著者
藤井 健太郎 秋光 信佳 藤井 紳一郎 加藤 大 月本 光俊 成田 あゆみ 横谷 明徳 丹羽 修 小島 周二
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

リボ核酸の一種であるアデノシン三リン酸(ATP)は、生体エネルギー供与物質として様々な生化学反応へエネルギーを供与している。また同時に、遺伝情報の仲介物質であるメッセンジャーRNAを合成するための基質として、さらには細胞間情報伝達物質としても働く。本研究では、放射光軟X線により、ATPに生じた放射線障害が、ATPの持つ生物学作用にどのように関わっているかに注目して、その生物学的効果への寄与を解析することを試みた。そして、ATP分子の構造変化はガン細胞の放射線感受性に変化を生じさせている可能性を示唆する結果を得た。
著者
松石 昌典 森 壽一郎 文 允煕 沖谷 明紘
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.163-170, 1993
被引用文献数
7 1

牛肉は熟成で軟化するとともに加熱香味も向上することが報告されている.本研究では牛肉の香味のうち特に報告の少ない生肉の香り(生鮮香気)の熟成中の変化を調べた.屠殺4日後の乳牛のロイン部を貯蔵し,その生鮮香気を官能評価した結果,含気下で0°Cに20日間熟成させたものは熟成させずに-80°Cに18日間貯蔵した後に解凍したものよりも有意に好ましいと判定された.このとき熟成肉には甘いミルク臭に似た香気が感じられた,この香りは熟成肉を加熱した後にも残存し,熟成牛肉の加熱香味を優れたものにしていると推定された.われわれはこの香りを牛肉熟成香(ぎゅうにくじゅくせいか)と命名した.ステーキ店への実地調査の結果,和牛肉でも熟成香があり,にれは乳用牛肉と同様牛肉全般に見られるにとが判明した.牛肉を真空包装下あるいは脱酸素剤存在下で貯蔵すると熟成香の生成は抑制された,熟成香は赤身,脂身の単独部よりも赤身と脂身の共存部で強く生成した.クロラムフェニコールあるいはNaN3の水溶液を噴霧して含気貯蔵すると熟成香の生成が抑制された.以上の結果は,熟成香は酸素存在下で赤身と脂身の共存部においてある種の細菌の作用で生成することを強く示唆した.加熱殺菌脂肪と赤身の水抽出液を吸着させた各濾紙および両濾紙を接触させたものを含気貯蔵したが,いずれにも熟成香と同じ香りは生じなかった.市販のラクトン類,マルトール,シクロテンなどには牛肉熟成香と同一の香りを示すものはなかった.
著者
今谷 明
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.201-214, 2007-05

アメリカ、フランス、オランダ、ドイツ各国に於ける日本史研究の現状と特色をスケッチしたもの。研究者数、研究機関(大学など)とも圧倒的にアメリカが多い。ここ十年余の期間の顕著な特色は、各国の研究水準が大幅にアップし、殆どの研究者が、翻訳資料でなく、日本語のナマの資料を用いて研究を行い、論文を作成していることで、日本人の研究者と比して遜色ないのみか、医史学など一部の分野では日本の研究レベルを凌駕しているところもある。 このための調査旅行として、二〇〇六年八~十月の期間、アメリカのハーバード大学、南カリフォルニア大学、カリフォルニア大学ロスアンゼルス校、およびオランダのライデン大学を訪問し、ハーバード大学歴史学部長ゴードン氏以下、幾人かの日本史研究者と面談し、第一線の研究状況を直接に聴取することができた。なお、アメリカについては、日文研バクスター教授の研究を参考とし、フランスは総研大院生ハイエク君の調査を、ドイツについては日文研リュッターマン助教授の助力を仰いだことを付け加えておく。
著者
金谷 明浩 山内 正憲 江島 豊 阿部 望
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.23-26, 2016-04-01 (Released:2016-04-07)
参考文献数
4

東日本大震災後,病院危機管理の一つに震災対策が重要な位置を占めている。今回われわれは,手術中に発生した震度6の地震を想定した避難訓練を行った。隣接した2つの手術室で行い,参加したスタッフは医師,看護師,臨床工学技士,医療クラークを含め総勢32名であった。訓練担当看護師により災害発生時のフローチャートやシナリオが事前に説明された。今回の訓練ではアクションカードを用いた初期対応及び避難経路の確認,さらに,手術や麻酔覚醒の方針について震災状況を考慮して麻酔科医と外科医の間で協議してスムーズに決定することができた。手術室における災害訓練は必要不可欠であり,今後も継続して行うことが重要である。
著者
木元 裕介 佐竹 將宏 菊谷 明弘 皆方 伸 中澤 明紀 岩澤 里美 佐藤 峰善 若狭 正彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.51-57, 2015 (Released:2015-07-31)
参考文献数
32

