著者
藤本 晃嗣 細井 昌子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.50-56, 2022 (Released:2022-01-01)
参考文献数
26

器質的疾患を指摘できない慢性疼痛において,近年その生物学的基盤が明らかになりつつある.特に注目を浴びているのが,神経炎症である.視神経脊髄炎スペクトラム障害などの脱髄疾患を中心として神経炎症との関連が明らかになるにつれ,病態に基づいた治療が実臨床に導入されつつある.慢性疼痛においても炎症メディエーターやミクログリアの関与が知られているが,近年グリア細胞の活性をin vivoで評価できる18kDa-translocator protein(TSPO)をリガンドとして用いたPET検査が行われるようになり,病態の解明が進んでいる.また,統合失調症や自閉症スペクトラム障害での関与が疑われているシナプス刈り込みも慢性疼痛の病態形成に関与している可能性がある.遺伝子ビッグデータを用いた研究においても,抑うつ,PTSDや自己免疫性疾患との関連が確認された.近い将来,慢性疼痛の生物学的基盤の理解がさらに進み,臨床的場面で有用なバイオマーカーの開発につながることを期待する.
著者
藤本 将志 伊藤 陸 小島 佑太 池田 幸司 鈴木 俊明
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.19-26, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
6

The authors use top-down evaluation to determine impairments and perform physical therapy regardless of musculoskeletal or central nervous system disorders. One of the abnormal postures in patients with musculoskeletal disorders is a hunched posture with trunk flexion. In addition to the influence of the trunk, hunched posture tends to become more prominent with the influence of the lower limbs, lifestyle, and aging,. In this paper, we explain how to weigh the relevance of the problems considering the effects of not only the trunk but also the lower limbs, when considering the problems of trunk flexion posture in musculoskeletal disorders. In addition, we also explain the main points for performing examinations and physical therapy for problems of the trunk, while presenting posture and motion analysis of cases and electromyogram data of healthy subjects.
著者
職域における喫煙対策研究会 大和 浩 姜 英 朝長 諒 藤本 俊樹 中川 恒夫 平野 公康
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.146-151, 2022-05-20 (Released:2022-05-25)
参考文献数
6

目的:改正健康増進法では,バスやタクシーなど旅客運送用車両での喫煙は禁止され,屋外や家庭,それ以外の車両等で喫煙する場合についても「望まない受動喫煙が発生しないように配慮すること」が求められている.しかし,一般企業の業務車両や自家用車で同乗者が居るにもかかわらず喫煙している状況が散見される.本研究では,車両の中で喫煙した場合の受動喫煙の実態を明らかにすることを目的とした.対象と方法:5人乗りの自動車内で運転者が紙巻きタバコを1本喫煙し,すべての窓を閉鎖した状態,一部の窓を開けた状態,すべての窓を開放した状態の計6パターンで,助手席と後部座席において喫煙により発生する微小粒子状物質(PM2.5)の濃度をデジタル粉じん計で測定した.なお,結果:すべての窓を閉鎖した状態では車内のPM2.5 は 3,400 μg/m3 に達した.一部の窓を 10 cm開けてもPM2.5 は 500~3,000 μg/m3,すべての窓を開放しても数百~1,500 μg/m3 と高い濃度になることが認められた.考察と結論:業務車両や自家用車で同乗者の望まない受動喫煙を防ぐ配慮としては,窓を開放する対策では不適切であり,車内で喫煙しないことが求められる.
著者
藤本 公介 山下 実 金子 豊治 石川 元治
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.359-363, 2010 (Released:2010-06-16)
参考文献数
5
被引用文献数
1

酸化劣化しやすいバイオディーゼル燃料(BDF)によるエンジン油性能への影響を把握するため、ポスト噴射で多量の燃料希釈を再現するエンジン試験を実施した。その結果、エンジン油の清浄剤消耗と、BDF由来の重合物の蓄積が加速され、エンジン油の耐デポジット性/耐スラッジ性が悪化することがわかった。
著者
岸上 伸啓 丹羽 典生 立川 陽仁 山口 睦 藤本 透子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B12, 2016 (Released:2016-04-23)

