著者
石倉 亮治
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.642-649, 1992
被引用文献数
1

千葉県では,平成4年度から8ヵ所の博物館相当施設(美術館を含む)をISDN回線で接続したコンピュータシステムの運用を開始する。名称は「千葉県立博物館情報システム」である。単独の施設ではこれまでにも全国各地の美術館や博物館においてコンピュータが導入されさまざまな機会にそれらのシステムの概要が報じられている。遠隔地にある他の施設とネットワークを組み,その運用についても博物館自身が直接携わるシステムとしては全国的にも初めての試みとなる。運用後しばらくの期間を経なければ,システムそのものの評価はむずかしいが,博物館の学芸職員が初期の段階からプロジェクトの中心となったということではきわめて希な開発例でもあり,この機会をおかりして今回のシステム構築の過程について紹介しておきたい。今回の情報システムは,「千葉県立博物館情報システム」の第1期システムとして位置づけられている。昭和63年度の基本計画,平成元年度の基本設計,2年度の詳細設計,3年度プログラム設計・製造の各工程を経て,本稿執筆の時点では4年度の運用開始に向けシステムの最終調整の段階にある。次章では,これらの各段階ごとに開発の内容と問題点の整理を行い,3章ではこうした各段階において博物館側で行ったシステム化のための準備作業についてふれ,4章では博物館における情報システムの一実践例として今回のシステムの概略を紹介したい。
著者
熊倉 慎
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.257-261, 2013-03-01

北越紀州製紙関東工場勝田工務部では,建築廃材や間伐材,ペーパースラッジなどを燃料とする木質バイオマス発電ボイラーを2006年9月に営業運転を開始した。<BR>このバイオマス発電ボイラーでは,主な燃料である,木質燃料の搬送にベルトコンベアが使われている。他社の事例では,この搬送コンベアでの火災の事例が報告されている。この火災事例に対して,早期発見,延焼防止を目的とする,コンベア温度監視システムを,2012年5月に設置した。<BR>本稿では,「バイオマスボイラー木屑搬送コンベア温度監視システムの導入と課題」と題して,コンベア温度監視システムの機器選定から設置工事,操業状況について報告する。<BR>以下に概略を述べる。<BR>1.機器選定においては,以下4種類のシステムについて比較を行った。<BR>(1)光ファイバー式温度分布システム<BR>(2)熱(火災)感知線システム<BR>(3)熱電対/測温抵抗体システム<BR>(4)赤外線サーモグラフィーシステム<BR>それぞれのシステムより,測定精度,機器に対して広範囲で測定可能,火災位置特定が可能,導入コスト,バイオマスボイラーの定期点検の期間内で工事完了可能,等を考慮して,「光ファイバー式温度分布システム」を採用する事とした。<BR>2.設置工事は,該当する各コンベアの形状により異なる以下4種類の布設方法を計画し実施する事とした。<BR>(1)非密閉式ベルトコンベアタイプ<BR>(2)密閉式ベルトコンベアタイプ<BR>(3)密閉式チェーンコンベアタイプ1(コンベアフライトのバタツキ小)<BR>(4)密閉式チェーンコンベアタイプ2(コンベアフライトのバタツキ大)<BR>この「バイオマスボイラー木屑搬送コンベア温度監視システム」は,5月に稼動して以来,大きなトラブルも無く,正常な監視状態にある。
著者
佐藤 利夫 水口 純 鈴木 周一 戸倉 正利
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.216-220, 1967

ヤマノイモ科イチョウィモ(Dioseorea Batas Decne forma Icho)の根茎粘質物をその特性である高粘性を失なわないように抽出精製する方法を案出し,精製粘質物の化学的および物理化学的性質を明らかにした。<BR>イチョウイモ根茎の水抽出液にドデシル硫酸ナトリウムと塩化ナトリウムとを加えておだやかに除タソパクをくり返すことにより,高粘性でしかも超遠心的に均一な粘質物を収得した。ここに得られた精製粘質物をさらにドデシル硫酸ナトリウム処理しても多糖とタソパク質との比(10:4)は変わらず,また相対粘度の上昇も認められなかった。<BR>精製粘質物の絶対粘度は2.7X10<SUP>3</SUP>ml/g,分子量14.6X10<SUP>4</SUP>,比旋光度は-60°の値が得られた。この粘質物はマンナンとして48%,水酸基をもつアミノ酸残基に富むタソパク質10%,リソ3,8%を含む一種のリン糖タソパク質であることがわかった。
著者
上間 匡 永田 文宏 朝倉 宏 野田 衛
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.102-107, 2018

