4 0 0 0 OA ラジカル重合

著者
上垣外 正己 佐藤 浩太郎
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.234-249, 2009 (Released:2013-03-29)
参考文献数
54
被引用文献数
3

ラジカル重合は,活性の高い中性のラジカル種を成長種とする重合反応であり,古くから学問的にもさまざまな研究がなされてきた。一方では,その高い反応性と汎用性,水などの極性物質に対する高い耐性から,工業的にも最も広く用いられている重合の一つである。さらに近年では,リビングラジカル重合の開発により,さまざまな精密高分子合成にも用いられるようになり,ラジカル重合は新たな展開を迎えている。本稿では,ラジカル重合性モノマー,ラジカル重合における開始,成長,停止,連鎖移動反応の 4 つの素反応,ラジカル共重合など古典的なラジカル重合における基礎的な内容から,リビングラジカル重合,さらにラジカル重合における立体構造制御にいたる最近の発展について概説する。
著者
佐藤 未央子
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.49-62, 2014-11-15

映画界の隆盛を背景に、「青塚氏の話」は映画製作と受容をめぐる人々の欲望をアクチュアルに批評した。本作において映画は、監督の中田、観客の男を繋ぐ媒介となりながら、女優由良子の<性>を前景化し、視覚的快楽を提供するメディアとして描かれた。一九二〇年代半ばから内面性の表現が重視され始めていた映画は、原初的な記録媒体あるいは<見世物>に押し戻されているのである。男が一人快楽を貪るさまは、受容者による製作者からの所有権奪取を示唆していた。本作では映画の流通過程における主体性が問われ、谷崎が映画に見出した「民衆芸術」性が仮託されていたと考えられる。谷崎の<映画小説>群に通底する批評意識を、「青塚氏の話」からも看取できた。
著者
佐藤 弥
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.332-340, 2019-09-30 (Released:2020-10-01)
参考文献数
30

表情は感情コミュニケーションの主要メディアである。しかし, 表情処理がどのような心理・神経メカニズムにより実現されるかは明らかではない。本稿では, この問題を調べた我々の一連の心理学・神経科学研究の知見を紹介する。心理学および神経科学研究から, 以下のような知見が示された。 (1) 表情の感情情報は無意識の段階で処理されており, こうした表情への感情処理に関係して扁桃体が約 100 ミリ秒の段階で活動する, (2) 感情表情は中性表情よりも素早く検出されており, その検出パフォーマンスに視覚野における約 200 ミリ秒からの強い活動が関係している, (3) 表情に対しては自動的な表情模倣が喚起され, これにはミラーニューロン領域を構成するとされる下前頭回の約 300 ミリ秒の段階の活動が関係する。こうした知見から, 表情に対して, 感じる・見る・まねるという一連の心理的情報処理が, 扁桃体・視覚野・下前頭回から構成される神経ネットワークにより数百ミリ秒のうちに実現されることが示唆される。
著者
神田 幸彦 佐藤 智生 吉田 晴郎 小路永 聡美 熊井 良彦 高度~重度難聴幼小児療育GL作成委員会
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.8-17, 2022 (Released:2022-07-31)
参考文献数
13

昨年「小児人工内耳(以下CI)前後の療育ガイドライン(以下GL)」が発刊され,先行の厚労省研究結果を抜粋して解説した。全国の調査で,新生児聴覚スクリーニング(以下新スク)を受けたCI小児は2,358名中59.3%未満であり,地域格差が見られた。また,低年齢の両耳装用児が増加していた。補聴器装用開始平均年齢が1歳未満である小児の割合は新スクを受けたCI児(約75%)がそうでないCI児よりも10倍近く多かった。通常小学校に在籍する小児の療育方法では,聴覚活用療育が約70%であり,聴覚活用をすることで通常学校により進学しやすい。新スクにより早期に難聴が診断されることで,難聴児が聴覚を活用できる方向性が明らかになっていた。CI難聴児の療育格差改善のため厚生労働省研究が採択されその成果の一つである「CI装用前後の療育のGL」は,多数のエビデンスレベルの高いCQと解答で構成され,信頼性のある重要な今後も活用できるGLと考えられた。
著者
木村 容子 清水 悟 杵渕 彰 稲木 一元 佐藤 弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.147-153, 2010 (Released:2010-07-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

