著者
上林 孝豊 柳原 一広 宮原 亮 板東 徹 長谷川 誠紀 乾 健二 和田 洋巳
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.566-569, 2003-07-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
2

目的・対象: 当院で手術を施行し, 病理組織学的に肺カルチノイドと診断された20症例 (定型15例, 非定型5例) の臨床的検討を行った.結果: 定型, 非定型の5年生存率は, それぞれ86.6%, 60%であった.定型の1期症例は術式に関わらず全例, 無再発で生存中である.非定型は全例, 葉切除および肺門縦隔リンパ節郭清が行われていた.1期3症例は, いずれも無再発で生存中であるが, T2N2のIIIA期症例, T4NOのIIIB期症例は, 集学的治療にも関わらずそれぞれ術後10ヵ月後, 61ヵ月後に遠隔転移にて癌死した.定型では観察期間1~250ヵ月間 (平均観察期間72.8ヵ月) において, 5年生存率は86.6%であった.非定型では観察期間10~251ヵ月間 (平均観察期間121, 4ヵ月) において5年生存率は60%であった.まとめ: T2の定型カルチノイドに対する縮小手術の可能が示唆された.またIII期以上の非定型カルチノイドに対しては有効な集学的治療の確立が望まれる.
著者
豊田 秀樹 池原 一哉 吉田 健一
出版者
日本分類学会
雑誌
データ分析の理論と応用 (ISSN:21864195)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.57-77, 2015

<p> 本研究の目的は,3 次までの積率を明示的にかつ独立に特定できる確率分布を構成することである.非対称正規分布の母数に変換を施して,平均・分散・歪度を直接パラメタライズできるように新たな確率密度関数を構成する.3 次までの積率を独立に特定することで,(1) 統計モデルの一部として組み込んだ際に,直接歪度を推定すること,(2) 潜在変数(因子)の歪度を直接推定すること,(3) 群間で歪度を比較することが可能となる.非対称正規分布と<i><font face="roman">χ</font></i><sup>2</sup> 分布に関するシミュレーション研究により,母数の推定における妥当性が確認された.また,歪度が観察されやすいブランド価値データに提案手法を適用した結果,集団間での3 次までの積率の違いを細かく比較できることが示された.母数推定には,マルコフ連鎖モンテカルロ法によるベイズ推定を用い,サンプリング手法にはハミルトニアンモンテカルロ法を利用した.</p>
著者
森永 正彦 湯川 宏 吉野 正人 小笠原 一禎
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

光通信に用いられている石英系光ファイバーは、1.5μmの波長においてその損失が最も少ない。このため、波長が1.5μm近傍の発光材料の開発が急務である。本研究の目的は、エルビウム(Er)とアルミニウム(Al)を共添加したルチル(TiO_2)からの異常発光のメカニズムを解明し、ルチル系の新しい発光材料の量子材料設計を行うことにある。平成19年度の研究成果は、以下の通りである。1.2B属元素(Zn)添加による1.5μm帯の発光強度の増大昨年度の研究では、フォトルミネッセンス(PL)強度は、3mol%Er-TiO_2に比べて8mo1%A1-3mol%Er-TiO_2では約18倍、14mo1%Ga-3mol%Er-TiO_2では約23倍に増大した。このような異常発光現象は、8mo1%Zn-3mol%Er-TiO_2でも見られ、Ga添加材に匹敵するPL強度が観測された。一方、8mol%Cu-3mol%Er-TiO_2では、そのような現象は見られず、発光スペクトルは3mol%Er-TiO_2とほほ同じでPL強度も弱かったこのような添加元素による違いは、Al、Ga、Znはルチル(TiO_2)相中のTiと置換するのに対して、Cuは置換しないことが考えられる。共添加材の発光は、Erを固溶したルチル(TiO_2)相からのものであることが分かった。2.Erを固溶したルチル(TiO_2)相の中の発光の局所構造モデルの作成電荷補償の観点から、Erイオン周りの局所構造モデルを作成した。すなわち、+3価のErはTiO_2中の侵入型位置に入り、6個の酸化物イオンで囲まれている。添加元素(+3価のGa、A1や+2価のZn)は、Er近傍にある+4価のTiと置換して、電荷のバランスをとっている。例えば、Ga、Alの場合、Er近傍に3個が配置している。3.蛍光EXAFSによるエルビウム近傍の局所構造の決定8mol%Ga-0.5mol%Er-TiO_2を用いて、蛍光EXAFS測定を行った結果、上記のErの侵入型モデルを支持する結果が得られた。4.エルビウム(Er)の4f電子の多重項エネルギーの計算侵入型モデルを用いて、相対論DV-ME法によって、多重項エネルギーの計算を行った。
著者
瀬尾 文洋 鈴木 秀宣 上原 一浩 矢内原 巧 中山 徹也
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.1089-1097, 1980-08-01
被引用文献数
1