本分科会では、マルセル・モースの贈与論の特徴を概略し、それが文化人類学においてどのような理論的展開をみてきたかを紹介する。その上で、アラスカ北西地域、カナダ北西海岸地域、オセアニアのフィジー、日本、中央アジアのカザフスタンにおける贈与交換の事例を検討することによって、モースの贈与論の限界と可能性を検証する。さらに、近年の霊長類学や進化生態学の成果を加味し、人類にとって贈与とは何かを考える。
著者
藤本 哲史 吉田 悟
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.66-78, 1999 (Released:2022-07-27)
被引用文献数
3

わが国において,ワーク・ファミリー・コンフリクトは急速に男女就業者共通の問題になりつつあるが,未だ十分に認識された問題とはいえない.本稿では,まずワーク・ファミリー・コンフリクトに関する心理学的アプローチと社会学的アプローチの特徴をまとめ,両者のハイブリッド化により問題の複雑さと広範さが明らかになる可能性を指摘する.続いて,ワーク・ファミリー・コンフリクトが経営組織に内包された問題であることや,コンフリクト緩和策には意外な盲点があることを示す.
著者
永野 翔大 ネメシュ ローランド 藤本 元 會田 宏
出版者
日本コーチング学会
雑誌
コーチング学研究 (ISSN:21851646)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.109-123, 2017-03-20 (Released:2019-09-02)
参考文献数
42
被引用文献数
5

The purpose of this study was to obtain useful knowledge for constructing new Japanese Long-Term Athlete Development Program by a text mining analysis. Subjects were comprised of four countries, Germany, Hungary and Denmark as world top class, plus Japan. The main results were as follows: 1) Germany: Based on their physical advantage, Germany aimed to improve predictive ability by nurturing their decision making in the speed. So that they could acquire the ability to take an initiative in a game. 2) Hungary: Hungry aimed to encourage their physical strength as most important concept to improve team tactics which focuses on group combinations. 3) Denmark: Denmark aimed to improve predictive ability through trainings in numerically unequal situation at early stage. 4) Japan: Japan set the categories in broad age ranges and aimed to bring up from sensory play to intentionally play to reach worldʼs top level.     When creating new Japanese Long-Term Athlete Development Program, these results suggest that necessities of drafting instruction contents and instruction plan which can achieve “Japanese Total Mobility”.
著者
野崎 結 安井 重男 池田 幸司 藤本 将志 赤松 圭介 大沼 俊博 渡邊 裕文
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.85-92, 2010 (Released:2011-01-13)
参考文献数
6

We conducted physical therapy for a patient who experienced pain in the right gluteal and lateral femoral regions during walking following right hip replacement. Pain appeared due to flexion, adduction, and internal rotation of the right hip joint accompanied by exaggerated anterior inclination and right rotation of the pelvis on right heel contact through to right mid-stance. Physical therapy was conducted for the limited range of right hip joint motion and muscle weakness around this joint, which was assumed to be the cause of the abnormal gait and pain. Following this, standing step practice (Physical Therapy A) was conduced. After 6 weeks of Physical Therapy A, the limited range of right hip joint motion and muscle weakness around the joint had improved; however, the gait and pain had not improved. Thus, the therapy was re-evaluated, and bridge exercise was added to Physical Therapy A (Physical Therapy B). Physical Therapy B enabled induction of muscle activity and contractile patterns similar to those occurring during walking with respect to the muscle activity around the right hip joint that is necessary for right heel contact through to right mid-stance. A single session of Physical Therapy B improved the gait and reduced pain. Therefore, we concluded that the promotion of complex muscle activity, not in a single direction, and improvement of the muscle strength and contractile pattern are necessary in physical therapy for problematic muscle weakness.
著者
千田 二郎 柴田 一郎 段 智久 藤本 元
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.63, no.613, pp.3173-3178, 1997-09-25 (Released:2008-03-28)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

