著者
倉地 真太郎
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-11, 2018 (Released:2019-07-01)

デンマークは高負担税制を維持する国の一つである。しかし、デンマークは1970年代初頭に反税政党・進歩党による所得税廃止運動を経験した国でもある。1980年代以降、反税政党の勢いは衰えたが、代わりに極右政党・デンマーク国民党が台頭し、2001年11月国政選挙で第三政党まで躍進した。本稿では、極右政党の台頭がデンマーク税制に与えた影響を明らかにするため、2004年税制改革の政治過程を分析した。2004年税制改革は、労働所得税減税だけでなく選別主義的な高齢者手当が導入されたが、これはデンマーク国民党にとって移民高齢者に恩恵が行き渡らないようにすることが狙いであった。
著者
藤倉 まなみ 古市 徹 石井 一英
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.II_177-II_188, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
42
被引用文献数
3

建設発生土の不適正処理が続いており,自治体が残土条例を制定する動きも継続している.本研究では,その課題の明確化と対策の提案を目的とした.収集した不適正処理事例からリスク,経済的動機,現行法の適用限界,パターンを整理し,ISM法による構造モデル化により不適正処理が排出側の構造と受入地側の構造によることを示した.また神奈川県の2010年度場外搬出データを分析し,公共工事の建設発生土は民間工事に比べ,移動距離と搬出先数が有意に小さく,通達の効果があること,市町村の残土条例は,建設発生土の搬入に対して抑止効果も増加効果も認められないことを示した.都道府県の条例を比較検討し,循環型社会形成推進基本法を根拠として排出者責任を具体化する立法が必要であることを示し,そのための具体的な規制内容等を提案した.
著者
安芸 菜奈子 松下 玲子 三浦 順之助 柳沢 慶香 佐倉 宏 八辻 賢 橋本 悦子 白鳥 敬子 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.771-776, 2008 (Released:2009-05-20)
参考文献数
12

症例は55歳女性.19歳時,下垂体腺腫摘出術を施行.術後,ホルモン補充療法が行われたが,数年後に治療中断.48歳時,糖尿病を指摘されたが放置.55歳時,再度HbA1c 10.8%とコントロール不良の糖尿病を指摘され当科入院.入院時,高脂血症,肝機能障害の合併および,内分泌検査で成長ホルモン分泌不全,中枢性性腺機能低下症,甲状腺機能低下症を認めた.画像診断では,肝の変形,脾腫,脾腎シャントを認めた.肝機能障害の原因は,ウイルス,自己免疫,アルコール性は否定的であり,肝生検を施行し非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis: NASH), 肝硬変と診断した.血糖コントロールは超速効型インスリンの投与で改善した.本症例は下垂体腺腫摘出術後GH分泌不全状態にあったが,長期間にわたりホルモン補充療法が行われなかったため,NASHを発症し,肝硬変まで進展したと推測された.
著者
田中 千晶 岡田 真平 高倉 実 橋本 圭司 目澤 秀俊 安藤 大輔 田中 茂穂 Anthony D Okely
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.327-333, 2020-08-01 (Released:2020-07-15)
参考文献数
24
被引用文献数
4

This study examined the relationship between meeting the World Health Organization’s (WHO) 24-Hour Movement Guidelines for the Early Years and motor skills and cognitive function in preschool children. Participants were 4-year-old boys and girls in urban and rural areas (n=69). Physical activity was measured using a triaxial accelerometer (ActiGraph GT3X). Screen time and sleep duration were assessed via self-report by guardians. Meeting the 24-h movement guidelines was defined as: 10 to 13 h/night and nap of sleep, ≤1 h/day of sedentary screen time, and at least 180 min/day more than 1.5 METs. Motor skills were evaluated by the Ages & Stages Questionnaires, Third Edition (ASQ-3). Executive functions (shifting, visual-spatial working memory and inhibition) were evaluated by the Early Years Toolbox (Japanese translation). The prevalence of children meeting all three recommendations was 7.2% and 7.2% met none of the three recommendations. Children meeting physical activity recommendation had a better inhibition score compared to children meeting none of the recommendation (p=0.005). While, children not meeting the sleep recommendation had a better inhibition score compared to children meeting of the recommendation (p=0.042). In conclusion, meeting the physical activity or sleep recommendations were positively or negatively associated with the inhibition score. On the other hand, meeting none of the sedentary behaviour and the 3 recommendations was not associated with motor skills or cognitive function.
著者
中島 淳 鬼倉 徳雄
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.81-88, 2012 (Released:2012-05-10)
参考文献数
62

