著者
河原 祐馬 谷 聖美 佐野 寛 近藤 潤三 玉田 芳史 島田 幸典 小柏 葉子 麻野 雅子 永井 史男 木村 幹 中谷 真憲 横山 豪志
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、移民外国人の社会統合問題について、その政治的成員資格と新たなナショナル・アイデンティティをめぐる議論に焦点を当て、ヨーロッパや日本をはじめとするアジア太平洋地域の事例を比較地域的な観点から考察するものである。本研究の成果は、トランスナショナルなレベルにおける地域協力の取り組みについての議論が活発化する中、今後のわが国における移民政策の基本的な方向性を模索する上での一助となるものである。
著者
玉田 芳史 片山 裕 河原 祐馬 木村 幹 木之内 秀彦 左右田 直規 横山 豪志
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

政治の民主化と安定が好ましいことは広く合意されている。しかしながら、両立は容易ではない。本研究は東・東南アジア地域諸国において、政治の民主化と安定はどういう条件が整えば両立可能なのかを解明することを目指した。東・東南アジア地域には過去20年間に政治の民主化が進んだ国が多い。本研究では韓国、フィリピン、インドネシア、マレーシア、カンボジア、タイのアジア6カ国を取り上げた。この6カ国では2003年から2005年にかけて国政選挙が行われた。選挙にあたって政治が緊迫したのはこれらの国の政治が民主化してきた証拠である。それとともに、比較対象地域として同じ時期に民主化が進んだバルト諸国のエストニアを取り上げた。両立のためには制度設計が重要なことはエストニアの事例がよく示している。エストニアは両立に成功した数少ない旧社会主義国の1つである。鍵になったのは、民主化の着手時にロシア系住民から市民権を剥奪したことであった。当初は国際社会から厳しい批判を招いたものの、結果としてはよい結果をもたらした。アジアの場合、民主化と安定のバランスを保つことが難しい。タイでは1997年憲法で安定を重視した結果、民主的な手続きを軽視する指導者を生み出すことになった。ここでは、フィリピン、韓国、インドネシアともに国家指導者罷免の手続きが課題として浮上することになった。フィリピンやインドネシアでは独裁支配の忌まわしい記憶が残っているため、強い指導者の登場を助けるような制度設計には消極的である。また、手続き上の制度の不備あるいは不正利用のために、民主主義体制の正当性確立が容易ではない。今後の研究課題として、制度よりもポピュリズムの手法に依拠して登場しつつある強い指導者について調べてみたいと計画している。
著者
森 和郷 小森 昭人 平沢 峻 倉増 敏男 横山 幸生 川瀬 哲彦 尾関 良隆 橋本 正淑
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.15, no.13, pp.1231-1236, 1963-11-01