【目的】大腿四頭筋へのダイナミックストレッチングとスタティックストレッチングを実施した後の、膝屈曲可動域および膝伸展筋力の変化を検討した。【方法】健常成人男女18名を対象に、ダイナミックストレッチングを行う介入、スタティックストレッチングを行う介入、ストレッチングを行わず安静を保つ介入(安静)を行った。ダイナミックストレッチングは、つかまり立位をとり1回6秒(10回/分)のゆっくりとした速度で12回行う方法とした。【結果】ダイナミックストレッチングおよびスタティックストレッチングは、同様に膝屈曲可動域が有意に増加した。しかし、スタティックストレッチングにおいてのみ膝伸展筋力が有意に低下した。安静は全てにおいて有意な変化がなかった。【考察】1回6秒を12回行うダイナミックストレッチングは、理学療法場面において有益な方法となり得る可能性があった。
著者
熊谷 明
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.645-649, 2005 (Released:2005-08-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2
著者
横谷 明徳
出版者
The Japanese Radiation Research Society
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.74, 2009 (Released:2010-02-12)

これまで放射線のトラック構造と生物影響に深く関係する難修復性のDNA損傷の関連について、モンテカルロシミュレーションを用いた数多くの研究が行われてきた。これらの研究は、トラックがDNA分子を通過することによる直接的なエネルギー付与(直接作用)によりDNA二本鎖切断(DSB)が高い確率で生じ、LETの増大とともにその頻度も増加することを予測している。我々はこれまで、直接作用により誘発されるDSBの収率をプラスミドDNAをモデル分子として観察してきた。試料に用いたpUC18プラスミドDNAは、通常の細胞中のDNAと同じコンフォメーション(B-form)となるよう高水和状態に維持した。この条件では、1ヌクレオチドあたりの水分子は約35分子であり試料の質量中の50%を水が占めることになるが、もしOHラジカルが生成したとしても自由に拡散できるバルク水が無いゲル状の試料である。照射に用いた放射線は、日本原子力研究開発機構高崎研究所TIARA及び放射線医学総合研究所HIMACから得られるHe, C 及びNeイオンを用いた。同一LETでもイオン種によるトラック構造の違いがあるため、異イオン種間のLETの比較は注意を要する。そこで我々は、それぞれのイオン種でLETを変えながらプラスミドのコンフォメーション変化として電気泳動法によりDSBを定量した。その結果、HeイオンによるDSB生成収率は20 keV/µmに極小値をもつが、これより高LET側では急激に収率が増大し、120 keV/µmではその約4倍の値となった。しかしさらに高LET側では、再び減少に転じた。Cイオンでも80-500 keV/µmとLETを上げていくとDSB収率は増大したが、その傾向はHeイオンに比べると小さかった。Neイオンでは、300-900 keV/µmの領域ではDSB収率にほとんど変化はなかった。以上のことは、イオントラックからの直接的エネルギー付与により生じるDSBの収率はLETの増加に伴って増大するが、その傾向はイオン種によって違いがあることがわかった。本口演では、私たちと同様なLET依存性を見せる過去の知見を交えながらDSBの生成収率と生物効果に対する考察を行っていく。
著者
大谷 明弘
出版者
九州保健福祉大学大学院社会福祉学研究科
雑誌
最新社会福祉学研究 = Progress in Social Welfare Research (ISSN:18809545)
巻号頁・発行日
no.14, pp.77-83, 2019-03-31

本研究は,認知症介護研修の現状と課題を確認した上で,施設介護職員に対する認知症介護教育に「コンピテンシー(competency)」の概念を導入することの意義を明らかにすることを目的に文献研究を実施した.論文検索には,CiNii,J-STAGE,医中誌 webを活用し,11本の論文が該当した.結果,施設介護職員のコンピテンシーに関する研究がほとんど行われていないことが明らかになった一方で,隣接領域である看護師や主任介護支援専門、社会福祉士等に関しては,既にいくつかの研究が行われており,各々の専門教育に導入され始めている現状が明らかになった.このことは,施設介護職員を対象とした認知症介護教育にもコンピテンシーの導入が可能なことを意味している.今後の課題は, 施設介護職員が置かれている労働環境の現状把握,認知症介護における熟練介護職員の優れた行動特性の具体的な概念および省察的実践との関連性を明らかにすることである.
著者
小谷 明
出版者
日本微量元素学会
雑誌
Biomedical Research on Trace Elements (ISSN:0916717X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.22-26, 2011 (Released:2013-09-09)
参考文献数
13

