著者
後藤 拓朗 村田 尚道 前川 享子 神田 ゆう子 小林 幸生 森 貴幸 宮脇 卓也 江草 正彦
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.209-216, 2013-12-31 (Released:2020-05-28)
参考文献数
29

【目的】カプサイシンは赤唐辛子に多く含まれる成分で,嚥下反射の促進効果が認められている.咽頭の知覚神経からサブスタンスP(以下SP)を粘膜中に放出させ,SP濃度が上昇することによって反射が惹起されやすくなるとされている.現在,嚥下障害のある患者が容易に摂取できるように,フィルム形状のオブラートにカプサイシンを含有させたカプサイシン含有フィルムが市販されている.しかし,摂取後の嚥下反射促進効果については,十分検討されていない.そこで,本研究では,カプサイシン含有フィルム摂取後の嚥下反射と咳嗽反射への効果,および唾液中SP 濃度への影響について検討した.【方法】対象は,20 歳から40 歳までの成人男性(17 名)とした.カプサイシン含有フィルム(カプサイシン含有量1.5 μg/枚)とプラセボフィルムを用い,クロスオーバー二重盲検法にて行った.フィルムを摂取する10 分前の安静時の値を基準として,摂取後10 分ごとに6 回の嚥下反射および咳嗽反射を評価した.嚥下反射の評価として,簡易嚥下誘発試験による嚥下潜時を測定した.咳嗽反射の評価は,1% クエン酸生理食塩水を用いて咳テストを行った.さらに,摂取前10 分,摂取後10,20 分に唾液を採取し,ELISAキットにて唾液中SP 濃度を測定した.プラセボフィルム摂取時の値をコントロール群,カプサイシン含有フィルム摂取時の値をカプサイシン群として,両群を比較した.統計学的分析はFriedman test およびWilcoxon の符号順位和検定を用いて行った.【結果】カプサイシン群では,摂取前と比較して摂取後40 分で嚥下潜時の短縮を認め,コントロール群では差は認められなかった.また,コントロール群と比較して,カプサイシン群は嚥下潜時が摂取後20,40 分で有意に低値を示していた.その他の時間および他の評価項目では,有意差を認めなかった.【結論】カプサイシン含有フィルム摂取により,嚥下反射の促進効果が,摂取後40 分に認められた.
著者
木村 陽介 山本 共夫 草塩 英治 前田 伸子
出版者
JAPANESE SOCIETY OF ORAL THERAPEUTICS AND PHARMACOLOGY
雑誌
歯科薬物療法 (ISSN:02881012)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.9-14, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
18

Changes in the amount and physical properties of dental plaques were investigated in the oral cavity in which the oral fungal population was maintained at a low level by the long-term use of an antifungal agent as a mouthwash. For the antifungal agent used as a mouthwash, amphotericin B (AMPH-B), which specifically acts on fungi without influencing bacteria and is unlikely to be absorbed from the oral cavity or gastrointestinal mucosa, was selected. For the index of the fungal level in the oral cavity, Candida indigenous to the oral cavity was selected. We paid attention to time-course changes in the Candida count and the amount of dental plaques and its physical properties observed by palpation using a dental probe and macroscopically.The long-term use of the AMPH-B-containing mouthwash for 4 months or longer reduced the oral Candida count with time, confirming that the count can be maintained at a low level by continued use of the mouthwash. In addition, dental plaques macroscopically decreased as the Candida count decreased, and the physical properties the dental plaques also changed. Although the quantitative and qualitative influences of fungi in the oral cavity on dental plaques have not been investigated, it was clarified that long-term gargling with AMPH-B reduced the oral fungal level, which may have quantitatively and qualitatively changed dental plaques, i.e., microorganisms constituting the indigenous microbial flora in the oral cavity.Dental plaques show latent pathogenicity. In addition to the fact that causative microorganisms of the 2 major oral diseases, dental caries and periodontal disease, are present in dental plaques, the causative microorganisms of aspiration pneumonia, which is a major issue in the elderly, are also present. Thus, reduction of the amount of dental plaques may be beneficial for the health of the oral cavity as well as the whole body.
著者
島田 智人 柴﨑 茜 前島 秀明 浅野 亘
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.207-215, 2023 (Released:2023-09-30)
参考文献数
26