昭和35年6月1日より昭和36年9月19日迄の約1年2ヵ月の間に, 札幌医科大学産婦人科外来に於て腟鏡診を中心として行った子宮頚癌の早期診断の結果について報告した. 対象患者は外来診察に於いて既に子宮口糜爛を有する者及び癌の精密検査を希望するもの2000例である. 検査方法は腟鏡診及び細胞診を行い, 腟鏡診にて必要を認めたものに照準切除診を行った. 腟鏡診に使用した機械はMollerの双眼コルポスコープである. 加工腟鏡診として錯酸診, 沃度診及びアドレナリン診を附加した, 判定規準は大凡Hinselmannの分類に従ったが, 一部改変した. 細胞診はPapanicolaouの原法に従い且判定規準も同氏のものを用いた. 組織診はHaematoxylin 染色, 必要に応じてVan Gieson染色を行い, 判定はMullerの分類に従った. 1) 検診患者の年令的分布は, 腟鏡診異常所見群のピークは36〜40才に, 癌性潰瘍群のピークは46〜50才であった. この両者の年代的差異は異常所見からの悪性化の年次的関係を暗示させるものと思われる. 2) 受診患者の自覚症状は不正出血38.5%で第1位, 順次帯下25.9%, 接触出血12.5%, 無症状14.3%, 腰痛5.9%, 月経異常2.8%となり, 接触出血を含めた性器出血が大半を占める. 又無症状のものから6.8%に腟鏡診的異常所見が発見された. 3) 腟鏡診所見の頻度については, 良性所見は全体の84.7%に見られ(転位帯25.9%, 変換帯38.5%, ポリープ5.1%, 腟炎6.0%, 真性糜爛9.1%), 異常所見は全体の15.2%に見られた. (白斑1.9%, 基底2.0%, 分野1.5%, 異型変換帯1.1%, 異型血管5.0%, 癌性潰瘍3.4%). 4) 肉眼的癌又は癌を疑わしめた140例中, 腟鏡診では119例に癌と診断したが, 組織診では117例に侵入癌があった. 即ち肉眼的に23例, 腟鏡診では2例の誤診があった. 5) 腟鏡診と細胞診との比較に於て, 腟鏡診のみで癌と診断したもの94.8%, 細胞診のみで癌と診断したもの97.4%であった. 両者を併用すると100%近い診断率が得られた. 6) 腟鏡診と組織診との関係を腟鏡診的癌母地と見做される所見について観察すると次の如くであった. 即ち白斑50例中侵入癌2例, 異型上皮4例, 基底66例中癌6例, 上皮内癌4例, 異型上皮5例, 分野50例中侵入癌2例, 上皮内癌3例, 異型上皮8例, 異型変換帯63例中上皮内癌2例, 異型上皮3例, 異型血管89例中侵入癌37例, 上皮内癌2例, 異型上皮5例を夫々組織学的に確診した. 又変換帯979例中30例0不穏上皮異型上皮11例が見られたことは注目に値する. 7) 腟鏡診に於ける血管像は特に観察した1433例中異型血管301例(21.0%)が見られた. これらを組織診にて検するに侵入癌78例, 上皮内癌6例が見出され, 悪性率27.9%であった. 以上の観点により, 腟鏡診は子宮頚癌の早期診断への補助診として, 細胞診及び組織診との併用が望ましいと思われる.
著者
湯之上 隆 鈴木 淳 大塚 英二 大友 一雄 保谷 徹 岩井 淳 杉本 史子 横山 伊徳
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