妊娠中における血中遊離型(F)及び抱合型(C)エストロゲン(E)の動態については未だ明らかにされていないため以下の実験を行った.対象としては正常妊婦及び分娩時の母体末梢血,並びに膀帯動静脈血を用いた.更に妊娠中毒症,胎児発育遅延(IUGR),無脳妃妊娠,胎盤性sulfatase 欠損症等の異常妊娠におけるF及びC.Eの変化も合蛙て検討した,被検血漿中よりエーテルにて抽出した分画をF分画として,次いでβ-Glucmronidase/Arylsulfatase を用いて加水分解を行い,Fとして抽出したものをC分画とした.本加水分解による回収率は85%であり,かつC.V.は5%と一定していた.Sephadex LH-20カラム.クロマトグラフィを用いて,estrone(E_1),estradiol(E_2),estriol(E_3)を分離し,各々を抗E_3-16,17-dihemisuccinyl-BSA血清を用いたRIAにて測宛した.(実験成績)(1)正常妊婦末梢血中E値は妊娠週数に伴いF及びCともに増長する.妊娠経過に伴うC.Eに対するF.Eの比(C/F)は各Eにより異たる.E_1では妊娠中期までは一定した上昇傾向を示さず妊娠末期に上昇する.E_2では俺は全期を通じて一定しているが,妊娠末期に軽度上昇を示す.E_3では妊娠経過に伴い前期で4.5,中期で6.5,末期では8.5と著しく上昇し,Cの増量が著しい.(2)妊娠中毒症及びIUGRではF及びC・Eとも低下し,Cの減少が目立つが,両老間に推計学的有意差は認められなかった.無脳児妊娠及び胎盤性sulfatase欠損症においてはF.EのみたらずC.Eも極めて低値であった.(3)母胎血中と臍動脈血中E値を比較すると,臍動脈血中総E値は母体血中値より高く(7倍).特にE_3値は母体血に比べ18倍の高値を示し,その大部分(98%)はCであった.E_1はCおよびFとも母体に高く,E_2値はFが母体に,Cは臍動脈に高かった.臍帯動脈間の血中各E値を比較するとCでは3Eにほとんど差はなく,Fが臍静脈にE_1, E_2, E_3共に各々5, 8, 1.7倍高値であった.
著者
芝 宏礼 山口 陽 赤羽 和徳 山田 貴之 上原 一浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SR, ソフトウェア無線 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.155, pp.7-12, 2009-07-22
被引用文献数
12