ニホンナシ花粉の国内自給率向上のため,花粉採取効率を向上させる技術を検討した.腋花芽利用品種における樹形は,低樹高で主枝先端を隣接樹にジョイント接ぎ木する低樹高ジョイント仕立てが,直線的な樹形であることや,花蕾採取作業に脚立を要さないことなどから,立木仕立ておよび,棚仕立てより時間当たり花蕾採取量が多く,採取効率が向上した.また,低樹高ジョイント仕立ては,株仕立てや,低樹高でジョイント接ぎ木を行わない場合より,中庸な新梢の発生が多く,樹列当たりの花芽数が多くなることが明らかになった.採取方法は,選択採取より一斉採取が,3分咲きや7分咲きより5分咲きでの採取が,時間当たり純花粉採取量および花粉発芽率の点で効率的であることが明らかになった.また,‘新興’における5種の植物成長調節剤の効果を検討したところ,ジベレリン生合成阻害剤であるダミノジッド,パクロブトラゾール,およびエチレン活性剤であるエテホンの処理が,腋花芽着生率に有効であることが確認された.
著者
前川 喜久雄
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.4-13, 2009 (Released:2017-04-25)
参考文献数
12

日本語教育における音声研究の課題のひとつに,学習者が生成する日本語音声に生じる外国語なまりの研究がある。この現象をきちんと研究するためには,大規模な学習者音声データベースが有効であり必須でもある。その理由としては,過去の対照言語学的研究が音韻論に基づくトップダウン分析が音声変異の研究には無力であることを示していることにくわえ,母語の音声認識の研究がボトムダウンに構成される音響モデルの有効性を示していることがあげられる。本稿の後半では,日本語学習者データベースの仕様,構築手法,解析上の可能性について筆者自身のコーパス構築経験に基づく見解を述べた。最後にコーパスに基づく日本語教育研究において学会が果たすべき役割についても意見を述べた。
著者
前田 早苗
出版者
公益社団法人 日本工学教育協会
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1_16-1_21, 2019 (Released:2019-02-02)
参考文献数
9

In the third phase of certified evaluation, universities are required to set up three policies (diploma policy, curriculum policy, admission policy) and to function the internal quality assurance system starting from these three policies. Furthermore, soon it will become necessary for the universities to establish Management of Teaching and Learning for improving the quality of education and to assure the quality of education by assessing the learning outcomes. However, it is significant that academics and staff have a common understanding of the goal of improving the quality of education, not overly emphasizing visualization of learning outcomes.
著者
古関 一則 吉川 憲一 前沢 孝之 浅川 育世 水上 昌文
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.271-279, 2015-06-20 (Released:2017-06-09)
被引用文献数
1

【目的】リハビリテーション病院(以下,リハ病院)入院時点の身体状況から,脊髄不全損傷者の歩行獲得に影響を及ぼす因子および予後予測のアルゴリズムを明らかにすること。【方法】脊髄損傷者87名を対象に診療録より後方視的に調査した。調査項目は入院時の基本情報,神経学的情報,動作能力等を含む14項目とし,退院時の歩行自立度を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。【結果】自立歩行獲得にはASIA Impairment Scale・寝返り・Functional Independence Measure認知合計・Walking Index for Spinal Cord Injury IIが,屋外歩行獲得には受傷年齢・立位が予測因子として挙げられた。【結論】リハ病院において使用可能な客観的予後予測の指標を作成できたことは,計画的かつ効率のよい介入内容の選択や目標の統一を図るうえで大きな意義がある。
著者
坂口 明子 任 智美 岡 秀樹 前田 英美 根来 篤 梅本 匡則 阪上 雅史
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.2, pp.77-82, 2013 (Released:2013-04-11)
参考文献数
14
被引用文献数
10 15

