著者
小林 健太
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

非凸領域において有限要素法を用いて数値計算を行う場合,領域の非凸性によって厳密解の滑らかさが失われ,精度の良い数値計算が困難になるケースが多い.このような場合については,解の特異性を表現するような特異関数を有限要素基底に用いたり,非凸な角でメッシュを細かく切るメッシュリファインメントを用いたりすることによって精度を改善できることが知られている.これらの手法について,今までは数値実験結果からの経験則や収束のオーダーしか知られていなかったが,我々はいくつかの手法について厳密な誤差評価を与えることに成功した.これらの結果は精度保証付き数値計算への応用上も重要である.
著者
東海林 健二 矢野 将哉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.9, pp.2393-2401, 1997-09-25
被引用文献数
2

2次元2値画像のアフィン変換アルゴリズムの一つとして, 画像をPXY表と呼ばれるラン形式で表し, skewと転置を組み合わせて行う効率の良い方法を我々は以前に提案した. 本論文では, SPXY表と呼ばれる3次元ラン形式で表した3次元物体(3次元2値画像)のアフィン変換の新しいアルゴリズムを提案する. SPXY表は2次元のPXY表を積み重ねたものである. SPXY表の上でのアフィン変換は, 2次元PXY表の場合の拡張として, 3次元skewと転置の組合せとして実現される. 実験結果は, ボクセルごとに変換を行う素朴な方法に比べ, 提案手法が36〜389倍高速であることを示している. また, 提案手法によるアフィン変換のCPU時間は3次元物体を表すラン数に比例することを示している. 提案手法によるアフィン変換の結果は, 小数点数を整数に四捨五入したときの丸め誤差より大きい誤差を含む. アフィン変換のうちでも最もよく用いられる3次元回転について誤差解析を行った. その結果, 提案手法による各座標の絶対誤差は最大1.4であった.
著者
林 健一郎 木村 知弘 影山 定司 原田 泰男 木曽田 晃 坂下 誠司
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.20, no.53, pp.55-60, 1996-10-17
被引用文献数
42

This paper proposes an adaptive equalization technique for OFDM (Orthogonal Frequency Division Multiplexing) demodulation. This technique estimates a channel response with using pilot signals embedded in OFDM symbols. A two dimensional filter used for interpolating the response estimates the channel response accurately, and also improves the C/N by reducing noise bandwidth. The bit error rate performance of the system in various channels is calculated by computer simulation, and the relative C/N improvement to differential demodulation is about 2.5 dB. And the result shows that the optimum filter can be determined by the maximum path delay time and the maximum doppler frequency of the channel.
著者
梅林 健太 藤井 威生 ザカン タン 小野 文枝 阪口 啓 鈴木 康夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SR, ソフトウェア無線 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.246, pp.65-72, 2009-10-15
被引用文献数
1

本稿では,プライマリシステム(無線LANシステム)と周波数共用を行うセカンダリシステム(Cognitive MIMO Mesh Network:CMN)の評価用シミュレータの紹介を行う.筆者らは,周波数共用を行うセカンダリシステムとして高速高信頼な無線分散ネットワークとしてCMNの検討を行ってきた.CMNは時間,空間軸で既存の無線LANシステムと高効率な周波数共用を実現する.このとき,環境認識技術として協調センシング法,占有率推定法を用い,効率的な周波数共有のためにダイナミックMACプロトコルとダイナミックルーティング法をCMNは備えている.さらに,CMNは,双方向MIMOやネットワークコーディング技術をとりいれることで,より高い周波数利用効率を達成できる.本稿では,特に環境認識技術である協調センシング法,占有率推定法と,周波数共用技術であるダイナミックMACプロトコル,ダイナミックルーティング法の紹介を行う.さらに,それらを統合したCMNの紹介と,トータルパフォーマンスを評価するために評価用シミュレータを開発したのでそれを紹介する.
著者
中林 健一
出版者
石油技術協会
雑誌
石油技術協会誌 (ISSN:03709868)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.534-543, 1991 (Released:2008-03-27)
被引用文献数
1
著者
江島 一樹 梅林 健太 水谷 克也 河野 隆二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SST, スペクトル拡散 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.28, pp.41-48, 2001-04-20
被引用文献数
16 5

