著者
江木 啓訓 石橋 啓一郎 重野 寛 村井 純 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.202-211, 2004-01-15
参考文献数
23
被引用文献数
8

本研究は,対面同期会議の参加者が内容の理解や発想,意識共有の質的向上を実現するために,議論への参加を促す手法について検討する.従来の議論の場面では発言する機会を得にくい参加者に着目し,発言とは違う形で貢献をしたり,議論のグループ全体の状況を把握しやすくしたりするために,協同記録作成を導入した議論の手法を提案する.議論の内容に関する記録編集を行うことを通じて,参加者が傍観することなく主体的に参加できることを狙いとする.パーソナルコンピュータを持ち寄った対面での議論の環境を対象とし,提案手法を実現するために必要な協同記録作成ツールを設計・実装した.議論に導入した結果,議論と記録の作成を並行するための認知的な負荷が増すという点が明らかになった.また,記録作成ツールを設計する際に,対面同期環境における参加支援の観点から必要なアウェアネス機能を整理し検討を加えた.The object of this research is to enable participants of a discussion to be able to improve the level of understanding, ideas, and shared consensus in a discussion. Toward this end, software which allows editing by multiple users at once was introduced during face-to-face discussion, creating an environment where participants of the discussion can also participate in the editing of the discussion minutes. As a result it became apparent to be a heavy load that assigning discussing and editing minutes to users at once. Furthermore, awareness functions required to encourage discussion contribution are investigated.
著者
黒木 祐吾 岡本 喜之 石橋 真乃介 川田 賢介 石川 好美
出版者
日本歯科薬物療法学会
雑誌
歯科薬物療法 (ISSN:02881012)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.9-15, 2015-04-01 (Released:2015-06-01)
参考文献数
15

Hunter glossitis is a relatively rare disease caused by vitaminB12 deficiency. We clinically studied six cases of Hunter glossitis caused by vitamin B12 deficiency. All cases complained tongue pain and dysgeusia, and they showed atrophy of lingual papillae and vitamin B12 deficiency in blood examination. Macrocytic anemia was found out in five cases but one case was not anemia. Two cases were under treatment of chronic gastritis and three cases were total gastric resection in past. Untreated atrophic gastritis was found out in one case by upper gastrointestinal endoscopy. We treated all cases by oral administered vitamin B12 therapy 1500 µg/day. After this therapy, red smooth tongue, oral pain, dysgeusia and level of vitamin B12 in blood were improved in all cases. It is popular that the treatment of vitamin B12 deficiency is based on parenteral vitamin B12 administered intramuscular injection. But recently, a few reports documented positive results following oral vitamin B12 therapy. As the result of these cases, oral administered vitamin B12 therapy was effective to Hunter glossitis.
著者
三木 文雄 生野 善康 INOUE Eiji 村田 哲人 谷澤 伸一 坂元 一夫 田原 旭 斎藤 玲 富沢 磨須美 平賀 洋明 菊地 弘毅 山本 朝子 武部 和夫 中村 光男 宮沢 正 田村 豊一 遠藤 勝美 米田 政志 井戸 康夫 上原 修 岡本 勝博 相楽 衛男 滝島 任 井田 士朗 今野 淳 大泉 耕太郎 青沼 清一 渡辺 彰 佐藤 和男 林 泉 勝 正孝 奥井 津二 河合 美枝子 福井 俊夫 荒川 正昭 和田 光一 森本 隆夫 蒲沢 知子 武田 元 関根 理 薄田 芳丸 青木 信樹 宮原 正 斎藤 篤 嶋田 甚五郎 柴 孝也 池本 秀雄 渡辺 一功 小林 宏行 高村 研二 吉田 雅彦 真下 啓明 山根 至二 富 俊明 可部 順三郎 石橋 弘義 工藤 宏一郎 太田 健 谷本 普一 中谷 龍王 吉村 邦彦 中森 祥隆 蝶名林 直彦 中田 紘一郎 渡辺 健太郎 小山 優 飯島 福生 稲松 孝思 浦山 京子 東 冬彦 船津 雄三 藤森 一平 小林 芳夫 安達 正則 深谷 一太 大久保 隆男 伊藤 章 松本 裕 鈴木 淳一 吉池 保博 綿貫 裕司 小田切 繁樹 千場 純 鈴木 周雄 室橋 光宇 福田 勉 木内 充世 芦刈 靖彦 下方 薫 吉井 才司 高納 修 酒井 秀造 西脇 敬祐 竹浦 茂樹 岸本 広次 佐竹 辰夫 高木 健三 山木 健市 笹本 基秀 佐々木 智康 武内 俊彦 加藤 政仁 加藤 錠一 伊藤 剛 山本 俊幸 鈴木 幹三 山本 和英 足立 暁 大山 馨 鈴木 国功 大谷 信夫 早瀬 満 久世 文幸 辻野 弘之 稲葉 宣雄 池田 宣昭 松原 恒雄 牛田 伸一 網谷 良一 中西 通泰 大久保 滉 上田 良弘 成田 亘啓 澤木 政好 三笠 桂一 安永 幸二郎 米津 精文 飯田 夕 榊原 嘉彦 螺良 英郎 濱田 朝夫 福山 興一 福岡 正博 伊藤 正己 平尾 文男 小松 孝 前川 暢夫 西山 秀樹 鈴木 雄二郎 堀川 禎夫 田村 正和 副島 林造 二木 芳人 安達 倫文 中川 義久 角 優 栗村 統 佐々木 英夫 福原 弘文 森本 忠雄 澤江 義郎 岡田 薫 熊谷 幸雄 重松 信昭 相沢 久道 瀧井 昌英 大堂 孝文 品川 知明 原 耕平 斎藤 厚 広田 正毅 山口 恵三 河野 茂 古賀 宏延 渡辺 講一 藤田 紀代 植田 保子 河野 浩太 松本 慶蔵 永武 毅 力富 直人 那須 勝 後藤 純 後藤 陽一郎 重野 秀昭 田代 隆良
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.914-943, 1987
被引用文献数
2