情報通信サービスの高度化・多様化に伴い,携帯電話や無線LANやRFIDなど多種多様な無線システムが運用され,現在も多くの無線システム方式の標準化が行われている.RFIDタグやセンサを用いた情報通信サービスは,さらなる発展が予想されており,端末数も急増している.無線システムや収容する端末数の増加に伴い,基地局設置場所の不足やシステム間干渉といった問題が生じる.これらの問題を解決するために,本稿では,多種多様で膨大な数の無線端末を単一システムで統合的に収容する無線システムの提案を行う.提案するフレキシブルワイヤレスシステムは,ソフトウェア無線技術やコグニティブ無線技術を応用しており,従来の無線システムとは異なり,受信した無線信号を基地局で復調処理等をすることなく,ネットワークに電波環境をそのまま取り込み,ネットワークで受信した電波をソフトウェアで処理することであらゆる無線システムに対応する.本稿では,フレキシブルワイヤレスシステムの実現に向けた試作結果について述べる.複数の無線システムを同時に収容する際の課題の一つである信号処理負荷の増大に対して,高効率ソフトウェア復調方法を提案し,その有効性を実機を用いて示す.
著者
沖 真帆 塚田 浩二 栗原 一貴 椎尾 一郎
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.1586-1598, 2011-04-15

本研究では,家庭内の様子をオルゴールのメタファを用いて音で提示するインタフェース「イルゴール」を提案する.イルゴールの背面に設置したぜんまいを巻いてふたを開くと,オルゴールのBGMに乗せて,過去の家庭の音が聞こえてくる.このように,オルゴールで過去の思い出を振り返るような感覚で家庭の様子を知ることができる.本論文では,実験住宅に複数のセンサを設置してユーザの行動を取得し,イルゴールを用いて生活状況が確認できるかを検証した.We propose a music-box-type interface, "HomeOrgel", that can express various activities in the home with sound. Users can also control the volume and contents using the usual methods for controlling a music box: opening the cover and winding a spring. Users can hear the sounds of past home activities, such as conversations and opening/closing doors, with the background music (BGM) mechanism of the music box. This paper describes the concepts, implementation and evaluation of the HomeOrgel system.
著者
岩澤 昭一郎 海老原 一之 竹松 克浩 坂口 竜己 大谷 淳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解
巻号頁・発行日
vol.98, no.394, pp.15-22, 1998-11-12
被引用文献数
15

本報告では, 人物の姿勢を画像解析により推定し, CGキャラクタにより実時間で再現することが可能な"Shall We Dance?"システムについて述べる.筆者らは既に, 単眼画像を用いた非接触な人物の姿勢推定手法を開発したが, 姿勢推定結果は2次元的であった.本報告では既提案の単眼像アルゴリズムを多眼画像へと発展させる.まず, 各画像におけるシルエット領域とその輪郭のヒューリスティックスに基づいて頭頂・手先・足先の各特徴部位を実時間で検出し, それら結果を用いて3次元復元を行なうことで姿勢を推定する.併せて本手法の有効性を実験により示す.
著者
笠原 一人
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

今年度は、まず昨年度から行っている資料調査の一環として、「日本インターナショナル建築会」(以下、「建築会」とする)の「外国会員」の資料が残されたヨーロッパの資料館(ベルリンのAKADEMIE DERKUNST、ウィーンのOsterreichisches Museum fur angewandte Kunst、ロッテルダムのNetherlands Architectural Instituteなど)を訪問し、「建築会」から送られた「外国会員」への書簡などを確認した。その結果、「建築会」が外国会員を募集する際、東京で「建築会」主催の国際建築展を開催すること(実現せず)を目的として会員になるよう呼びかけていたことが明らかとなった。また、本野精吾が設計した旧鶴巻邸および旧大橋邸に残された、本野のデザインによる室内デザインや家具についての現物調査を行った。その結果、建築はモダニズムの方法を実現しているが、室内デザインや家具においては、ウィーン分離派やアールデコ、古典主義などの影響を受けた、装飾を伴ったやや古風な意匠が展開されていることを確認した。最後に2年間の本研究についてのまとめの考察を行った。戦前の関西のモダニズム建築の伝播には、建築運動団体が大きな役割を果たしたと言える。「建築会」は、ヨーロッパの建築運動との直接的な関わりを持ち、会員として高等教育機関の教員や官公庁に在籍する技師などが数多く在籍していたため、その影響は大きかった。また東京の「分離派」や「創宇社」、あるいは「デザム」を率いた西山卯三らの影響を受けて、京都に「白路社」や「鉄扉社」という無名の技術者による建築運動団体も存在した。こうした建築運動団体は、独自の雑誌や展覧会などのメディアを駆使した。それによって「建築会」は海外との直接的な関わりを可能にし、「建築会」の機関誌となっていた雑誌『デザイン』から「鉄扉社」が誕生するなど、複数の建築運動が関連することにもなった。関西の内外で複数の建築運動団体の活動が、互いに関連し合いながらモダニズム建築の伝播に貢献したことを確認できた。
著者
塩田 智也 寺田 和憲 栗原 一貴
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.29, 2015

