著者
村上 征勝 古瀬 順一
出版者
同志社大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、精神的活動の変化を文体の変化として数量的に把握し、それによって精神的疾患や痴呆症の早期発見など、精神医学に役立てることが目的である。そのため、精神的疾患が原因で自殺したと考えられる作家、川端康成(S46.4.16,ガス自殺)、芥川龍之介(S2,7.24,睡眠薬服用)、三島由紀夫(S45.6.4,割腹)の3人の文章のデータベース化を試みた。特に、データベース化がある程度進んでいた川端康成に関し、彼の執筆活動の全時期にわたる文章の経年変化を調べることが必要と考え、「ちよ」(1919)、「篝火」(1924)、「浅草紅団」(1929),「名人」(1942),「古都」(1959)「隅田川」(1965)の6作品を新たに入力し、計量分析に必要となる単語認定、品詞認定等の作業を行った。この作業は16年度末までに終了できる見通しが立たなかったため、・読点の直前の文字の出現率・平均文長・会話文平均文長・全文に対する会話文の比率・ひらがな、カタカナの出現率の情報を用い、昨年までに入力済みの「伊豆の踊り子」(1926)などの7作品とあわせ、計13作品で分析を試みた。その結果、読点の直前の文字の出現率には、比較的早い時期の「篝火」,「浅草紅団」,「伊豆の踊り子」の3作品と、その後の作品にある程度違いが見られたものの、文章の変化を確認するには品詞情報などのほかの情報の分析が必要であることが判明した。そのため、本研究の研究期間内には行えなかったが、川端康成の13作品の品詞認定等の作業が終了次第、再分析を試みる。また、芥川龍之介、三島由紀夫の作品についてもデータベース化の作業を続け、川端康成と同様に計量分析する予定。
著者
脇田 修 田中 清美 趙 哲済 南 秀雄 平田 洋司 市川 創 小倉 徹也 高橋 工 杉本 厚典 京嶋 覚 積山 洋 松本 百合子 黒田 慶一 寺井 誠 松尾 信裕 大澤 研一 豆谷 浩之 村元 健一 古市 晃 佐藤 隆 松田 順一郎 辻本 裕也 嶋谷 和彦
出版者
公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

大阪上町台地とその周辺を対象に、古環境復元と関連させ、誕生・成長・再生をくりかえす大阪の、各時代の都市形成と都市計画の実態を探求した。古環境復元では、膨大な発掘資料・文献史料などを地理情報システムに取りこんで活用し、従来にない実証的な古地理図などを作成した。その結果、自然環境が、都市計画やインフラの整備と強い関連があること、難波京をはじめ、前代の都市計画が後代に利用され重畳していくようすなどが明らかになった。本共同研究により、より実証的な大阪の都市史を描く基盤ができたと考える。
著者
亀谷 裕志 デン ジャンリン 堤 千花 古関 潤一
出版者
東京大学
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.7-10, 2008-03
被引用文献数
2

2004年新潟県中越地震で小千谷市横渡地区に生じた斜面崩壊は風化した凝灰質砂岩の薄層をすべり面とするものであった.このような斜面崩壊が地震時に生じた要因を検討するため, 地質状況の観察や不攪乱試料による室内試験, 安定解析などを実施した.解析結果から常時には地下水位が変動しても斜面はすべらないこと, 地震時には実際の被災条件であった事前の降雨が安定性に影響することが確認された.また崩壊発生要因としては, 地震動が斜面に与えた交番荷重の影響が大きかったことが推測される.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
冨谷 至 矢木 毅 岩井 茂樹 赤松 明彦 古勝 隆一 伊藤 孝夫 藤田 弘夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

「東アジアの法と社会」という研究題目の下、4年間に渡って続けてきた我々の共同研究の成果として、以下の成果を報告する。第一は、国内国外で二度にわたって国際シンポジウムをおこない、東アジアにおける空間的、時間的座標のうえに死刑・死罪を考え、各時代、各地域の相違が浮き彫りにされたことである。その適用理念は、応報にあるのではなく、一に予防と威嚇にあることである。それは今日の中国の死刑に実態をみれば、罪と罰が均衡をかくこと、死刑廃止の議論が希薄であることからもわかる。各担当者の課題を深めて論文にした当研究の成果報告『東アジアにおける死刑』(科学研究費成果報告:冨谷篇)において、かかる東アジアの死刑の歴史的背景、本質が明らかにされている。報告書には、スウェーデンのシンポジウムには、参加できなかった藤田弘夫、岩井茂樹、周東平の各論考の収録し、社会学の視座からの死刑問題の考察、現代中国の死刑制度をテーマとする。さらに報告書は、さきの平成15年のセミナーの報告も加えたもので、英語でなされたセミナーの報告は、英文で、その後の主として日本側の研究分担者、および周東平論文は日本語で掲載している。なお、本研究のさらなる成果として、京都大学学術出版会から、平成19年に『東アジアにおける死刑』(仮題)を出版する予定である。我々の研究成果が今日の日本の死刑問題を考える上で、寄与できるのではないかと自負している。
著者
古川 清香 森 智恵子 植野 正之 品田 佳世子 川口 陽子
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.33-43, 2008-01-30
参考文献数
22
被引用文献数
1