味覚障害は原因がさまざまであり, 各原因別での改善率や治療期間, 経過の報告は多くない. 今回, われわれは味覚障害患者1,059例を原因別に自覚症状の改善率, 治癒期間について検討した.1999年1月から2011年1月までの12年間に味覚外来を受診した味覚障害例1,059例 (男性412例, 女性647例, 平均年齢60.0歳) を対象とした.全例に問診, 味覚検査 (電気味覚検査, 濾紙ディスク法), 採血 (Zn, Fe, Cu), SDS (Self-rating Depression Scale, 自己評価式抑うつ性尺度) を施行し経過を追った. 治療は亜鉛製剤, 鉄剤, 漢方薬, 抗不安薬などの内服を症状, 程度に応じて行った. また, 自覚症状の程度をVAS (Visual Analogue Scale) により評価した.味覚障害の原因分類では特発性が最も多く192例 (18.2%) であった. 次いで心因性が186例 (17.6%), 薬剤性が179例 (16.9%) であった. 転帰が確定し得た680例で自覚症状の改善率は, 感冒後64/92例 (70.2%), 鉄欠乏性31/35例 (88.6%), 亜鉛欠乏性85/116例 (73.3%) と比較的良好であったが, 外傷性は2/12例 (16.7%), 医原性は13/33例 (39.4%), 心因性は46/100例 (46.0%) と低かった. 平均治癒期間は, 薬剤性で約10カ月間と鉄欠乏性や感冒後と比較すると, 約2倍長期間に渡った. また症状出現から受診までが6カ月以上の例に対し, 6カ月未満の例では改善率が良好で, 回復までの期間は前者が後者と比べると有意に長かった (p<0.05).
著者
井上 亮太郎 保井 俊之 前野 隆司
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
pp.TJSKE-D-19-00068, (Released:2020-04-14)
参考文献数
35

This study is to induce by the factor analysis the factors of wakuwaku, the positive emotions at work,and to get them structured by the covariance structure analysis. The authors identified five factors composed by twenty-five items as factors of wakuwaku, and then discovered that it is the circulating structure by using the covariance structure analysis. They quantitively validated those factors and its structure by the confirmative factor analysis and the PANAS analysis to prove the efficacy of the structure.
著者
河村 功一 片山 雅人 三宅 琢也 大前 吉広 原田 泰志 加納 義彦 井口 恵一朗
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.131-143, 2009-07-31 (Released:2017-04-20)
参考文献数
81
被引用文献数
9

近縁外来種と在来種の交雑は外来種問題の一つであるだけでなく、希少種問題の一つでもある。この問題は決して異種間に限られたものではなく、在来個体群の絶滅という観点から見れば、近縁種から同種の地域個体群にまで渡る幅広い分類学的カテゴリーに該当するものである。近縁外来種と在来種の交雑は遺伝子浸透の程度と在来種の絶滅の有無により、I)遺伝子浸透を伴わない在来種の絶滅、II)遺伝子浸透はあるものの在来種は存続、III)遺伝子浸透により在来種は絶滅の3つに分類される。この中で在来種の絶滅を生じるのはIとIIIの交雑であるが、いずれも交雑の方向性の存在が重要視されている。本稿ではタイリクバラタナゴとニッポンバラタナゴの交雑を材料に、IIIの交雑における在来亜種の絶滅と遺伝子浸透のメカニズムについて調べた研究を紹介する。野外調査と飼育実験により、交雑による個体群の遺伝的特徴の変化、配偶行動における交雑の方向性の有無、遺伝子型の違いによる適応度の違いの3点について調べたところ、1)交雑個体の適応度は在来亜種より高いが雑種強勢は存在しない、2)繁殖行動において亜種間である程度の交配前隔離が存在、3)在来亜種の絶滅は交雑だけでなく、適応度において交雑個体と外来亜種に劣る事により生じる、4)遺伝子浸透は在来亜種の絶滅後も継続する、の4点が明らかとなった。これらの事から外来亜種の侵入による在来亜種の絶滅は、外来亜種の繁殖率の高さに加え、交雑個体における妊性の存在と適応度の高さが主な要因である事がわかった。ここで特記すべき点として、交雑の方向性の決定様式と遺伝子浸透の持続性が挙げられる。すなわち、バラタナゴ2亜種における交雑は個体数の偏りによる外来亜種における同系交配の障害により生じるが、交雑の方向性は従来言われてきた様な亜種間での雌雄の交配頻度の違いではなく、雑種と外来亜種の間の戻し交雑により生じ、この戻し交雑が遺伝子浸透を持続させる可能性が高い事である。今後の課題としては、野外個体群におけるミトコンドリアDNAの完全な置換といった遺伝子間での浸透様式の違いの解明が挙げられる。この問題の解明に当たっては進化モデルをベースとしたシミュレーションと飼育実験により、ゲノムレベルで適応度が遺伝子浸透に与える影響を考察する必要がある。
著者
前田 貴記
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.178-186, 2019-12-25 (Released:2020-01-08)
参考文献数
21