マナー違反者を直接咎責することは対人関係の悪化を嫌悪した結果ためらわれる.我々は,対面状況において過剰な情動反応を抑制するためにコミュニケーションチャネルからエージェンシーを削減する「脱エージェンシー」という概念を提案している.本研究では,「インタラクション対象が機械である」というトップダウン認知を利用した脱エージェンシーによって咎責嫌悪感を低減させられることを心理実験で示した.
著者
吉本 暁文 新保 仁 原 一夫 松本 裕治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. SLP, 音声言語情報処理
巻号頁・発行日
vol.2015, no.5, pp.1-6, 2015-05-18

一般的に依存構造解析のアルゴリズムでは,句構造を扱わないために並列構造を考慮することが難しい.そこで,依存構造解析のための Eisner アルゴリズムを,並列構造解析ができるように拡張した.その規則の導出木は,既存の依存構造のアノテーションから導出することができる.
著者
柏崎 礼生 宮永 勢次 森原 一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告セキュリティ心理学とトラスト(SPT)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.4, pp.1-6, 2014-10-02

プライベートクラウドや組織内仮想化基盤からパブリッククラウドへと移行する過渡期において,プライベートクラウドとパブリッククラウドの双方を接続しデータやアプリケーションの可搬性を高めたハイブリッドクラウドが展開される.ハイブリッドクラウドにおいてはプライベートクラウドとパブリッククラウドにおいて同じ,あるいは互換性の高いハイパーバイザーで構築されている事が望ましい.VMware 社は 2013 年に ESXi ハイパーバイザーを用いたパブリッククラウドサービス vCloud Hybrid Service (現 vCloud Air) の提供を開始し,2014 年には日本でのサービス提供が始まった.大阪大学では ESXi を用いた仮想化基盤を構築・運用しているため,このサービスは移行先のパブリッククラウドの有力な選択肢の一つである.本稿では VMware 社の協力のもと,vCloud Air 環境における計算機資源の性能評価を行う.In an age of transition between use of private cloud or virtualization infrastracture in an organization to public cloud service, a hybrid cloud that is a composition of two or more distinct cloud infrastructures (private, community, or public) comes out. The infrastractures are bound together by standardized or proprietary technology that enables data and application portability. From a standpoint of V2V cost, it is desirable for a public cloud and a private cloud to be constructed by the same or highly compatible hypervisor. VMware Inc. started to provide vCloud Hybrid Sevice in 2013 that is constructed by ESXi hypervisor (this service is renamed to vCloud Air in August, 2014). In 2014, this service was also begun to provide in Japan. Osaka university constructed a virtualization infrastracture with ESXi hypervisor. This service seems to one of a workable alternative. In this paper, we show results of performance benchmarks sponsored by VMware Inc.
著者
大川 あゆみ 富原 一哉 オオカワ アユミ トミハラ カズヤ OKAWA Ayumi TOMIHARA Kazuya
出版者
鹿児島大学
雑誌
地域政策科学研究 (ISSN:13490699)
巻号頁・発行日
no.12, pp.69-89, 2015-03

