著者
三浦 周 関口 真理子 大倉 拓也 小竹 秀明 白玉 公一 斉藤 嘉彦 カラスコ-カサド アルベルト 阿部 侑真 辻 宏之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.9, pp.344-353, 2023-09-01

5G/Beyond 5Gと衛星通信を含む非地上系通信網(Non-Terrestrial Networks:NTN)の連携に関し,現在の動向や技術課題,情報通信研究機構(NICT)による研究開発の取組みを俯瞰的に記述する.衛星通信を含むNTNプラットホームが低軌道(Low Earth Orbit:LEO)衛星,高高度プラットホーム(High-Altitude Platform Station: HAPS)等の登場や電波・光技術の進展によって従来よりも大容量化,低遅延化,低コスト化が進んでいる.これを背景として,衛星通信/NTN-5G/Beyond 5G連携のためのネットワークアーキテクチャや無線アクセス方式が検討され,The 3rd Generation Partnership Project(3GPP)等での標準化が進んでおり,国内でも議論や提言,構想の提案がなされている.衛星通信/NTN-5G/Beyond 5G連携のキーとなる技術はネットワーク技術と,これを支える電波・光技術である.NICTでは,Beyond5Gにおける海・空・宇宙をつなぐ3次元ネットワークの実現を目指して衛星通信/NTNと5G/Beyond 5Gの連携技術の研究開発の取組みを進めている.ネットワーク技術では,異なる特徴をもつ複数のネットワークを連携させ,ユーザ及び運用事業者の満足度を最大化するため,統合的なネットワーク制御が必要である.そのため5Gネットワークと衛星の連携の研究や,NTNと地上系を相互接続するためのシステム構成の検討,リソース割当アルゴリズムの開発を行っている.電波技術では,高速大容量化を実現するための高周波数帯(Ka/Q/V帯)の利用,高速大容量化のためのマルチビーム化と周波数利用効率を向上するためのデジタル化を活用したリソース割当の柔軟性の向上,移動体地球局の柔軟性向上のための電子走査型平面アンテナ(AESA)の開発を行っている.光技術では,高速大容量通信や小型軽量化を実現できる利点を生かし,GEO衛星やLEO衛星,HAPS,ドローン等様々なプラットホームに搭載可能な光通信機器の開発や,地上衛星間光通信における大気揺らぎを補償する補償光学の研究を行っている.
著者
石倉 英樹 落合 秀俊 山口 朗央 松本 智博
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.909-911, 2015 (Released:2016-01-09)
参考文献数
9
被引用文献数
1

〔目的〕血液透析患者は日常生活活動能力低下や生命予後に対する危険因子となる血液透析後の起立性低血圧に着目して,運動療法の効果を検討することとした.〔対象〕外来血液透析患者のうち,運動療法を開始した10名とした.〔方法〕血圧測定を血液透析中の運動療法開始前,開始2週後,4週後に実施した.運動療法として両下肢のストレッチング・筋力増強運動を20分間実施した.〔結果〕起立時に低下する収縮期および拡張期血圧の低下量が運動療法開始4週後に有意ではないものの減少する傾向があった.〔結語〕血液透析中の運動療法は自律神経障害と起立性低血圧を改善する可能性がある.
著者
砂金 美紀 山﨑 一樹 越塚 慶一 大木 雄示 飯沼 智久 木下 崇 鈴木 猛司 米倉 修二 花澤 豊行
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.401-408, 2020 (Released:2021-03-19)
参考文献数
20

良性対称性脂肪腫症(Madelung病)は頸部や躯幹,四肢などに対称性,多発性に脂肪が蓄積する疾患である。Madelung病の3例を経験したので考察を加えて報告する。症例1は76歳男性で,嗄声や嚥下障害,喉頭周囲の脂肪沈着を認めた。手術後の嚥下機能の悪化を懸念して経過観察の方針とした。症例2は61歳男性で,咽頭後間隙に脂肪組織を認め腫瘍摘出術を行った。症例3は72歳男性で,咽頭後および傍咽頭間隙に脂肪沈着を認め,腫瘍摘出術を行い整容的に高い満足度が得られた。本疾患では患者に整容的な改善の希望がある場合や気道閉塞,嚥下障害などの機能異常を認めた際には積極的に外科的治療を検討することが重要である。
著者
朝倉 俊成 神田 循吉 影山 美穂 影向 範昭 若林 広行 清野 弘明
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.977-981, 2009-12-30 (Released:2010-03-01)
参考文献数
10
被引用文献数
2

