著者
濱 侃 田中 圭 望月 篤 鶴岡 康夫 近藤 昭彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

<b>Ⅰ</b><b> はじめに</b><br> 現在,農地を小労力,低コスト,低環境負荷で適切に管理するための作物の生育に関するデータの取得方法として,Unmanned Aerial Vehicle(UAV)を利用した近接リモートセンシングの活用が検討されている。そこで,衛星(特に光学衛星)を用いたバイオマス計測をはじめとした植生モニタリングの知見が応用され,施肥量の調整といった実利用を目的とした研究が進められている。これらのUAVを用いた観測データは,農家にとっては生育調整などに利用でき,同時に,搭載するセンサー次第で任意のデータを高頻度に取得可能なオンデマンド型リモートセンシングとして植生モニタリングに利用することができる。<br>本研究では,水稲を対象にUAVを用いた植生モニタリングを行い,高い時間および空間分解能の画像の取得に基づくフェノロジー観測,生育量の推定を試みた。<br><b><br> Ⅱ</b><b> 研究手法</b><br><b>☐</b><b> </b><b>フィールド観測</b><br> 千葉県農林総合研究センターの水稲試験場において,2014年,2015年の2年間,水稲の生育期間を中心におおむね週1回間隔で観測を行った。試験圃場は,2筆の水田を48区画に細分し,移植時期(全4期),品種(コシヒカリ,ふさおとめ,ふさこがね),施肥量(3~10gN/m&sup2;)を変えている。観測には,小型UAV(電動マルチコプター),可視光撮影用と近赤外撮影用のデジタルカメラ(可視画像:RICOH社 GR,近赤外画像:BIZWORKS社 Yubaflex)を用いて対地高度50mから空撮を行った。水稲の生育状況の実測データは,千葉県農林総合研究センターの観測値を使用した。<br><b>☐</b><b> </b><b>画像解析</b><br> オルソモザイク画像,3次元地表面モデルは,複数枚の重なり合う画像から自動でオルソモザイク画像,3次元地表面モデルを作成可能なSfM/MVSソフトウェアPhotoScan<br>Professional v1.2(Agisoft社)を用いて作成した。なお,近赤外撮影用カメラで撮影した画像は専用ソフト(Yubaflex2.0)で放射輝度に変換後,SfM/MVSソフトウェアを使用した。その後,植生指数(正規化差植生指数(NDVI)など)を計算し,植生活性度の計測および生育パラメーターの推定に使用した。なお,これらの情報をGIS(地理情報システム)上に集積し,時空間変化の解析を行った。<br><br><b>Ⅲ</b><b> 結果・考察</b><br> NDVIpvの時系列変化は,移植から出穂にかけて値が上昇し,その後登熟にかけて下降を示し,ピークの時期はほぼ出穂期と一致する。また,移植時期の差によるフェノロジーの差も,時系列変化に表れた。移植時期が遅いほど,出穂までの生育期間が高温になることで生育速度が早くなり,移植からNDVIpvのピークまでの期間が短くなった。移植時期が4月初旬と6月初旬で,その差は最大で24日となった。また,移植時期が遅いほどNDVIpvの最大値も高くなり,植生の活性度は高くなった。しかし,収量は増加せず,それらの区画では,重度の倒伏が確認され,過剰な生育の影響が示唆された。<br> 植生指標を用いて,出穂前(追肥の適期)の水稲の生育パラメーター(草丈,LAI)の推定を行った結果,草丈では特に推定精度が高く,平均二乗誤差は約5cmとなった。また,3次元地表面モデルから求めた草丈と実測した草丈を比較した結果,決定係数(R<sup>2</sup>)は0.82と高く,3次元地表面モデルを草丈の計測に使用できることがわかった。これらの草丈計測・推定手法の応用としてコシヒカリにおける倒伏予測を行った結果,予測エリアと実際の倒伏エリアは概ね一致した。
著者
上原 拓也 角田 渓太 隅 寿恵 山内 周 望月 秀樹 中 隆
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.777-780, 2016 (Released:2016-11-29)
参考文献数
7
被引用文献数
7 6

