著者
渡邊 勉
出版者
信州大学
雑誌
人文科学論集. 人間情報学科編 (ISSN:13422782)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.65-78, 2005-03-15

最後通牒ゲーム (Ultimatum Game) に関する実験研究の知見は, 経済理論から得られる予想と大きくずれていることが知られている。つまり, 経済理論では不平等が実現すると予想するのに対して, 現実の実験では平等が実現するのである。このズレを説明する有力な仮説の一つとして, 人々が経済合理的個人なのではなく, 公正観を持つ個人だからという仮説がある。本稿では, 最後通牒ゲームの実験研究から得られている知見を, 理論的に説明することを目的とする。その際, 競争志向プレーヤーと平等志向プレーヤーを想定し, それらのプレーヤーがゲームをおこなった場合に, 平等が実現するのかを検討した。その結果, 競争志向プレーヤー間, 平等志向プレーヤー間だと平等が成立する。その一方で, 異なるプレーヤー間, あるいは相手のタイプがわからない場合には平等が実現しないことも示した。つまり, 人々が経済合理的個人であっても, 公正観を持つ個人であっても条件次第によって, 平等が実現することが明らかとなった。
著者
佐々木 健 北村 美穂 倉田 啓一 渡邊 克巳
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

今日,情報システムには少なからずユーザとの音声対話機能が実装化されている.音声エージェントに対するユーザの愛着は,情報システムの利用を求める際に重要な役割を果たすと考えられる.本研究では,会話の丁寧さに着目し,丁寧さの異なる数種類の呼びかけ語が音声エージェントへの愛着形成にどのような影響をもたらすか検討した.実験参加者は,バーチャル運転システムを通して,丁寧な呼びかけ語 (『すみません』)と丁寧でない呼びかけ語 (『あのー』)を話す音声エージェントと会話し,それぞれのエージェントに対する印象を評価した.その結果,丁寧な呼びかけ語の『すみません』は「打ち解け感」と「控えめさ」の評価を高めたが,エージェントへの愛着を直接示す「好ましさ」にはほとんど影響がなかった.しかし一方で,「好ましさ」と「打ち解け感」,「控えめさ」の間に強い相関が見られたことから,呼びかけ語は「打ち解け感」,「控えめさ」を通じてエージェントへの「好ましさ」を変化させる可能性があると考えられる.本結果は,呼びかけ語の丁寧さを適切に選択して使用することによって,ユーザと音声エージェント間の愛着形成が促進される可能性を示唆する.
著者
渡邊 崇人
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

白色腐朽菌 Ceriporiopsis subvermispora は,セルロースを極力壊さずにリグニンを選択的に分解する.その選択的リグニン分解機構を解明する一環として,今回は,リグニン分解フラグメントの1つであるバニリンに対する細胞応答を調べた.蛍光ディファレンスゲル二次元電気泳動を行い,バニリン存在下と非存在下での発現プロファイルを取得した結果,バニリンで発現が誘導される,または,抑制されるタンパク質が見つかった.また,サプレッションサブトラクティブハイブリダイゼーションによりバニリンで誘導される遺伝子を数多く取得した.
著者
藤本 純子 諸岡 晴美 渡邊 敬子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.366-373, 2015

<p>歴史的に重要な衣服の効率的な複製制作をテーマとし,多量のいせこみを施したケープカラー部分のシルエットと,いせこみ分量および布の力学的特性との関係を検討した.シルエットは,三次元計測装置により採取し,体積<i>V</i>を特徴量として解析した.<br>その結果,いせこみ分量が多いほど,布の種類により<i>V</i>が大きく異なることがわかった.また,<i>V</i>の要因を検討したところ,布のみかけ密度の影響が大きいこと,測定長が長くなるほど,せん断特性および曲げ特性との相関が大きくなることがわかった.そこで,オリジナルドレスを効率よく複製するために,<i>V</i>を目的変数とし,みかけ密度,せん断剛性に加え,測定長およびいせこみ率を説明変数として,重回帰分析を行った.導出された重回帰式から,オリジナルドレスと同様のシルエットを創出するために必要ないせこみ率を精度よく推測し得ることがわかった.</p>
著者
松原 孝典 安永 秀計 浦川 宏 綿岡 勲 八木 謙一 積 智奈美 岡田 魁人 櫻井 千寛 渡邊 克樹 伊勢 直香 井上 ひなた 佐藤 明日香
出版者
産業技術短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