インスリン製剤(以下,製剤)中のインスリン結晶の存在,ならびに懸濁製剤におけるインスリン結晶の濁度変化を測定し,高温環境下でのインスリン製剤の性状変化について検討を行った.方法は,2種の非懸濁製剤と2種の懸濁製剤を,38, 50, 70°Cの恒温恒湿度器内に3, 6, 12時間放置したときの濁度を吸光度計にて測定し,その変化を求めた.また,生物顕微鏡を用いて,70°C·12時間環境下のインスリン結晶を観察した.結果は,非懸濁製剤はいずれも変化がなかったが,懸濁製剤ではいずれも,38°C以上の保管で濁度が有意に変化した.また,顕微鏡観察では,懸濁製剤で70°C·12時間保管結晶の形状に明らかな変化がみられた.結果から,懸濁製剤は室温以上の環境下に長時間放置しないことが求められ,患者の日常生活におけるインスリン製剤保管時の温度管理について,十分注意する必要があると思われる.
著者
市川 淳 大倉 光輝 秋吉 政徳
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J106-A, no.7, pp.208-213, 2023-07-01

相手の振る舞いへの同調は,自身にポジティブな印象を抱かせる.本研究では,エージェントの汎用的な非言語同調機能を提案する.実験の結果,付属するLEDランプが発話の基本周波数に同調して点滅することで,傾聴の印象評価が高まる傾向が見られた.
著者
宮田 靖志 岡野 良 倉富 雄四郎
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.1093-1098, 1997-10-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
18

症例は51歳女性. 約30年前にシリコンによる豊胸術を受けた. 以後, 両乳腺外側および腋窩リンパ節腫張を自覚していたが, 2年前よりリンパ節腫大が増大し, さらに, 数ヵ月前より手指腫張, 朝のこわばり, Raynaud 徴候, 労作時呼吸困難が出現した. 四肢近位筋の対称性筋力低下, 口唇生検, 筋生検, 唾液腺造影所見, 筋原性筋電図変化, 筋逸脱酵素の上昇などより多発筋炎とシェーグレン症候群の overlap 症候群と診断された. 胸部X線・CTにて胸膜下優位の二次小葉間質陰影の肥厚, 肺野濃度の上昇, 下葉容積の減少が, また, TBLBにて炎症細胞浸潤を伴う胞隔肥厚と線維化が認められ, 間質性肺炎の合併と考えられた. 本例は, シリコンリンパ節炎の増強と膠原病症状および間質性肺炎の発症に強い臨床的関連が推測され, ヒトアジュバント病が強く疑われた. 本症に伴う間質性肺炎の報告は少なく, 文献的考察を加え報告した.
著者
町野 英弥 肥田 典子 原田 努 柴田 佳太 三邉 武彦 龍 家圭 水上 拓也 山崎 太義 諸星 北人 村山 信浩 竹ノ下 祥子 内田 直樹 倉田 なおみ
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.599-608, 2021-11-10 (Released:2022-11-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

Patients with reduced swallowing function have difficulty taking tablets in their original form. In such cases, tablets are crushed (crushing method) and administered through feeding tubes, but this practice may affect efficacy. A simple suspension method (SSM) has been widely used to address issues of administering crushed tablets through feeding tubes. Most of all angiotensin-converting enzyme (ACE) inhibitors are ester prodrugs. When they are suspended with magnesium oxide, ester prodrugs are hydrolyzed, and the active metabolite increases before absorption. In this study, we investigated the effects of SSM and crushing methods on the pharmacokinetics of the ACE inhibitor using temocapril and magnesium oxide. A human clinical trial was conducted to compare the pharmacokinetics of temocapril and magnesium oxide in three groups in six healthy adult men (period 1, tablet group; period 2, SSM group; and period 3, crushing-and-mixed group). The pharmacokinetics of temocaprilat, which is the active metabolite, were examined. The AUC0-24 and Cmax of the SSM group were 89.3% and 86.1% compared with those of the tablet group, whereas those of the crushing-and-mixed group decreased to 73.0% and 78.9%, respectively. In the crushing-and-mixed group, the concentration of temocapril decreased during crushing and long-term storage. Findings in the present study suggest that the crushing method may decrease in AUC0-24 and Cmax and that the expected drug effect may not be achieved. For ester prodrugs, the use of SSM might be considered rather than the crushing method.
著者
安倉 良二
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.146-162, 2004-09-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
32
被引用文献数
2 1

