著者
永松 朝文 大塚 正人 AJAYA Shretha R. 真銅 隆至 池内 百江 芦田 則之
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,細胞増殖機能調節に関わっている酵素のチロシンキナーゼを阻害して,腫瘍細胞増殖を阻害する新規抗腫瘍薬開発を目的に行った研究である。デアザフラビン類縁化合物に関して,抗腫瘍活性データとコンピューターを駆使した酵素へのドッキングデータよりバーチャルスクリーニング系を構築した。この系より得られた活性情報を基にデザインした新たな活性有効化合物を合成・評価する新しい高効率抗腫瘍活性化合物検索系を構築した。
著者
鐘ケ江 光 Igor Massahiro de SOUZA SUGUIURA 佐々木 恭子 大塚 美加 濱野 剛久 田代 連太郎 Mario Augusto ONO 和田 新平 Eiko NAKAGAWA ITANO Md. Amzad HOSSAIN 佐野 文子 植田 啓一
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.107-114, 2023-09-01 (Released:2023-11-01)
参考文献数
24
被引用文献数
1

Paracoccidioides cetiiを原因菌とするクジラ型パラコクシジオイデス症 (英名:paracoccidioidomycosis ceti) は,小型鯨類を宿主とし,皮膚の慢性肉芽腫性病巣を特徴とする人獣共通真菌症である。今回,臨床症状を示すものの従来法では確定診断に至らなかったバンドウイルカ(Tursiops truncatus) とオキゴンドウ (Pseudorca crassidens) の皮膚病変生検組織由来DNAより,原因菌の特異的遺伝子であるgp43をPCRとLAMPの組み合わせにより検出し,確定診断を得た。なお,オキゴンドウ症例は世界初の確定診断例である。
著者
中島 功 大塚 洋幸 市村 篤 本多 ゆみえ 梅澤 和夫 関 知子 中川 儀英 猪口 貞樹
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.219-224, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
5

家禽や野鳥が保有する低病原性鳥インフルエンザウイルスであってもヒトが死に至る例が報告されており, これまで定説となっていた豚由来のウイルス感染とは違うルートが推測される。鳥からヒトへの感染に関する最近の文献調査, およびモンゴルへの調査視察を踏まえ鳥から直接感染するインフルエンザの動向を本稿では報告する。アザラシのインフルエンザ, 日本のイノシシのインフルエンザ, 豚便所, 北米大陸における豚のインフルエンザ, H7N9の動向, スペイン風邪, シアル酸レセプタなどを文献調査した。その結果, ヒト側の遺伝子の発現の仕方の違い (シアル酸レセプタ), ウイルス側遺伝子再集合, RNAポリメラーゼの読み違いなどにより, 鳥型インフルエンザが直接ヒトに感染し, 重篤な症状を引き起こす可能性がある。臨床医としてこれらの報告を鑑み, 患者の感染ルートには常に十分な注意を払うべきと考える。
著者
名古屋 祐子 佐藤 篤 木村 慶 相馬 伸樹 吉本 裕子 高橋 久美子 坂田 悠佳 蜂谷 ゆかり 長澤 朋子 大塚 有希 五十嵐 あゆ子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.235-240, 2023 (Released:2023-10-30)
参考文献数
10

本研究は,小児専門病院の緩和ケアチームが院内コンサルテーションを開始する前後で院内スタッフの緩和ケアに対する困難感の変化を明らかにすることを目的に行った.5領域21項目で構成される困難感に関する自記式質問紙を用い,2015年に開始前,3年後に開始後調査を実施した.開始前は222名(回収率70.9%),開始後は384名(回収率87.3%)から回答を得た.回答者の7割以上が看護師・助産師であった.全職種では,“苦痛症状の緩和”,“看取りの際の家族ケア”,“自分自身や周囲のスタッフが感じる不全感や喪失感に対する支援”の3項目で困難感の有意な減少が認められた.介入した部署の看護師・助産師の困難感は6項目で有意な減少を認めた.緩和ケアチームが介入した16件中11件が疼痛コントロール難渋例の2名の患者への複数回の介入依頼であり,コンサルテーション活動が看護師・助産師の困難感の減少に寄与したと推察する.
著者
大塚 忠義 冨樫 充 谷口 豊
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1-14, 2023 (Released:2023-09-30)
参考文献数
21

