- 著者
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小原 丈明
天野 太郎
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2007, pp.107, 2007
<BR>I はじめに<BR>1.背景と目的<BR> 1990年代以降,社会経済情勢の変化(バブル経済の崩壊,少子化)や法制度の改正(「工業(場)等制限法」の改正・廃止等の規制緩和)など大学を取り巻く環境は著しく変わってきた。そのような環境の変化は,大学院重点化や国公立大学の法人化,専門職大学院の設置,大学の統合といった大学の再編をもたらしつつある。そこで本研究では,大学再編に伴う変化を主として空間的な側面から分析・考察することを目的とする。今回の発表では,その予備的考察として,大学に関する基礎的なデータの分析や,大学の立地の変化についての分析を中心に行う。<BR> 大学立地に関しては,これまでに教育学(教育政策学,教育社会学)を中心に地理学や都市計画学等の分野で研究が行われてきた。既往研究の内容は,(1)法制度の影響,(2)立地のシミュレーション,(3)大学設立・移転のプロセス,(4)地域社会への影響に大別できる。立地自体を扱うのは(1)~(3)の研究であるが,それらの多くは1990年頃までを分析の対象としている(例えば,矢野・小林(1989)など『大学研究』第4号所収の諸論文)。それ以降について体系的に扱っているのは羽田(2002)などわずかであり,近年の大学再編が空間的に明らかにされているとはいいがたい。<BR>2.研究の対象と方法<BR> 分析の資料として,各年度版の『全国大学一覧』(財団法人文教協会)および『全国短期大学・高等専門学校一覧』(同協会),文部科学省のHP,各大学のHPを使用した。それら資料(主として『全国大学一覧』)から,大学ごとの学部数や学生数,キャンパスの所在地,設立年次,設立母体等の項目を抽出してデータベースを作成し,GISを用いて地図化および分析を行った。<BR> 1990年代以降の動向を分析することが中心ではあるが,それ以前の動向と比較して考察する必要から,第2次世界大戦以後を幾つかの期間に区分し,各期間の動向も併せて分析している。<BR> <BR>II 分析および考察<BR> 終戦直後や1960年代後半と並び,1990年代後半から2000年代にかけて大学数が急増している。国立大学は大学間の合併により微減となっているが,公立と私立大学は,短期大学が四年制大学へと改組した分を受けて大幅に増加している。<BR> 専門職大学院の所在地(2006年4月現在144箇所)は首都圏と京阪神圏に多い。特に東京都区部には全体の1/3強が集中し,アクセスの良い場所にサテライト・キャンパスが志向されていることが分かる。<BR> 当日の発表では様々な指標を基に詳細な分析を行う。なお,今回の発表を踏まえ,今後はキャンパス移転の動向や大学間の連携について空間的な分析を行う予定である。<BR><BR>付 記 本研究は平成18年度同志社女子大学学術研究助成金の一部を使用した。<BR><BR>文 献<BR>羽田貴史 2002.縮減期の高等教育政策―大学統合・再編に関する一考察.北海道大学大学院教育学研究科紀要85:99-115.<BR>矢野眞和・小林信一 1989.大学立地の分析―偏在性と階層性.大学研究(筑波大学)4:129-164.