Cisplatin, clinically used anticancer Pt(II) complex, has been believed to attack DNA to form Pt-N7(Guanine) coordination, and Pt-G bond is protected from DNA repair enzyme by the aromatic ring stacking between Pt-G and Phe side chain in Pt-DNA-HMG protein adduct. The adduct mimicked 4N coordinated Pt(II) complexes M(DA)(AtCn) involving with metal coordinated aromatic diamine (DA) and anthracene ring side chain in AtCn, which could not coordinate DNA, showed not only in vitro cytotoxicity for human cancer cell lines but also strong inhibition with protein interaction such as the proteasome. The bio-activity indicated the structural dependence of both DA and AtCn. This should relate with the intramolecular aromatic ring stacking interaction which was evidenced by the X-ray structure in crystal and the H-1 NMR in H2O solution. Importantly the Pt(II) complexes showed similar bioactivity in cisplatin resistance cancer cell. These experimental results showed that the Pt complexes involving stacking structure might be new type anticancer metal compounds.
著者
新谷 明一 三浦 賞子 小泉 寛恭 疋田 一洋 峯 篤史
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-15, 2017 (Released:2017-02-21)
参考文献数
60
被引用文献数
5 6

小臼歯の全部被覆冠として保険収載されたCAD/CAM冠の使用率は,年々増加し続けている.一方で,CAD/CAM冠の脱落などに代表されるトラブル報告も多くなってきている.CAD/CAM冠は,従来の歯冠補綴装置とは異なった製作方法や材料を使用しており,支台歯形態や接着方法に独自の配慮が必要である.また,多くの脱落が初期に生じているということは,従来の全部被覆冠からは考えられない原因の存在も推測される.本稿では,CAD/CAM冠に発生したトラブルのリスク因子を明らかにし,それに対応できるよう,支台歯形態,CAD/CAM冠用レジンブロックの特徴,適切な接着手順および術後管理について考察を行う.
著者
江⽊ 盛時 ⼩倉 裕司 ⽮⽥部 智昭 安宅 ⼀晃 井上 茂亮 射場 敏明 垣花 泰之 川崎 達也 久志本 成樹 ⿊⽥ 泰弘 ⼩⾕ 穣治 志⾺ 伸朗 ⾕⼝ 巧 鶴⽥ 良介 ⼟井 研⼈ ⼟井 松幸 中⽥ 孝明 中根 正樹 藤島 清太郎 細川 直登 升⽥ 好樹 松嶋 ⿇⼦ 松⽥ 直之 ⼭川 ⼀⾺ 原 嘉孝 ⼤下 慎⼀郎 ⻘⽊ 善孝 稲⽥ ⿇⾐ 梅村 穣 河合 佑亮 近藤 豊 斎藤 浩輝 櫻⾕ 正明 對東 俊介 武⽥ 親宗 寺⼭ 毅郎 東平 ⽇出夫 橋本 英樹 林⽥ 敬 ⼀⼆三 亨 廣瀬 智也 福⽥ ⿓将 藤井 智⼦ 三浦 慎也 安⽥ 英⼈ 阿部 智⼀ 安藤 幸吉 飯⽥ 有輝 ⽯原 唯史 井⼿ 健太郎 伊藤 健太 伊藤 雄介 稲⽥ 雄 宇都宮 明美 卯野⽊ 健 遠藤 功⼆ ⼤内 玲 尾崎 将之 ⼩野 聡 桂 守弘 川⼝ 敦 川村 雄介 ⼯藤 ⼤介 久保 健児 倉橋 清泰 櫻本 秀明 下⼭ 哲 鈴⽊ 武志 関根 秀介 関野 元裕 ⾼橋 希 ⾼橋 世 ⾼橋 弘 ⽥上 隆 ⽥島 吾郎 巽 博⾂ ⾕ 昌憲 ⼟⾕ ⾶⿃ 堤 悠介 内藤 貴基 ⻑江 正晴 ⻑澤 俊郎 中村 謙介 ⻄村 哲郎 布宮 伸 則末 泰博 橋本 悟 ⻑⾕川 ⼤祐 畠⼭ 淳司 原 直⼰ 東別府 直紀 古島 夏奈 古薗 弘隆 松⽯ 雄⼆朗 松⼭ 匡 峰松 佑輔 宮下 亮⼀ 宮武 祐⼠ 森安 恵実 ⼭⽥ 亨 ⼭⽥ 博之 ⼭元 良 吉⽥ 健史 吉⽥ 悠平 吉村 旬平 四本 ⻯⼀ ⽶倉 寛 和⽥ 剛志 渡邉 栄三 ⻘⽊ 誠 浅井 英樹 安部 隆国 五⼗嵐 豊 井⼝ 直也 ⽯川 雅⺒ ⽯丸 剛 磯川 修太郎 板倉 隆太 今⻑⾕ 尚史 井村 春樹 ⼊野⽥ 崇 