九州北部に分布する淡水魚類53種を用いて,魚類の生息場所としての水環境の健全度を評価するための平均スコア法を考案した。また,考案した手法が実際に水環境の健全度を反映しているかどうかについて,九州北東部の河川105地点,北西部の河川105地点,水路103地点において取得した魚類分布データを用いて検証した。その結果,当スコア法により算出した各地点の得点の平均点は北東部河川,北西部河川,水路間で有意差はなく,河川勾配との相関もなかった。また,スコアと都市用地面積,外来魚種数の間には負の相関が認められた。これらの結果から,当スコア法による評価は九州北部の様々な環境で適用が可能であり,スコアの高低は魚類の生息場所としての水環境健全度の高低を反映していることが示唆された。
著者
倉上 洋行
出版者
武蔵丘短期大学
雑誌
武蔵丘短期大学紀要 (ISSN:13413120)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.25-31, 2007

There are many important historic landmarks and cultural assets of Japanese history around this school (Musashigaoka College). This report provides new insight in the history of "Hiki" through studies about remains of "Kannonji-Iseki" and, shows interaction between the remains and Tokugawa shogunate.
著者
小倉 俊郎 古賀 光
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

当大学2012年度新入生2,257名の甲状腺疾患の既往,甲状腺ホルモン,自己抗体および甲状腺腫のスクリーニング検査を行った。甲状腺疾患の既往は0.4%で,女子がほとんどであった。甲状腺腫は,男子0.8%,女子4.6%に認め,そのうち3名に甲状腺乳頭癌が発見された。自己抗体陽性は男子に比して,女子で高頻度(5.1%)であった。検査より女性2名でバセドウ病再発例と新規例が発見された。甲状腺ホルモン低下例はなく,高値例が半数以上を占めた。若年者の甲状腺異常は自覚症状のない潜在例が多く,早期発見のためには頚部触診,血液検査のスクリーニング,甲状腺超音波検査などを積極的に行うべきと考えられた。
著者
倉田百三 著
出版者
人文書院
巻号頁・発行日
1939
著者
中富 康仁 倉恒 弘彦 渡辺 恭良
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.19-25, 2018-01-01

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は,慢性で深刻な原因不明の疲労,認知機能障害や,慢性的で広範な疼痛を特徴とする疾患である。われわれは世界で初めてME/CFS患者における脳内神経炎症をポジトロンエミッション断層撮影(PET)によって明らかにした。神経炎症は患者の広範な脳領域に存在し,神経心理学的症状の重症度と関連していた。現在,診断法および治療の開発につなげる研究がスタートしている。
著者
倉石 一郎
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.150-161, 2018-06-30 (Released:2018-10-17)

いわゆる「教育機会確保法」が2016年12月に国会で可決・成立した。周知のように立法化の発端は制度上の地位安定を求めるフリースクール関係者からの働きかけであり、そこに夜間中学関係者の運動も合流した。公教育システムの周縁部から、公教育総体のあり方を問い揺さぶるような議論が提起された今回の経緯は非常に興味深いものである。他方で最終的に成立した法文は初期の構想と大きく隔たっており、一連の動きに関わってきた関係者から強い批判も聞かれる。本稿ではその中でも、当初「多様な教育機会確保」と言われたものから、文言上も実質的にも「多様」というコンセプトが失われた点に注目する。本稿ではこの改変(消失)過程をD・ラバリーの議論を手がかりに、教育の実質主義に対する形式主義の優越、公教育を私有財とみなす教育消費者の立場の「勝利」であるとする解釈を提示する。
著者
青木 慎一 倉光 修 阪口 敏彦 石井 実
出版者
The Illuminating Engineering Institute of Japan
雑誌
照明学会 全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
pp.166, 2005 (Released:2007-07-01)

