著者
中川 有夏 田嶋 佐妃 浅井 純 竹中 秀也 加藤 則人 山田 稔
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.415-420, 2014 (Released:2015-05-02)
参考文献数
36

47歳,女性。ウガンダに渡航して7日目に右前腕屈側にそう痒を伴う紅色丘疹が出現した。帰国後,紅色丘疹が増加したため渡航20日目に近医皮膚科を受診した。副腎皮質ステロイド含有軟膏の外用を開始したが,右肩と腰部の紅色結節が増大し疼痛を伴うようになったため,渡航24日目に当院を受診した。数日後紅色結節の中心に虫体を認め,局所麻酔下に4匹の虫体を摘出した。虫体はクロバエ科のヒトクイバエの3齢幼虫と同定した。摘出1ヶ月後,潰瘍は上皮化し,その後症状の再燃は認めていない。ヒトクイバエは衣服や布団などに付着した虫卵を介して寄生する。寄生を予防するためにはヒトクイバエの生息地域への渡航後は衣服にアイロンをかけることが重要であり,ハエ症を疑った際には,身近な人の渡航歴も聴取する必要があると考えた。(皮膚の科学,13: 415-420, 2014)
著者
和田 久泰 藤井 秀比古 清島 満 斉藤 邦明 山田 泰弘 関川 賢二 和田 久泰
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

動脈硬化病巣にはコレステロールの蓄積を中心として,マクロファージ,平滑筋細胞,Tリンパ球などが存在しており,これらの細胞群は種々のサイトカインを分泌している.従って,これらのサイトカイン,とりわけproinflammatory cytokineであるTNF-α(tumor necrosis factor-α)は動脈硬化の発症,進展に深く関与していると想定される.しかし,現在までのところ動脈硬化に対するTNF-αの関与を直接的に証明した成績は認められない.本研究では,TNF-αノックアウトマウス(TNF-αKO)とアポリポ蛋白E(ApoE)ノックアウトマウス(ApoE KO)を交配させることによって樹立したダブルノックアウトマウス(TNF-α/ApoE KO)を用い,動脈硬化発症におけるTNF-α.の役割を直接的に証明した.ApoE KOとTNF-α/ApoE KOの血清コレステロール値はWild-type(C57BL/6J)に比べて著明に上昇し,超低比重リポ蛋白(VLDL)コレステロールがその主体を占めていた.しかし,ApoE KOとTNF-α/ApoE KOとの間に有意な差を認めなかった.一方,大動脈基部における動脈硬化病変の大きさを比較すると,TNF-α/ApoE KOはApoE KOに比して動脈硬化病変が有意に減少していた.さらに,大動脈におけるRT-PCR分析および免疫染色により,接着因子(ICAM-1,VCAM-1)やケモカイン(MCP-1)の発現が,ApoE KOに比べTNF-α/ApoE KOにおいて有意に少ないことを認めた.以上の成績より,TNF-αは接着因子やケモカインの発現を誘導してマクロファージの接着・遊走を促進し,動脈硬化病変の形成に促進的に働いていることが示された.
著者
小西 瑞穂 山田 尚登 佐藤 豪
出版者
滋賀医科大学雑誌刊行会
雑誌
滋賀医科大学雑誌
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.4-8, 2008

In recent years, narcissistic personality is seen as a trait especially among young people. This personality traithas an ambivalent feature that unsettled self-valuation easily influenced by others, while it is energetic and aself-centered, being filled with confidence. In this research, we examined the relationship between narcissistic personalityand five ego states -critical parent (CP), nurturing parent (NP), adult (A), free child (FC), adapted child (AC), using theEgogram. Moreover, in order to consider the relevance to narcissistic personality and mental health, we measureddepression as a negative side of mental health and subjective happiness as a positive side. The results showed that CP, Aand FC increased narcissistic personality. CP reflected the authority, dominant and exclusive characteristics. A reflectedcool and not confused attitude by the others' feeling. FC reflected the less consideration for others and selfish behavior.From these results, this study confirmed the features of the narcissistic personality more clearly. Finally, the subjectswith high narcissistic personality had lower depression and higher subjective happiness than the subjects with lownarcissistic personality. The narcissistic personality was supposed to be the factor to enhance the mental health.
著者
杉崎 弘周 物部 博文 上地 勝 藤原 昌太 山田 浩平 沢田 真喜子 森 良一 横嶋 剛 植田 誠治
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.623-630, 2021 (Released:2021-09-18)
参考文献数
25