公的介護保険制度は全国一律の制度であるが、地域によって差が見られる。これは、地域ごとの人口構成、人口動態の差異に加え、地域の特性や生活習慣の違い等によるものと考えられている。これら市区町村で異なる介護給付費等の状況を比較・分析し多くの市区町村と異なる数値を示す地域の特性を分析・考察することは、公的介護保険の公平性と持続可能性を確保するために重要である。 本稿の目的は、市区町村の介護給付費等の妥当性を評価するための手法を提案し、それに基づき設定する標準的な範囲から逸脱している市区町村を特定したうえで、当該市区町村の特性を分析・考察することである。 分析の結果、平均介護給付費を構成要素に分解した9項目についてほとんどの市区町村が標準範囲に該当することを確認した。特に、要介護認定率は比較可能な指標に変換するとほぼ全国一律の状態にあると推定される。この結果は介護費用等の市区町村の差異に関し分析した多くの先行研究と異なるものである。
著者
村井 政史 伊林 由美子 八重樫 稔 今井 純生 大塚 吉則 本間 行彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.41-44, 2013 (Released:2013-07-20)
参考文献数
22

ホットフラッシュに陰証の方剤が奏効した1例を報告する。症例は56歳の女性で,閉経後に顔面のほてりと発汗を認めるようになった。加味逍遙散と苓桂朮甘湯で治療を開始したところ,ホットフラッシュはやや改善したが,疲れた時に増悪した。そこで証を再考し,陰証で虚証と考え小腹不仁が著明であったため,八味丸に転方したところホットフラッシュはほとんど出現しなくなった。しかし疲れやすく,疲れた時にホットフラッシュが増悪したため,心下痞鞕を目標に人参湯を併用したところ,疲れにくくなりホットフラッシュは出現しなくなった。ホットフラッシュには陽証の方剤が有効な場合が多いが,病態に応じて陰証の方剤も考慮すべきと思われた。
著者
種村 健太郎 古川 佑介 大塚 まき 五十嵐 勝秀 相崎 健一 北嶋 聡 佐藤 英明 菅野 純
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第39回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S5-5, 2012 (Released:2012-11-24)

個体の胎生期-幼若期の脳は、その発生-発達段階にある。その期間に、遺伝子という設計図を元にして、脳の基本構造が出来ると共に、神経活動(主に神経伝達物質とその受容体を介した神経シグナル)による微調整がなされ、脳が完成に向かう。すなわち、脳は「活動」しつつ、その「形態・機能」を完成させていく。従って、この時期の神経作動性化学物質の暴露による神経シグナルのかく乱は、一時的な神経症状を呈するだけに留まらず、脳構造や神経回路の形成過程に影響を及ぼす危険を高める。そして、こうした影響が不可逆的に固定されたまま成長した結果、成熟後に遅発性行動異常等の脳高次機能障害として顕在化することが危惧される。しかしながら、従来の神経毒性評価手法は成熟動物への化学物質投与による急性~亜急性の、痙攣、麻痺といった末梢神経毒性を主対象としており、遅発性の中枢神経機能に対する影響評価への対応は、比較的に立ち遅れてきた。こうした問題に対して、我々は、マウスを用いて、①神経作動性化学物質の胎生期~幼若期暴露、②複数の行動解析試験を組み合わせたバッテリー式の情動-認知行動解析による行動異常の検出、及び③行動異常に対応する神経科学的物証の収集、により遅発性の中枢神経毒性検出系の構築を進めてきた。 本シンポジウムでは、モデル化学物質として、イボテン酸(イボテングダケ等の毒キノコとされる一部のテングタケ属に含まれる)を用いた解析として、幼若期(生後2週齢)における単回強制経口投与による、成熟期(生後12~13週齢時)の不安関連行動の逸脱、学習記憶異常、情報処理不全といった異常行動と、それと対応する海馬の形態所見、及び遺伝子発現プロファイルについて紹介する。さらに、遅発中枢影響としての異常発現のメカニズム解明を目的とした、イボテン酸投与後の遺伝子発現変動解析結果についても議論したい。
著者
田中 圭 大塚 将之 清水 宏明 吉留 博之 加藤 厚 古川 勝規 吉富 秀幸 岸本 充 中谷 行雄 宮崎 勝
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.11-17, 2014-01-01 (Released:2014-01-21)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