Clavulanic acid (以下CVAと略す) とticarcillin (以下TIPCと略す) の1: 15の配合剤, BRL28500 (以下BRLと略す) の呼吸器感染症に対する有効性と安全性をpiperacillin (以下PIPCと略す) を対照薬剤として, welI-controlled studyひこより比較検討した.<BR>感染症状明確な15歳以上の慢性呼吸器感染症 (慢性気管支炎, びまん性汎細気管支炎, 感染を伴った気管支拡張症・肺気腫・肺線維症・気管支喘息など) およびその急性増悪, 細菌性肺炎, 肺化膿症を対象とし, BRLは1回1.6g (TIPC1.5g+CVA0.1g) 宛, PIPCは1回2.0g宛, いずれも1日2回, 原則として14日間点滴静注により投与し, 臨床効果, 症状改善度, 細菌学的効果, 副作用・臨床検査値異常化の有無, 有用性について両薬剤投与群間で比較を行い, 以下の成績を得た.<BR>1. 薬剤投与314例 (BRL投与161例, PIPC投与153例) 中, 45例を除外した269例 (BRL投与138例, PIPC投与131例) について有効性の解析を行い, 副作用は293例 (BRL投与148例, PIPC投与145例) について, 臨床検査値異常化は286例 (BRL投与141例, PIPC投与145例) について解析を実施した.<BR>2. 小委員会判定による臨床効果は, 全症例ではBRL投与群78.8%, PIPC投与群79.4%, 肺炎・肺化膿症症例ではBRL投与群 (79例) 82.1%, PIPC投与群 (73例) 79.5%, 慢性気道感染症症例ではBRL投与群 (59例) 74.6%, PIPC投与群 (58例) 79.3%の有効率で, いずれも両薬剤投与群間に有意差を認めなかった.<BR>3. 症状改善度は, 肺炎・肺化膿症症例では赤沈値の14日後の改善度に関してPIPC投与群よりBRL投与群がすぐれ, 慢性気道感染症症例では胸部ラ音, 白血球数, CRPの3日後の改善度に関してBRL投与群よりPIPC投与群がすぐれ, それぞれ両薬剤投与群間に有意差が認められた.<BR>4. 細菌学的効果はBRL投与群68例, PIPC投与群57例について検討を実施し, 全体の除菌率はBRL投与群75.0%, PIPC投与群71.9%と両薬剤投与群間に有意差は認められないが, Klebsiella spp. 感染症においては, BRL投与群の除菌率87.5%, PIPC投与群の除菌率16.7%と両薬剤群間に有意差が認められた. また, 起炎菌のPIPCに対する感受性をMIC50μg/ml以上と50μg/ml未満に層別すると, MIC50μg/ml未満の感性菌感染例ではBRL投与群の除菌率69.6%に対してPIPC投与群の除菌率94.7%とPIPCがすぐれる傾向がみられ, 一方, MIC50μg/ml以上の耐性菌感染例ではPIPC投与群の除菌率12.5%に対して, BRL投与群の除菌率は66.7%と高く, 両薬剤間に有意差が認められた.<BR>5. 副作用解析対象293例中, 何らかの自他覚的副作用の出現例はBRL投与群5例, PIPC投与群11例で, 両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>6. 臨床検査値異常化解析対象286例中, 何らかの異常化が認められた症例は, BRL投与141例中45例 (31.9%), PIPC投与145例中28例 (19.3%) で, 両薬剤投与群間に有意差が認められた. 臨床検査項目別にみると, GPT上昇がBRL投与140例中26例 (18.6%), PIPC投与140例中14例 (10.0%), BUN上昇がBRL投与128例中0, PIPC投与127例中4例 (3.1%) と, それぞれ両薬剤投与群間での異常化率の差に有意傾向が認められた.<BR>7. 有効性と安全性を勘案して判定した有用性は, 全症例ではBRL投与群の有用率 (極めて有用+有用) 76.3%, PIPC投与群の有用率の74.8%, 肺炎・肺化膿症症例における有用率はBRL投与群81.0%, PIPC投与群75.3%, 慢性気道感染症症例における有用率はBRL投与群70.0%, PIPC投与群74.1%と, いずれも両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>以上の成績より, BRL1日3.2gの投与はPIPC1日4gの投与と略同等の呼吸器感染症に対する有効性と安全性を示し, とくにβ-lactamase産生菌感染症に対しても有効性を示すことが確認され, BRLが呼吸器感染症の治療上有用性の高い薬剤であると考えられた.
著者
石橋 忠良 古谷 時春 浜崎 直行 鈴木 博人
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.711, pp.125-134, 2002-08-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
6
被引用文献数
3 8