静岡県を調査主体とする江川文庫史料西蔵調査事業と連携して調査研究を進めた。平成24年3月刊行の静岡県文化財調査報告書第63集『江川文庫古文書史料調査報告書』4冊により、約30, 000点の古文書を目録化した。本研究の前提となる第1次調査分の約20, 000点と合わせた約50, 000点にのぼる古文書調査はほぼ完了し、本研究の所期の目的は完遂した。江川文庫研究会を5回開催し、調査研究成果の公表と情報の共有を図った。国文学研究資料館の「伊豆韮山江川家文書データベース」により、調査成果を公開した。
著者
酒井 潤一 横山 賢一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、不働態皮膜により高耐食性を有する合金の腐食に伴う水素吸収から脆化に至るまでの全体像の特徴とメカニズムについて、電気化学的観点と材料強度学的観点を相互に関連させて複合的に調べ明らかにした。得られた種々の知見は、使用環境中における金属や合金の安全性・信頼性のさらなる向上のための材料評価法及び新しい合金開発のための指針の一つとして期待されることを示した。
著者
横山 敦郎 安田 元昭
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究においては,歯根膜幹細胞の種々の細胞への分化に関する成長因子の同定および分化した細胞の遺伝子発現様式の差異を明らかにすることを目的に,以下の研究を行った.WKAウィスター系5週齢雄性ラットから,下顎切歯を抜去し,15%FBSおよび抗生剤を含むα-MEM中に静置し,2週後まで初代培養し,アウトグロースした細胞を歯根膜細胞として回収した.回収した細胞を,デキサメサゾン(Dex),アスコルビン酸(Asc),βグリセロフォスフェイト(βGP)を含む培地とこれらを含まないコントロールの培地の2種の培地で2週間培養し,骨関連タンパクであるオステオカルシンと歯根膜特有のタンパクであるXII型コラーゲンについてRT-PCRを行いmRNAの発現を検索した.XII型コラーゲンの発現は,コントロールとDexを含む培地の両者に同様に認められたが,オステオカルシンはDexを含む培地で著しく強く発現していた.この結果から,Dexで骨芽細胞に誘導される幹細胞が,採取された歯根膜細胞には含まれることが明らかとなった.この結果をもとに,Dexを含む培地,b-FGFを含む培地およびこれらを含まないコントロール培地の3種の培地で歯根膜細胞を3日培養した後,RNAを回収し,DNAマイクロチップで網羅的にmRNAの発現を解析した.その結果,mRNAの発現は,b-FGFを含む培地とコントロールの培地では,ほとんど差異が認められなかったが,Dexを含む培地とでは差異が認められた.この結果から,b-FGFは歯根膜幹細胞を分化させることなく増殖させ,またDexは,歯根膜幹細胞を骨芽細胞へ分化させることが示唆された.
著者
米田 穣 阿部 彩子 小口 高 森 洋久 丸川 雄三 川幡 穂高 横山 祐典 近藤 康久
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では、全球大気・海洋モデルによって古気候分布を復元し、旧人と新人の分布変動と比較検討することで、気候変動が交替劇に及ぼした影響を検証した。そのため、既報の理化学年代を集成して、前処理や測定法による信頼性評価を行い、系統的なずれを補正して年代を再評価した。この補正年代から、欧州における旧人絶滅年代が4.2万年であり、新人の到達(4.7万年前)とは直接対応しないと分かった。学習仮説が予測する新人の高い個体学習能力が、気候回復にともなう好適地への再拡散で有利に働き、旧人のニッチが奪われたものと考えられる。
著者
横山 三紀 横山 茂之
出版者
日本大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1.NAD分解酵素であるリンパ球表面抗原CD38を用いて、ガングリオシドとの相互作用を明らかにするために結晶構造解析をこころみた。マルトース結合蛋白質とCD38の細胞外ドメインとの融合蛋白質(MBP-CD38)を大腸菌で発現させた。発現させたMBP-CD38の大部分は正しいSS結合のかかっていない不活性型であったため、チオレドキシンとの共発現系を用いて安定に活性の高いMBP-CD38を調製する方法を確立した。MBP-CD38とガングリオシドGT1bとの結晶化のハンギングドロップ法での条件検討をおこない、PEG10,000を沈殿剤として結晶を得た。この結晶から分解能2.4オングストロームの反射を得ることに成功した。2.CD38を発現している細胞にガングリオシドを取り込ませると、CD38のNAD分解活性が抑制される。ガングリオシドの効果が同一細胞表面上のCD38とのシスの相互作用であつのか、又はCD38とガングリオシドとがトランスで相互作用する結果なのかを明らかにするために、THP-1細胞のCD38-トランスフェクタントを用いた実験を行った。CD38-トランスフェクタントにGT1bを取り込ませた場合にはNAD分解活性の阻害が起こったが、導入をおこなっていないコントロールの細胞にGT1bを取り込ませたものをCD-38トランスフェクタントと共存させた場合には阻害が起こらなかった。このことから阻害はCD38とGT1bとが同一細胞の表面にあるシスの場合に起こることが強く示唆された。
著者
松居 竜五 奥山 直司 橋爪 博幸 安田 忠典 小峯 和明 千本 英史 横山 茂雄
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では南方熊楠の未公刊資料のうち、書簡、日記、ノート類など自筆原稿に関して、翻刻およびデータ編集をおこなった。またその結果に基づいて論文、展観、シンポジウムなどのかたちで南方思想の学際的かつ国際的な研究を進めた。このことにより、南方の比較説話学、仏教学、環境思想などに関して、従来よりも幅広く精緻な像を示し、今後の研究の方向性を切り開くことができたと考えている。
著者
横山 裕一
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

