞に対する臨床研究を行い, 同治療の安全性と有効性を報告した. その結果を踏まえて, 2013年より, 医師主導治験 (Phase III) に取り組んでいる. この治験は, 薬事法 (平成26年11月25日より,「医薬品, 医療機器等の品質, 有効性及び安全性の確保等に関する法律」に改名) に基づき, 厳格な品質管理のもと, 細胞医薬品 (細胞生物製剤: 自己骨髄間葉系幹細胞) を製造し, 適応となった症例を実薬群, プラセボ群へランダム化二重盲検法で割り付けて, 同治療の有効性を検証し, 薬事承認を目指している. 本稿では, 脳梗塞に対する骨髄間葉系幹細胞移植治療の臨床研究と, 現在進行中の医師主導治験の概要について報告する.
著者
久保田 均 久永 直見 高橋 幸雄 佐々木 毅
出版者
独立行政法人労働安全衛生総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

建築業従事者の職業性難聴について、三重県建設労働組合の男性組合員を対象に難聴の原因として考えられる各種有害因子へのばく露、或いは複合ばく露との関連を探る目的で調査研究を実施した。また聴覚に関して、従来の質問紙調査による自覚的聴覚と定期健診時の聴力検査結果(客観的聴覚)との関連を明らかにするための調査も行った。騒音ばく露に振動ばく露が加わると難聴発症のリスクが増幅、そこへ有機溶剤ばく露が加わることでリスクは更に増幅することがわかった。一方、難聴自覚症有り群となし群で、健診時聴力検査の有所見率に差があるか否かの検定を行ったところ、難聴自覚症無し群でも客観的聴覚の有所見率が高まる傾向がみられた。
著者
大出 恭代 並木 美奈 川名 孝幸 喜納 勝成 中澤 武司 川島 徹 三宅 一徳 佐々木 信一
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.25-31, 2022-01-25 (Released:2022-01-25)
参考文献数
13

病院診療において,有症状者COVID-19疑い患者の診断検査と無症状病原体保有者のスクリーニング検査は区別して考えなくてはならない。今回我々は有症状でCOVID-19疑い患者の診断検査と無症状病原体保有者のスクリーニング検査を実施した2群について,抗原定量検査の有効性と問題点について検討した。対象は2020年11月から2021年5月の期間で,RT-PCR検査とSARS-CoV-2抗原定量検査を同日提出された有症状COVID-19疑い患者群277検体,無症状者スクリーニング検査群1,781検体の合計2,058検体について後ろ向き解析を行った。その結果,有症状COVID-19疑い患者群では抗原定量値 ≥ 0.36 pg/mLを陽性とした場合は感度95.9%,特異度80.4%,無症状者スクリーニング検査群では抗原定量値 ≥ 0.83 pg/mLを陽性とした場合は感度100%,特異度99.5%であった。今回の解析で,抗原定量検査は無症状者のスクリーニング検査としては非常に高い有効性が認められたが,一方で同検査を有症状患者の診断目的で用いる場合は,感度・特異度が若干低下するため,その特性をしっかりと理解し,臨床症状,画像診断,PCR検査や抗体検査を組み合わせた総合的な判断が必要である。
著者
石橋 恭之 木村 由佳 佐々木 英嗣 千葉 大輔 石橋 恭太
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究の目的は、再生誘導医薬(HMGB1ペプチド)を用いて関節内組織修復を促進する新たな治療戦略を開発することである。関節軟骨は一度損傷すると自然治癒困難と考えられているが、HMGB1ペプチドにより関節内に間葉系幹細胞誘導することで組織修復を促進することが可能となる。このような治療戦略は従来の再生医療とは異なるコンセプトであり、関節軟骨のみならず、半月板や靱帯修復に応用できる可能性を含んでいる。
著者
中村 和之 酒井 英男 小林 淳哉 小田 寛貴 浪川 健治 三宅 俊彦 越田 賢一郎 佐々木 利和 瀬川 拓郎 中田 裕香 塚田 直哉 乾 哲也 竹内 孝 森岡 健治 田口 尚 吉田 澪代
出版者
函館工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、14~16世紀のアイヌ文化の状況を明らかにすることである。この時期は、近世のアイヌ文化の成立期であるが、文献史料と考古学資料が少ないため、状況がわかっていない。そのため、漢語・満洲語・日本語史料の調査を行うと同時に、遺物の成分分析や年代測定、それに遺跡の電磁探査など、さまざまな分析方法で情報を収集した。その結果、14~15世紀の北海道でカリ石灰ガラスのガラス玉が発見された。本州でほとんどガラス玉が出土しないので、アムール河下流域からの玉と考えられる。この時期は、元・明朝がアムール河下流域に進出した時期に重なるので、北方からの影響が強くアイヌ文化に及んだことが推定できる。
著者
高橋 薫 鈴木 道代 佐々木 さくら
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46087, (Released:2022-10-20)
参考文献数
7

本実践では創価大学の「学術文章作法Ⅰ」を履修する留学生を対象に,文章診断ソフト「文採」を活用して文章の言語形式へのフィードバックを試み,意見文を自己推敲させた.本研究の目的はフィードバックを手がかりに,学習者が適切に日本語の誤用を自己推敲できるか否かを確認することである.フィードバック前後の意見文を比較したところ,「副詞率」「話し言葉」「助詞の誤り」において,問題箇所の出現頻度が有意に減少した.次に,効果量の大きかった「話し言葉」「助詞の誤り」について修正の適切さを確認したところ,「話し言葉」の約8割,「助詞の誤り」の約7割は適切に修正できていた.しかし,フィードバックの適切性を見ると,「話し言葉」の約9割が適切であったのに対し,「助詞の誤り」へのフィードバックは4割程度に過ぎず,「助詞の誤り」については教師の介入が必要であることがわかった.
著者
佐々木 輝美 林 志修
出版者
NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.53-59, 2018-11-30 (Released:2019-06-17)
参考文献数
15