昨今, コンクリート構造物からのコンクリート片の剥落が社会問題となっている.本文では, コンクリート片の剥落が生じた鉄道高架橋, 架道橋, およびこ線橋 (以下, 高架橋等とする) のかぶり, コンクリートの中性化深さ, 鉄筋腐食度などを調査し, 高架橋等からのコンクリート片の剥落要因を検討した. その結果, かぶり, 中性化残り, および雨水, 漏水の影響が, コンクリート片の剥落および鉄筋腐食と関係の深いことがわかった.
著者
石橋 信義 近藤 栄造
出版者
The Japanese Nematological Society
雑誌
日本線虫研究会誌 (ISSN:03882357)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.35-38, 1976-10-15 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

ネコブセンチュウ雄成虫の繁殖上の役割を明らかにするため, 単幼虫接種継代飼育で得られたMdoidogyne incognitaとM.haplaの2期幼虫1, 10, 20, 40, 60, 80,100,160頭をガラス管 (径7mm, 長さ10cm) 内のトマト幼苗に接種し, 施肥 (Hyponex 1,000倍液) または無施肥にして35日後に褐色卵嚢と雄成虫の出現率, 接種頭数あたり繁殖率等を調査した.褐色卵嚢と雄成虫は接種頭数の増加とともに増加した. 単幼虫接種区においても無施肥では.褐色卵嚢がごく低率ではあるが出現した.従って, 環境耐性が白色卵嚢よりも大であるとみられている褐色卵嚢の生成に, 雄成虫の関与は考えられない. 両線虫とも卵嚢着生率は10~20頭接種区が最も高かった.卵嚢内卵数は単幼虫接種区でやや少なく, 従って繁殖率 (卵嚢着生率×卵嚢内卵数) も10~20頭接種区で最大となった.M.incognitaは13世代まで, M.haplaは7世代まで単幼虫接種継代飼育を続けてきたが, 繁殖力が低下する傾向は認めていない.本実験では,雄成虫の役割について積極的に肯定すべきデータは何ら得られなかったが,完全に否定すべきものもまだ得ていないと思われる.
著者
池田 心 森 幹彦 上原 哲太郎 喜多 一 石橋 由子 石井 良和 竹尾 賢一 小澤 義明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.87, pp.49-54, 2008-09-12
参考文献数
3