口腔疾患が日常生活に障害を引き起こすことが報告されているが,日常生活の障害と喫煙行動との関連については明らかにされていない.また,タバコをとりまく環境が変化している現在,労働者の意識や知識を喫煙対策に反映していく必要もある.そこで,喫煙と日常生活への障害,人々のタバコ対策への意識およびタバコの害への知識を明らかにすること,そして,職域における歯科保健活動における喫煙対策の必要性を探索することを目的として本研究を行った.対象者は,2004〜2005年に,歯科健診および質問票調査に参加した電子機器メーカの事務および技術職の男性従業員855名(平均年齢42.1±6.4歳)である.健診項目は,歯の状況(DMFT),歯周組織の状況(CPI),歯垢の付着,口腔粘膜,咬合・歯列,顎関節の異常の有無,質問内容項目は,歯科保健行動,口腔に関連する日常生活の障害,タバコ関連の質問である.その結果,本研究の対象者は,喫煙者38.7%,過去喫煙者12.9%,非喫煙者48.4%であった.口腔に関連した日常生活の障害は,「見かけが気になる(20.6%)」が最も多く,次に「おいしく食事ができない(13.7%)」,「話しづらく感じる(10.1%)」,「仕事に集中できない(6.1%)」,「よく眠れない(3.5%)」であった.ロジスティック解析において,喫煙習慣と口腔に関連する日常生活の障害のうち3項目について関連がみられた.喫煙者は非喫煙者に比べて1.60倍「見かけ」が気になり,喫煙者は2.03倍,過去喫煙者は1.98倍,非喫煙者に比べて「おいしく食事ができない」と感じ,喫煙者は非喫煙者に比べて4.01倍「よく眠れない」と回答した.会社における禁煙支援が不十分だと回答したのは23.7%,会社における歯科専門家からの禁煙支援が必要だと回答した人は29.3%であった.労働者のタバコ関連疾患の認識は,肺がん95.4%,口腔癌67.1%,歯周病54.6%であった.以上の結果,男性労働者の喫煙行動と口腔に関連する日常生活の障害の間に強い関連があること,労働者は禁煙支援が必要だと考えていること,タバコに関連する情報の提供が必要であることが明らかとなった.それにより,職域における口腔保健活動に禁煙支援活動が必要だと考察された.歯科専門家は職域においても積極的に禁煙支援活動に携わるべきである.
著者
古和田 孝之 吉川 隆敏 山本 英人 堀井 洋
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.271-272, 1994-03-07

近年、手書き文字認識の研究が進められ、商品化が盛んに行われている。しかし、不特定多数のユーザを対象にしたシステムの場合、文字データなどのパターン情報だけで高認識率を達成するのは困難である。それを解決する方策として、言語情報を用いた認識後処理技術が必要となる。現在の手書き入力システムの使用シーンを考えると、一般文書の入力よりも、住所、氏名、会社名、商品名など、記入すべき文字列の属性があらかじめ決まっているような形式の入力が主流で、また通常このような入力形式では、一般文書の入力よりも高い認識精度が要求される。このような状況を踏まえ、住所、氏名のように入力属性が限定されている場合の後処理手法の開発を行った。本報告では、その中から、名前に対する認識後処理として、姓名辞書と単漢字辞書を利用し、フリガナ連動処理と単漢字処理を行う手法について述べる。
著者
古田 陽介 三谷 純 福井 幸男
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. グラフィクスとCAD研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.76, pp.13-18, 2006-07-11
参考文献数
6

折紙は日本の伝統芸能であるが、折紙の形状を対話的に生成するための研究はまだあまり行われておらず、発展の余地が残された分野である。そこで、折紙を計算機上で折るためのデータ構造、アルゴリズム、およびインターフェース等を考案し、実装を行った。これにより、今まで計算機上で扱うことが難しかった立体的な折紙の形状を容易に扱えるようになった。また、本システムでは特別な三次元入力装置を用いずともマウスのみの操作で直感的に形状の生成を行うことができる。
著者
瀬川 直美 間瀬 裕子 古宮 照雄
出版者
木更津工業高等専門学校
雑誌
木更津工業高等専門学校紀要 (ISSN:02857901)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.81-92, 2010-02

シェイクスピアの戯曲には深甚な政治的観察がうかがわれる。彼は秩序の維持が社会の原動力であることを力説する。ルネサンス期のイギリスに充満した権力闘争を強く非難している。浅薄な民衆迎合の日和見主義が国家の危機を招くと主張する。権力と大衆との不安定な関係に懐疑的な目を向けるのである。コリオレイナス、ジャック・ケイド、ブルータス、その他を考察の対象にして、シェイクスピアの政治観を探った興味深い論文である。