症例は61歳の女性で,嘔気を主訴に近医を受診した.上部消化管内視鏡で十二指腸第2部に潰瘍性病変を認め,生検で低分化腺癌と診断された.CTで門脈前後区域枝分岐部に接する造影効果の乏しい腫瘤を認め,十二指腸癌,肝転移の診断で全身化学療法が提案された.本人・家族がセカンドオピニオンを希望され,2病院を受診したのち症状出現から4か月後に当院紹介となった.精査で十二指腸癌,および肝炎症性偽腫瘍などを含めた肝腫瘤の診断にて膵頭十二指腸切除術,拡大肝後区域切除術を施行した.病理組織学的検査で十二指腸および肝臓ともに癌は認めず,壊死巣を伴う肉芽腫を認めた.壊死巣では術前に十二指腸生検で見られた癌細胞に類似する壊死細胞が認められ,免疫組織学的に壊死細胞はcytokeratin陽性であった.以上から,十二指腸癌および肝転移が自然消失したものと考えられた.十二指腸癌の自然消失の報告はなく,文献的考察を加えて報告する.
著者
小森 國寿 大塚 泰正
出版者
一般社団法人 日本産業精神保健学会
雑誌
産業精神保健 (ISSN:13402862)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.156-165, 2023-09-20 (Released:2023-09-20)
参考文献数
45

トラウマ体験をした後に経験されるポジティブな心理的変容である心的外傷後成長(Posttraumatic Growth: PTG)は,トラウマ体験で崩れた世界観を書き換える認知プロセスの副産物として得られる.この認知プロセスの促進要因は,当事者の社会的状況との組み合わせにより理解・解釈され,新たな認知的枠組みに組み込まれるため,軍人等においても独自の特徴があると考えられる.軍人等のPTGの促進要因に関する17件の文献を整理した結果,属性,苦痛・症状,ポジティブな文脈,個人の内面的性質およびネガティブな文脈の5つがPTGの促進要因となることが示唆された.軍人等のPTGを促進するためには,軍隊等における価値観を理解しようとする環境を整えて自発的な自己開示を促したり,逆境に意味を見出そうとする資源を増やしたりすることが有効である可能性が示唆された.
著者
大塚 稔
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.239-243, 2021 (Released:2022-08-12)
参考文献数
12

桂枝加朮附湯を用いて,手部の炎症性や疼痛性疾患の治療に良好な結果を得ている報告は多い。これらを参考に,整形外科外来診療において,桂枝加朮附湯による DIP 関節の変形腫脹(ヘバーデン結節)や疼痛治療を行った16例を基にして,桂枝加朮附湯による手指関節痛治療の有用性について検討した。症例は16例全例が女性であり,年齢は57歳~80歳,平均67.4歳(標準偏差5.88歳),罹病期間6ヵ月~15年,平均4年6ヵ月。冷え症(虚症,寒証)11例,中間証5例,BMI20以下の痩躯が7例,手指の腱鞘炎を合併している症例が4例であった。疼痛緩和までの期間は2ヵ月から8ヵ月,平均3ヵ月,その後8例で内服を継続し,維持量は2.5g であった。全例で変形の進行はなかった。全例で痛みは消失ないしはほぼ消失し全例で鎮痛効果がみられた。局所の熱感は全例で消失した。手指関節炎にも枝加朮附湯は有効治療となり得る。
著者
高田 十志和 大塚 英幸
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.194-207, 2006-03-01 (Released:2010-10-20)
参考文献数
61
被引用文献数
11 10