京都大学情報環境機構では,PC 端末サービス・メールサービス・認証サービスを中心とする教育用コンピュータシステムの提供を行っている.利用者管理という視点から見たとき,本システムの特徴として,1)学生に加え教職員等全ての京大構成員を利用者として認めること,2)身分番号とは異なる ID を与え,身分が変わっても同じ ID やメールアドレスが使えること,3)利用開始に際し学生には講習会の受講を義務づけていること,が挙げられる.本稿では,この特徴に起因するさまざまな課題と,それにどう対処してきたかを報告する.Educational Computer System of Kyoto University mainly provides PC services, E-mail services and authentication services. From the viewpoint of user management, this system has 3 major characteristics, 1) it is available to all Kyoto University members, not only students but also staffs and faculties, 2) it provides an user-ID "a0xxxxxx" which differs from his student-ID or staff-ID, and he can use the same user-ID even if his position is changed, and 3) before user registration, students must attend a short lecture about computer literacy and security. In this paper, various issues arising from such characteristics and our solutions for them are described.
著者
田口 純 石橋 陽子 菅井 望 関 英幸 三浦 淳彦 藤田 淳 鈴木 潤一 鈴木 昭 深澤 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.1866-1873, 2010 (Released:2011-03-03)
参考文献数
17

症例は75歳女性.嚥下困難,食欲不振と唾液が常に流れてくる症状で近医を受診.上部消化管内視鏡検査で,逆流性食道炎と慢性胃炎の診断でプロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方されていた.しかし,症状の改善を認めず当科を受診.難治性かつ上部消化管内視鏡検査にて食道粘膜に非連続性に地図状のびらんが散在し,易粘膜剥離も認めたため食道天疱瘡を疑った.抗デスモグレイン(Dsg)3抗体価が23 Indexと陽性であり,蛍光抗体直接法にて食道の表皮細胞間にIgG,IgA,C3の沈着を認めた.皮膚,口腔粘膜病変はないものの,食道天疱瘡と診断しプレドニゾロン(PSL)30mg/日を開始したところ,2日後より自覚症状が著明に改善し,食事も摂取できるようになった.その後はPSLを漸減し,現在はPSL 5.5mg/日投与中で再発を認めていない.本症例は,皮膚,口腔粘膜病変がなく内視鏡検査で食道天疱瘡の診断となった1例であり,また併存した胃病変もPSLにて改善したことから,食道天疱瘡と何らかの関係がある可能性も示唆される.
著者
辻原 諒 小木曽 哲 佐野 貴司 石橋 秀巳
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