昆虫の誘虫性は松下電工カタログ照明設計資料 照C-31 p208に示されているものである。しかし、これらの方法では、同じ照度での誘虫性評価しか行えない。そこで、本報では実際の照明器具及び壁材等の昆虫の誘虫性を、定量評価する評価手法の研究を行ったので報告する。新しい誘虫性指数を検討し、実際の誘引実験で、検証を行った。その結果からも、今後、新誘虫性指数を用いることによって、昆虫の誘虫性を評価することが可能であると考えられる。
著者
片倉 喜範
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.596-600, 2019-10-01 (Released:2020-10-01)
参考文献数
17

抗酸化作用,緩衝作用,抗疲労作用など多くの機能を有することが知られている高機能ジペプチドイミダゾールジペプチドは,最近行われた中高齢者ボランティアに対する二重盲検ランダム化比較試験の結果から,記憶機能改善効果を示すことが明らかとなっている.つまりイミダゾールジペプチドは,腸と脳との相互作用を活性化させうることが報告されてはいるが,その分子基盤についてはいまだ明らかになっていない.本解説では,イミダゾールジペプチドの1種カルノシンによる脳腸相関活性化機能の詳細とその機能性の分子基盤に関し,最近の知見を踏まえ紹介したい.
著者
高倉 伸幸
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.603-608, 2014 (Released:2014-10-24)
参考文献数
14

要約:従来より,既存の血管に存在する血管内皮細胞は,どれも単一な細胞集団であり,既存の血管から新しい血管が形成される際にも,既存血管から単調に細胞増殖と細胞移動が生じて,新規血管分枝が形成されると考えられてきた.しかし,実際にはそうではなく,血管新生の過程では血管分岐の方向を決定するガイド役の内皮細胞や,増殖活性が高く血管分枝の長さを決める内皮細胞,そして血管を成熟させる内皮細胞の少なくとも異なる3種の内皮細胞が存在することが判明してきた.さらに,既存の血管には未分化性を維持して,かつ内皮細胞の産生能の極めて高い幹細胞様の細胞も存在することが解明されてきている.
著者
宮崎 雅人 倉地 真太郎 古市 将人 安藤 道人
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は戦前の日本を対象とした都市財政研究の限界を踏まえ、歴史的にも貴重な都市歳入歳出決算書(市政専門図書館所有)のデータを用い、中小都市も射程に入れた戦前日本の地方財政の全体像はどのようなものであったかを明らかにしようという試みである。具体的には、都市決算データを用いた記述統計分析によって六大都市以外の都市の特徴を明らかにするだけでなく、デジタル化した資料を元に都市パネルデータを構築した上で、戦前日本におけるいくつかの重要な制度の導入・変更や政策実施の財政的な影響や、社会に与えたインパクトを記述統計分析と計量経済学的分析によって明らかにする。
著者
小橋 吉博 松島 敏春 河原 伸 多田 敦彦 宍戸 眞司 矢野 修一 重藤 えり子 横崎 恭之 冨岡 治明 竹山 博泰 西村 一孝 塩出 昌弘 上田 暢男 倉岡 敏彦 印鍮 恭輔
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR TB AND NTM
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.73, no.12, pp.705-711, 1998-12-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
14

In this study, we investigated 45 foreign patients who had been diagnosed as having tuberculosis in Chugoku-Shikoku area during the past 12 years. Regarding regional characteristics, in Hiroshima prefecture an epidemic of tuberculosis was experienced among patients coming from South America, but antituberculous therapy was performed for 87% of the patients because of the high coverage of the health insurance scheme. But in Okayama prefecture, most of the patients were female and came from Asian countries, such as, the Philippines. Antituberculous therapy was not performed for nine patients because of no coverage of the health insurance scheme. In the other prefectures, only a few cases of tuberculosis were experienced, but in Yamaguchi prefecture two of three foreign patients were multidrug-resistant tuberculosis.