新しい形のスペクトル拡散システムとして、Ultra Wide Bandwidth-Impulse Radio(UWB-IR)が高速無線通信方式として注目され始めている。ここでは、そのなかでもTH(Time Hopping)方式について注目し、その他局間干渉を低減するために、M-aryの考えを用いて多値化して、伝送速度を落すことなく他局間干渉が低減できる方式を提案する。この提案方式について計算機シミュレーションを行ない、E_b/N_oでBERを比較した所、BERが10^<-3>の時、3.125Mbpsで1ユーザの時約3dB、30ユーザの時約4dBの利得が得られた。
著者
田中 健 外山 史 東海林 健二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.82, pp.43-48, 2001-08-04
被引用文献数
2

本論文では、作曲を、データベースにある曲のリズムと音高パターンの最適な組合わせを見つける最適化問題とみなし、これを遺伝的アルゴリズム(GA )を用いて解く手法を提案する。データベースには、起承転結のような構造の分かりやすい曲(童謡、唱歌など)を格納した。そして、別々の曲のリズムと音高パターンを小節ごとに組み合わせてできた曲をGA の評価対象とした。提案した手法により曲を生成した実験結果を示す。In this paper, we regard an automatic composition as an optimization problem which finds an optimum combination of rhythm and pitch transition patterns in the database. We selected the pieces of music that are simple in structure from the children's songs, the ministry of education songs, etc., and we stored them into the database. The fitness function of a GA evaluates the composed pieces of music that are sequences of the combination of rhythm patterns and pitch transition ones taken from the database in each measure. The pieces of music composed by the proposed method are shown.
著者
林 健一郎 大坪 昭文 白仁田 和彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.7, pp.1180-1184, 1999-07-25
参考文献数
11
被引用文献数
5

本論文では, ファジー推論法による非線形なPID制御と線形なPID制御の, 従来法と比較してより簡便で実用的な実現法について提案を行う. ここでの提案は, 簡略化することで推論計算の高速化を図ったファジー推論法の簡略化直接法を, わずか6個の簡単な構造を有するファジー制御規則に適用することにより, PID制御器に準拠した非線形なPID制御のみならず, 線形なPTD制御をも容易に実現できるという方法である.
著者
前島 伸一郎 大沢 愛子 林 健 棚橋 紀夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.187-194, 2013-05-20 (Released:2013-05-24)
参考文献数
21

要旨:【目的】嚥下造影検査(VF)の実施に合わせて,5 mlと60 mlの段階的飲水試験を施行し,誤嚥の検出や経口摂取の可否,選択された食形態との関連について明らかにする.【対象と方法】経口摂取開始時の適切な食材を選ぶことを目的にVFを施行した183名(男性107,女性76)の脳卒中患者を対象とした.平均年齢は66.9±12.1歳で,原因疾患は脳梗塞98名,脳出血49名,くも膜下出血23名,その他の脳血管疾患13名,発症からVFまでの期間は18.0±12.0日であった.方法は,まず,VF実施の直前に段階的飲水試験にて臨床評価を行い,次にゼリーや粥などの模擬食品に加え,5 mlと60 mlの液体にてVFを行った.その後,段階的飲水試験の結果と実際のVF結果との関連について検討した.【結果】臨床所見の異常にて段階的飲水試験を途中で中止したのは46名(第1段階43名,第2段階3名)であった.段階的飲水試験での異常所見はVFの液体誤嚥と有意な関連を認め,VFにて観察される誤嚥に対する段階的飲水試験の感度は85.2%,特異度は41.8%であった.飲水速度(ml/秒)や1回嚥下量(ml)と誤嚥に明らかな関連はなかった.経口摂取の可否や選択された食形態は,VFの液体誤嚥との間に関連を認めたが,段階的飲水試験の臨床評価との間には関連はなかった.【まとめ】段階的飲水試験の臨床評価は液体誤嚥の検出には有用ではあるが,その結果と誤嚥予防のための適切な食形態との間には明らかな関係を見いだせず,経口摂取の開始前には嚥下造影検査などの詳細な評価を合わせて行うべきである.
著者
林 健造
出版者
日本幼稚園協会
雑誌
幼児の教育
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.20-24, 1957-12-01
著者
太田 健太郎 小林 健太郎 山里 敬也 片山 正昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.95, no.2, pp.246-256, 2012-02-01
被引用文献数
1