染毛(ヘアカラーリング)において、皮膚のかぶれなどの人体負荷や合成染料を利用することによる地球環境への負荷を低減するため、天然由来材料を用いた染毛の研究を行った。天然由来材料を化学修飾(酸化)することによる染料の合成とその染色特性、化学反応を染色プロセスに活用する染色性向上の方策、実用化を目指した研究などに取り組んだ。さらに、酸化された天然由来材料に機能性(抗酸化性・紫外線保護性)があるため、毛髪の紫外線に対する保護機能についても評価した。本研究成果により、将来染毛による疾病になる人が減ることや、持続可能な開発へ貢献することを期待する。
著者
久塚 智明 小川 宣子 渡邊 乾二
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.312-316, 1999-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
6

Samples of savory cup custard obtained from the food service industry were analyzed for the concentration of egg solution by the amount of protein, for the ratio of egg yolk solution by the total amount of phophorous, and for the quantity of dried bonito by the amount of histidine.The concentration of egg solution in the samples of savory cup custard prepared by the food service industry varied from 21.9% to 33.2%. The ratio of egg yolk to egg solution and the bonito concentration in the samples from special shops were larger than in those from general shops.The sensory evaluation result showed that the savory cup custard with an egg solution concentration of 25%, a breaking strength of 3734±267 Pa and a storage modulus of 135±18 Pa was most favored by the panelists.The ratio of egg yolk to egg solution corresponded to the breaking strength. It is clear that both the 30∼40% and 65∼80% ratio of egg yolk to whole egg contributed to the firmness of a good savory cup custard. It is suggested that the addition of egg yolk to whole egg is the best method for preparing savory cup custard. The samples prepared at the ratio of 65∼80% egg yolk to whole egg did not have a smooth texture and strong egg yolk flavor which is not a desirable feature in a good-quality savory cup custard.
著者
吉田 豊 半澤 惠 桑山 岳人 祐森 誠司 池田 周平 佐藤 光夫 門司 恭典 渡邊 忠男 近江 弘明 栗原 良雄 百目鬼 郁男 伊藤 澄麿 Luis K. MAEZONO Enrique Flores MARIAZZA Gustavo A. Gutierrez REYNOSO Jorge A. Gamarra BOJORQUES 渡邉 誠喜 Yutaka Yoshida Hanzawa Kei Kuwayama Takehito Sukemori Seizi Ikeda Shuhei Sato Mitsuo Monji Yasunori Watanabe Tadao Ohmi Hiroaki Kurihara Yoshio Domeki Ikuo Ito Sumimaro Maezono K. Luis Mariazza Flores Enrique Reynoso Gustavo A. Gutierrez Bojorques Jorge A. Gamarra Watanabe Seiki
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.62-69,