This study aimed to clarify the problems related to students’ health and safety at school and identify teachers’ needs for learning in a teacher training course by conducting a survey for yogo teachers who were experts in school health and safety. Except for training courses for yogo teachers or health and physical education teachers, there are no compulsory subjects regarding problems related to student health and safety at school. Moreover, previous reports have indicated that general teachers found it difficult to deal with topics related to student health and safety. We surveyed 2,992 yogo teachers randomly selected from across the country and 1,196 responses were received (response rate 40. 0%). The results indicated that mental care, first aid, and developmental disabilities accounted for more than 80% of the problems experienced by yogo teachers related to student health and safety. It was also suggested that the number of years of experience was related to problem perception. Among the topics that needed to be learned at the teacher preparation stage, cardiopulmonary resuscitation, developmental disorders, mental care, allergies, heat stroke, and use of an EpiPen accounted for a high proportion, while chronic diseases, eating disorders, cooperation with other staff (for safety), and orthostatic dysregulation accounted for a low proportion. The present results need to be considered when developing training content required for incumbent teachers and novice teachers, and when discussing the subjects required for teacher training courses. This would also help teachers to respond effectively to problems related to student health and safety at school.
著者
熊井 正貴 加藤 信太郎 小柳 遼 敦賀 健吉 伊藤 陽一 山田 武宏 武隈 洋 菅原 満 川本 泰之 小松 嘉人
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.51-58, 2022 (Released:2022-04-15)
参考文献数
26

【目的】緩和ケアに携わる医療提供者のターミナルケア態度の実態とそれに関連する要因を明らかにすることを目的とした.【方法】がん治療医と緩和ケア医を含む緩和ケアに携わる医療提供者を対象にFrommelt Attitude Toward Care Of Dying Scale Form B日本語版(FATCOD B-J)を用いて質問紙調査を実施した.【結果】解析対象は223例であった(回収率42.2%).FATCOD B-J総得点を目的変数とした重回帰分析の結果,偏回帰係数は年代で40代と比較して30代以下が低く(−3.8),業務から得られる満足感を感じているほうが高く(+5.7),緩和ケアへの関心が強いほうが高かった(+6.2).【考察】緩和ケアへの関心と業務から得られる満足感がターミナルケア態度の涵養に重要である可能性がある.
著者
山田 隆 Takashi YAMADA 東海女子大学 TOKAI WOMEN'S COLLEGE
雑誌
東海女子大学紀要 = Bulletin of Tokai Women's University (ISSN:02870525)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.159-175, 2003-03-31

写真コミュニケーションを考察するための基礎資料として,カメラと写真の最近までの変化を整理した。戦後の日本において,カメラの世帯普及はほぼ順調に進み,1980年代には80%に達した。自動露出や自動焦点,コンパクト化などにより,撮影者の層が拡大した。使い捨てカメラや現像・焼付けの低価格化などにより,カメラの携帯と撮影の日常化が進んだ。最近では,カメラはデジタル・カメラに移行しつつある。カメラの発展につれて,撮影する/される意識も変化してきた。写真は鑑賞するより撮るもの,撮られる場合はより良く,写真は自分(達)のために,などである。写真は保存するというだけでなく消費するという側面も出てきている。このような新しい写真との関わり方は,若い女性を中心に表れている。携帯電話にカメラが付いたことで,更に写真行動は変化していくものと考えられる。
著者
山田 裕一 Yong CHOI Ki Joong KIM Ja Wook KOO Il Soo HA 後藤 治子 小笠原 信明
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
プリン・ピリミジン代謝 (ISSN:09162836)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.13-21, 1995 (Released:2012-11-27)
参考文献数
19

Hypoxanthine guanine phosphoribosyltransferase(HPRT)が先天的にほぼ完全に欠損するとLesch-Nyhan症候群となる.Lesch-Nyhan症候群韓国人5家系におけるHPRT変異遺伝子を,ゲノムDNAの分析とRT-PCRによるmRNAの分析の2面から解析し,2例の新しい変異(533-9T→A,631delA)と3例のすでに報告のある変異(310insG,Q109X,289delGT)を同定した.また,Q109X,289delGTにおいては,すでに報告のある異常mRNAのほかにスプライシング異常から生じるエクソンスキップのある異常mRNAの存在を確認した.すべての家系において保因者診断を,2家系においては変異遺伝子の出生前診断を行なった.
著者
山田 陽平
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.49-55, 2009-08-31 (Released:2010-11-10)
参考文献数
25
被引用文献数
1