カキは成長過程で海水中の微生物を取り込むことから,ヒトノロウイルス(NoV)等の糞便由来病原ウイルスによる汚染リスクが存在する。Pepper mild mottle virus(PMMoV)はヒト糞便や環境水に豊富に存在する植物ウイルスで,近年環境水中のヒト糞便汚染指標の候補ウイルスとして認識されている。本研究では2016年7月から2017年3月に国内13のカキ生産地の市販カキ138バッチを採取し,RT-PCRによりPMMoVとNoVの検出を比較した。PMMoVは116バッチ(84.1%),NoVは67(48.6%)バッチからそれぞれ検出され,両者が同時に検出されたのは52バッチ(37.7%)であった。PMMoVは2016年7月から2017年3月までのカキ採取期間を通してすべての月で検出されたが,NoVは11月から3月の冬季にのみ検出された。PMMoVは12の生産海域のカキから検出された。以上の結果は,我が国においてPMMoVがカキに幅広く分布していることを示唆する。PMMoVをカキやカキ生産海域におけるヒト糞便由来ウイルスの汚染指標として利用するためには,PMMoVと糞便由来病原ウイルスの定量検査の導入が必須であると考えられた。
著者
田之倉 優
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

オリザシスタチン(OC)はコメ(Oryza sativa)中に含まれ、システインプロテアーゼ(CP)を特異的に阻害する蛋白質である。この蛋白質はパパインを化学量論的に阻害し、炊飯条件下でも活性を失わない耐熱性を持ち、酸やアルカリに対しても安定である。この蛋白質は、種子内蛋白質分解に関与するCPの働きを制御することにより、代謝を調節するとともに、昆虫、細菌、ウイルスなどの外敵や感染源に存在するCPを外来性標的酵素として認識して、その活性を阻害することにより生体防御を担っていると言われている。本研究では、生化学的解析および立体構造解析により、OCの機能構造相関の解析を行った。温度、濃度、pHなどの溶液条件を変化させる、あるいは、変性剤により変性させることでOCを自由にダイマーやモノマーに変換することに成功した。各成分のプロテアーゼ阻害活性を比較したところ、ダイマー状態の方がモノマー状態より活性が低下することが明らかとなった。このことから、本タンパク質は、イネの生育段階における様々な環境変化に応じて、自分自身の状態(構造)変化を起こすことでプロテアーゼ活性の制御を行い、調節因子として働いていることが示唆された。また、NMR構造解析により、OCはダイマー化すると、阻害活性に重要とされている第一ループと第二ループの構造が変化していることが示され、このために阻害活性が低下することが示唆された。さらに、OCのホモダイマーの結晶化に成功し、2.9Å程度の分解能のデータを得た。OCは、医薬品や機能性食品としての適用が検討されている。本研究の成果により、溶液条件を変化させることでその活性が制御できることが明らかになったので、その機構を利用し、熱や酸に対しても耐性があり、pHによって制御が出来るナノマシン等更なる応用が期待される。
著者
倉本 満
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学雑誌
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.49-58, 1995