Affective disorders are characterized by a significant dysfunction of controlling a person's emotional state ormood, inducing social maladjustment. Because women have approximately twice the risk for these disorders than men and the risk increases during peri-menstrual, pregnant, and menopausal periods, it is considered that gonadal hormones, such as estrogen and progesterone, are involved in women's vulnerability to the disorders. In this review, we focus on the risk factors of women's typical affective disorders and discuss the neuroendocrinological mechanisms regulating them. Many studies have provided evidence that the limbic system, including the amygdala and hippocampus, play an important role in regulating the emotional state, and that the GABAergic and monoaminergic neurotransmitter systems and Hypothalamic-Pituitary-Adrenal (HPA) axis are involved in the neurobiology of affective disorders. In addition, the brain areas involved in emotion are rich in estrogen receptors (ERs) and estrogens influence the functions of the neurotransmitter and neuroendocrine system. Especially, the distinct roles for two ER subtypes, ERα and ERβ, in HPA axis activity may be responsible for the development of women's vulnerability to affective disorders. Understanding this rucial mechanism will help provide a prophylactic and therapeutic preparation for women specific affective disorders.情動障害とは,情動機能がうまく働かず社会的な不適応が生じる障害であり,自殺との関連が高く,それらの疾患に対する施策やメカニズムの解明が求められている。また,その発症率は女性が男性の約2倍であり,月経関連症候群や産褥期精神障害など女性特有の情動関連障害も存在することから,女性は情動関連障害に対して脆弱性が高いと考えられている。そこで本論文では情動関連障害の発症要因とその神経内分泌メカニズムについて概観し,女性の情動関連障害への脆弱性に対するそれらの影響を考察することとした。 まず,女性の情動障害の発症要因としては,遺伝要因,女性特有のライフイベント,性腺ホルモンの関与などが考えられる。しかし,性腺ホルモンの影響は遺伝的要因の主要な発現経路の一つであり,女性特有のライフイベントも性腺ホルモンの変動時期と連動することから,エストロゲンやプロゲステロンといった性腺ホルモンを中心にしてこれらが相互作用していると考えることができる。 次に,女性の情動関連障害発症メカニズムを明らかにするために,性腺ホルモンと情動調節の神経解剖学的機構,神経化学的機構,ストレス反応の神経内分泌学的機構との関係を考察した。例えば,性腺ホルモンの投与は,扁桃体や海馬の構造や活性を変化させ,また,GABAやセロトニンなどの神経伝達物質の合成や受容体の発現を変化させることが示されている。さらに内分泌的ストレス反応を司る視床下部-下垂体前葉-副腎皮質系にも性腺ホルモンは影響を与え,ストレスに対するこの系の反応性を変容させる。このように性腺ホルモンが情動を司る脳・神経機構と強く関係することについては多くの報告がなされているが,その機序についての解明は未だ十分とはいえない。今後,これらの疾患の予防・治療に有効な知見を得るためにも,さらに情動調節を媒介する各要因とそのメカニズムの解明に注力していく必要があると考えられる。
著者
栗原 一貴
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.465-471, 2015-04-15

本稿では,筆者がこれまでに主に学術会議WISSにおける研究発表,およびWISSの会議そのものを支援・拡張するシステム提案と運用を行う企画であるWISS Challengeで提案してきたプレゼンテーション支援システムを中心に紹介し,プレゼンテーションの市民化,放送化という視点で考察する.
著者
篠原 雅尚 村井 芳夫 藤本 博己 日野 亮太 佐藤 利典 平田 直 小原 一成 塩原 肇 飯尾 能久 植平 賢司 宮町 宏樹 金田 義行 小平 秀一 松澤 暢 岡田 知己 八木 勇治 纐纈 一起 山中 佳子 平原 和朗 谷岡 勇市郎 今村 文彦 佐竹 健治 田中 淳 高橋 智幸 岡村 眞 安田 進 壁谷澤 寿海 堀 宗朗 平田 賢治 都司 嘉宣 高橋 良和 後藤 浩之 盛川 仁
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2010