本研究は, 京都府南部地域を事例として, 大規模小売店舗法 (大店法) の運用が強化された1980年代と, 運用が緩和された1990年代の2つの時期に注目し, 大型店の出店過程を比較考察した。1983年に大型店が出店した八幡市では, 急速な人口増加を背景に, 1974年頃から大型店出店の動きがみられた。しかし, スーパーを核店舗とする大型店の出店には, 地元小売業者からの反対が根強かった。彼らはテナントへの優先的な入居や核店舗との出店協定を結ぶ形で出店調整に介入し, 大型店の出店過程で強い影響力をもった。他方, 久御山町では, 1990年代以降の道路交通網の整備を背景に, 広域集客を前提とする複数の大型店が立地した。当該店舗のテナント入居に際しては, 周辺に古くからの商業集積がないために, 大手小売業者の自由度が高い。しかし, 店舗規模から既存大型店も含む周辺市町の小売活動に与える影響も大きく, 大型店の開店までには出店調整が不可欠であった。1980年代と1990年代における大店法の運用の相違は, 大型店のテナント入居を含む出店調整の段階で地元小売業関係者がもつ影響力の強弱によって示された。このことは, 大型店の出店動向の違いと関わりをもちながら八幡市と久御山町で異なる商業集積の形成をもたらした。
著者
小倉 渓 水谷 孝一 若槻 尚斗
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.77, no.11, pp.686-693, 2021-11-01 (Released:2021-12-01)
参考文献数
23

本論文では,大型擦弦楽器において特定の音高を演奏した際に生じるウルフトーンを技術的に抑圧するための指針を示すため,擦弦条件(弓の速度や圧力の組み合わせ)と発生範囲の関係を数値計算により求めることを目的とする。まず楽器の等価モデルを用いてウルフトーンを再現した後,弓の速度や圧力を網羅的に変化させウルフトーン発生状態マップを作成し,これと実験結果を比較することでモデルの妥当性を検証した。その結果,弓の速度変化によるウルフトーンの周期変化の傾向や,圧力を維持したまま弓の速度を減速することで抑圧されるといった傾向が実験結果と定性的に一致し,本モデルの妥当性が示された。
著者
小倉 悠紀 小山 純一 福原 忠雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.397-401, 2012-05-05 (Released:2012-06-07)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

肌状態と過酸化脂質との関連を調べるため,Diphenyl-1-pyrenylphosphine(DPPP)を蛍光試薬としフローインジェクション分析(FIA)システムを用いた高感度で迅速なヒト皮脂中の過酸化脂質分析法を開発した.リノール酸メチルにブラックライトを照射してリノール酸メチルヒドロペルオキシド(MLHP)を得て,固相抽出法を用いて精製した後,NMRを用いてMLHPの純度を確認し過酸化脂質標準品とした.FIA分析条件の最適化を行い,確立したシステムの検出限界は0.51 pmol,定量限界は1.1 pmolであり,分析時間は10分であった.さらに,確立した前処理法により作成したろ紙を用いてヒトの微小部分から皮脂を採取し,そのろ紙から皮脂中の過酸化脂質を抽出する方法を開発した.ろ紙を用いたときの定量限界は3.8 pmolであった.開発した方法を用いて24名のヒト皮膚上の皮脂中過酸化脂質を分析し,実際ヒトを用いた試験への適用が可能であることが確認され,個人間の差が大きいことが明らかとなった.
著者
嵯峨山 茂樹 板倉 文忠
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J83-A, no.11, pp.1244-1255, 2000-11-25