日本のサンショウウオ類11種の精子の形態と大きさを走査型電顕で調べた.サンショウウオ科とオオサンショウウオ科の種では精子頭部の前端約1/4は先体鞘で被われ,それが外れることにより穿孔体が現れる.イモリ科2種では先体と核は外形から区別できない.イモリ科の精子先端には先体鈎があるが,サンショウウオ科とオオサンショウウオ科の精子に先体鈎はない.オオダイガハラサンショウウオ,キタサンショウウオ,オオサンショウウオの精子の大きさはカスミサンショウウオ属5種の範囲に収まり(163-272μm),イモリ科2種の精子はこれより大形(約490μm),ハコネサンショウウオの精子はもっとも大形(約550μm)であった.
著者
熊倉 永子
出版者
国立研究開発法人建築研究所
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、人々が生活の中で感じる温冷感を対象とした新たな指標の開発を目指している。都市生活者が投稿したジオタグ付きTweetデータの中から、暑さや涼しさを表現した短文や写真データを抽出し、投稿された場所や時間の特徴を明らかにする。また、投稿が集中する場所について、実測とシミュレーションによる物理的な熱環境の実態や、空間用途及び人口統計データ等との関係から、都市生活者が感じる暑さや涼しさとの相違を分析する。その結果をもとに、都市生活者が感じる暑さや涼しさのパターンを明らかにし、暑熱に対する適応策を検討する。
著者
倉橋 節也 寺野 隆雄 吉田 健一 津田 和彦 高橋 大志
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本年度は,開発してきた逆シミュレーション学習によるエージェントモデルのパラメータ推定手法の手法を,実際の社会システムを対象に適用事例を作っていくことを主に行った.1)感染症モデル:新型コロナウイルスの広がりに対して,効果的な感染予防策の組み合わせを調べることを目的に,COVID-19感染モデルを構築した.感染プロセスをエージェントベースモデルに実装し,一般の市民や企業,学校などにおいて対策が可能な予防策の有効性についての比較検討を行った.2)都市動態モデル:スプロール化した都市の,コンパクトな都市構造への改善を目的とした都市政策の効果を検証した.都市居住者の自律的な行動に基づく都市動態のエージェントベースシミュレーションを実行し,その成立メカニズムを明らかにした.都市のスプロールは堅固で不可逆的であり,多中心型コンパクトシティを維持可能であった政策もってしてもくつがえすことは困難であること,トラムの導入は,トラム利用前後の歩行を誘導するような施策と組み合わされることで初めて 大きな効果を発揮することなどを見出した.3)組織多様性モデル:少子高齢化が進む日本では,労働力を確保するために働き方,働く人が多様化している.多様性を定量化するフォールトラインの考え方に基づき,日本の組織を対象にした実態調査の結果を用いて,組織の多様性と成果の関係をエージェント・ベースモデルによって明らかにした.多様性はフォールトラインの強さとサブグループ数によって成果への影響が異なることがが明らかになった.4)変数選択モデル:近年、大量かつ複雑なデータの獲得と蓄積が進み,重要な変数を選択する手法の重要性が高まっている.そこで,実数値遺伝的アルゴリズムを用いて,同一世代内の遺伝子の分散を活用した変数選択手法を提案し,パラメータ推定と変数選択の両方に対応できることに成功した,
著者
袴塚 高志 鎌倉 浩之 渡辺 淳子 香取 征典 松本 和弘 石丸 順之 諸田 隆 合田 幸広
出版者
一般社団法人 日本生薬学会
雑誌
生薬学雑誌 (ISSN:13499114)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.89-97, 2020-08-20 (Released:2021-09-08)
参考文献数
7