2011年3月11日、東北地方太平洋沖でM9.0の巨大地震が発生し、地震動・津波被害をもたらした。この地震の詳細を明らかにするために、各種観測研究を行った。海底地震観測と陸域地震観測により、余震活動の時空間変化を明らかにした。海底地殻変動観測及び地震波反射法構造調査から、震源断層の位置・形状を求めた。さらに、各種データを用いて、断層面滑り分布を明らかにした。現地調査により、津波の実態を明らかにし、津波発生様式を解明した。構造物被害や地盤災害の状況を明らかにするとともに、防災対策に資するデータを収集した。
著者
川本 善和 檜山 礼秀 根本 美佳 島 弘光 河原 一茂 島田 和基 吉成 勝海 浅野 澄明 桟 淑行 五十嵐 孝義 齋藤 仁弘 西山 實
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.632-641, 2001-10-10
被引用文献数
15 3

目的: 本研究の目的は, 高フィラー型硬質レジン修復物の補修時に追加築盛を行う際の表面処理条件が曲げ接着強さに及ぼす影響を明らかにすることである.<BR>方法: 高フィラー型硬質レジンとしてエステニア (エナメル質用レジンEE, 象牙質用レジンED) を用い, 製造者指示に従い重合した被着体 (2×2×12.5mm) に, 処理なし (NT), シラン処理 (S), ボンディング処理 (B), シラン処理とボンディング処理を併用 (SB) の条件で表面処理を行った後に, 直接法 (D) ではクリアフィルAP-Xおよび間接法 (I) ではEEによる追加築盛を行って重合し, 曲げ接着試験用試験体 (2×2×25mm) を作製した. 作製した試験体は, 37℃で24時間水中保管後に3点曲げ試験を行い, 曲げ接着強さとした.<BR>結果: 被着体EEおよびEDの両者で, 直接法はD-S≒D-SB>D-B>D-NTの順に, SとSB間を除き有意 (one-way ANOVA, P<0.05) に大きな値を示し, 間接法はI-SB>I-S>IB>I-NTの順に有意に大きな値を示した. また, 破断面のSEM観察では, D-NTおよび1-NT以外のすべての処理条件で, 被着体および追加築盛体での凝集破壊が認められた.<BR>結論: 直接法および間接法の両者で, SBとSが最も効果的で, 次いでBが有効であった.
著者
小原 一馬
出版者
SHAKAIGAKU KENKYUKAI
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.3-118, 2011

Despite an abundance of application opportunities, for a long time Goffman's sociology of play/games has practically been ignored in the studies of play theory. The aim of this paper is to give his sociology of play an appropriate position in the historical development of play theories. To this end, the following points are demonstrated: 1. What were the achievements and the problems of the play theories (of Huizinga, Caillois, and Bateson) before Goffman? 2. How did Goffman inherit the previous works' achievements and solve their problems? 3. What kind of relationship did Goffman's sociology of play have with Csikszentmihalyi's flow theory, which had the greatest influence on the development of play theories after Goffman? While Caillois basically inherited Huizinga's definitions of play he criticized Huizinga's concept of play as being too wide, and his definitions of play are not appropriate for "play" as a whole but only to a part of it. Therefore, Caillois redefined "play" to the domain of culture, and also he classified "play" into four by two categories. Responding to Caillois' criticism of Huizinga, Goffman developed Bateson's frame theory, and he showed that the fun of play can be explained through a single, integrated one without any classification. This new frame theory by Goffman can be summarized as the playing field introducing various valuable things from the outside world into itself through its frame while blocking any irrelevant objects; it is important to balance the way of its reflection of the outside world in order to heighten participants' concentration on its unique reality utilizing randomness and symbolic distance. This theory of Goffman's is in a complementary relationship with Csikszentmihalyi's flow theory, which also emphasizes concentration, and thus its integration will lead to a more complete theory.