This study investigates the atomization mechanism of fuel spray dissolved in noncondensable gas, such as N2, CO2. The fuel spray was injected at room temperature and in an atmospheric pressure field through a diesel-hole-type nozzle. In this paper, N2 gas was dissolved into diesel fuel, n-tridecane, under several pressurized conditions using a gas bubbling method in a constant volume vessel. This fuel, with high gas solubility, was injected under several injection pressures using an accumulated injection system designed by the authors. It was found that the dissolved gas separated into gas bubbles like gas cavitation phenomena under the atmospheric field. The change in spray patterns caused by the gas solubility is discussed using photographs of the patterns.
著者
松田 晋哉 村松 圭司 藤本 賢治
出版者
日本ヘルスサポート学会
雑誌
日本ヘルスサポート学会年報 (ISSN:21882924)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.31-39, 2022 (Released:2023-03-25)
参考文献数
6

【目的】人生の最終段階における療養生活の質向上を図るための医療介護提供体制の在り方を考えるために、国内5広域自治体の医療・介護レセプトを収集し、それを個人単位で連結したデータベースを用いて、死亡症例について、死亡前24か月間の医療介護サービスの利用状況を可視化することを試みた。【資料及び方法】分析に用いたのは国内5広域自治体の医療・介護レセプトである。レセプトデータを個人単位で連結し、このデータベースから65歳以上の死亡症例を抽出した。次に、死亡が発生した年月を起点(死亡月、経過月=0)としてその差を経過月として24か月前まで計算した(例えば、前月は-1)。上記で把握した死亡患者について、医科レセプトおよび介護レセプトを用いて経過月ごとに医療・介護サービスの利用状況及び傷病の状況を把握した。【結果および考察】本分析により以下のことが明らかとなった。まず、分析結果から死亡に至る傷病のパターンとして、心不全や腎不全といった循環器系の不全症状の進行と肺炎・誤嚥性肺炎の発生が重要な契機となっていることが明らかとなった。次に、人生の最終段階においては、気分障害の有病率が10%程度あり、メンタルヘルス面での対応の必要性が示唆された。第三に、死亡前24か月間の有病率を年齢階級別にみると年齢の高い群では心不全、認知症の有病率が増加する一方で、悪性腫瘍の有病率が低下していた。悪性腫瘍診療領域では我が国においてもホスピス等の長い経験があるため、人生の最終段階におけるケアの在り方に関する議論が他領域よりは進んでいる。他方、年齢の高い群ではがんが直接的な死因になるよりは、肺炎や心不全などの死因としての重要性が増大することが示された。また、年齢とともに認知症にり患している対象者が増加しており、今後ACPを実践していく上で、代理人の選定問題を生じうる。したがって、今後、ACPを含めて人生の最終段階における医療の在り方を考える上で重要な検討課題であると考えられた。【結語】本分析の結果、死亡に至る傷病のパターンとして、心不全や腎不全といった循環器系の不全症状の進行と肺炎・誤嚥性肺炎の発生が重要な契機となっていることが示された。このような状態の兆候が出始める前後の時期が、ACPに関連するプロセスを本人や家族を含めた関係者と始めるタイミングであると考えられる。また、こうした死亡に至る傷病のパターンについて広く国民に情報提供することが、国民が自らの人生の最終段階における生き方を決めることを可能にするために必要であると考えられる。
著者
原 真希 岩見 憲司 藤本 英作 笹重 善明
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.81-87, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)

「目的」人工膝関節置換術(TKA)後1年経過した患者の日常生活動作における自覚的膝違和感と膝関節前後動揺性(AP-laxity)および膝関節機能との関連性を検証した。 「方法」当院で初回TKAを施行した21例21膝関節を対象に、TKA後1年経過時の自覚的膝違和感の指標にForgotten Joint Score(FJS-12)を使用し、AP-laxityはKNEELAX3にて測定した。膝関節機能評価には膝屈曲可動域、膝伸展筋力、10m歩行速度、Timed Up & Go Test(TUG)を用いた。統計解析は、FJS-12の下位項目に対するAP-laxityおよび膝関節機能についてSpearmanの相関係数を求めた。ROC分析よりFJS-12(階段昇段動作)におけるAP-laxityのカットオフ値を算出した。 「結果」FJS-12の総点とAP-laxityに有意な相関を認めず、下位項目である階段昇段動作のみ有意な正の相関を認めた。その他の下位項目に相関は認めなかった。ROC分析よりカットオフ値は10.59㎜であった。FJS-12と膝関節機能は明らかな関連性を認めなかった。 「結論」TKA後1年経過時の階段昇段動作の自覚的膝違和感にAP-laxityが関連することが示唆された。
著者
大八木 敏弘 堀内 久子 藤本 蓮風
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.507-512, 2001-08-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
16