Dry extract preparations of Kampo medicines for prescription were approved for use approximately 40 years ago in Japan. Presently, most Kampo medicines are prepared in the form of granules with a few being prepared as tablets or capsules. Granule formulations are generally unsuitable for the elderly due to their bulky nature. Although patients and Kampo manufacturers have expressed a need for the introduction of more acceptable granule alternatives, their introduction has been a challenge due to the lack of guidelines based on bioequivalence evaluations for medicines that include multiple chemical components. For resolving this issue, the researchers at the National Institute of Health Sciences initiated a study in 2009 funded by the Ministry of Health, Labour and Welfare. Several ingredients in Kampo extract products and corresponding standard decoctions were detectable and measurable in human plasma, and some compounds have been reported to be promising candidates for application in bioequivalence evaluations of Kampo formulations. The purpose of the present study was to investigate the potential to assess bioequivalence between kakkonto extract granules and tablets on the basis of the “Guidelines for Bioequivalence Testing of Generic Drugs (partial revision, PFSB/ELD Notification No. 0229010 dated February 29, 2012).”We investigated the pharmacokinetics of ephedrine and pseudoephedrine, which are ingredients derived from Ephedra Herba in kakkonto formulations, following the oral administration of kakkonto extract granules (one pack) and kakkonto extract tablets (eight tablets). The study was conducted as a two-group, two-period, and open-label crossover study in healthy Japanese volunteers. The plasma concentrations of ephedrine and pseudoephedrine following the administration of the drugs were measured using liquid chromatography with tandem mass spectrometry. Subsequently, we calculated their pharmacokinetic parameters and evaluated their bioequivalence. Analysis of variance using the area under the plasma concentration time curve (AUC) and the maximum plasma concentration (Cmax) of both ingredients revealed that while AUC indicated bioequivalence, Cmax values were significantly different. Plasma concentration levels in both formulations were similar in most volunteers and differed among some volunteers, which was attributed to a high number of tablets per dose as opposed to intra-individual variation. We concluded that ephedrine and pseudoephedrine in kakkonto extracts are good marker compounds for the evaluation of bioequivalence in different forms of kakkonto products. Our results suggest that the marker compounds exhibiting similarity in pharmacokinetic parameters following the administration of Kampo extract granules and the corresponding standard decoction could be applied as markers for the evaluation of bioequivalence between already-approved Kampo extract granules and novel Kampo products based on the same extract as that of granules.
著者
鈴木 春花 朝倉 隆司
出版者
日本健康相談活動学会
雑誌
日本健康相談活動学会誌 (ISSN:18823807)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.29-40, 2018-03-20 (Released:2021-07-07)
参考文献数
37

本研究は、性別意識に着目して、男性養護教諭の仕事の意識と体験の特徴を明らかにした。 男性養護教諭4名を対象とし、約1時間程度の半構造化インタビューを実施した。分析は、テーマ分析の方法を参考に、共著者間で協議して進め、基本的問題意識とデータの読み込みから、5つのテーマを設定してカテゴリーを生成した。 性別意識が現れたカテゴリーは、《養護教諭を目指した理由・動機》《養護教諭としての職業観》では、【男性でもなれるという思い】【専門性と性別は無関係】であるという認識のカテゴリーであった。男性の《養護教諭としての仕事上の体験》では【男性養護教諭に対するバリアへの挑戦】【少数派男性ゆえの孤独感と存在価値】【中年期の男性養護教諭イメージの不確定さからくる不安と期待】【子供が持つ羞恥心への理解】【セクハラの危険性の認知と予防策】【性別を超えた対人職の倫理】と特徴的なカテゴリーを見出した。《うまく働ける要因》では、【学校のニーズ】【男女の複数配置】【普通と思う受け入れ姿勢】という職場の条件、【本人のポジティブな性格】という本人の要因を見出した。《男性養護教諭の存在意義》に関しても、【子供に養護教諭の選択肢を与えることができる】【キャリア教育の一翼を担う】【これまでの当たり前を問い直すことができる】【多様なニーズへの対応ができる】のように、男性養護教諭の立場から養護教諭のあり方を問い直すカテゴリーを見出した。

1 0 0 0 OA めまい

著者
城倉 健
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.279-287, 2021 (Released:2021-05-19)
参考文献数
19
被引用文献数
2

めまいの病態は,眼球偏倚(および結果として生じる眼振)に反映されることが多い.末梢性めまいである良性発発作性頭位めまい症は,耳石が迷入した半規管刺激による眼球偏倚がそのまま出現する.良性発作性頭位めまい症以外の末梢性めまいでは,一側の半規管障害をすべて総和した眼球偏倚となる.一方,中枢性めまいでは,中枢前庭経路(半規管経路+耳石器経路)が小脳により抑制制御を受けているため,前庭経路の直接障害による眼球偏倚に加え,小脳からの脱抑制による眼球偏倚も出現する.小脳による中枢前庭経路の抑制制御は,めまいの回復に重要な役割を担う前庭代償にも深く関わっている.めまいを治療する際には,こうしためまいの病態を理解し,病態に応じて特異的に介入する必要がある.
著者
小田 亮介 藤倉 舞 林 貴士 松谷 学 曽根 淳 下濱 俊
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001609, (Released:2021-10-16)
参考文献数
22

