著者
田中 健士郎 横山 裕之
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.683-686, 2019-05-31 (Released:2020-05-27)
参考文献数
14

高マグネシウム(以下,Mg)血症は,多くが腎機能障害患者へのMg含有製剤の過剰投与が原因とされている。今回,クエン酸Mg(マグコロールP®)服用後に高Mg血症と糞便性腸閉塞をきたした1例を経験したので報告する。症例は66歳女性。肛門痛と便秘症の精査で注腸検査予定となった。前処置としてクエン酸Mgを内服したところ,意識障害をきたし当院の救急外来へ搬送された。精査で高Mg血症および糞便性の腸閉塞を認め,緊急透析となった。翌日もMg値の再上昇,腸閉塞の悪化を認め,緊急S状結腸人工肛門造設術を施行した。術後,すみやかに血清Mg濃度は正常化した。腎機能障害を有さない患者でもクエン酸Mg製剤投与により重篤な高Mg血症を発症したとの報告がある。重度の高Mg血症は致死的な経過をたどることもあり,その投与に際しては十分な配慮と患者指導を行うとともに,発症時には迅速な対応が重要であると思われた。

1 0 0 0 OA 妊婦の生理学

著者
田中 宏和
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.533-537, 2018-07-15 (Released:2018-08-29)

妊娠時は週数に応じたさまざまな生理的変化をきたす.血液学的な変化は顕著で,妊娠後期にピークとなる血液量の増加,凝固系の機能亢進と線溶系の抑制が起こる.血液量の増加に伴い心機能は亢進し,循環血液量の増加によって腎機能も亢進する.また呼吸機能は子宮の増大に伴い横隔膜の運動は制限されるが,横隔膜挙上による機能的残気量の減少によって亢進し,酸・塩基平衡にも影響を与える.妊娠による内分泌環境の変化による糖や脂質代謝の変化も特異的である.さらに増大した子宮と内分泌環境の変化は,消化器系,尿路系,骨格系にも影響を及ぼす.それぞれが,妊娠に適応し分娩に対応できるように,合目的的な変化となっている.
著者
出村 嘉史 川崎 雅史 田中 尚人
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.387-394, 2001-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

本研究では、絵図や文献などの歴史的資料の分析やヒアリング調査、現地の観察をもとに、近世円山界隈に存在した時宗寺院の空間構成を明らかにした。急傾斜である長楽寺では幾つかの平場を立体的に組み合わせて構成され、平場間の起伏が豊かな場所に庭園を造った。次に傾斜の大きい安養寺では、敷地内に起伏を持つ塔頭が立体的に組み合わせられ、建築と庭の多様な位置関係が視線の多様性を産み出した。そして緩傾斜の双林寺では平面上に並んだ塔頭で構成され、立体的な空間構成を造る為に築山や借景が用いられた。このように豊かにつくられた空間では、後に席貸が行われ、飲食、宴席が積極的に行われ文化的交流の場として利用された。
著者
福元 伸也 Rehman Anis Ur 森東 淳 大塚 作一 三部 靖夫 田中 宏征 武田 光平 野村 雄司
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.842-850, 2011-09-25
参考文献数
18

広告の意匠性と2次元デジタルコード(以下,コードと略す)を用いた情報伝達の容易性とを両立させることを目的として,コード撮影のために行う利用者の接近行動を距離センサにより検出することにより,コードを適応的に拡大表示する手法を提案する.まず,基礎実験として,実験1では,コードの拡大率とズーム時間の変化に対する利用者の印象変化を調査した.その結果,利用者が移動中の状態から一辺20cm程度の取得容易なコードサイズにズームアップした状態で停止する場合を想定すると,ズーム時間を1秒前後に設定すればよいことが明らかとなった.次に,実験2では,距離センサによるフィードバックを行ったプロトタイプを使用し,QRコード利用の未経験者4名を含む被験者14名による評価実験を行った.従来手法と提案手法との比較を行った結果,(1) 提案手法では平均情報取得時間が約1.8秒短縮される,(2) 提案手法では約1.5倍遠い位置での取得が可能となる,(3) 全被験者の86%(QRコード利用の経験者では100%)が提案手法を好む,という結果が得られ,本手法の有効性が確認された.
著者
井上 莞志 田中 健太 田中 貴宏 松尾 薫 横山 真
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.931-938, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