鍼灸治療における清熱解毒の鍼法は、一般的には曲池、委中、大椎、合谷、内庭、手足の井穴などの刺鍼又は刺絡などで対応する。北辰会の清熱解毒に対する刺鍼法は、藤本北辰会代表が『外台秘要方』の黄連解毒湯、『素問』刺熱篇などからヒントを得て考案したものである。その配穴は、霊台、両督兪と脊中、両脾兪に横刺をする。この組み合わせ配穴は、気分の種々の熱性疾患に対して清熱解毒作用が顕著に得られる。このことを11症例から検証し、これらの異病同治の症例から清熱解毒刺鍼法の治効範囲を確認した。
著者
渡邊 三津子 遠藤 仁 古澤 文 藤本 悠子 石山 俊 Melih Anas 縄田 浩志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.265, 2020 (Released:2020-03-30)

1. はじめに 近年,大野盛雄(1925〜2001年),小堀巌(1924〜2010年),片倉もとこ(1937〜2013年)など,日本の戦後から現代にいたる地理学の一時代を担った研究者らが相次いで世を去った。彼らが遺した貴重な学術資料をどのようにして保存・活用するかが課題となっている。本発表では,故片倉もとこが遺したフィールド資料の概要を紹介するとともに,彼女がサウディ・アラビアで撮影した写真の撮影場所を同定する作業を通して,対象地域の景観変化を復元する試みについて紹介する。2. 片倉もとこフィールド資料の概要 片倉が遺した研究資料は,フィールド調査写真,論文・著作物執筆に際してのアイデアや構成などを記したカード類,フィールドで収集した民族衣服,民具類など多岐にわたる。中でも,写真資料に関しては,ネガ/ポジフィルム,ブローニー版,コンタクトプリントなど約61,306シーンが確認できている(2018年12月現在)。本研究では,片倉が住み込みで調査を実施した経緯から,写真資料が最も多く,かつ論文・著作物における詳細な記述が遺されているサウディ・アラビア王国マッカ州のワーディ・ファーティマ(以下,WF)地域を対象とする。3. 片倉フィールド調査写真の撮影地点同定作業 本研究では,以下の手順で撮影地点の同定をすすめた。1) 調査前の準備(写真の整理と撮影地域の絞り込み) まず,写真資料が収められた収納ケース(箱,封筒,ファイルなど)や,マウント,紙焼き写真の裏などに書かれたメモや,著作における記述を参考に,WF地域およびその周辺で撮影されたとみられる写真の絞り込みを行った。次いで,WF地域で撮影されたとみられる写真の中から,地形やモスクなどの特徴的な地物,農夫などが写り込んでいる写真を選定し,現地調査に携行した。2) 現地調査 2018年4〜5月,2018年12月~2019年1月,2019年9月の3回実施した現地調査では,携行した写真を見せながら,現地調査協力者や片倉が調査を行った当時のことを知る住民に,聞き取り調査を行った。 次に,撮影地点ではないかと指摘された場所を訪れ,背景の山地,モスクや学校などの特徴的な地形や地物を観察するとともに,周辺の住民にさらなる聞き取りを行った。 聞き取りや現地観察を通して撮影地点が特定できた場合には,できるだけ片倉フィールド調査写真と同じ方向,同じアングルになるように写真を撮影するとともにGPSを用いて緯度・経度を記録した。なお,新しい建築物ができるなどして同じアングルでの撮影が難しい場合には,可能な限り近い場所で撮影・記録を行った。3) 現地調査後 調査後は,調査で撮影地点が同定された写真を起点として,その前後に撮影されたとみられる写真を中心に,被写体の再精査を行い,現地調査で撮影地点が同定された写真と同じ人物,建物,地形などが写り込んでいる写真を選定し,撮影同定の可能性がある写真の再選定を行った。一連の作業を繰り返すことで,片倉フィールド調査写真の撮影地点の同定をすすめた。4. 写真の撮影地点の同定作業を通した景観復元の試み 撮影地点が同定された片倉のフィールド調査写真と、現在の状況との比較,および1960年代以降に撮影・観測された衛星画像との比較を通して,およそ半世紀の間におこった変化の実情把握を試みた。例えば衛星画像からは、半世紀前にはワーディに農地が広がっていたのに対して,現在では植生が減少していることなどを読み取ることができる。一方で,集落では住宅地が拡大し,道路が整備された。このような変化の中、地上で撮影された写真からは,以下のような変化を読み取ることができる。例えば,1960年代の集落には,日干しレンガの平屋が点々とあるだけであったが,現在は焼成レンガやコンクリートを使った2階建以上の建物が増えた。一方で,集落内のどこからでも見えた山はさえぎられて見えなくなった。また,次第に電線が張り巡らされ,1980年代以降電化が進んだ。また,1960年代当時は生活用水をくむために欠かせなかった井戸は,配水車と水道の普及により次第に使われなくなった。発表では,実際の写真を紹介しながら,フィールド写真を用いた景観変化復元の試みについて紹介する。 本研究はJSPS科研費16H05658「半世紀に及ぶアラビア半島とサハラ沙漠オアシスの社会的紐帯の変化に関する実証的研究」(研究代表者:縄田浩志),国立民族学博物館「地域研究画像デジタルライブラリ事業(DiPLAS)」,大学共同利用機関法人人間文化研究機構「現代中東地域研究」秋田大学拠点の研究成果の一部である。また,アラムコ・アジア・ジャパン株式会社と片倉もとこ記念沙漠文化財団との間で締結された協賛金事業の一環として事業の一環として行われたものである。
著者
藤本 仰一 石原 秀至 金子 邦彦
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.018-022, 2010 (Released:2010-01-25)
参考文献数
17