本研究では,ゲームレーティングの客観的な基準を探った.その基準を明らかにするため,ゲームソフトのレーティングを行っているNPO法人のCEROが公表した一連の調査データの中の性表現,暴力表現,および反社会的行為表現に関するデータを利用し,次の3点を検討した.1)各々の表現項目がどの年齢にふさわしいかの判断について,保護者とゲームユーザーとの間に統計的に有意な差があるかどうか.2)有意な差がある場合は,なぜそのような差が生じるのか.そして,3)レーティングの客観的な基準を何に求めたらよいのか.その結果,1)保護者とゲームユーザーとの間には明らかな有意差が見られ,2)その理由として,保護者については第三者効果が,そしてゲームユーザーには脱感作効果が働いていることが推測された.そして,3)ゲームユーザーの中でも,女性ライトユーザーがバランスのとれた判断をしていることがわかり,客観的なレーティング基準として役立てることが提案された.
著者
菅野 靖幸 加藤 泰之 山内 秀昂 陣野 太陽 伊達 勇祐 佐々木 健一 清水 篤 木山 宏
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.288-290, 2020-09-15 (Released:2020-09-30)
参考文献数
18

症例は65歳男性.僧帽弁位機械弁のためワーファリンを内服していたが,エドキサバンに変更された3カ月後に急性心不全を呈し当院に搬送された.透視下での機械弁開放制限と僧帽弁圧較差の上昇を認め,血栓弁と診断し緊急再僧帽弁置換術を実施した.術後は良好に経過し,合併症なく術後10日目に自宅退院となった.機械弁使用症例に対しては,ワーファリン使用の必要性についてかかりつけ医や患者本人および患者家族への十分な啓蒙が必要である.
著者
森 浩美 飯﨑 あずさ 佐々木 俊子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.27-35, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
18

本研究の目的は、短期入院で計画手術を受けた学童期の子ども (以下、子ども) の思いを明らかにすることである。研究協力が得られた子ども13名に半構成化面接を行い、質的記述的に分析した。その結果、【入院・手術に向きあえない】【入院・手術は自分の問題として臨みたい】【入院・手術に負けそうだ】【入院中は周りの人に支えられた】【つらくても取り組んだから入院・手術は肯定できる】【退院後の生活に自分なりに向きあう】という6つのカテゴリーが抽出された。短期入院で計画手術を受けた学童期の子どもは、困難な状況にあっても自分にできることとやるべきことをやりながら、前に進むものととらえられた。看護師の役割は、入院・手術という体験が子どもにとって成長の機会となるとように支援することであると考えられた。
著者
佐々木 瑞枝
出版者
横浜国立大学留学生センター
雑誌
横浜国立大学留学生センター紀要 (ISSN:13406493)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.38-54, 1994-01

The 'Communicative Approach', originated in Europe in the 1960's, encompasses a variety of methods that apply new concepts in the field of foreign language teaching. This term literally refers to a combination of language teaching approaches that aim to improve communicative language skills, discourse skills, and social linguistic skills. In Japan, for the last 40 years, the audio-lingual method, which emphasizes drilling and memorization, has been the main focus of elementary Japanese language teaching. But this authorized teaching method has come under criticism in recent years, and this has caused a certain amount of consternation amongst Japanese teachers accustomed to the previously established teaching system. This paper will propose a new style of teaching which combines the best of audio-lingual method and the communicative approach.
著者
佐々木 亘
出版者
経済社会学会
雑誌
経済社会学会年報 (ISSN:09183116)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.98-109, 2019 (Released:2021-09-10)

Martha C. Nussbaum has argued that Sen should endorse one definite list of valuable capabilities, if he wants to apply the capability approach to social justice. And she has herself drawn up such a list of capabilities, i.e. 1.Life, 2.Bodily Health, 3.Bodily Integrity, 4.Sense, Imagination, and Thought, 5.Emotions, 6.Practical Reason, 7.Affiliation, 8.Other Species, 9.Play, and 10.Control over One's Environment. On the other hand, Amartya Sen has refused the listing of capabilities. The search for given, pre-determined weights is not only conceptually ungrounded, but it also overlooks the fact that the valuations and weights to be used may reasonably be influenced by our own continued scrutiny and by the reach of public discussion. According to Sen, it would be hard to accommodate this understanding with inflexible use of some pre-determined weights in a non-contingent form. Nussbaum says that the list itself is open-ended and has undergone modification over time, but her list is fixed, like a grand mausoleum to one fixed and final list of capabilities. On the other hand, according to Sen, the capabilities are the substantive freedoms to choose a life that has value. But, there are many sorts of freedoms. There may be a terrorist who wants the liberty of performing terrorism for his revenge. Now, Thomas Aquinas has said as follows. The order in which commands of the natural law are ranged corresponds to that of our natural tendencies. Here, there are three stages. There is in man, first, a tendency towards the good of the nature he has in common with all substances. Natural law here plays a corresponding part, and is engaged at this stage to maintain and defend the elementary requirements of human life. Secondly, there is in man a bent towards things which accord with his nature considered more specifically, that is in terms of what he has in common with other animals. Thirdly, there is in man an appetite for the good of his nature as rational, and this is proper to him, for instance, that he should know truth about God and about living in society. I would like to make one suggestion here. As far as the capabilities are human ability, they can be classified according to human nature. And according to Aquinas, there are three stages in human nature. So, we can make up the list of capabilities according to these stages. To supply something both new and old is the aim of classical study.