著者
森 和俊 親泊 政一 原田 彰宏 南野 哲男
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

小胞体膜結合性転写因子ATF6は、小胞体ストレスを感知するとゴルジ装置へ移行し、プロテオリシスによる活性化を受ける。この小胞体ストレスの感知にATF6内腔領域のみが十分であることを証明した。ATF6αノックアウトマウスは正常に発育するが、腹腔に小胞体ストレス誘導剤を投与すると脂肪肝を形成して死亡する。その原因として、肝臓からの脂肪の放出を担う超低密度リポタンパク質形成に関与するApolipoprotein B-100の品質管理にATF6α非存在下では問題が生じることを突き止めた。
著者
原田 佑規 箱田 裕司 黒木 大一朗
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.150, 2013

強盗等の犯人が凶器を握っていた場合,犯人の顔や衣服に関する目撃者の記憶成績は低下する。この現象は凶器注目効果と呼ばれており,その生起機序については凶器に対する目撃者の(a)注視パターンや(b)有効視野の縮小が関与していると主張されてきた。本実験の目的は,凶器に対する(a)注視時間と(b)有効視野の大きさを測定し,凶器注目効果に関する実証的な根拠を提供することであった。参加者がキーを押すと,凶器刺激か統制刺激が呈示され,その消失直後に参加者の注視点の周辺に数字が呈示された。参加者の課題はこの数字を正しく検出し,同定することであった。実験の結果,参加者の注視時間は,凶器刺激と統制刺激の間で有意差がなかった。一方,数字の同定成績は,凶器刺激を目撃している時のほうが統制刺激よりも有意に低かった。これらの結果は,注視パターンでなく,有効視野の縮小が凶器注目効果の生起へ関与していることを示唆する。
著者
原田 信之
雑誌
新見公立大学紀要 = The bulletin of Niimi College
巻号頁・発行日
vol.38-1, pp.1-12, 2017

玄賓(七三四~八一八)は南都法相宗興福寺の高僧であったが、備中国(岡山県)や伯耆国(鳥取県)など、隠遁した地で寺院を建立していたことが知られている。伯耆国に関するものでは、『日本三代実録』に伯耆国会見郡で阿弥陀寺を建立したことが記されているが、その場所がどこであったのかは未だにわかっていない。玄賓が伯耆国会見郡に建立した阿弥陀寺の場所については、これまでに伯耆大山建立説と伯耆賀祥建立説が提示されてきた。寛保二年(一七四二)成立の『伯耆民諺記』、安政五年(一八五八)編纂の『伯耆志』会見郡分などの地誌類に加え、地域に伝わっている文献や伝承を調査した結果、玄賓が伯耆国会見郡に建立した阿弥陀寺の場所は、伯耆賀祥(鳥取県南部町賀祥)であった可能性が極めて高いことがわかった。伯耆大山には玄賓の伝承は伝わっていないが、伯耆賀祥には玄賓が豊寧寺(伯耆三十三札所第三番。法寧寺、保寧寺、宝念寺とも。阿弥陀寺があった地とされる)と白山権現を草創したとの伝承があり、その地には「あみだいじ」という地名が残っている。
著者
濵田 直人 原田 真二 本田 ゆかり 河﨑 靖範 槌田 義美 田中 智香 山鹿 眞紀夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0244, 2008 (Released:2008-05-13)