ペルーおよび日本国内で採取したラマ47頭,アルパカ27頭および両者の交雑種1頭とそのアルパカへの戻し交雑種1頭の計76頭の血液を用いて,19座位の血液タンパク質・酵素型を電気泳動学的に解析し,以下に示す成績を得た。1)血漿タンパク質 : Albumin, Haptoglobin,血漿酵素 : Alanine aminotransferase, Aspartate aminotransferase, γ-Glutamyltranspeptidase,赤血球タンパク質 : Haemoglobin,ならびに赤血球酵素 : Acid phosphatase, Catarase, Glucose-6-phosphate dehydrogenase, Phosphoglucomutase, Phosphohexose isomeraseの計11座位では多型は認められなかった。2)血漿タンパク質4座位 : Post-albumin(Po),Gc-protein(Gc),Transferrin(Tf)およびγ-globurin field protein(γG),血漿酵素3座位 : Amylase(Amy),Creatine kinase(CK)およびLeucine aminopeptidase(LAP),ならびに赤血球酵素1座位 : EsteraseD(EsD)の計8座位に多型が認められた。これら8座位のうちTfでは6型,PoおよびGcでは4型,γ-G, AmyおよびEsDでは3型,LAPおよびCKでは2型が認められた。ラマおよびアルパカにおけるこれら8座位の総合的な父権否定率は,0.931および0.867であった。3)ラマとアルパカとの間で血液タンパク質・酵素型を比較したところ,Gc, AmyおよびEsDにおいて種間差が認められた。すなわち,GcおよびAmyでは両種で共通な易動度を示すバンド以外に各々種特有の易動度を示すバンドが存在し,またEsDでは両種間でバンドの易動度が異なっていた。4)ラマとアルパカの交雑種,ならびにアルパカへの戻し交雑種の血液タンパク質・酵素型はラマあるいはアルパカと共通であった。5)CKおよびEsDを除く,17座位の遺伝子頻度に基づいて算出したラマとアルパカとの間の遺伝的距離は0.035であった。以上の成績から,血液タンパク質・酵素型の解析はラマおよびアルパカの集団の遺伝子構成を推定する上で有力な指標となることが明確となった。一方,ラマとアルパカが遺伝的に極めて近縁な関係にあることを裏付けるものと判断された。Blood samples of llamas and alpacas were classified by using electrophoretic procedures in the polymorphism at 19 loci. Electrophoretic variation was found for 8 loci, namely plasma proteins : post albumin (Po), Gc protein (Gc) and transferrin (Tf) and γ-globurin zone protein (γG), for plasma enzymes : amylase (Amy), creatine kinase (CK) and leucine aminopeptidase (LAP), and for red cell enzyme : esteraseD (EsD). Synthetic probabilityes of paternity exclusion about the 8 loci for llamas and alpacas were 0.931 and 0.867, respectively. No variants were found for plasma proteins : albumin and haptoglobin, for plasma enzymes : alanine aminotransferase, aspartate aminotransferase and γ-glutamyltranspeptidase, for red cell haemoglobin, and for red cell enzymes : acid phosphatase, catarase, glucose-6-phosphate dehydrogenase, phosphoglucomutase and phosphohexose isomerase. Nei's genetic distance between llamas and alpacas on the 17 loci (except CK and EsD) was 0.035. Preliminary estimate of the genetic distance measure may suggest that llamas and alpacas are more likely related as subspecies than as separate species.
著者
渡邊 祥子 菊池 和也 内田 成男 宮下 正好
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.26, pp.122, 2010

【はじめに】GPA(Grade Point Average)制度を導入している日本の大学では,GPAが2.0未満であると指導強化や留年,退学勧告がなされる.本校理学療法学科においてもGPAが,進級や卒業判定の参考資料になるのではと考え試験的に導入している.今回2年終了時の通算GPAと,臨床実習や3年次定期試験との関連性について若干の知見を得たので報告する.<BR>【対象】本校の平成21年度卒業生(3期生)49名中,在籍期間3年で卒業し紙面にて本調査への理解と同意を得られた31名(男性21名,女性10名)を対象とした.卒業時の平均年齢は23.4±4.7歳であった.<BR>【方法】3年次の臨床実習にて複数回の実習地訪問が必要だった学生及び最終評定(本校算定基準に基づき学校側で評定)がCであった学生(以下実習群)と,そうでなかった学生(以下実習可群).卒業判定の基準となる最終学年次定期試験が1科目でも6割を満たさなかった学生(以下試験群)と,そうでなかった学生(以下試験可群)に分けた.GPAは成績評定のAを4,Bを3,Cを2,再試験にて合格したCを1として算出した.また2年次までの成績を基礎分野(心理学など),専門基礎分野(解剖学など),専門分野講義(評価学など),専門分野実習(評価学実習など)の4分野に分けて算出した.3年次の状況,科目分野を二次元配置分散分析と多重比較を用いて、有意水準5%にて検討した.<BR>【結果】3年次定期試験は状況の主効果,科目分野の主効果ともに有意な差が認められたが、交互作用は認められなかった.臨床実習では2つの主効果および交互作用すべて有意差が認められなかった.2年通算GPAは試験群2.52±0.26,試験可群3.09±0.43,実習群2.63±0.24,実習可群3.04±0.47であった.<BR>【考察】3年次定期試験はGPAが関係しているが,臨床実習はGPAだけではなく他の要因も関係すると思われる.しかしながら3年次問題なく遂行できるためには,それまでのGPA3.0以上が目安になるのではないかと考える.今後は対象者を増やし,GPAと臨床実習,最終試験との相関性を調査したい.
著者
渡邊 紀文 木浦 豊治 有村 勇紀 糸田 孝太 大森 隆司
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第34回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.27-30, 2018 (Released:2019-01-09)