症例は47歳女性.母親が原因不明の多臓器不全.4年前から両下肢の痺れ感が出現し,起立時に失神した.徐々に失神回数が増え下痢と便秘を繰り返すようになった.診察上,下肢優位感覚優位の末梢神経障害と高度な自律神経障害を認めた.心筋生検にてアミロイド沈着とトランスサイレチン遺伝子変異(Gly47Arg; G47R)が判明したが,多臓器不全のため積極的な治療は行えなかった.数か月にわたって徐々に意識が低下し,多臓器不全にて死亡した.解剖の結果,末梢神経系と一般臓器のみならず,クモ膜下腔および脊髄脳幹の表層に高度なアミロイド沈着を認めた.G47R変異が髄膜アミロイドーシスを引き起こすことを示した初の症例報告である.
著者
望月 正光 堀場 勇夫
出版者
関東学院大学経済研究所
雑誌
経済系 : 関東学院大学経済学会研究論集 (ISSN:02870924)
巻号頁・発行日
vol.244, pp.27-44,

要旨本研究の目的は,わが国における地方消費税のマクロ税収配分を各都道府県の産業連関表等を用いることによって,仕向地原則に基づく地方消費税の税収配分のあるべき姿を把握するため,マクロデータによってシミュレーションを行うことにある。消費型付加価値税の配分を,最も精緻なマクロ税収配分方式によって,マクロ統計に基づいて実施しているのがカナダの協調売上税(HST;Harmonized Sales Tax )である。カナダで行われているマクロ税収配分方式に依拠した場合,わが国の地方消費税のマクロ税収配分がいかなる姿となるかを可能な限り正確にシミュレーションする。具体的には,わが国で公表されている国または各都道府県の『産業連関表』,または『県民経済計算』等のマクロ統計を利用することによってマクロ税収配分の推計を行う。その推計結果から,仕向地原則に則したわが国の地方消費税のマクロ税収配分の姿を明らかにする。本稿(その1)では,カナダのHST と比較しながら,わが国の地方消費税のマクロ税収配分方式の特徴について説明する。さらに地方消費税の課税標準額の推計方法を示し,地方消費税の実際の税収額をマクロ税収配分方式に基づいて各県に配分する方法を明らかにする。(以上,本集掲載)
著者
新庄 永治 奥脇 弘次 土居 英男 望月 祐志 古石 誉之 福澤 薫 米持 悦生
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
pp.2018-0012, (Released:2018-09-12)
参考文献数
27
被引用文献数
6

ドラッグ・デリバリー・システムにおけるナノ微粒子設計の効率化のために,分子シミュレーションによる物性予測や原子分解能のメカニズム解明が望まれている.本研究では,散逸粒子動力学 (DPD) 法とX線小角散乱を用いて,脂質二重膜および混合脂質のベシクル形成の分子メカニズムを明らかにすることを目的として検討を行った.DPDシミュレーションに用いる相互作用パラメータは,フラグメント分子軌道 (FMO) 法を用いて高精度に算定した(FMO-DPD法).脂質二重膜形成の結果から,飽和結合のみをもつリン脂質 (DPPC) よりも不飽和結合をもつリン脂質 (DOPC) の方が,膜流動性が高いことが分かった.さらに,リン脂質と正電荷脂質を混合したベシクルの形成では,正電荷脂質の比率が増えるにつれて膜の流動性が高くなり,球から扁平球へと形状が変化することが明らかとなった.
著者
望月 政志 大石 太郎 八木 信行
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.391-396, 2013-09-25
参考文献数
15