【目的】 当院では早期の移動能力獲得を目的に脳卒中患者に対して積極的に下肢装具を使用しており、患者や理学療法士にとっての即時性や利便性を考え、テスト用装具として各種の長下肢装具(以下KAFO)、短下肢装具(以下AFO)15種類を常備している。理学療法士は、患者の病態に適した装具が処方されるように各種特色のあるテスト用装具を試す事ができるが、多種類の下肢装具の中から最適な装具を選定するのに迷う場合も少なくない。そこで今回、院内の装具使用の標準化を図り、装具選定を行う際の指標となるような脳卒中下肢装具アルゴリズム表(以下アルゴリズム表)を試作し、その有用性を検証したので報告する。【対象】 平成19年4月1日~10月31日の間に、当院回復期病棟入院中の脳卒中患者125名のうち下肢装具が処方された延べ75名を対象とした。【方法】 1)アルゴリズム表の作成にあたり、過去の文献を参考として各種テスト用装具の機能的特徴、適応病態等をまとめた。脳卒中患者では病態による個人差が大きいので、アルゴリズム表の選択項目に身体状況や生活環境等を加えた。更に、過去に当院に入院していた脳卒中患者の装具処方時の情報を参考にした。 2)アルゴリズム表の有用性をみるため、選択された装具と実際に処方された装具の合致率を調査した。また、非合致例はその原因を自由記載した。【当院に常備するテスト用装具の種類】 1)KAFO type(計2種類); Ring lock継手・SPEX継手 2)AFO type(4分類、計13種類); 1.金属支柱付(1種類) 2.プラスチック前方支柱型(3種類) 3.プラスチック後方支柱型(3種類) 4.継手付(6種類) 【結果】 1)アルゴリズム表の選択項目を身体機能(Brunnstrom stage、筋緊張の程度、関節可動域、感覚障害等)、歩容、装具の使用環境、高次脳機能障害等とし、患者の病態を照らし合わせることで装具選定できるようにアルゴリズム表を試作し、通常の訓練、装具回診時に活用した。 2)合致率は79%{KAFO;81%、AFO4分類(1.金属支柱付 2.プラスチック前方支柱型 3.プラスチック後方支柱型 4.継手付);76%}であった。【考察】 試作したアルゴリズム表は、KAFOやAFO4分類の合致率は比較的高値を示しており、当院における装具選定の標準化が図れたと考えられる。また、簡易的ではあるが装具の特徴を理解する事ができ、装具選定の際の指標となり業務改善につながると期待される。しかし、非合致例の原因として装具への工夫、病態の予後予測、退院後の生活環境等の考慮が不十分であった事が挙げられた。アルゴリズム表の選択項目を追加修正し、より信頼性の高いものに改訂することが今後の課題と考えている。
著者
矢部 博 成島 康史 M. Al-Baali 五十嵐 夢生 稲葉 洋介 大谷 亮介 小笠原 英穂 加藤 惇志 小林 宏 菅澤 清久 中谷 啓 中村 渉 中山 舜民 林 俊介 原田 耕平 平野 達也 柳田 健人 山下 浩 山本 哲生 渡邉 遊
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

大規模な無制約最適化問題に対する3項共役勾配法ならびに微分不可能な関数を含む非線形方程式系に対する共役勾配法について新しい解法を提案し、その大域的収束性を示した。また、無制約最適化問題を解くための準ニュートン法に関してメモリーレス準ニュートン法および目的関数値のみを利用する準ニュートン・パターンサーチ法も研究した。制約付き最適化問題に対して実行可能方向を生成する新しい非厳密逐次二次制約二次計画法を提案しその大域的収束性・超1次収束性を示した。さらに、画像処理などの応用分野で扱うトレース比最適化問題に対する新しい解法も提案した。以上の提案解法について数値実験を行って、実用的な有効性を検証した。
著者
渡辺 晋一 西本 勝太郎 浅沼 廣幸 楠 俊雄 東 禹彦 古賀 哲也 原田 昭太郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.14, pp.2101-2112, 2001-12-20
参考文献数
17
被引用文献数
29

わが国における足疾患,特に足・爪白癬の頻度を知る目的で,1999年および2000年の5月第3週に受診した皮膚科外来患者を対象に,足疾患に関する無作為調査を行った.その結果,2年間で計21,820例が集積され,足にトラブルを持つ患者は,14,087例(64.6%)であった.このうち8,737例(40.0%)は足の真菌症で,ついで「うおのめ・たこ」2,826例(13.0%),「いぼ・ほくろ」1,259例(5.8%)の順であった.この成績は同様に行われたヨーロッパの調査結果とほぼ同じで,足の真菌症が多いことがわかった.そこで,2000年度の調査においては,受診理由を「真菌症の疑い」と「真菌症以外」に分けて別個に集計したところ,前者では3,231/3,420例(94.5%)に,後者では1,723/8,804例(19.6%)に真菌感染症を見いだした.この真菌感染症に関与する要因をさぐる目的で,得られた背景因子を多重ロジスティック回帰分析により解析したところ,「加齢」,「男性」,「高コレステロール血症」,「ゴルフ」,「同居家族に真菌症あり」などに有意に高いオッズ比が認められた.治療に関しては,外用剤による治療が主であり,爪白癬においても2/3が外用剤のみの治療であった.また美容上の問題点ばかりでなく,歩行困難などの支障を訴える患者も少なくなかった.今回の調査では,皮膚科外来患者のみを対象としたが,40%におよぶ足・爪白癬患者が存在することが明らかとなった.またその病変の多くが,患者自身が気付いていないか,あるいは気付いていても不充分な治療しか受けていない実態も明らかとなった.また白癬の感染リスク因子についても考察をおこなったが,今後感染予防を考える上で興味のある結果が得られた.これらの患者のQOLを高めるためにも,また家庭内感染を防ぐためにも,足・爪白癬患者を積極的に治療すべきだと考えられた.
著者
原田 誠一 岡崎 祐士
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