箱根火山は首都圏から最も近く,カルデラ形成噴火を数回繰り返してきた活動的な火山のひとつである.箱根火山における最大規模の噴火は,約6万年前に発生した,箱根火山における最新のカルデラである強羅潜在カルデラを形成した噴火(VEI 6)である.この噴火はプリニー式噴火で開始し,続いて火砕流が発生した.プリニー式噴火による降下軽石(箱根東京軽石)は南関東の広域でみられ,火砕流は噴出源から約50km遠方まで到達した(笠間・山下,2008).この噴火の準備過程を詳細に検討することは,同規模の噴火が今後も起こるリスクを評価する上で非常に重要である.そこで本研究では,降下軽石と火砕流堆積物中の本質物質を対象に噴火準備過程を検討した. 本研究で用いた試料は,神奈川県足柄下郡箱根町芦之湯の谷底露頭から採取した.本質岩片として軽石とスコリアがみられ,軽石にはマフィックエンクレーブを持つものがみられた.本研究ではXRF(国立科学博物館)を用いた全岩主成分・微量元素組成分析を行い,偏光顕微鏡とSEM(京大理学部)を用いた組織解析と,EPMA(京大理学部)を用いた主成分化学組成分析を行った. 軽石は流紋岩からデイサイト(SiO2 =64-71wt.%)で,斜長石,斜方輝石,単斜輝石,磁鉄鉱,チタン鉄鉱,燐灰石,橄欖石の斑晶が見られた.スコリアは安山岩(SiO2=58-60wt.%)で,斜長石,斜方輝石,単斜輝石,磁鉄鉱,燐灰石,橄欖石の斑晶がみられた.マフィックエンクレーブは玄武岩から玄武岩質安山岩で(SiO2 ~52 wt.%),斜長石,磁鉄鉱,橄欖石の斑晶がみられた.ガラスと斑晶鉱物の化学組成から,斑晶鉱物と平衡共存するメルト組成が4種類存在することが示唆され,この噴火の直前のマグマだまりには組成的に異なる4種類のマグマが存在したことが考えられる.全岩化学組成はSiO2 ~67 wt.%で組成トレンドが異なり,SiO2 > ~67 wt.%の全岩化学組成トレンドと斜長石斑晶の組成累帯構造パターンから,噴火前のマグマは結晶分化作用を経験しており,SiO2 < ~67 wt.%の全岩化学組成トレンドと斜長石と橄欖石斑晶の組成累帯構造パターンから,噴火前のマグマはマグマ混合を経験していることが示唆される.Fe-Ti酸化物温度計と斜長石-メルト温度含水量計を用いると,噴火前のデイサイト質〜流紋岩質マグマの温度は820-880 ℃,含水量は4.2-7.2wt.%と見積られ,メルトが水に飽和していると仮定した場合,噴火前のマグマだまり最浅部の深さは5.5-10.5 kmと見積られる.橄欖石のFe-Mg拡散モデリングにより,最後のマグマ混合から噴火までの時間は30日-1年と見積られた. 以上より,次のような噴火準備過程を考察した.結晶分化したデイサイト質〜流紋岩質マグマが深さ≧5.5-10.5kmに存在し,そこに苦鉄質マグマが貫入・混合した.最後のマグマ混合から30日から1年程度経過後に噴火が開始した. 当時のマグマだまり最浅部の深さは,地球物理学的に見積られている現在のマグマだまりの深さ(~10 km: Yukutake et al., 2015) と概ね一致する.このマグマだまりが,今後“箱根東京軽石噴火”と同規模の噴火を起こす可能性を正確に評価するためには,“箱根東京軽石噴火”以降の噴火準備過程の変遷を明らかにする必要がある.
著者
種田 凌也 石橋 秀巳 安田 敦 外西 奈津美
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