2011年3月11日の東日本大地震による原発事故以来,原発依存からの脱却と再生可能エネルギーを用いたエネルギー代替の可能性,レジリアントなエネルギーの在り方が注目されている。そうした中で,世界第6位の排他的経済水域を有する我が国においては海洋再生エネルギーへの期待も大きく,中でも洋上風力発電は,大きなポテンシャルを有することが指摘されている。最近では,同じ海面を利用する漁業と洋上風力発電の共存共栄についても検討されてはいるものの,現時点では洋上風力発電所建設に伴う漁業への影響は不明である。他方,漁業の盛んであった被災地では,被災した漁業の復興を目指すのか,あるいは洋上風力発電を通じて再生可能エネルギーを提供していくべきかについて,補助金等を通じた政策的意思決定をどのように進めていくのか明らかにすることが求められている。そうした状況において国内における洋上風力発電の経済波及効果に関する分析は政策的判断をする上で重要と思われるが,既存研究ではほとんど行われていない。また,先駆的研究である松本・本藤では産業連関表を用いた風力発電の経済波及効果の分析を行っているが,洋上風力と陸上風力を区別しておらず,雇用効果のみの分析に留まっている。また,被災地での洋上風力発電に関する経済波及効果については,石川他が洋上風力発電による生産額からみた東北地域(岩手,宮城,福島)での経済波及効果の分析を行っているが,洋上風力発電所建設による直接投資によって生み出される経済波及効果に関する分析は行われていない。そこで本研究では,今後の震災復興における洋上風力発電や漁業振興への政策的意思決定に資する情報提供を行うことを目的として,以下の分析を行う。第一に,洋上風力発電所建設および建設に向けての計画や建設後のメンテナンス等を含むコストを洋上風力発電所設置への投資とみなし,その投資から生み出される経済波及効果を全国レベルおよび地域レベルで試算する。全国レベルでは,「平成17年(2005年)産業連関表」(総務省)を用いた全国での経済波及効果を試算し,国内にて洋上風力発電所を設置した場合の一般的な経済波及効果についてみる。地域レベルでは,海面漁業における被災漁船の被害額が全国で最も大きかった宮城県を事例に取り上げ,宮城県で洋上風力発電所設置に投資した場合の経済波及効果について「平成17年宮城県産業連関表」(宮城県)を用いて試算する。第二に,震災復興に向けて被災漁船の修復・建造のための設備投資を行った場合の経済波及効果と同等の投資を洋上風力発電に対して行った場合の経済波及効果を金額ベースで試算し,両者の比較を行った。第三に,洋上風力発電所が生み出す経済価値(年間発電金額)を試算した。また,宮城県の被災漁船の修復・建造によって生み出される経済価値(海面漁業生産額)についても試算し,洋上風力発電からと被災漁船の修復・建造から生み出される経済価値についても比較した。なお,洋上風力発電の基礎設置形式には,設置海域の水深の違い等により,風車を海底に固定させる着床式と風車自体を海に浮かべる浮体式の設置形式があるが,現時点では着床式が主流でありデータが充実していることから,本稿では着床式の洋上風力発電を想定し試算した。
著者
井之上 準 望月 俊宏
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.125-131, 1980

バングラデシュ, タイおよびベトナムの代表的な浮稲各2品種ずつを用い, 浸水処理によって節間伸長が促進された主稈の各節部からの冠根について調査を行った.浸水処理は各品種において, 節間伸長が起りはじめる苗令に達した時 (バングラデシュ: 8葉期, タイ: 11葉期, ベトナム: 12葉期) に開始し, 毎日0cm (無処理) , 2cmおよび4cmずつ約70日間 (7月上旬~9月中旬) 行った.実験は1978, 79年の2回行われたが, ほぼ同様の結果が得られた.なお, 供試した品種は実験終了時には未だ幼穂を分化していなかった.得られた結果の概要は次の通りであった.<BR>1.浸水処理は節間伸長および出葉速度を促進した.その結果, 浸水処理終了時における主稈葉数は4cm/日浸水処理区は無処理区に比較して2~6葉多かった.<BR>2.浸水処理によって節間伸長が促進された個体では水中にある節の上部の根帯から太い根 (上位根) が, 下部の根帯から細い根 (下位根) が発生した.根の太さは品種や節位によって異なったが, 上位根はほぼ0.88~1.15mm, 下位根は0.33~0.48mmであった.なお, 後生大導管数は上位根では3.0~5.5個, 下位根では1.0~2.5個であった.<BR>3.品種や節位の違いによってもやや異なったが, 概して, 下位根の発生はそれより2節上位の葉身が半分またはそれ以上抽出した頃に始まるのに対し, 上位根の発生は4節上位の葉身の抽出中に始まった.すなわち, 第15葉抽出中の植物体を例にとれば, 第15葉 (第15節からの葉) の伸長と第13節からの下位根および第11節からの上位根の発生はほぼ同調して起った.<BR>4.各節部から発生する根数については, 下位根は節位が上るほど多かったが, 上位根ではこのような傾向はみられず, 分げつが発生した節で多いようであった.<BR>5.下位根はほぼ水平 (茎に対して直角) に発根し伸長するのに対し, 上位根は斜め下方へ向って発根し伸長した.また, 下位根は発根直後から分岐根を発生するのに対し, 上位根では伸長初期には分岐根の発生はみられなかった.
著者
望月 利男 吉田 義実
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.47, pp.p5-22, 1992-12