研究代表者らは、幻覚妄想体験に対する新しい精神療法(認知療法)を考案した。気分障害・不安障害における認知療法の治療効果はすでに広く立証されているが、統合失調症の認知療法は国の内外を問わず十分確立されていないのが現状である。研究代表者らが認知療法の適応を統合失調症に広げる試みを行っている理由は、従来の治療法にあった以下のような重大な問題点・課題に対応するためである。(1)病識がなく通院・服薬を拒否する患者の治療導入を円滑にすすめる方法論の開発が不十分。(2)薬物療法抵抗性の幻覚妄想体験に対する治療法を開発する必要。(3)従来の治療では再発予防が不十分であったため、新しい再発対策が必要。(4)幻覚妄想体験によって生じるスキーマの変化への対応が必要。本年度は欧米における本分野の研究状況をレビューし、代表的な英国の専門書を翻訳・出版した(「統合失調症の認知行動療法」)。また、従来からある他の精神療法と認知療法の比較・検討を行い、認知療法が他の精神療法を補完する役割を果たしうることを示した(原田・臼井・岡崎:ことばの処方.岡崎編.統合失調症の診療学.中山書店、2002)。そして、以上の内容を学会誌に発表し(「都精協雑誌」2002)、初診の場における本法の利用法を述べ(「精神科」2002)、薬物療法との関連にも触れた(「精神科臨床サービス」2002)。加えて、認知療法の内容を当事者・家族に普及する啓蒙活動にも力を入れ、第35回全国精神障害者家族大会(2002.9)で教育講演を行い、家族会の機関紙(「ぜんかれん」2003)で内容の紹介を行った。
著者
久保田 雄也 荒木 実穂子 山本 達 宮脇 淳 藤澤 正美 原田 慈久 角田 匡清 和達 大樹 辛 埴 松田 巌 田口 宗孝 平田 靖透 保原 麗 山本 真吾 染谷 隆史 横山 優一 山本 航平 田久保 耕
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.71, pp.1273, 2016

<p>SPring-8 BL07LSUにて分割型クロスアンジュレータと電磁石位相器を組み合わせ、唯一の軟X線高速連続偏光変調光源を実現した。さらにその光源を用いた軟X線領域における光学遅延変調法を世界で初めて開発した。この手法は磁性体の磁気円二色性(MCD)と旋光性を同時にかつ高精度に測定できる。本講演では新規光源と手法の詳細を述べると共に、それを用いた鉄系磁性体のMCD及び磁気光学カー効果(MOKE)測定の結果を報告する。</p>
著者
原田 明 蒲池 幹治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.7, pp.587-595, 1994
被引用文献数
1

近年,低分子化合物の分子認識について多くの研究がなされているが,生体系においては高分子による高分子の認識が生命を維持していく上で重要な役割を果たしている。著者らはホスト-ゲスト系による高分子の認識と高分子の認識に伴う超分子構造の構築について検討した。従来,シクロデキストリンの包接に関する研究は低分子化合物の研究に限られていたが,著者らはシクロデキストリンが種々のポリマーを取り込み包接化合物を形成することを見いだした。本報告ではシクロデキストリンと種々の非イオン性の水溶性ポリマーや疎水性のポリマーとの錯体形成について検討した結果を報告したい。特にシクロデキストリンはポリマーの構造や分子量を厳密に認識し,超分子構造を形成する。これらの超分子の構築方法や構造,性質や機能について検討した。またこれらの超分子構造を利用した鋳型反応による新規な化合物,ポリロタクサンの合成方法についてものべる。
著者
首藤 康文 福山 朋季 藤江 秀彰 小嶋 五百合 富田 真理子 小坂 忠司 原田 孝則
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.36, pp.4151, 2009

パラチオン(P)とメタミドホス(M)、2種の有機リン剤を2週間にわたり雌性ラットに反復経口投与し、一般毒性、神経毒性および免疫毒性関連項目を指標に複合曝露影響を検索した。<BR>供試動物:8 週齢のWistar Hannover系雌ラット 8匹/群<BR>実験群:溶媒対照群(コーンオイルと1% Tween80の1:1混合乳化液)、パラチオン単剤投与群(P0.6 mg/kg)、メタミドホス単剤投与群(M0.8 mg/kg)、複合投与群(P0.6 mg/kg+M0.2 mg/kg、P0.6 mg/kg+M0.4 mg/kg、P0.6 mg/kg+M0.8 mg/kg)の計6群<BR>投与方法:胃ゾンデを用いた14日間反復強制経口投与<BR>検査項目:一般毒性(体重、一般状態、血液・生化学的検査)、神経毒性(神経症状、瞳孔径、自発運動量、高架式十字迷路検査、脳重量、血漿および脳コリンエステラーゼ(ChE)活性測定)および免疫毒性関連項目(胸腺の細胞数測定およびフローサイトメータを用いたリンパ球サブセット解析)<BR>結果・考察:一般毒性指標および免疫毒性指標に変化は認められなかった。神経毒性学的検査では、複合曝露によってChE活性阻害作用の増強、有機リン剤曝露における鋭敏な臨床指標である縮瞳の重篤化などの神経作用が強く認められた。また、末梢神経性の症状は速やかに、中枢性の症状はやや遅れて発現する傾向が認められた。さらに、自発運動量の測定結果から、ChE活性阻害による運動量低下と認知機能低下による運動量増加の、相反する作用が混在している可能性が考えられた。認知機能低下については、症状観察において警戒性低下が認められたことおよび高架式十字迷路検査において開架/閉架間の移動回数が減少していたことから、複合曝露による注意力あるいは作業空間記憶への影響が疑われた。(平成20年度 厚生労働省科学研究事業)
著者
岩佐 貴史 原田 卓
出版者
日本実験力学会
雑誌
実験力学 (ISSN:13464930)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.221-225, 2016