自己意識という主観を実証的に扱うための方法論として,主体感(sense of agency)というアプローチについて紹介する.我々は主体感について実証的に評価するために,「Sense of Agency Task(Keio Method)」を考案し,主として統合失調症をターゲットとして研究を進めてきた.さらに,主体感に直接介入し,主体感の精度を向上させる手法を考案し,統合失調症のみならず,様々な神経疾患・精神疾患における認知リハビリテーションについても試みている.主体感を軸とした,統合失調症の症状論,病態論,治療回復論にわたる一連の研究について紹介したい.主体感というアプローチが,神経心理学において,人間の主観的体験を実証的に扱うための一つのモデルとなればと考えている.
著者
冨田 雅之 前田 重孝 木村 高弘 池本 庸 大石 幸彦
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.247-249, 2002-04

69歳男.血塗れで倒れているところを発見され, 陰茎が切断され, 左上肢も受傷していた.創部の応急処置を行い, 患者の不穏が強いため, ハロペリドールを投与し, 陰茎は低温保存した.左上肢は橈側浅指屈筋腱が断裂し, 下腹部が著明に膨満, 超音波で膀胱内に著明な尿貯留を認めた.尿閉に対し緊急に膀胱瘻を増設後, 創部を処置した.自傷の可能性もあり, 陰茎再吻合は困難と判断し, 家族とも相談の上, 断端形成術を施行した.創部の経過は良好で尿道の留置カテーテルは術後16日目に抜去した.自己陰茎切断症は極めて稀な疾患で, 自験例を含め24例のみである
著者
苅田 香苗 坂本 峰至 吉田 稔 龍田 希 仲井 邦彦 岩井 美幸 岩田 豊人 前田 恵理 柳沼 梢 佐藤 洋 村田 勝敬
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.236-251, 2016 (Released:2016-09-30)
参考文献数
136
被引用文献数
14

More than sixty years has passed since the outbreak of Minamata disease, and high-level methylmercury contaminations now seem nonexistent in Japan. However, mercury has been continuously discharged from natural sources and industrial activities, and the health effects on children susceptible to methylmercury exposure at low levels, in addition to mercury contamination from mercury or gold mining areas in developing countries, become a worldwide concern. In this article, we provide a recent overview of epidemiological studies regarding methylmercury and mercury. The following findings were obtained. (1) Many papers on exposure assessment of methylmercury/mercury have been published since the Minamata Convention on Mercury was adopted in 2013. (2) The most crucial problem is child developmental neurotoxicity resulting from prenatal exposure to methylmercury, but its precise assessment seems to be difficult because most of such effects are neither severe nor specific. (3) Several problems raised in birth cohort studies (e.g., whether IQ deficits due to prenatal methylmercury exposure remain when the children become adults, or whether the postnatal exposure at low levels also causes such adverse effects in children) remain unsolved. (4) Concurrent exposure models of methylmercury, lead, polychlorinated biphenyls, aresenic, and organochlorine pesticides, as well as possible antagonists such as polyunsaturated fatty acids and selenium, should be considered in the study design because the exposure levels of methylmercury are extremely low in developed countries. (5) Further animal experiments and molecular biological studies, in addition to human studies, are required to clarify the mechanism of methylmercury toxicity.
著者
永井 洋子 原 規子 前田 正 岩田 基秀 土門 薫 石井 孝政 吉澤 定子 秋元 達雄 加藤 博人 瓜田 純久 中西 員茂 杉本 元信
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.45-51, 2009-01-20 (Released:2016-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