上原 健司 ⽣塩 典敬 梅垣 岳志 江川 裕⼦ 榎本 有希 太⽥ 浩平 ⼤地 嘉史 ⼤野 孝則 ⼤邉 寛幸 岡 和幸 岡⽥ 信⻑ 岡⽥ 遥平 岡野 弘 岡本 潤 奥⽥ 拓史 ⼩倉 崇以 ⼩野寺 悠 ⼩⼭ 雄太 ⾙沼 関志 加古 英介 柏浦 正広 加藤 弘美 ⾦⾕ 明浩 ⾦⼦ 唯 ⾦畑 圭太 狩野 謙⼀ 河野 浩幸 菊⾕ 知也 菊地 ⻫ 城⼾ 崇裕 ⽊村 翔 ⼩網 博之 ⼩橋 ⼤輔 ⿑⽊ 巌 堺 正仁 坂本 彩⾹ 佐藤 哲哉 志賀 康浩 下⼾ 学 下⼭ 伸哉 庄古 知久 菅原 陽 杉⽥ 篤紀 鈴⽊ 聡 鈴⽊ 祐⼆ 壽原 朋宏 其⽥ 健司 ⾼⽒ 修平 ⾼島 光平 ⾼橋 ⽣ ⾼橋 洋⼦ ⽵下 淳 ⽥中 裕記 丹保 亜希仁 ⾓⼭ 泰⼀朗 鉄原 健⼀ 徳永 健太郎 富岡 義裕 冨⽥ 健太朗 富永 直樹 豊﨑 光信 豊⽥ 幸樹年 内藤 宏道 永⽥ 功 ⻑⾨ 直 中村 嘉 中森 裕毅 名原 功 奈良場 啓 成⽥ 知⼤ ⻄岡 典宏 ⻄村 朋也 ⻄⼭ 慶 野村 智久 芳賀 ⼤樹 萩原 祥弘 橋本 克彦 旗智 武志 浜崎 俊明 林 拓也 林 実 速⽔ 宏樹 原⼝ 剛 平野 洋平 藤井 遼 藤⽥ 基 藤村 直幸 舩越 拓 堀⼝ 真仁 牧 盾 增永 直久 松村 洋輔 真⼸ 卓也 南 啓介 宮崎 裕也 宮本 和幸 村⽥ 哲平 柳井 真知 ⽮野 隆郎 ⼭⽥ 浩平 ⼭⽥ 直樹 ⼭本 朋納 吉廣 尚⼤ ⽥中 裕 ⻄⽥ 修
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
pp.27S0001, (Released:2020-09-28)
被引用文献数
2

日本集中治療医学会と日本救急医学会は,合同の特別委員会を組織し,2016年に発表した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG2016)の改訂を行った。本ガイドライン(J-SSCG2020)の目的は,J-SSCG2016と同様に,敗血症・敗血症性ショックの診療において,医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことである。改訂に際し,一般臨床家だけでなく多職種医療者にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインとすることによって,広い普及を目指した。J-SSCG2016ではSSCG2016にない新しい領域(ICU-acquiredweakness(ICU-AW)とPost-Intensive Care Syndrome(PICS),体温管理など)を取り上げたが,J-SSCG2020では新たに注目すべき4領域(Patient-and Family-Centered Care,Sepsis Treatment System,神経集中治療,ストレス潰瘍)を追加し,計22 領域とした。重要な117の臨床課題(クリニカルクエスチョン:CQ)をエビデンスの有無にかかわらず抽出した。これらのCQには,日本国内で特に注目されているCQも含まれる。多領域にわたる大規模ガイドラインであることから,委員24名を中心に,多職種(看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)および患者経験者も含めたワーキンググループメンバー,両学会の公募によるシステマティックレビューメンバーによる総勢226名の参加・協力を得た。また,中立的な立場で横断的に活躍するアカデミックガイドライン推進班を2016年版に引き続き組織した。将来への橋渡しとなることを企図して,多くの若手医師をシステマティックレビューチーム・ワーキンググループに登用し,学会や施設の垣根を越えたネットワーク構築も進めた。作成工程においては,質の担保と作業過程の透明化を図るために様々な工夫を行い,パブリックコメント募集は計2回行った。推奨作成にはGRADE方式を取り入れ,修正Delphi法を用いて全委員の投票により推奨を決定した。結果,117CQに対する回答として,79個のGRADEによる推奨,5個のGPS(Good Practice Statement),18個のエキスパートコンセンサス,27個のBQ(Background Question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。新たな試みとして,CQごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報を取り入れた。J-SSCG2020は,多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。なお,本ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載するものである。
著者
横谷 明徳 高須 昌子 石川 顕一
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.81-85, 2014 (Released:2019-10-31)
参考文献数
10