緒言:大柴胡湯が有効な全身倦怠感や易疲労感の患者タイプを多変量解析により検討した。対象と方法:全身倦怠感や易疲労感を訴え,随証治療にて大柴胡湯を投与した患者53名を対象とした。随伴症状,体質傾向,舌所見,腹部所見,年齢,性別,身長,体重,高血圧・高脂血症・糖尿病の有無,さらに,1カ月後の胸脇苦満の改善の有無を加えた計46項目を説明変数とし,全身倦怠感や易疲労感の改善の有無を目的変数として,多次元クロス表分析により最適な説明変数とその組み合わせを検討した。結果:大柴胡湯によって全身倦怠感や易疲労感を改善できる患者タイプは,「発汗」,「のぼせ」,「喉のつまり感」,「胸の圧迫感」などの自覚症状を伴う人であった。特に,発汗の症状があって治療後に胸脇苦満が軽減する場合に,大柴胡湯による全身倦怠感や易疲労感の改善が最も関連する結果となった。考察:「喉のつまり感」や「胸の圧迫感」などの気うつが背景にあると推測された。発汗は頭を含めた上半身に多い傾向があり,また,大柴胡湯による全身倦怠感や易疲労感の改善は,初診時の胸脇苦満の部位(右,左,両方)よりもむしろ治療後に胸脇苦満の軽減を認める人に認められやすいと考えられた。
著者
佐藤 正之
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.139-144, 2005 (Released:2006-07-14)
参考文献数
11
被引用文献数
1 7

音楽の脳内処理過程について, 扁桃体の機能を中心に述べた。失音楽症例の過去の報告から, 音楽の知覚能力と情動反応とは二重解離を呈しており, 両者が独立した脳内過程を有していることが示唆された。しかし扁桃体病変についての記載はなく, 音楽的情動への同部位の関与は明らかでなかった。Positron emission tomography (PET) による音楽的情動に関する脳賦活化実験では, 不快感を惹起すると想定された不協和音の聴取時に, 予想された扁桃体の活性化はみられなかった。著者は音色の認知についてのPETによる脳賦活化実験を行った。同じ旋律に対し, 音色に注目して聴いた時とリズムに注目して聴いた時とで脳血流の変化を調べた。その結果, 前者では後者に比し, 扁桃体, 海馬傍回, 帯状回, 側頭葉前部などに両側性に有意な活性化がみられた。扁桃体の活性化の機能的意義として, 進化論的側面と情動的評価から考察した。音楽を刺激に用いることにより, 情動の脳内過程に新たな知見が得られるものと期待される。
著者
田中 利枝 高橋 高人 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.85-97, 2016-01-31 (Released:2019-04-27)

本研究は、小学6年生に対して社会的問題解決訓練を実施し、訓練効果・維持効果、および、ストレス反応に及ぼす影響について検討した。児童175名は、それぞれ訓練群84名と統制群91名に割り付けられ、訓練群の児童は、担任教師によって4セッション(各45分)からなる介入を受けた。その結果、訓練を受けた児童は、友人とのトラブル場面においてポジティブに問題を捉える問題志向を向上させ、解決の目標としての認知的解決スタイルを習得し、それらは訓練終了3カ月後も維持されていることが明らかとなった。解決策の案出数は、訓練終了11カ月後も訓練効果が維持されていた。また、訓練群の児童では、訓練直後においてストレス反応のうち不機嫌・怒りに低減効果が示された。中学校進学後の11カ月後フォローアップ測定において、解決策の案出数以外に介入の維持効果はみられなかった。中学校入学後の維持促進の操作の必要性が示唆された。
著者
小野 昌彦 江角 周子 佐藤 亮太朗
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.307-318, 2021-09-30 (Released:2022-01-12)
参考文献数
15