軽度認知障害(mild cognitive impairment : MCI)は、その14%が1年で、40%が4年で認知症へ転換するといわれ、その予後の違いを予測する因子を明らかにすることが重要である。本研究は、認知障害の時間的推移と、認知症転換への予測因子を総合的に解析し、最終的には認知症への転換を予測するニューラルネットワークモデルを構築することを目的とした。レビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies : DLB)では早期から自律神経機能の障害が出現することが先行研究で報告されており、心臓交感神経機能を評価する目的で使用されているMIBG心筋シンチグラムを用いた先行研究では、DLBの病早期からMIBGの心筋への集積低下がみられることが報告されている。このため、心臓交感神経機能の障害はMCIからDLBへの転換を予測する因子となり得る。しかしながらMIBG心筋シンチグラムは国内では保険適応外であり、検査が非常に高額であるためスクリーニングとしては適さないのが現状である。その代替法を考案するため、心臓交感神経賦活と前頭葉ヘモグロビン濃度変化の関連について、近赤外線スペクトロスコピィNIRO200(Hamamatsu Photonics K.K., Japan)と心臓交感神経機能を反映すると考えられる心拍計R-R間隔変動の最大エントロピー法によるリアルタイム解析(MemCalc/Tarawa, GMS)を用い、健常対照群と患者群における比較研究を行い、その結果を第32回日本生物学的精神学会において発表した。結果としては残念ながら上記代替となる十分な指標は得られず、研究法の改善を今後の課題とした。研究者は、平成23年4月から更に研究を推進するべく大学院へ進学することとなり、本研究費を得る資格を失うこととなったが、今後も認知障害の研究に取り組んでいく所存である。
著者
中塚 次郎 竹中 克行 横山 正樹 ヒガ マルセーロ 立石 博高 金七 紀男 山道 佳子 宮崎 和夫 川上 茂信 砂山 充子
出版者
フェリス女学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

地域の形成にはたんに経済的要因や地理的要因だけではなく、その地域に流入してきた人間集団の存在や、そこから出ていった移民たちの意識などが重要な役割を果たしている。たとえば、EU内を移動しそこを生活空間とする一方で、EU外の集団との差異を経験することで、人々はEUをひとつの「地域」と認識する、といった具合にである。このことは、国家内の「地域」にもあてはまる。本研究は、こうした観点を生かしながち、イベリア半島を対象にして、「ヒトの移動」と「地域」形成の関係を、歴史的に分析しようとするものである。共同研究の前提として、まず、大西洋をはさんだ、現代におけるイベリア半島とアメリカ大陸間のヒトの移動を中心にして、統計的な研究、地域意識の形成、移民先での移民の社会的地位といったテーマについて検討した。その後、対象を近代以前にまでひろげ、さらに移動の地域をピレネー山脈をはさんだ、イベリア半島とほかのヨーロッパ地域とのあいだの人の移動にまで拡大して、宗教意識の変容や言語の変化を含む、幅広い視,点から検討を行なった,また、強いられた移動である「亡命」についても、人々の帰属意識の変化の側面から分析を進めた。共同研究の最後に、アジアにおける人の移動を比較検討の対象としてとりあげ、いかなる分析方法が地域研究にとって有効であるか、といった総括的な作業を行なった。
著者
小南 靖弘 横山 宏太郎
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.種々の雪質の積雪について音速および音響減衰係数の測定をおこない、雪の物性と音響特性との関係を検討した。用いた音は200Hzから1/3オクターブ刻みで8000Hzまでの正弦波である。その結果、以下のことがあきらかとなった。(1)間隙空気中を伝播する音の音速は伝播経路の屈曲度を反映している。これは積雪中のガス拡散係数における拡散経路の屈曲度と同様であるが、音の伝播は屈曲した間隙中の最短距離を通るのに対し、ガス拡散の場合は屈曲した間隙の平均的な距離を反映していることがわかった。(2)間隙空気中を伝播する音の減衰係数は粒径×気相率で求める間隙サイズ指標の二乗に反比例し、圧力変動によって生じる間隙内のマスフローの減衰と同様の現象であることが確認された。また、結合した雪粒子を伝播する音の減衰係数は積雪密度に反比例し、質量効果による遮音のメカニズムによるものと推測された。以上の結果より、音速および音響減衰係数の測定より、積雪のガス環境を決定するパラメタであるガス拡散係数や圧力変動に伴うマスフローの減衰度合いなどを推定できることがわかった。2.自然状態の積雪中の底部、内部および表面の二酸化炭素濃度の連続測定をおこない、表層近くの積雪の見かけ上のガス拡散係数が風によって増加する現象を確認した。さらに、その程度は風速の二乗と積雪表層の間隙サイズとに比例することをあきらかにした。
著者
浜田 弘明 金子 淳 犬塚 康博 横山 恵美 森本 いずみ 平松 左枝子 清水 周 橋場 万里子
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