近年、地球温暖化と都市ヒートアイランド現象による都市高温化が進んでおり、特に多くの人が利用する都心部においては、快適な屋外空間を形成するために、熱環境改善策を積極的に取り入れた都市環境デザインが求められる。またこのような取り組みを効果的に進めていくためには、都市内における熱環境改善策導入が優先度の高いエリアの抽出が必要である。そのため、広域の気温分布形成要因の分析から中心市街地周辺の気候的特徴(特に海風効果と河川効果)を把握し、さらに中心市街地の熱環境の詳細な現状把握とその形成要因分析を行った上で、中心市街地における熱環境改善策導入推進エリアを抽出することを目的とした。その結果、都心部の昼間の気温分布は河川距離、周辺緑量、周辺建物密度に影響を受けており、その中でも陸風が止み、かつ海風が十分に発達する前の時間帯で地表面被覆の影響が相対的に強くなる。これらの気温形成要因と猛暑日の定義から熱環境改善策導入推進エリアの抽出し、建物密度を減らしつつ、緑化を推進することが効果的であることを示唆した。
著者
高橋 淳根 田中 清明 鈴木 裕之
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.611-615, 2009-06

1次発酵乾燥粉末30〜40%に対して副資材は木質破砕物を60〜70%混合し、DB菌を添加した2次発酵肥料の品質を調査したところ、下記のような結果を得た。(1)魚臭ほとんどなくなり、低水分で清潔感が増し使用しやすい。(2)適度の肥料分と微量要素がバランスよく含有している。(3)肥料中にDB菌1g中10(4)個が含有し、ほ場へ移植されるため、根張り、作物生育促進、病虫害防除および連作障害を予防する。(4)DB菌・土壌改善により地力が高まり、作物の品質向上および収穫量が増加する。(5)作物の長期保存による品質低下を防ぐ。(6)人畜無害である。
著者
田中 多佳子 梅田 英春 金子 敦子 沖花 彰 尾高 暁子 田中 健次 塚原 康子 筒井 はる香 寺田 吉孝 横井 雅子 岡田 恵美
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

楽器というモノに込められたわざ学、すなわち意匠と具体的変容の過程に着目してさまざまな角度から観察・分析することによって、今まさに音楽に生じつつある西洋対非西洋および伝統文化と現代化のせめぎあいと伝播と変容の具体的諸現象を確認し、可能な限り資料化し公開した。主な研究成果としては、(1)日本の大正琴とその異形たるアジアの楽器群に関する研究、(2)インドのリードオルガンとその異形に関する研究、(3)ヨーロッパの楽器学と楽器制作の現状に関する研究、(4)19世紀末のインド楽器をめぐる東西交流史に関する研究があげられる。
著者
土田 夏佳 宮崎 徹 田中 泰章 吉川 俊治 稲垣 裕 蜂谷 仁 平尾 見三 宮城 直人 荒井 裕国 磯部 光章
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.477-481, 2011 (Released:2012-10-03)
参考文献数
12
被引用文献数
1

症例は37歳, 女性. 38℃台の発熱, 頸部痛, 両肩痛, 背部痛が出現し, 精査にて炎症反応高値(CRP 8.5mg/dL), 胸腹部CTにて径38mmの上行大動脈瘤を認めた. PET-CTにて動脈瘤への集積を認め, 高安動脈炎と診断された. プレドニゾロン(prednisolone; PSL) 30mg/日より治療開始し, 免疫抑制薬を併用するも約1年間で上行大動脈瘤は径48mmに拡大した. 早期手術のため, インフリキシマブ(infliximab; IFX)を導入したところ, 速やかな炎症反応の陰性化が得られた. IFX投与後14日目に大動脈瘤切除術を施行, 術後経過良好であった. 引き続き外来にてIFX投与継続し, 病勢の再燃を認めずコントロール良好であった. 生物学的製剤投与下に外科的治療が奏功した高安動脈炎の1例を経験したので報告する.
著者
田中 健路 伊藤 大樹 昌子 舜
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_187-I_192, 2016 (Released:2016-11-15)
参考文献数
9
被引用文献数
2