近年アクションカムや加速度センサなど個人の行動を計測するデバイスを利用したスポーツ等の集団行動の研究が行われている.これらの計測では選手が出力する行動を主に分析しているが,集団行動においてはそれ以前に自己と他者が相互の行動を確認し,その意図の推定および目的を共有して,次の行動を判断している.本研究ではこのような集団における自己と他者の意図の共有について頭部の動きから分析し,その過程をシミュレーションするためのモデル化を行う.実験対象はサッカーパス行動とし,選手の頭部の動きを飛行ドローンで計測する.本実験でのドローンによる選手頭部の計測精度および,ボールホルダーと他の選手が視線を向け合って意図を共有しているタイミングおよびパスを出すタイミングの分析結果について述べる.
著者
網岡 尚史 渡邊 敦之 大塚 寛昭 赤木 達 麻植 浩樹 中川 晃志 中村 一文 森田 宏 小谷 恭弘 新井 禎彦 笠原 真悟 佐野 俊二 伊藤 浩
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.49, no.SUPPL.1, pp.S1_110, 2017-08-28 (Released:2018-08-28)

症例は17歳男性.4年前より運動時に胸痛,失神を認め,症状は増悪傾向であった.他院にて電気生理学的検査まで含めた諸検査を施行するも原因不明であり当院に紹介,入院精査となった.入院時に施行したトレッドミル負荷試験にて心電図上,aVRにST上昇が出現,補充調律に移行,また著明な血圧低下,胸部絞扼感,前失神症状を呈した.冠動脈の器質的異常を疑い冠動脈CTおよびCAGを施行したところ左冠動脈は右冠尖起始であり,主幹部は大動脈と肺動脈に挟まれ圧迫,変形していた.失神の原因は左冠動脈圧排による虚血と診断し心臓血管外科に紹介,手術加療の方針となった.冠動脈起始異常は臨床上,しばしば認められる先天的異常であるが,若年者の突然死の原因ともなり得る.若年者における繰り返す失神の一因として冠動脈起始異常は考慮すべきと考えられ,啓蒙的に報告する.
著者
渡邊 寛
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.88.16210, (Released:2017-03-10)
参考文献数
23
被引用文献数
3

Recently, with gender equality advancing within society, men are increasingly being expected to undertake other, non-traditional, roles. The aim of this study was to develop the new male roles scale, and examine its reliability and validity. Study 1 showed that the new male roles scale consisted following four factors; Attentiveness to Women, Commitment to Household Responsibility, Consideration for Others, and Emancipation from Emotional Restriction and Toughness. In study 2, four items for each factor were chosen and goodness of fit of this scale was confirmed. Furthermore, the result revealed that this scale had certain validity. Study3 showed that this scale had time stability, except for Commitment to Household Responsibility. However, its internal reliability was confirmed in study 2. These results suggest that this scale has certain reliability and validity. Finally, the relationship between this scale and previous researches was discussed.
著者
米田 英嗣 市村 賢士郎 西山 慧 西口 美穂 渡邊 智也
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.3D2OS7b02, 2018 (Released:2018-07-30)