記憶内の情報の一部を検索手がかりとして与えられると,それ以外の情報が思い出しにくくなる.この現象は,リスト内手がかり効果と呼ばれている.本研究では,リスト内手がかり効果が検索抑制によって生じているのかを調べるために,符号化方略を操作した.実験参加者は5カテゴリ,6項目ずつの計30項目からなる学習リストを記銘し,連続して呈示される二つの項目の相違点か類似点のいずれかを判断した.その後,手がかり群は連続呈示された2項目のうちの一方を残りの項目(非手がかり項目)を再生するための手がかりとして与えられ,それらを読み上げた.統制群は4桁の数字を呈示され,それらを読み上げた.その後,手がかり群は非手がかり項目だけを再生し,統制群はすべての項目を再生した.その結果,相違点判断群では,非手がかり項目の再生率は統制群より手がかり群のほうが低く,リスト内手がかり効果が認められた.一方,類似点判断群では,統制群と手がかり群の間に差はなく,リスト内手がかり効果が認められなかった.これらの結果は,リスト内手がかり効果の検索抑制説を支持するものであるといえる.
著者
山田 洋一 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.385-389, 2012 (Released:2012-09-07)
参考文献数
3
被引用文献数
4 2

〔目的〕理学療法士の育成課題を抽出するため,理学療法士の自己認識を分析した.〔対象と方法〕静岡県内の医療施設に勤務する理学療法士67名とした.「自己認識質問紙」を用い調査を行い,解析した.〔結果〕「一人前」に到達するまでの年数は平均9.98±4.24年であった.「治療技術」と「学術」の重要度では,経験年数が低いほど「治療技術」の修得を必要と感じている者が多く,自身の達成度や組織の満足度に課題のあることが示された.〔結語〕臨床における業務の中心は,患者と向き合い,理学療法を通して,医学的側面から患者の社会適応性を高めることである理学療法士としての現在の自分の達成度が30.6±19.0%という状況をみると,組織や個人の需要に応じた職業支援に加え,自身のキャリア向上に向けたプログラムの開発が望まれる.
著者
瀬藤 乃理子 坂下 裕子 黒川 雅代子 井上 ひとみ 山田 至康 森島 恒雄
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 看護学・リハビリテーション学編 = Studies in nursing and rehabilitation (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
no.1, pp.87-93, 2008-03-20

子どもの突然の死は,その家族にとって極めて外傷的な喪失体験であり,回復に向かう悲嘆過程は非常に困難なものとなる。その影響は,両親の感情面や世界観,生活や人生そのもの,家族システム,遺された子どもたちなど,多方面に多大な影響を与える。本稿では,小児救急における家族援助の重要性について述べ,子どもの死が予測された時点から死後まで継続的に行われることが推奨される医療従事者によるグリーフケアについて考察した。特に,インフルエンザ脳症のグリーフケアガイドラインの中で提唱した具体的な援助方法と,遺族に手渡す「グリーフカード」を紹介した。
著者
山田 盛夫
出版者
物理教育研究会
雑誌
物理教育通信 (ISSN:24238988)
巻号頁・発行日
vol.174, pp.155-160, 2019 (Released:2019-07-06)
参考文献数
5

高校で扱う電流の自由電子モデルに①加速-衝突モデルと②雨滴モデルの二つあるが,その源流はドルーデ(Drude)理論にある。最近の高校物理では①の加速-衝突モデルは姿を消し,②の雨滴モデルだけのようである。①への批判1), 2)は,ドルーデ理論では平均自由時間
著者
三冨 敬太 佐藤 優介 阿部 菜々子 佐藤 尋宣 藤井 賢二 安藤 昭太 山田 悠平
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第68回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.276, 2021 (Released:2022-02-23)

インクルーシブデザインは重要度が増しているが、障害のある人とない人が共感を得ながらコミュニケーションを進めることは簡単ではない。現状のインクルーシブデザインのデザインプロセスでは、コミュニケーションの齟齬が発生する可能性を残している。そのため、本研究では、障害のある人とない人が共感を得て円滑なコミュニケーションを行うことができる介入を加えた、デザインプロセスを提示した。具体的には、インクルーシブデザインのデザインプロセスをベースに、共創型対話のアプローチを組み込んだ、Valuable Designプロセスを提示する。また、本デザインプロセスをもとにデザインしたコンセプトの提示を行いフィードバックを得た結果、本デザインプロセスを通じて、障害の有無を超えたメンバーで新規性の高い価値を顕在化できる可能性が示唆されたと考えられる。
著者
石橋 雄介 西田 宗幹 山田 和政
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.509-513, 2017 (Released:2017-08-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

〔目的〕身体合併症を呈した精神科病棟入院患者を対象に,生活機能と精神機能に対する理学療法(PT)の有効性を検証した.〔対象と方法〕身体合併症に対してPTを実施した精神科病棟入院患者を対象に,理学療法開始時と終了時のBarthel IndexスコアおよびGlobal Assessment of Functioningスコアをカルテより収集した.〔結果〕両スコアともPT終了時で有意に高得点であった.〔結語〕身体合併症を呈した精神科入院患者に対するPTは,生活機能のみならず精神機能の改善も期待できることが示唆された.