本研究では選択性緘黙の中学2年女子に学校場面における発話行動形成のため、包括的支援アプローチを適用し、その効果を検討した。彼女の選択性緘黙は発現前条件が学校場面で誘発されるストレス反応、維持条件が彼女の代替発言をする生徒および筆談をする教員の存在と考えられた。そこで、彼女の学校場面でのストレス反応低減と発話行動形成を目的に、不安階層表の段階を唾液アミラーゼ評価で確認し、その段階のストレス反応の程度に合わせて刺激フェィディング法、系統的脱感作法、現実的脱感作法、主張反応法を併用適用した。また、彼女の選択性緘黙維持条件除去の目的で学校介入をした。専門支援機関でのセッション4回、学校訪問指導4回の10カ月の支援の結果、彼女の選択性緘黙は解消し学校場面における活発な発話行動が形成され、予後も良好であった。包括的支援アプローチの選択性緘黙への有効性が示され、今後の課題として技法選択基準の明確化をあげた。
著者
佐藤 嘉明
出版者
横浜国立大学
巻号頁・発行日
2006

横浜国立大学, 平成18年3月31日, 博士(工学), 乙第260号
著者
安岡 愛理 佐藤 貴宣 青木 千帆子 松原 崇 秋風 千恵 Yasuoka Airi Sato Takanori Aoki Chihoko Matsubara Takashi Akikaze Chie ヤスオカ アイリ サトウ タカノリ アオキ チホコ マツバラ タカシ アキカゼ チエ
出版者
大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.30, pp.33-53, 2009

研究ノートDisability Studies(障害学)は、一九六〇年代後半から七〇年代中葉にかけて世界的規模で起こった、障害者による社会運動を背景として誕生した。九〇年代になって、日本にも学問として紹介されている。日本の障害学はイギリスの影響が強いことから、本稿ではイギリスの学術誌"Disability &Society"(以後DSとする)を対象として、国際的な障害学の動向を把握することを目的とする。一九八六年の創刊号から二〇〇八年二三巻四号までのDSに掲載された論文のうち、アブストラクトのある七八六件の論文を一次資料として採用し、各論文の主題を類型化しカテゴリーに分類して、そのトレンドを分析した。DSにおいて扱われる障害種別は次第に多様化する傾向にある。発刊当初から九〇年代半ばまでの間、障害を社会的文脈との関連において理論化していこうとする研究が盛んであった。それは障害学の核ともいうべき「障害の社会モデル」を精緻化するとともに、社会モデルの枠組みを用いて既存のさまざまな社会事象を分析する取り組みであった。しかし、それ以降は社会モデルを革新し、その射程範囲を広げていこうとする方向にある。また障害学の発展にともない、より多様な国と地域、より多様な障害種別がその論考の対象となってきている。したがって、今後は、エスニックマイノリティや女性障害者をも包摂し、多様化する障害種別にいかに対応していける理論を構築できるかが大きな課題となるだろう。Disability Studies have their roots in the social movement started by disabled people throughout the world from the late 1960s and until the 1970s. By 1990s Disability Studies was also introduced to Japan. The purpose of this paper is to find the trends of Disability Studies by reviewing the papers published in Disability & Society – a prominent British Journal of the field. We believe this review will be especially of interest in Japan, where Disability Studies are strongly influenced by research conducted in UK. As our primary source we have used the papers with abstracts published in "Disability&Society", starting from the inaugural issue of year 1986 and finishing with the volume 23 number 4 of year 2008. We have categorized the papers by subject and analyzed the tendencies. We have found that number of types of impairments appearing in "Disability&Society" grows increasingly year by year and that until the middle 90s many papers theorize disabilities through their connection with the social context. This tendency shows that during that period the Social Model of Disability – the key concept of Disability Studies – was increasingly used to produce more and more detailed understanding of the social phenomena of disabilities. From the second part of 90s the Social Model renews and starts to cover increasingly wider range of objects. Disability Studies gain more and more power, and papers on new types of impairments based on research in more and more countries and regions appear. We conclude that in future objects of inquiry should include disabled people from ethnic minorities and also disabled women, and that the ever growing number of types of impairments also needs theoretical innovations in the field.
著者
松原 仁 佐藤 理史 赤石 美奈 角 薫 迎山 和司 中島 秀之 瀬名 秀明 村井 源 大塚 裕子
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第27回全国大会(2013)
巻号頁・発行日
pp.2D11, 2013 (Released:2018-07-30)