放射線は,今や医療現場においては治療や診断など国民の健康生活に不可分な要素である一方,福島における低線量被ばくに対するリスク評価など,放射線に関わる研究者が取組まなくてはならない課題は数多くある。複雑な階層構造を持つ生物システムが放射線ストレスに対してどのように応答するかについては,分子,細胞あるいは個体など様々なレベルでの実験が行われている。一方,これらの実験により得られた知見から法則性を抽出し,放射線応答の一般化したモデルを構築することが求められる。コンピュータの高性能化により,最近ではこれらのモデル研究も新しい領域に入りつつある。放射線の照射により生じるDNA損傷・修復の初期の物理・化学的過程からDNA修復に関する生物学的過程及びアト秒領域におけるDNA-電子相互作用に焦点を当てた理論研究など,シミュレーション研究の最前線を解説する。
著者
加藤 拓也 稲本 万里子 小長谷 明彦
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.2D105, 2018 (Released:2018-07-30)

源氏絵とは,『源氏物語』を題材とした絵画の総称である.源氏絵の絵師には土佐派をはじめ狩野派,岩佐派,など多数の流派があり,各流派独自の個性がある.これまでに見つかった作品にはどの流派の絵師が描いたかわからないものがあり,美術史の専門家たち中でも意見が分かれている.そのため新たな知見から流派を判断する手法が望まれる.近年,深層学習の一種である畳み込みニューラルネットワークの画像分類能力の向上は著しく,一部の分野では人間よりも高いという報告もある.深層学習では特徴量がデータから学習されるため,これまで人間が発見していない特徴量に基づく分類をすることが期待できる.本稿では,深層学習による物体検出手法を用いて顔を自動認識し,畳み込みニューラルネットワークにより流派を推定する.5分割交叉検証を行った結果,96.5%の精度で分類することに成功した.
著者
大谷 明希
出版者
医学書院
雑誌
助産雑誌 (ISSN:13478168)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.1034-1035, 2014-11-25

縁あって,カナダ東部ケベック州の移民権を得て17年になる。そのうちの丸3年は日本に戻り,実家である大阪府寝屋川市の大谷助産院で再修行もしたが,5年前に再びケベックに戻って来てからは,こちらで助産師として働く準備をしている。はじめはケベック助産師会に日本の助産師免許と経験をもって資格を認めてもらえるように働きかけたが,助産師会の査定によると,私の日本の教育課程(専門学校卒)ではここで働くには十分な教育を受けてないということで,今ケベック大学の4年間の助産師プログラムに在籍している。大学レベルの助産師教育を終了し働いた経験のある移民の助産師には,3,4か月のコースも用意されているのだが,このコースを修了するのも安易ではない。というのも彼女たちの実習を担当できる助産師が足りないため,実習待ちで何年も働けずにいる助産師たちがいるのだ。 ケベック大学の4年プログラムに入るのはかなり躊躇した。4年は長いと思った。また子どもも3人おり,大学は自宅から車で2時間以上も離れている。しかし,私は助産師の仕事が心から好きで,自分のためにも子どもたちのためにも,いきいき生きていくためには,やはり助産師を目指すしかないと思った。大学ではお産や助産師に関する最新の情報を得たり,今までの助産師の経験のなかでの疑問点をもっと深く調べてみたりできるだろうと期待して進学を決めた。幸い皆健康に恵まれ,子どもたちの父親も協力的だったので何とか現在も学業を続けられている。