線形予測符号化(LPC)分析と複合正弦波モデル化(CSM)分析の間にあるエレガントな関係(ここではこれを対称性と呼ぶ)について述べる.目的は,LPC,PARCOR,CSM,線スペクトル対(LSP)などの音声スペクトルモデル化の理論に統合的な視点を与えることにある.これらの分析法はいずれもモデルの自由度に等しい個数の低次の自己相関関数を与えられたとき,モデルのパラメータを求める問題となっているが,LPCもCSMも,直交多項式の理論の観点から見ると,音声のパワースペクトル密度関数を重み関数として定義される単位円周上の直交多項式の理論(LPCの場合)及び実軸上の直交多項式の理論(CSMの場合)であり,定式化,各種のパラメータの定義,解法アルゴリズムなどに関して美しい対称性が成り立つ.また,直交多項式の観点からLSPに対して新しい解釈を与える.
著者
今宿 裕 朝倉 雅史 作野 誠一 嶋崎 雅規
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-20, 2019-06-17 (Released:2019-06-25)
参考文献数
108
被引用文献数
11 1

The present study had 3 objectives. First, we aimed to categorize the effectiveness of participation in school athletic clubs in accordance with findings from preceding studies (study 1). Second, studies on the effectiveness of athletic club activities were to be organized by generation with the changes observed in each generation also described with a view towards clarifying research tasks (study 2). Third, we aimed to clarify the effectiveness of athletic club activities that had not yet been demonstrated in previous research (study 3). In study 1, when we categorized the effectiveness of athletic club activities, we confirmed the construct, the subscale, and the observable variable that determined effectiveness in each study. Each concept was grouped based on similarity and made types having higher degree. The categories we derived were "school adjustment"; "scholastic ability"; "character"; "stress and mental health"; "psychosocial development"; "physical growth and development"; "sport as a habit"; "attitude towards sports"; "fatigue"; "lifestyle"; and "others". In study 2, when we investigated the transition of studies on the effectiveness of athletic club activities, we focused on the problem establishment in these studies. This was considered while examining the association between each problem establishment and social background or policies of the day. As a result, at first, researchers continued selecting students who participated in athletic clubs as appropriate subjects for examining the effectiveness of physical exercise or sports activity. Second, researchers are also interested in the negative effectiveness of participation in athletic clubs. Positive trends are particularly strong for "school adjustment" and "stress and mental health" studies conducted after 1998. Third, studies that demonstrated significance or effectiveness of athletic club activities increased after 1983, and the effectiveness that were determined diversified since that time. Researchers found out various significance and effectiveness of athletic club activities, and recognition of the potential for athletic club activities to address issues also increased. It can be said that we researchers don’t reach a common understanding on the significance and effectiveness of athletic club activities. In study 3, we brought attention to the effectiveness of athletic club activities that had been overlooked in previous studies by comparing effectiveness as determined in empirical studies how it had been determined in theoretical studies. Unnoticed effectiveness of athletic club activities was the acquisition of abilities and attributes necessary for developing sports society and culture.
著者
朝倉 隆司
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.263-269, 2001-12-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
21

生活習慣病の健康リスクとは, 喫煙や飲酒, 過食, 運動などの保健行動であり, ライフスタイルである。このような保健行動やライフスタイルへの関心が, 地球規模でのリスク社会を生きるために必要な条件であり, これまでのどの時代よりも未来志向性の強い現代人に適合した特徴である。その反面, 生活の医療化を促進させるとして批判する見方もある。そこでヘルスプロモーションや疾病予防のための保健行動, 健康リスクマネージメントが孕んでいるジレンマについて, 医療社会学的な視点から論じた。すなわち, 保健行動の4つのジレンマ (個人主義, ヴィクティムブレイミング, 治療に対するニヒリズム, 健康情報の過剰), 保健行動モデルにおけるリスク評価の有効性への疑問, リスクトレードオフ現象, 健康問題への援助と対処のモデル, 保健行動, 健康リスクとエシックスである。