<p> A performance of the feature-point matching using a concave target marker is investigated for three dimensional (3D) surface shape data given by a grating projection method. Multiple corresponding points are previously created from a surface shape measurement of the concave target markers, and a coordinate transformation matrix that serves as an interface between two sets of 3D shape measurement data is obtained from the feature-point matching with singular decomposition method. Then, effects of the number of the target marker on matching accuracy are discussed for the surface shape measurement data of the spherical mirror model. The results showed that the feature-point matching using the concave target marker connects two sets of the 3D surface shape measurement data at 40 μmRMS accuracy regardless of the number of the corresponding points. This matching accuracy is roughly the same as that achieved by the surface shape measurement using the grating projection method.</p>

1 0 0 0 OA 爪白癬

著者
原田 敬之
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.77-95, 2011 (Released:2011-06-20)
参考文献数
236
被引用文献数
7 8

爪白癬は長年治療に難渋する疾患の1つであったが,1990年代に入ってわが国においてもイトラコナゾール,テルビナフィンといった新しい経口抗真菌薬が使用できるようになった.その優れた有効性,安全性から積極的に治療することが可能となり,改めて爪白癬の病態,診断,治療などについて脚光を浴びている.爪白癬はわが国の人口の約10%に罹患者が存在し,特に高齢者ではさらに頻度が高い.今後高齢化社会が益々進むにつれて爪白癬を有しているために肉体的ならびに精神社会的な負担を生じ,老後のQOLを大いに損ねる危険性も予想される.また,爪白癬の病巣が他の病型の白癬や他人に白癬を感染させる感染源となりうる.治療に当たって爪白癬の確定診断を行うことが必須であることはいうまでもないが,単に画一的に内服療法を行うのではなく,外用療法,局所療法を駆使して症例ごとに最良の治療法を探求・選択することが最も重要である.爪白癬に関して今までに優れた成書や総説を始め論文は極めて数多く出版されているが,今回はわが国の実情も踏まえていま一度概説したい.
著者
原田 文三郎
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.1, pp.17-25, 1966-03-31
著者
三ッ井 稔 原田 重雄
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1962, no.19, pp.10-14, 1962-11-15 (Released:2009-07-31)
参考文献数
10

昭和34年から37年の間にインド種6種類の実生苗または栄養系苗を供試して,8,11および14時間の日長処理を行なった。茎葉の生育は8~11時間よりも14時間日長下においてすぐれる傾向が認められた。この性質は中国種の日長感受性と似ている。なお日長効果は葉数よりも茎長において現われやすい傾向があった。
著者
原田 拓真 徳力 幹彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.561-567, 1997-07-25
参考文献数
43

高周波可聴域を有するコモンマーモセット(Callithrix jacchus)20例を用いて, 最大99kHzまでの可聴域全般にわたるクリック音刺激周波数および音圧が聴性脳幹反応(BAEP)の波形およびピーク潜時に及ほす影響を検討した. 4, 32および99 kHzの周波数刺激でBAEPを記録した結果, ピーク数は刺激音圧により変化し, 80 dB peak equivalent sound pressure level(pe SPL)の音圧の場合に最大数の明瞭な波形を得ることができた. このことから, コモンマーモセットを用いて広範囲の周波数にわたるBAEP記録を行う場合には, 80 dB pe SPLが適していると考えられた. また, 刺激音圧を100 dB pe SPLから50dB pe SPLに変化させるとBAEP各波の潜時は延長した. 一方, 80 dB pe SPLの一定音圧下で刺激周波数を0.5 kHzから99 kHzに変化させてBAEPを記録した結果, 刺激音圧に対する各波潜時および振幅の変化は一様ではなかった. すなわち, I波振幅は16kHzおよび32 kHz刺激時に増大し, IIIおよびV波振幅は4-8 kHzおよび64-99 kHz刺激時に増大した. これらの各波振幅の増大は末梢性あるいは中枢性聴覚経路の神経核活動の同調性に関連しているものと考えられた.