1991年台風19号は、9月27日夕方、長崎県佐世保市に上陸し28日午後3時、オホーツク海で、温帯低気圧にかわった。この間、各地の観測史における最大風速記録を更新して、その史上まれにみる強風で各地に大被害をもたらした。この報告は、広大な被災地のうち、特に大都市広島市に的を絞り、かつ主として電力途絶による都市機能支障・市民生活への影響さらには組織と住民の対応、電力を中心とする応急復旧の実態の調査に関するものである。電力はライフラインの要である。台風による直接被害とその後の塩害による停電、それに伴う断水、電話支障などが3日以上継続した地域もあった。一般的にいえることだが、大地震を別とすれば、長期停電・断水など我国では起こりえないと誰もが考えている。建物とその諸設備、その他の都市施設はそれを前提として造られ、維持されている。それゆえ、電力途絶時に広島市で起こった正に末端に至るまでの都市機能・生活支障の実体は大きな教訓を私達に与えてくれる。この報告では、それらの事実をできるだけ伝え、東京大都市圏など大都市の脆弱性を多分野の防災研究者・実務者と共に考え、日頃の備えの重要性を広く呼びかけたい。This report shows the lifeline system interaction and its resulting socio-economic effects occurred in Hiroshima City during the large-scale suspensions of supply of electricity caused by the Typhoon 19 of 1991 and sequential injury from salt. On September 27,strong south winds struck the city and began the power failure for about 390,000 household (≒99% of customers),which lasted for the next five days for some customers. This is the first large-scale lifeline functional disruption occurred in those urban regions (cities) in Japan which have more than a population of one million after the World War II. Based on the facts reported five newspapers between Septemer 28 and November 28,we decided the way how we shall carry the on-the-spot survey. The Survey was executed in it was obtaining the data and hearing from the various public organizations including 4 hospitals,which implemented their emergency operations during pre-,and post-typhoon. Also,we carried on the interviews some private sectors and residents on their responses to this disaster. The electric power company had little prepared itself for the damage by injury from salt. Therefore suspension of supply of electricity continued long time as mentioned above. Power disruption also created vast and profound effects on the various kinds of urban and daily life function: the suspensions of water supply,heavy congestions of traffic and communication systems and so on. It emphasized the various kinds of vulnerability of the society depending on high technology.
著者
望月 利男 江原 信之
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.34, pp.p65-91, 1988-09

1987年10月1日に発生した地震は,大都市ロサンゼルスにおける16年ぶりの被害地震であり,合衆国内でも災害対策が進んでいるカリフォルニア州での地震という点で注目に値する。筆者らはロサンゼルス市を中心に,主として行政組織の地震後の対応について現地調査を実施した。また,過去における地震災害や,災害対策制度の変遷を理解することにより,それらの教訓や諸制度が,今回の地震にどのように生かされたかを学んだ。少なくとも今回の地震は,大被害に至らなかったものの防災関係機関にとって,被害特性や規模の正確な把握に基づく対応優先順位のつけ方や,地震対応範囲の早期決定を行ううえで微妙な規模,影響を与えた地震であり,今後の地震対策を考えるうえでいくつかの教訓を生んだ。特に,地震後にロサンゼルス市建設安全部の行った建物の危険度判定に見られる,危険建物に対する迅速な退去命令や安全性の判定は,今後のわが国の緊急対応においても十分教訓に成り得るものであった。また,ロサンゼルス市の抱える今日的問題が,地震という災害によって表面化し,移民を含めた公共情報の伝達方法の改善や,建物の耐震化などの対策は大都市ロサンゼルスにとって急務の課題である。
著者
北澤 武 望月 俊男
出版者
一般社団法人日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.117-134, 2014