大陽エネルギーの取得を行う無線センサネットワークにおけるデータ伝送成功率の向上を目指している.ネットワーク全体の消費エネルギーを低減する方法として,データ送信時にノードがデータの中継を行う協力伝送方式の適用を考える.本論文では,まずノードの電池残量,消費エネルギーを考慮した中継ノード選択手法を提案し,全体的なデータ伝送成功率の向上を行う.しかし,取得エネルギーの変動を考慮しない場合,夜間にデータ伝送成功率が低下する問題が生じる.そこで,協力伝送に電池切れにより停止したノードの再稼動条件を導入することで昼夜のデータ伝送成功率の平滑化を行い,要求される高いデータ伝送成功率を達成する.
著者
林 健太郎 長谷川 利拡 小野 圭介 岩崎 亘典 豊田 栄 八島 未和 堅田 元喜 須藤 重人 和穎 朗太 常田 岳志 麓 多門 須藤 重人 南川 和則 和穎 朗太 松田 和秀 片柳 薫子 矢野 翠 中村 浩史
出版者
独立行政法人農業環境技術研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

つくばみらいFACE(開放系大気二酸化炭素増加)実験水田を舞台として、大気沈着および灌漑水に由来する窒素フローの実態を把握し、大気二酸化炭素(CO_2)増加、加温、および水稲品種が一酸化二窒素(N_2O)の生成、窒素無機化、窒素固定、水稲の窒素吸収、および土壌有機物の動態などの窒素関連過程に及ぼす影響の解明を進め、大気-土壌-水稲系の詳細な物質循環モデルを開発し、広域評価モデル・データセットを構築した。
著者
林 健一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.205-211, 1966-12-25

光利用効率を, 群落が光をまず受けとめる効率(Ei)と, 受けとめた光を利用して光合成により乾物として固定する効率(Eu)とに分解すると, 乾物生産量=投下エネルギー×Ei×Eu という関係が成り立つ. 水稲中生5品種を, 粗・中・密の栽植密度で圃場栽培し, 一方, 群落内外の光の強さを連続測定して, これらの効率と乾物生産, 収量との関係をしらべて次の結果を得た. 1) 繁茂度の低い生育前期の乾物生産は主としてEiにより, 繁茂度の高い中後期は主としてEuにより決定され, 特に出穂後の乾物生産とEuとは密接な直線的関係を示した. 2) 全生育期間の平均Eiは45〜66%, 平均Euは1.5〜2.1%, 投下全エネルギーに対する乾物生産平均効率 (Ec=Ei×Eu) は0.7〜1.4%であつた. 3) 栽植密度増加とともにEi, Euも相伴つて上昇すれば乾物生産も増加したが, Eiの上昇がEuの下降によつて相殺されると, 乾物生産も増加しなかつた. 4) Euは生育後半期の(乾物増加量)/(葉積)と密接な直線的関係を示し, Euが群落の光合成能率により規定されることを示唆した. 5) 収量=全乾物重×収穫指数(harvest index)とすると, 栽植密度増加による収穫指数の低下程度には品種間差異があつた. 6) 栽植密度増加とともに, Euが低下して大巾な乾物生産増加の可能性は低いが, 収穫指数が比較的に安定しているために多収な農林29号型と, Euがさらに増加して乾物生産が大巾に増加し, 収穫指数の低下を補うために多収な金南風型との, ニつの型を類別できた.
著者
樋上 義伸 友杉 直久 西邨 啓吾 加登 康洋 小林 健一 福田 繁 岡田 保典
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.734-738, 1981
被引用文献数
2

われわれは劇症肝炎様転帰をとった悪性リンパ腫の1剖検例を経験したので報告する.症例は60歳男性で昭和54年4月20日より全身倦怠と黄疸が出現したため4月24日に当科に入院した.入院時黄疸が著明で肝は剣状突起下7横指触知されたが,表在リンパ節腫脹は認められなかった.検査成績では直接ビリルビンの増加と胆道系酵素の上昇が著明で閉塞性黄疸のパターンを示していたが,腹部超音波検査では肝内・肝外胆管の拡張は認められなかった.入院後発熱,出血傾向,腹水,無尿,意識障害が出現し,4月28日死亡した.剖検では全身リンパ節,肝,脾,副腎,皮膚,顎下腺に腫瘍細胞の浸潤があり悪性リンパ腫と診断された.肝臓は広範性肝細胞壊死の状態で,腫瘍細胞は門脈域でび漫性浸潤を示し,腫瘍結節形成も認められた.広範性肝細胞壊死の機序としては,死亡直前にエンドトキシンショックの臨床像を呈していたことより臓器Shwartzman反応の関与が考えられた.
著者
林 健太郎 野口 泉
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.279-287, 2006-09-01
被引用文献数
5