症例は70歳女性.来院6年前にもの忘れを発症した.認知機能障害,神経因性膀胱,便秘症,繰り返す嘔吐発作が認められた.当科初診時には肝内門脈体循環シャントによる肝性脳症を合併していた.頭部MRIでは皮髄境界や脳梁膨大部,両側中小脳脚にDWI高信号像が認められ,皮膚生検とNOTCH2NLC遺伝子検査の結果から神経核内封入体病(neuronal intranuclear inclusion disease,以下NIIDと略記)と診断した.過去10年の頭部MRIを後方視的に確認したところ,認知機能障害の出現に先行して異常信号が存在し,経時的に拡大していた.特徴的な皮髄境界病変だけではなく脳梁膨大部にも早期からDWI高信号像が認められることを念頭に置くことが,NIIDの早期診断に重要と考えられた.
著者
長沢 寛弥 國吉 杏子 谷川 敏明 小林 直樹 小西 良子 朝倉 宏 大城 直雅
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.157-161, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
32
被引用文献数
2

小笠原群島(聟島列島,父島列島および母島列島)におけるシガテラの実態を調査するために,周辺海域で漁獲されたバラハタVariola louti 65個体の筋肉を試料としてLC-MS/MSによるシガトキシン類(CTXs)分析を実施した.すべての試料からCTX1Bに近接するピークが検出されたが,CTX1Bの前駆体である52-epi-54-deoxyCTX1B,54-deoxyCTX1Bや,他のCTX類縁体は検出されなかった.バラハタ試料では通常,この3物質が同時に検出されることから夾雑物による影響を考え分析カラムを変更して分析した結果,全試料においてCTX1Bとは保持時間が異なったため夾雑物由来であると判断した.本研究に供したバラハタは体重2,170~7,000 gと大型の個体であったにも関わらず,65個体のいずれからもCTXsは検出されなかった.そのため,小笠原群島周辺海域のバラハタによるシガテラのリスクは低く,CTXs産生性渦鞭毛藻の分布密度は沖縄・奄美海域に比較して極めて低いことが示唆された.
著者
若倉 正英 岡 泰資
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.200-205, 1999-06-15
参考文献数
4
被引用文献数
1

<p><tt><b>廃棄物は多様な物質が収集運搬,破砕,焼却,化学処理,保管,埋立などさまざまな工程で取り扱われる、そのため,安全化技術の標準化が容易ではなく,一般の製造業に比べて事故の発生頻度がかなり高い.人身災害の大部分ははさまれや巻き込まれといった傷害事故であったが,最近では排出される化学品由来の事故も増加している.化学物質による事故は可燃性廃棄物による火災,爆発が最も多い.特に特定フロンの使用禁止以降,種々のスプレー缶で蓄圧剤として可燃性ガスを使用するため,ゴミ収集車内や廃棄物破砕施設で火災や爆発が頻発している.また,リサイクルや無害化処理に伴う工程では,複数の物質の混合による有害物の発生,発火事故などが少なくない. </b></tt><tt><b>取り扱う廃棄物の安全性に関する性状や,対応方法を把握することが重要である.</b></tt></p>
著者
今井 透 遠藤 朝彦 吉村 剛 宇井 直也 大久保 公裕 藤倉 輝道 新井 寧子 余田 敬子 北嶋 整 相田 瑞恵 小津 千佳 酒主 敦子 森山 寛
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.427-438, 2005

東京都において, 観測史上最多のスギ花粉飛散を記録した20o5年に, 多施設共同でスギ花粉症に対するラマトロバンおよび抗ヒスタミン薬との併用療法を, 鼻症状およびQOLについて花粉症日記と日本アレルギー性鼻炎標準調査票 (JRQLQ No.1およびNo.2鼻眼以外の症状用) を用いて検討した。比較に際しては, 初期治療群と飛散後治療群に群別した。初期治療群では飛散後治療群に比較して, 鼻症状およびQOLともにスギ飛散ピーク時のスコアの抑制がみられ, 副作用は認められなかつた。作用機序の異なるラマトロバンと抗ヒスタミン薬との併用は, シーズン10,000個/cm2を超えるような大量飛散年においても, 飛散ピーク時の鼻症状ならびに患者QOLを改善することから有用な治療法であることが示唆された。