成人ヒトパルボウイルスB19 感染症は典型的経過をとる小児と違い,多彩な症状を呈するため診断が困難なことも少なくない.本検討は,2 年間で11,040 例の当科初診患者のうち発熱,皮疹,浮腫,関節痛,筋肉痛などを主訴とする78 例についてヒトパルボB19 ウイルス感染症を疑って抗体価を測定し,血中IgM 抗体陽性(抗体価8.89±7.86 平均±標準偏差,EIA 法)で,同感染症と診断した15 例について,臨床症状および検査所見の詳細な検討を行ったものである.検討結果より「ヒトパルボウイルスB19 抗体価を測定するべき症例の条件(以下条件とする)を次のように作成した.すなわち,1.CRP が低値か陰性,白血球数上昇なし,2.短期間出現する粟粒大の紅斑(顔面は稀),3.上下肢の関節痛や筋肉痛(必ずしも対称性でない),4.四肢とくに指先,足首,足底の浮腫,5.患児との接触,6.倦怠感,頭痛,発熱など感冒様症状,7.補体価が正常か低値,自己抗体陽性.この7 項目のうち1 を必須項目とし,残り6 項目のうち3 項目以上を満たす症例を「条件」を満足する例とした.78 例について後方視的にこの「条件」を用いた場合の感度,特異度,陽性反応的中度,陰性反応的中度は,それぞれ100%(15/15),88.9%(56/63),68.1%/22),100%(56/56)であった.以上より上記の抗体価測定の「条件」は抗体価を測定すべき症例を選択するのに十分有用であると思われた.成人ヒトパルボウイルス感染症では重症例,遷延例があるため見逃すことなく確定診断をつけることが必要である.
著者
清水 潤 前田 明子
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.141-145, 2020 (Released:2020-08-31)
参考文献数
9

The idiopathic inflammatory myopathies (IIMs) are a group of heterogenous conditions showing immune–mediated muscle damage. Increasing numbers of myositis–specific autoantibodies (MSAs) or myositis–associated autoantibodies (MAAs) have been shown to be associated with a majority of patients with IIMs year after year. It has been known that there are associations between these autoantibodies, especially MSAs, and characteristic clinical features. Anti–mitochondrial antibody (AMA) is a characteristic marker of primary biliary cirrhosis. We previously studied clinical features of IIMs associated with AMA and reported. In the report, we found that IIMs associated with AMA frequently include patients with a clinically chronic disease course, muscle atrophy, cardiopulmonary involvement and granulomatous inflammation. After we reported, several case repots mainly in Japanese literature and four case series in English literature have been reported on clinicopathological features of IIMs associated with AMA. Of the four case series, one is negative, one is partly supportive, and two are supportive to our findings. In this review, we summarized the findings of four case series in English literature in comparison with our previous report. We also discussed the reasons of the differences in findings among reports. Considering growing numbers of literature supporting association between AMAs and characteristic clinical features ; chronic disease course, muscle atrophy, and cardiac involvement, we believe AMA should be added to the growing list of myositis–associated antibodies.
著者
高川 真一 難波 直愛 森鼻 英征 手塚 久男 前田 逸郎 重国 清 石黒 慎二
出版者
公益社団法人 日本船舶海洋工学会
雑誌
関西造船協会誌 216 (ISSN:03899101)
巻号頁・発行日
pp.201-207, 1991-09-25 (Released:2018-04-01)

Deep Submergence Research Vehicle "SHINKAI6500" is the latest manned research vehicle which can dive to the deepest existing in the world. The maneuverability of a submersible vehicle is highly dependent on its cofiguration. During the development of "SHINKAl6500" we have assumed great importance to its decending and ascending capability. "SHINKAI6500"'s configuration has been improved in various respects reflecting "SHINKAI2000"'s operation results, finally determined based on the results of twice wind tunnel tests and a tank test. In sea trials it is confirmed that hydrodynamics resistance of "SHINKAI6500" is remarkably reduced compared to that of "SHINKAI2000". This paper describes the outline of these model tests, sea trials and the process of the development of its streamlined cofigulation.
著者
前田 菜緒 太田 尚孝 新保 奈穂美
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.20-23, 2023-06-09 (Released:2023-06-09)
参考文献数
16

近年、短時間強雨の発生回数の増大により洪水発生リスクが増大している。本研究では対策としてグリーンインフラの一種である雨庭を取り上げ、先進的に整備の進んでいる京都市における雨庭の導入、整備のプロセスと維持管理の成果・課題を主体間の関係性と防災・減災効果と共に明らかにすることを本研究の目的とした。GISを用いた立地分析、文献調査、ヒアリング調査、現地調査を通し、本研究では以下の三点が明らかになった。1.現状では日常的なレベルの降雨には対応できるが極端な水災害との関係性は薄いといえる。2.京都造園建設業協会からの提言があり京都市が主体的に整備することで雨庭整備が実現し維持管理を地域ボランティアが担っている。3.整備は途中段階であり、維持管理に際して行政とボランティア間のズレがある。