人工知能の新しいグランドチャレンジとしてコンピュータに星新一のようなショートショートを創作させるプロジェクトを開始した。知性を理性と感性とに分けるとこれまでの人工知能はもっぱら理性を対象としていたが、ある程度理性はコンピュータに扱えるようになってきた。芸術作品の創作ができればコンピュータにも感性が扱えると示せたことになると考える。ここでは本プロジェクトの概要について述べる。
著者
橋本 健二 佐藤 香 片瀬 一男 武田 尚子 浅川 達人 石田 光規 津田 好美 コン アラン
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

市区町村および地域メッシュ単位の統計と質問紙調査の結果から、以下の諸点が明らかとなった。(1)1990年から2010年の間に東京圏の階級・階層構造は、旧中間階級とマニュアル労働者が大幅に減少し、新中間階級とサービス産業の下層労働者が増加するという2極化の傾向を強めた。(2)この変化は、都心部で新中間階級と高所得世帯が増加し、周辺部では非正規労働者と低所得世帯が増加するという空間的分極化を伴っていた。(3)しかし、都心の南西方向では新中間階級比率と所得水準が高く、北東方向では低いという、東西方向の分極化傾向は維持された。(4)空間的な分極化は住民の政治意識の分極化を伴っていた。
著者
澤田 佳奈 玉置 正史 橋本 秀子 唐鎌 淳 佐藤 洋平 原 睦也 戸根 修
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.62-68, 2016 (Released:2016-01-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

症例は65歳女性で歩行障害と認知機能障害を主訴に来院した. 単純MRIで右前頭側頭葉に腫瘍性病変を認め, 造影MRIでは, わずかに腫瘍辺縁と内部が隔壁状に造影されるのみであり, 髄膜腫に典型的な所見ではなく, また髄膜種に特徴的なdural tail signなどもみられなかった. 開頭腫瘍摘出術を施行しmicrocystic meningiomaと診断した. Microcystic meningiomaの中にはその画像所見が一般的な髄膜腫の画像所見と異なるものがあり, 術前に髄膜腫と診断できないことも多い. 本症例にみられる特徴的な造影MRI所見であるfaint reticular patternがmicrocystic meningioma術前診断の鍵となることがあり, 認知しておくべきものと考える.
著者
竹森 啓子 下津 咲絵 佐藤 寛
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.163-171, 2022-05-31 (Released:2022-07-28)
参考文献数
27

本研究は教員のメンタルヘルスリテラシー(MHL)と児童のサポート知覚、抑うつ、不安の関連を検討することを目的とした。14名の教員とその担任学級の児童425名を対象に質問紙調査を実施した。その結果、教員のMHLと児童のサポート知覚は相関関係にはないことが示された。また、階層線形モデリングの結果、児童の抑うつ症状の抑制には教員からのサポートを学級全体が知覚することと、児童個人が知覚することの両方が有効であるであることが示された。一方で児童の不安症状の抑制には児童個人がサポートを知覚することのみが有効であった。さらに教員が対処法に関するMHLが高いことが児童の不安が抑制されることが明らかになった。以上の結果を踏まえて、教員対象のMHL教育の在り方を議論した。