「鶴田文庫」は、博物館学者・故鶴田総一郎旧蔵の博物館及び博物館学に関する蔵書・資料群で、その総量は段ボール箱約250箱に及び、桜美林大学図書館が所蔵している。本研究では、最も公開が望まれている国内外の書籍に重点を置き、約13,000点に及ぶ資料の目録化を実現した。合わせて、鶴田の業績を明らかにしつつ、日本における戦後博物館学の発展・展開過程を検討した。目録化された資料は、桜美林大学「桜美林資料展示室」の「鶴田文庫コーナー」で公開している。
著者
横山 泰行
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

重度化・重複化している精神遅滞児になわとび運動を定着させるためには,きめの細かい指導案が不可欠である.この要望に対して,現在のところ唯一満足のゆく指導案を公表しているのは,高畑の著書「フ-プとびなわでなわとびは誰でも跳ばせられる」である.本研究では,「フ-プとびなわ運動」の指導ステップを紹介し,次に,高畑の実践報告書「フ-プとびなわ驚異の教育力」を文献資料として活用している.つまり,重度の精神発達遅滞で,自閉的傾向の認められる事例児のフ-プとびなわ運動に見られるマスター過程を克明に追跡し,その過程で本人の心身(肥満問題や身体活動量・運動能力問題など),家庭の両親,指導者,クラスの仲間に及ぼした影響を要約をするものである.この事例児は「フ-プとびなわ運動」で肥満解消に成功することはできなかったが,肥満程度の昂進しやすい思春期に,肥満の最重度化にブレーキを掛けることに成功したケースである.数百回に及ぶなわとび運動の消費エネルギーも,重度肥満の程度を大幅に軽減できる身体活動量とはならなかった.本研究の後半は,小学部の頃から重度肥満であった事例児が中学部において,急速に肥満を解消していった過程を詳細に追跡している.血液の生化学的検査により,このままの状態が続けば,事例児の病気は避けられないといった診断結果が肥満解消を促す最大の動因となった.肥満解消の原因は,父親が学校と緊密な連絡を取りながら,家庭での徹底した食事管理,掃除や散歩の活用,学校側での定期的な身体測定,食事量・運動量のチェックと是正,家族に対する正しい肥満知識の普及,両親を説得して肥満治療にあたった点にあるといえよう.また,嘔吐による体の変調も急激に体重を減らした要因であった.
著者
笠置 康 横山 正義 笹生 正人 長柄 英男 和田 寿郎
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.1042-1042, 1982-08-25

東京女子医科大学学会第245回例会 昭和57年4月16日 東京女子医科大学 本部講堂
著者
有薗 格 横山 隆光 斎藤 陽子
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.19-29, 2004-03-31