東シナ海上で発生する気象津波の伝播・増幅過程について,Princeton Ocean Model (POM)を基本モデルとした多重ネスト型数値モデルを構築して解析を行った.気圧波が東シナ海上を東進する際に,沖縄トラフ通過時の海洋長波の位相速度の急増に伴い,正の気圧偏差前面に形成された第1波の押し波が気圧波よりも30~60分早く九州西岸に到達することが示された.気圧波が長崎湾に到達する際に,25分から30分 の周期帯の成分が増幅し,第3波で全振幅2m以上の副振動が発生することが示された.連続した小規模な気圧波群が九州西岸を通過する場合,個々の気圧波のスケールが小規模であっても,数10波連続すると九州西岸の広範囲において気象津波の到達による副振動が生じ,湾の固有振動周期の振動が長時間残存することが示された.
著者
田中 伊知郎
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.21, pp.17, 2005

ニホンザルは毛づくろい中にシラミ卵をつまみ上げて食べる。その行動の形成過程B過程を調べるため、毛づくろい中におけるつまみ上げる行動について、餌付け群である志賀A-1群で横断的調査を行った。デジタルビデオカメラを用いて毛づくろい行動を撮影L録し、DVD-Rに落として、DVDプレイヤーで静止tスローを使ってつまみ上げ行動を解析した。コドモではつまみ上げた後、つまみ上げをやめ、別のところを探索することが多かったが、年齢が上昇するにつれてつまみ上げたものを食べる割合が上昇した。このつまみ上げた後でつまみ上げたものを食べる割合は年齢と相関した(Kendall順位相関、P< 0.01)。また同じ年齢群内での食べる割合の分散も年齢が上昇するにつれて、小さくなった。一方、性別による違いは見られなかった。言い換えると、コドモではよく見られるシラミ卵処理以外のつまみ上げるs動が、オトナになると毛づくろいの中で起こらなくなっていく。まとめると、毛づくろい中のつまむ行動は、大人になるにつれて、シラミ卵処理行動に収れんする。食べる割合は、子供期に個体間分散が大きく、成長するにつれて個体間分散が小さくなることから、摘み上げるものがシラミ卵になるようにニホンザルが学習獲得していくのでないかと示唆された。
著者
上杉 忠孝 田中 恵信
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.23-36, 2008-01-31
被引用文献数
2

2000年7月4日,東京都心を中心に東京大手町で時間雨量82.5mm,新木場で104.0mmという短時間強雨(1時間雨量が警報基準を超えているため短時間強雨とした)があった.この強雨のプロセスを羽田,成田両空港のドップラー気象レーダーのデータと,アメダス,東京都の大気汚染常時監視測定局等のデータを使用して解析した.短時間強雨発生のプロセスは次のように考えられる.まず鹿島灘・九十九里浜方面からと相模湾・東京湾方面からの2つの海風とが収束して降水エコーが発生・発達した.この降水エコーが東京都・神奈川県境付近で発生した降水エコーとマージを2回起こし,新木場付近で強雨をもたらした.さらに大手町付近における18時30分の強雨は,中部山岳で発生し,南東進したメソβスケールの降水系が衰弱しエコー強度が30dBZ以下になって生じた外出流が,新木場付近に強雨を起こした降水セルからの外出流と収束して,降水セルを強化したことによって起きたことがわかった.
著者
田中 伸一 大嶋 光昭
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.33-38, 1997
参考文献数
2

DVDのROM型ディスクに1枚毎に異なる情報を追記する方式を開発した。CW-Qスイッチ型のYAGレーザのパルスレーザー光を照射して金属反射膜を除去し、約10μm幅のストライプをピットに重ねて形成する。一定幅のストライプの間隔を変調して、188バイトの情報が記録される。この記録方式はBCA(Burst Cutting Area)としてDVD規格に採用された。光ヘッドでBCA部分を再生すると、形成したストライプに対応して、信号レべルがゼロ近くに低下する。高周波のピット信号を簡単なローパスフィルタで除去し、CPUを用いてソフトウェアで簡単に復調・復号してBCAデータが読み取られる。
著者
光野 雄三 庵 政志 田中 幹雄 加藤 善久 伊佐山 浩通 山田 尚士 皆川 信幸 日吉 徹 関谷 裕之 中田 良 吉次 通泰
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:03899403)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.164-165, 1995

We report here our experience of patient treated initially with famotidine and subsequently with proton pump inhibitor omeprazole. Protein levels rose to normal range after 4 months and remained within normal limits, but upper endoscopy still showed enlarged gastric folds after 5 months. Conservative therapy with PPI and H<sub>2</sub>-RA must be tried prior to surgery.