Plagioclase-melt compositional relations sensitively depend on temperature, T, and water content, XW, of melt. Therefore, the relations are formulated as functions of T and XW and used as geothermohygrometer (e.g., Putirka, 2008). Plagioclase-melt equilibrium is postulated for applying the thermohygrometer models. However, validity of the assumption is unobvious for microlite crystallization driven by degassing and/or cooling during eruption. Can we apply the thermohygrometers to the plagioclase-melt pairs formed by dynamic crystallization? To examine the issue, the cooling crystallization experiments of the high-Al basaltic melt were carried out and textural and chemical analyses were performed the run samples.We used the high-Al basalt lava from Waianae, Hawaii Oahu as the starting material for the cooling crystallization experiments. This experiment was conducted using the 1atm fO2-controlled furnace at University of Hawaii at Manoa. After 3 hours pre-heating at 1180℃, ~30K higher than the liquidus, the samples were cooled at cooling rates, Rc, of 0.1, 0.3, 1, 3, and 10K/min, and then quenched in water at four target temperatures, Tq, of 1150, 1120, 1090, and 1060℃. We used FE-EPMA (JEOL-JXA-8530FPlus) and EPMA (JEOL8800R) at Earthquake Research Institute, University of Tokyo, for textural and chemical analyses of the run samples.As Rc and/or Tq increase, the abundance and size of plagioclase crystals decrease. As Rc increases, the shape of plagioclase changes from euhedral to dendritic. The Rc-dependent shape change is more obvious at lower Tq. Pyroxene crystallization was suppressed in the run samples coolied at higher Rc. In addition, melt boundary layers are observed around pyroxene in the samples cooled at 0.3-1K/min, quenched at 1090℃ and cooled at 0.3-3K/min, quenched at 1060℃, and around plagioclase in the samples cooled at >3K/min, quenched at <1120℃. Lower diffusivity of Al2O3 compared to those of FeO and MgO is responsible for lower threshold cooling rate of melt boundary layer formation around pyroxene.The maximum An# [=100Ca/(Ca + Na)] of plagioclase was almost the same among all run samples. We applied both plagioclase liquidus and plagioclase-melt An-partitioning thermometers of Putirka (2008) to the pairs of plagioclase rim-boundary layer melt (BLM) and plagioclase rim-far field melt (FFM) to estimate temperatures recorded in their phase compositions. At Tq=1150℃, the estimated temperatures well represent Tq for both BLM and FFM. However, at lower Tq, both of the thermometers estimate temperatures higher than Tq; difference between estimated temperature and Tq, ΔT, increases as decreasing Tq. The two thermometers estimate similar temperatures for each sample, and the differences between the two estimated temperatures do not depend on Rc. These results suggest that the plagioclase-melt partition coefficient of An component does not depend on the Rc. Therefore, the increase of ΔT at lower Tq is not due to the Rc-dependence of the partition coefficient. It is attributed to the kinetic delay of the crystal growth at lower temperature. On the other hand, the coincidence between calculated temperatures and Tq at 1150℃ suggests that kinetic delay of plagioclase crystal growth is small at near liquidus temperature.Present results show that plagioclase-melt thermometers can be applied regardless of the Rc at higher temperatures, while magmatic temperature tends to be overestimated due to kinetic delay of crystal growth at lower temperature.
著者
石橋 正博 山田 傑 北村 尚男 真島 裕子 一色 賢司 伊藤 誉志男
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.93-96, 1996-03-29 (Released:2017-12-01)
参考文献数
6

縮合リン酸塩のピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸の1日摂取量をマーケットバスケット方式で調査した。加工食品約340品目を(1)調味嗜好飲料、(2)穀類、(3)イモ類・豆類・種実類、(4)魚介類・肉類、(5)油脂類・乳類、(6)佐藤類・菓子類、(7)果実類・野菜類・海草類の7群に分け、それぞれの群の縮合リン酸含有量を測定し、各群ことの喫食量をかけて摂取量とした。(1)縮合リン酸の1日摂取量は、15.8mgでピロリン酸が7.2mg、ポリリン酸が3.8mg、メタリン酸が5.0mgであった。(2)摂取量の多いのは、5群の6.0mgと4群の5.1mgで、主な摂取源は、5群のチーズと4群の魚介類・食肉類であった。特に、チーズの種類と喫食量は摂取量に大きく寄与することが分かった。(3)地区別の比較では、東部地区と西部地区がやや多かった。東部地区の5群が特に多かったのは、チーズの種類による影響と思われる。(4)昭和58年度、昭和62年度、平成3年度、平成6年度の調査結果より、縮合リン酸の摂取量は増加傾向にある。(5)世代別の摂取量の比較では、高齢者、学童が成人に比べ多くなった。4群は各世代に摂取量の違いはあまりなかったが、5群はチーズの種類の影響でかなりばらつきがあった。その他、学童の6群と7群も他の世代に比べやや摂取量が多かった。
著者
宮脇 隆志 石橋 聡 岸野 文郎
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.481-482, 1989-10-16