アルカリ含浸ろ紙を2段としたフィルターパック法を用いて,茨城県つくば市のシバ草地における2004年6月29日〜2005年1月11日のガス状の亜硝酸(HONO)および硝酸(HNO_3)の濃度および濃度勾配を観測した。暖候季および寒候季のHONO濃度はそれぞれ0.86および1.2ppb(v/v),HNO_3濃度はそれぞれ1.0および0.23ppbであり,HONO濃度はHNO_3濃度と同程度であった。一方,暖候季および寒候季の地上4-2m間のHONOの濃度勾配はそれぞれ-0.012および-0.027ppb m^<-1>,HNO_3の濃度勾配はそれぞれ0.10および0.008ppb m^<-1>であった。負の濃度勾配はネットフラックスが発生であることをあらわし,HONOが地表から発生していることに加えて,発生量が乾性沈着量を上回っていることが示された。地表からのHONOの発生は,気相-地表系の不均一反応による二酸化窒素からのHONOの生成によると考えられる。大気-地表間のHONOの交換はネットフラックスとして定量されるべきであり,沈着速度の推計では地表からのHONOの発生を考慮する必要がある。
著者
小林 健二 齋藤 真麻理 山下 則子 鈴木 淳 武井 協三 寺島 恒世 大友 一雄 江戸 英雄 恋田 知子 小峯 和明 石川 透 徳田 和夫 福原 敏男 藤原 重雄 高岸 輝 恋田 知子 浅野 秀剛 キャンベル ロバート
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究はニューヨーク公共図書館スペンサーコレクションに所蔵される絵入り本の全容をつかむために、絵入り本解題目録の作成を目指して絵巻・絵本など絵入り写本類の調査研究を実施した。所蔵者の都合により悉皆調査は叶わなかったが、貴重な資料の調査と研究を進めることができ、その成果を『絵が物語る日本―ニューヨーク スペンサー・コレクションを訪ねて』と『アメリカに渡った物語絵―絵巻・屏風・絵本』、その英語版の報告書『Japanese Visual Culture― Performance,Media,and Text』の三冊の論文集にまとめて刊行した。
著者
小林 健彦 Kobayashi Takehiko
出版者
新潟産業大学附属研究所
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.38, pp.57-73, 2010-06

日本列島の中では、文献史資料に依って確認を取ることが可能な古代以降の時期に限定してみても、幾多の自然災害―気象災害、津波や地震災害、伝染病の蔓延等―に見舞われ、その度に住民等を苦しめて来た。現在の新潟県域に該当する地域に於いても、当該地域特有の気象条件より齎される雪害を始めとして、大風、大雨、洪水、旱魃、地震、津波、火山噴火、そして疫病の流行といった災害が発生当時の民衆に襲い懸かっていた。しかし、民衆はそれらの災害を乗り越えながら現在に続く地域社会を形成して来たのである。筆者は、従前より、当時の人々がこうした災害を如何にして乗り越えて来たのかという、「災害対処の文化史」を構築するのに際し、近年自然災害が頻発している新潟県域を具体的研究対象地域として取り上げながら、その検証作業を行なっているところである。本稿では、前稿に引き続き、室町時代の中期以降、中世後半期に至る事例の検出と、民衆に依る災害対処の手法とに就いて、更に検証作業を進めた内容を明らかにするものである。
著者
星川 竜彦 小林 健二 鹿股 宏之 篠崎 浩治 加瀬 建一 尾形 佳郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.2135-2140, 2009 (Released:2010-01-05)
参考文献数
10

症例は42歳,男性.検診で肝機能障害を指摘され,当院を紹介受診し,腹部CT検査と腹部超音波検査で肝内側区域に腫瘤性病変を認め,精査加療目的で入院とした.腹部MRI検査で左肝内胆管の閉塞と右前後区域の分岐部にも胆管壁の不整像があり,腹部血管造影検査では左門脈枝の完全閉塞と門脈本管の左右分岐部付近での狭窄を認めた.以上より切除不能胆管癌と診断し,減黄後にGemcitabine 400mg/body/week投与と放射線照射(50.4Gy)を施行した.3カ月後の腹部MRI検査で腫瘤は縮小し,6カ月後には腫瘤を指摘できなかった.その後,治療開始から9カ月目に溶血性尿毒症症候群(以下HUS)を発症し,血漿交換などを施行したが2カ月後に死亡した.切除不能胆管癌は予後不良であり,今回われわれは化学放射線が奏効した後にGemcitabineによると思われる溶血性尿毒症症候群をきたした1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.