最近のテレビ番組はデジタル放送やハイビジョン放送等,高画質で放映内容も国内はもとより世界諸国の歴史・文化・生活・社会問題等,学校の授業で利用できる情報が提供されている.ところが全国の教育センター指導主事や教師を対象にした「テレビ番組の教育利用と著作権問題」についての実態と意識に関する調査(平成14〜15年度)の結果で学校の授業等でテレビ番組の内容を分断利用した教師は少ない,多くは著作権問題があるため利用しない現状にある.しかも多くの教師や指導主事等は「子どもに豊かなイメージを育て,わかる楽しい授業が効果的である」と理解している等が判明し,著作権問題はテレビの教育利用に大きな障害をもたらしていることが分かった.そのため文化庁の文化審議会著作権分科会はインターネットの普及や情報伝達技術の発展と情報利用の多様化の進行にともない著作権問題の見直し,学校等の「例外的に許諾を得ず」に複製・活用できる対象と幅を拡大する方向での検討をすすめるようになった.
著者
服部 裕幸 美濃 正 大沢 秀介 横山 輝雄 戸田山 和久 柴田 正良
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

われわれはコネクショニズムと古典的計算主義の対比を行ないつつ、コネクショニズムの哲学的意味の解明を行なった。美濃は、ホーガン&ティーンソンのアイディアを援用し、古典的計算主義を超えつつも、いくつかの点で古典的計算主義と前提を共有する立場の可能性を模索した。服部と金子はコネクショニズムにおける表象概念(すなわち分散表象)がはたして「表象」と呼ぶに値するかということを研究し、その有効性の度合を明らかにした。金子はどちらかといえば、分散表象を肯定的に評価し、服部は否定的に評価しているので、この点についてはさらに具体的な事例に即した研究が必要であることが明らかとなった。柴田と柏端は、「等効力性」議論を検討することを通じて、「素朴心理学」的説明による人間の行為の説明が真ではないとする主張の意義を研究し、柏端は、コネクショニズムが素朴心理学の消滅よりはむしろその補強に役立ついう評価をするに至った。他方、柴田は、条件つきではあるものの、素朴心理学は科学的心理学を取り込んだ形で生き残るか、道具主義的な意味で残るであろう、と結論するに至った。戸田山と横山はコネクショニズムが認知の新しい理論であると言われるときに正確には何が言われているのかということを研究した。特に横山は、コネクショニズムを科学についてのより広いパースペクティヴから見なければならないと結論した。大沢は、古典的計算主義における古典的表象のみならずコネクショニズムにおける分散表象もともにある種の限界をもつと論じ、それに代えて新たに像的表象の概念を提案し、そこでの論理を具体的に提案した。しかし、この点はまだ十分に展開しきれてはいないので、今後も引き続き研究する必要のあることが判明した。
著者
近森 淳二 長岡 豊 森 隆 井内 敬二 飯岡 壮吾 南城 悟 沢村 献児 渡辺 幸司 差 健栄 横山 邦彦 瀬良 好澄
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, 1974-12-30

50才男子.石綿の混綿工の職業歴あり.昭和49年4月9日.石綿肺に合併せる左下葉肺癌の診断にて左下葉切除術施行.術後約1ヵ月頃より原因不明の消化管出血を来し,術後75日目に死亡した.剖検により胃体部に2箇,空腸に1箇,後腹膜に小児手拳大の癌腫を認めた.組織学的にはいずれも肺と同様の低分化型腺癌であった.しかし肝転移,胃周囲臓器の所属リンパ節転移および癌性腹膜炎を認めなかった点から,石綿肺に合併せる多発性癌腫(胃,空腸,肺および後腹膜)と考えられる.
著者
小泉 孔二 入江 恭子 横山 仁 保坂 恭子 竹崎 徹 小山 敏雄
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.652-655, 2008-07-20
被引用文献数
2

67歳,女性.近医での膀胱鏡にて膀胱癌を疑われ,2003年4月5日当科を紹介受診.膀胱鏡にて栂指頭大広基性乳頭状腫瘍を認めた.2003年4月22日TUR-Btを施行.病理はUC,G3,pTlであった.その後膀胱内に再発は認めなかったが,2006年11月CA19-9およびCEA高値を指摘され当科再診.CTにて骨盤内リンパ節腫大を認めたため2006年12月5日開腹生検を施行.病理診断はmicropapillary patternを有するUCであった.小骨盤腔に放射線照射60Gyを行い画像上CR,マーカーも正常化した.2007年7月時点では再発を認めず経過観察中である.