画像の持つ色彩情報をもとに、映像中から特定色の領域を抽出する手法について検討している。筆者らは文献[1]において、RGB各成分の輝度値で入力された画像をHVSモデルを用いて色相、明度、彩度成分に変換し、色相成分のヒストグラムに現われるピークと、予め設定しておいた参照データとを対比することで、人物の映像から肌色の色相である皮膚の領域だけを抽出する手法について報告した。参照データとは色彩の名称とその色相値の組合せである。今後、皮膚だけでなく様々な色彩の領域に対して本手法を適用するにおいて、同一色相として入力・判別可能な範囲等、表色系モデルの特性を調べておく必要がある。本報告では、知覚的な表色系であるHVSモデルについて、撮像系を経由した場合の特性について考察する。
著者
石橋 隼 村上 昌志 加藤 俊一
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.47-49, 2011
参考文献数
9

本論文では音同士を重ねることで聴者に心理的に影響を与えられるのか、その効果を探った。環境音など元々存在している音は、音自体を調整する事は難しい場合が多い。そして音が、聴者に対して心理的な負荷となっている場合がある。本研究では、マスキング効果にみられる騒音の低減のように、環境音にBGM等の別の音を重ねて流し心理的負荷を低減させられるのではないか仮定し、その原因となる特徴量の分析を実施した。
著者
許斐 剛志 江島 尚 石橋 圭太 安河内 朗
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.95-106, 2002-05-25
参考文献数
20
被引用文献数
1
著者
石橋 賢司 西垣 順二 兵頭 健一 田鍋 和仁 瀧本 俊太
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.23-26, 2004

単眼投映式のデジタルブラネタリウム「Super-MEDIAGLOBE」を開発した. 超高精細QXGA (2048×1536画素) プロジェクタを採用するとともに, ドーム上に精密に投映する160度魚眼レンズを開発した. また, 恒星や惑星などの天体を3Dモデルにて作製し, リアルタイムに宇宙空間飛行をシミュレートできる3Dプラネタリウム機能を搭載した. これにより, 単眼投映式というコンパクトでありながら, 高精細かっ, 臨場感の高いプラネタリウムを実現した.
著者
京 将司 中森 正治 石橋 修 黒川 一哉
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo‐to‐Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.401-409, 2014

火力発電用ボイラにおいては,長期安定運転が求められている.<br>近年,微粉炭燃焼ボイラにおいて,溝状腐食による伝熱管の減肉が顕在化している.溝状腐食は,バーナーゾーンやその近傍,熱負荷の高い部位に発生し,その発生原因は,H<sub>2</sub>,H<sub>2</sub>Sが混在する低O<sub>2</sub>雰囲気下で火炉側管表面に生じる繰り返し熱応力(スラグの付着脱落による局部的な管表面温度変化,デスラッガ作動中や運転中の管表面温度変化など)に起因する腐食生成物層のき裂発生等が原因であると考えられる.その対応策として,ボイラ伝熱管表面への溶射は有効である.本報では,Cr<sub>3</sub>C<sub>2</sub>-NiCr溶射皮膜を高速フレーム溶射(HVOF)と大気プラズマ溶射(APS)によって作製した.溶射皮膜の特性は,密着力,高温硬さ,摺動摩耗試験,高温エロージョン試験および高温腐食試験などによって評価した.評価結果を基に,実験室で石炭燃焼ボイラに適用するための溶射皮膜における評価方法を提案した.
著者
鐘ヶ江 秀彦 谷口 仁土 石橋 健一 大槻 知史 城月 雅大 熊澤 輝一 豊田 祐輔
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、人工環境ならびに社会環境に着目し、逆都市化におけるコンパクトシティの自然災害への脆弱性を補完し頑強性を保つための要件を検討した。その結果、災害発生時の地域経済の回復力(レジリエンス)は、地域からの人口移動が発生しないことに左右されることを明らかにし、人口移動に影響を与える社会関係資本に着目したレジエントなコンパクトシティ戦略について考察した。特に人工環境においては経済指標の時系列分析に基づく間接被害額の推定を行い、被害額と人口移動の関係性を明らかにした、社会環境ではレジリエントな都市を地域コミュニティから実現していくための方策を検討した。