Dynamic covalent chemistry relates to the utilization of chemical equilibrium systems, i.e., reversible cleavage-rebondage of covalent bond, which is effectively applicable to the molecular architectures in supramolecular chemistry and polymer chemistry. This review deals mainly with molecular integration and molecular conversion of supramolecules and polymers in order to prove significance and utility of the dynamic covalent bond by introducing the representative research studies. Equilibria of imine bond, carbon-carbon double bond, disulfide bond, trityl carbon-sulfur bond, ester bond, alkoxyamine bond, and so on are typical dynamic covalent bonds, and several important examples for the constructions of interlocked molecules and polymers are described. In the utilization of the dynamic covalent bond in polymer, utility of a few reversibly cleavable covalent bonds included in polymer main chains is also discussed for the formation and transformation of polymers and cyclic polymers.
著者
廣田 奈穂美 大塚 泰正
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.94.22017, (Released:2023-09-01)
参考文献数
32

This study investigated how Japanese cancer survivors adapt to their bodies and jobs and find meaning in their work while dealing with various mental distresses after a cancer diagnosis. Semi-structured interviews were conducted with 16 working cancer survivors. The analysis of the interviews using the Modified Grounded Theory Approach generated 38 concepts, 12 subcategories, and 3 categories. The process by which cancer survivors found meaning in their work included three stages: “questioning the self,” “restarting life,” and “integration of work and life.” They embarked on a new life journey, determined to live as cancer survivors. Their journey can be described as a process in which cancer survivors seek the meaning of life and work through their cancer experience and foster their life careers while gradually acquiring these meanings.
著者
大塚 紀弘
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

中世日本に中国などの外国から渡来した人々、すなわち日本中世の渡来人の存在形態について考察し、それに関する歴史像を提示する。主に平安時代末期から南北朝時代にかけての中世前期(12世紀から14世紀)に焦点を絞り、渡来人に関係する史資料を網羅的に収集・整理し、渡来の経緯や活動の実態について、時系列に沿って総合的に考察する。特に、日本全国の寺院などに伝来した、渡来人が日本で書写・刊行に関わった典籍を研究対象の中心とする。これらを順次調査・撮影し、書写奥書や刊記に見える年代、出身地、書写地および筆跡に基づいて、渡来人の人物像を解明する。
著者
鵜川 信 藤澤 義武 大塚 次郎 近藤 禎二 生方 正俊
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.105, no.7, pp.239-244, 2023-07-01 (Released:2023-07-20)
参考文献数
33

ニホンノウサギが主軸を切断できるコウヨウザン植栽苗のサイズを明らかにすることを目的として,様々なサイズ(苗高82~197 cm)のコウヨウザン苗を鹿児島県垂水市のスギ皆伐地に60本植栽し,ノウサギによる主軸の切断を1年間にわたり観察した。実験中に15本の苗木が枯死したが,そのうちの1本は枯死前に主軸の食害を受けていた。生残苗では,25本の苗木で主軸の食害がみられた。苗木のサイズが大きくなるほど主軸の食害がみられなくなり,一般化線形モデルでは,植栽時の苗高が140 cm以上,または,高さ60 cmの幹直径が15 mmを超える苗木であれば主軸食害を受ける確率が10%まで低下することが推定された。したがって,植栽した苗木が成長し,苗高や幹直径がこれらの数値を上回れば,ノウサギによる主軸の切断を受けにくくなると考えられた。
著者
中川 誠司 添田 喜治 西村 忠己 細井 裕司 大塚 明香 今田 俊明 クール パトリシア N. メロツォフ アンドリュー N.
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

骨導(骨伝導)で呈示された超音波であれば,聴覚健常者はもとより,最重度難聴者にも知覚される.この骨導超音波知覚の末梢処理過程には,通常の聴覚とは異なる特異なメカニズムの存在が示唆されるが,その詳細は明らかにされていない.本提案課題では,骨導超音波知覚を利用した重度難聴者のための新型補聴器(骨導超音波補聴器)の開発に有用な知見の獲得を目指して,骨導超音波知覚メカニズムの全体像の解明に取り組んだ.聴覚末梢機能を反映する各種の生理反応の計測および骨導超音波の頭部内伝搬特性結果に基づき,骨導超音波知覚の末梢~中枢処理モデルを提案した.得られた知見は骨導超音波補聴器の最適化や適用基準の策定に有用である.