物語を読むことは、物語に記述された世界、登場人物が経験する出来事を疑似的に体験することであり、読者の脳の中で行われる現実世界のシミュレーションとも言える (米田, 2010; Mar & Oatley, 2008)。本研究では、小説を読むことによって社会的能力の向上がみられるかどうかを、教育介入前のプレテスト、介入直後のポストテスト、介入一ヵ月後のフォローアップテストを用いて検討した。小説読解トレーニングにおいて、ストレンジストーリー課題で心情理解の成績が向上したのに対し、アニメーション課題では、介入の効果が出なかったことから、近転移のみが見られることが明らかになった。社会的能力は、小説読解をトレーニングをしたときのみ向上することがわかった。本研究から、プレ・ポストデザインを用いた小説読解トレーニングによる社会的能力向上の長期的効果を明らかにした。
著者
中村 俊夫 緒方 良至 箕輪 はるか 佐藤 志彦 渡邊 隆広
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, 2014

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力福島第一原発事故により大量の放射性物質が環境中に放出された.大気粉塵,土壌,植物などの放射能分析から大気中に放出された核種とおおよその量が見積もられている.一方,地質学・考古学試料について約5万年までの高精度年代測定に利用されている放射性炭素(14C;半減期:5730年)の放出に関しては,その放出の形態や数量はきちんと確認されてはいない. 事故のあった福島第一原発付近への立入は制限されており,採取できる試料には限りがあるが,2012年に,福島第一原発から南に20~30km離れた広野町の海岸付近で海産物などを採取した.また,2011年秋には,福島第一原発から北西に約60km離れた福島大学金谷川キャンパスにおいて植物を採取し,それらの14C濃度を測定した.測定結果からは福島第一原発事故の影響は検出されなかった.
著者
渡邊 明義 津田 徹英 早川 泰弘 三浦 定俊 淺湫 毅 中村 康 佐野 千絵 斎藤 英俊
出版者
独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

彩色文化財の技法と材料について、日本とドイツの美術史研究者、伝統技術者、自然科学者が共同して研究調査を行った。研究期間中は互いの研究者が双方の国を毎年一回ずつ訪問し、あらかじめ選定しておいた現地で詳細な調査を行い、シンポジウムを開催し討議を行うなどして研究をすすめた。研究対象は、ドイツ側では主に南ドイツ(バイエルン地方)の中世彩色木造彫刻を取り上げたが、日本側では彫刻に限らず、絵画、工芸、建造物など広く関心を持って調査を行った。また彩色文化財そのものだけでなく、彩色に用いる顔料の製造工場や、金箔工房など、また各地の修復工房や作業現場でも調査研究を行い、彩色材料やその技法、修復技術への応用などについても相互の理解を深めるようにした。顔料分析については、ドイツにおいてはサンプリングによる試料の分析を積極的に行ったが、わが国の文化財については試料採取が困難なために、現場で試料を採取しないでそのまま顔料分析できるポータブル蛍光X線装置を開発した。この手法は対象作品表面からの測定になるため、彩色層に顔料を混合して用いているのか複数の顔料層か分析結果からだけでは判別できないが、実体顕微鏡を用いた観察と組み合わせることによって、確度の高い情報を得ることができた。本研究を通して、報告書に示すように多くの研究成果をあげることができた。一例としては、源氏物語絵巻物の顔料分析を初めて行い、白色顔料に従来想定されていた鉛を含む白色顔料(おそらく鉛白)だけでなく、カルシウムを含むもの(おそらく胡粉)、軽元素しか含まないもの(おそらく白土)、それにこれまで知られていなかった水銀を含む顔料の4種類を用いていることや、日本の彫刻彩色に緑色顔料として岩緑青以外に、砒素と銅を含むものや軽元素だけの顔料を用いていることを、初めて明らかにしたなどをあげることができる。
著者
渡邊 克巳
出版者
The Academic Association for Organizational Science
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.16-22, 2014-06-20 (Released:2014-10-03)
参考文献数
39

組織科学と脳科学は,人間の主観・客観両方の観点からの理解を必要としている点で共通している.本稿では,個人および組織の意思決定は,我々が主観的に感じているほど内的な理由に基づいているわけではなく,多くの部分が意識されない外部・状況・他者の存在によって強い影響を受けていることを示しながら,組織科学と脳科学の融合の方向性を探りたい.