One of the major goals in evolutionary developmental biology is to elucidate the relationship between gene regulatory networks and the diverse morphologies. Segmentation in arthropod embryogenesis represents a well-known example of body plan diversity. Striped patterns of gene expression that lead to the future body segments appear simultaneously or sequentially, respectively. To reveal the basic differences in the network structure, we have numerically evolved hundreds of gene regulatory networks. By analyzing the topologies of the generated networks, we show that the characteristics of striped pattern are determined by Feed-Forward Loops (FFLs) and negative Feed-Back Loops (nFBLs).
著者
上田 紘司 藤本 泰文
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.153-164, 2022-12-25 (Released:2022-12-25)
参考文献数
30

宮城県北部の伊豆沼・内沼の周辺に位置する2つの池において,絶滅危惧種に指定されているオオセスジイトトンボParacercion plagiosum(トンボ目:イトトンボ科)の季節消長,繁殖期および生息環境を調査した.オオセスジイトトンボは,両池において6月上旬から8月中旬まで確認され,個体数のピークは6月下旬であった.繁殖行動(タンデム連結・交尾器の結合・産卵)は6月下旬から8月上旬にかけて両池で確認された.2つの池の水生植物の構成種は異なり,両池とも水際にはヨシPhragmites australisやミクリ属の1種Sparganium sp.など数種の抽水植物,水面には浮葉植物のヒシ類Trapa spp.が確認された.しかし,浮遊植物のイヌタヌキモUtricularia australisは一方の池でのみ確認された.本種の産卵は,ヒシ類が優占する池ではすべてヒシ類で行われたが,ヒシ類とイヌタヌキモが混生する池では,産卵行動の70%がイヌタヌキモで行われた.このことから,イヌタヌキモへの産卵はヒシ類と比較して本種の適応度を高める何らかの要素を持つ可能性を示唆した.伊豆沼・内沼では,富栄養化により沼の広い範囲をハスNelumbo nuciferaやヒシ類が優占する水環境となっており,イヌタヌキモが生育するような環境は貴重となっている.この個体群を保全していくには調査池の環境管理や伊豆沼・内沼で実施されている湖岸植生帯の復元活動が重要となるだろう.
著者
藤本 学
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.79-90, 2011 (Released:2012-03-24)
参考文献数
39