New teachers who are shocked by real-world classroom situations—such as rules of the local school, human relationships in a shielded environment, and the reality of teaching children—tend to leave the workforce within a few years, and it has become necessary to educate student teachers in the universities with a focus on adaptive professional socialization of teachers (Zeichner & Gore, 1990) to overcome this problem. We have provided a SNS (Social Networking Service) where pre-service teachers can have a dialogue based on their report of experiences during their practice teaching. However, in order to promote the professional socialization of teachers, we designed a new SNS where experienced teachers can participate in a lesson. We then compared by year the effects of studying the changed lesson. We revised the design of the pre-teaching from the year 2010, and altered the lesson design of the pre-teaching for the year 2012, so that an experienced teacher can join face-to-face lessons and a university teacher and an experienced teacher waited to submit their comments to SNS until almost all students had submitted. As we aimed to increase submission of diaries and comments about professional socialization, we changed the classroom design in the year 2013, introducing storytelling about the image of their practice teaching, and the way of intervention in SNS by an experienced teacher. The results show an increase of diaries and comments which were submitted to SNS about "social behavior as professionals," "commitment towards work," "value and standpoint as teachers," "expectation and actuality of schools" and "efficacy".
著者
望月 正弘
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO) (ISSN:21888590)
巻号頁・発行日
vol.2015-BIO-43, no.4, pp.1-2, 2015-09-05

コンピュータによる予測で医薬品候補化合物を選別する技術バーチャル・スクリーニングは,創薬の効率化に重要である.発表者は,並列生物情報処理イニシアティブが主催するオープン創薬コンテストへの参加を通じて,提案手法の有効性を検証した.本手法は,(1) スクリーニング対象化合物とターゲットを阻害する既知化合物の物理化学的性質の類似性を定量的に評価し “薬らしさ” に欠ける化合物を排除する段階と (2) 化合物の構造情報に加えてアッセイの実験条件を特徴量として用いた機械学習による薬剤活性予測の段階の 2 段階から構成される.最終的に医薬品候補として予測した化合物のうち,182 化合物が実際にアッセイの対象とされ,9 個のヒット化合物を得た.
著者
長利 真幸 守川 信夫 當眞 嗣平 望月 智代
出版者
沖縄県畜産研究センター
雑誌
沖縄県畜産研究センター試験研究報告 (ISSN:18836496)
巻号頁・発行日
no.44, pp.89-93, 2006

暖地型牧草の成分と栄養価を迅速に測定するために,沖縄県主要暖地型牧草であるギニアグラス,パンゴラグラス(品種:トランスバーラ),ジャイアントスターグラス,ローズグラス(品種:カタンボラ)の4草種試料400点を用い,近赤外分析法(NIRS)による統一検量線の作成および推定精度の検証を行った。分析項目は粗タンパク質(CP)含有率と乾物消化率,試料サイズは粉砕試料(1㎜)と細断試料(200~300㎜),検量線の作成方法については線形重回帰分析(MLR)と部分最小二乗法による回帰分析(PLS)を用いて比較検討した。1. CPについて,MLRを用いた検量線の推定精度は粉砕試料でr=0.979,SDP=0.80,EI=8.71%,細断試料でr=0.974,SDP=0.88,EI=9.58%となった。PLSを用いた検量線の推定精度は,粉砕試料でr=0.990,SDP=0.57,EI=6.20%,細断試料でr=0.979,SDP=0.78,EI=8.49%となり,PLSがMLRより高い推定精度を得た。2. 乾物消化率について,MLRを用いた検量線の推定精度は粉砕試料でr=0.950,SDP=2.56,EI=14.97%細断試料でr=0.944,SDP=2.71,EI=15.84%となった。PLSを用いた検量線の推定精度は,粉砕試料でr=0.964,SDP=2.18,EI=12.74%,細断試料でr=0.949,SDP=2.60,EI=15.20%となり,PLSがMLRより高い推定精度を得た。3. 試料サイズについては,CP,乾物消化率ともに粉砕試料を用いた検量線がより高い精度を示したが,細断試料においても十分な精度を得ることができた。4. 沖縄県主要暖地型牧草4草種を用いた統一検量線においても,単草種で作成した検量線と同等の推定精度を得た。
著者
望月 利男 宮野 道雄 四戸 英雄 田代 侃
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.11, pp.39-46, 1980-12

1978年6月12日に宮城県沖に生じたマグニチュード7.4の地震は,宮城県並びにその周辺に少なからぬ被害を与えた。この地震の被害の特徴は,仙台市を中心とする都市型地震災害といわれ,多面的な被害調査がなされたが,この報告は,震死者の筆頭原因をなしたブロック塀の被害実態を主として仙台市において調査したものである。この地震により宮城県では27名の死者を生じたが (この他福島県で1名: 石塀倒壊による) ,そのうち13名は仙台市での発生であり,7名がブロック塀倒壊の犠牲となっている (宮城県全体では10名)。これに対し家屋倒壊による死者は5名であるから,比較的古い地震の人的被害の発生状況に比べ,その原因がかなり変質してきていることを推測させる。すなわち,かつての大地震において家屋倒壊による震死者数 (あるいはそれに伴う類焼死)が圧倒的に多く,その他の原因によるものは相対的に著しく低かったと考えられる。例えば,門柱・石塀の倒壊による死者も7名 (28名のうち)生じており,これだけでも家屋倒壊による死者数を越えるが,これらの構造物はかなり古くから存在していたはずである。筆者らは人的被害に及ぼす影響という観点から,構造物としては従来軽視されてきた (しかし使用量は極めて多い)ブロック塀について,その被害実態を調査し,その地震時危険度を検討した。調査地域は各種被害が多発した仙台市であり (一部泉市を含む),その倒壊率等と地形 (地盤)・震度との関係,残存プロック塀について検討することにより我が国各地の既存ブロック塀の地震時危険度と対策を考究するための基礎資料を得ること並びに今後,施工されるこの種の塀の安全性の確保のためのデータを提供すべく,この調査を実施した。
著者
望月 洋孝 田中 裕人 上岡 美保
出版者
東京農業大学農業経済学会
雑誌
農村研究 (ISSN:03888533)
巻号頁・発行日
no.115, pp.82-98, 2012-09

地域活性化に関する具体的な方策の策定は,行政主導だけではなく,行政と地域住民の双方の協力・努力が不可欠であるとされている。本研究では,このような観点から,住民参加型の地域活性化策で重要となる佐渡市民の意識について,内発的なアイディアを抽出し,佐渡市の実態に照らし合わせて検討を行うことに主眼を置いた。分析の手法としては,TN法における第1ステップを踏襲し,佐渡市民の地域活性化に関する多くの意見やアイディアを集め,「効果の大きさ」,「実行のしやすさ」,「住民参加の可能性」の視点から検討した。その結果,住民が最優先課題と考え,また,合意形成を図りやすい項目として特徴づけられた項目は,「佐渡汽船の乗船運賃を値下げする」,「佐渡産米のおいしさや安全性をアピールする」,「行政担当者が佐渡の課題をよく理解する」の3つであった。また,その他にも,各集落で継承されてきた伝統文化の項目,トキ認証米や地産地消のような食・農に関する項目が上位に位置づけられることを導いた。以上の項目について,長期的に達成するもの,短・中期的に達成するものとの分類を住民と行政等の関係機関が連携して行い,比較的実現が可能なものについては,相互に重点的な検討を行うことが必要であるといえる。
著者
瀬戸 真由美 正原 和幸 鈴木 亮典 渕上 和幸 望月 聖子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.291-294, 2018-06-01 (Released:2018-06-01)

企業の企画担当者が,経営層に対して新規事業を提案するにあたり,他社の新規事業参入事例をベンチマーク分析することを想定した。「他社の新規事業参入」として,N社の核酸医薬事業参入を取り上げ,該事例の自社分析(N社分析),環境分析および技術分析から,新規事業提案のための分析手法の一形態について提案する。