本研究は,会話者の発話行動の独自性を明らかにするために,話者役割説を理論的背景とする発話行動生起プロセスについて検討を行った。コミュニケーション行動の規定因として,コミュニケーション参与スタイルに注目した。さらに調整変数として,対人的状況要因であるソシオメトリック・ステータスと,コミュニケーション参与スタイルの集団内メンバー構成を取り上げた。小集団討議実験を実施し,諸変数の関連性について検討を行った結果,集団内メンバー構成を考慮することによって,コミュニケーション参与スタイルは仮説どおり,実際の発話行動を予測することが確認された。また,ソシオメトリック・ステータスは調整変数ではなく,発言頻度に影響を及ぼす独立変数であることが明らかとなった。これらの知見は話者役割説の立場を支持する一方で,発話行動生起プロセスに関するモデルに対して修正を迫るものであった。
著者
伊藤 陸 早田 荘 藤本 将志 大沼 俊博 渡邊 裕文 鈴木 俊明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.443-447, 2017 (Released:2017-06-23)
参考文献数
13
被引用文献数
4

〔目的〕端座位で股関節内旋位,外旋位を保持した際の股関節周囲筋の筋活動について筋電図を用いて検討した.〔対象と方法〕健常男性10名の両下肢20肢とした.端座位,股関節内旋・外旋10°,20°,30°の肢位で大殿筋上部線維,中殿筋前部線維,大腿筋膜張筋の筋電図を測定し,各股関節内旋角度間と各股関節外旋角度間で比較した.〔結果〕大殿筋上部線維は股関節内旋10°,20°と比較して30°で,中殿筋前部線維,大腿筋膜張筋は股関節内旋10°と比較して30°で有意に増加した.股関節外旋角度間ではいずれも変化を認めなかった.〔結語〕大殿筋上部線維は,股関節屈曲90°では股関節外旋保持には関与せず,股関節内旋保持に関与することがわかった.
著者
藤本 この美 草野 篤子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.108, 2003

【目的】日清・日露戦争期から日本内外の軍隊買春は拡大し、日中戦争の頃には軍そのものが戦場に「慰安所」を設置し、「慰安婦」を従軍させるといった「軍隊慰安婦」政策が実行された。政府はこれまで慰安所への関与は認めているものの、あくまで業者の経営によるものと主体性を否定している。そこで本研究では、公文書から当時の政府や軍の主体的関与を明らかにし、同時にこの問題を日本軍隊の特殊性や植民地支配のあり方、様々な人権差別が交錯した問題として捉え、慰安婦制度を生んだ社会的背景を考察する。【方法】朱徳蘭編『台湾慰安婦関係資料集』(不二出版、2001年)を用いて、公文書から軍や政府の主体的関与を探し出す。また、藤目ゆき氏の研究を参考に「性」・「階級」・「民族」という視点から、基本的人権をキーワードに論述する。【結果】台湾における慰安婦徴集・送出には「軍→内務省→台湾総督府→州知事・庁長→郡守・警察署長→業者」、海南島における慰安所の建設・経営には「軍→台湾総督府→台湾拓殖株式会社→福大公司→業者」といった組織の存在が明らかとなった。軍や政府の主体的関与が認められ、同時に半官半民の台湾拓殖株式会社の関与、さらにそれを隠蔽するため福大公司という子会社をトンネルとして融資をした事実も判明した。また社会的背景としては、天皇制国家・家父長制社会・差別社会の存在があったと考察される。女性は男によって「モノ」化され、天皇には侵略戦争のための「コマ」として扱われ、差別によって意思を遮断されたのである。今後女性の性の蹂躙をなくすためには、女性が自分の生き方と性のあり方を自分で決定できるような社会の土壌をつくっていくことが重要である。