著者
横谷 明徳 黒川 悠索 鵜飼 正敏
出版者
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

突然変異等など放射線による遺伝的変異の主要な要因であるDNAの分子損傷のメカニズムを、物理化学的観点から解明する。このため、DNAの電子状態に焦点を当て、ミクロな世界を支配する量子的性質と分子損傷の相関を実験と理論の両面から探る。特にハロゲンなど重い元素をDNAに取り込ませた生体に現れる高い放射線感受性のメカニズムを解明し、量子的観点から放射線増感剤の効果を制御するための技術開発に資する知見を得る。
著者
佐藤 さくら 田知本 寛 小俣 貴嗣 緒方 美佳 今井 孝成 富川 盛光 宿谷 明紀 海老澤 元宏
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.187-195, 2007-06-01 (Released:2007-12-26)
参考文献数
17
被引用文献数
4 2

アナフィラキシー補助治療薬のエピペン®が我が国で発売され,2004年5月から2005年10月まで当科で同薬を処方した食物アレルギー患者は50名(男33名,女17名,0.3mg:15名,0.15mg:35名)に上る.対象の平均年齢は6.8歳でアトピー性皮膚炎合併が78%,気管支喘息合併が52%であった.原因食品摂取時に呼吸器症状を96%,皮膚症状を92%に認めた.アナフィラキシー症例は48例で,食物アレルギー発症時の臨床型は36例が“食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎”,即時型症状8例,食物依存性運動誘発アナフィラキシー4例であった.アナフィラキシーを起こした理由は,初回,2回目以降も誤食によるものが最多であった.アナフィラキシー反復例は31例で,複数抗原に対してアナフィラキシーを起こした例や原因不明例も存在した.今回の処方50例中実際に使用された例は1例あり,17歳のナッツアレルギー患者において使用され著効していた.医師,コメディカルにおいてまだ認識が不十分なエピペンであるが,アナフィラキシーを起こす可能性のある食物アレルギー児に対して保護者と相談の上で処方していくべきである.
著者
侯 培紅 茶谷 明義 放生 明廣 立矢 宏
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.63, no.609, pp.997-1001, 1997-05-25 (Released:2008-02-21)
参考文献数
10

A method for the determination of dynamic stress-strain relation of materials by means of instrumented Charpy impact testing technique was proposed and its validity was shown by some measured examples. The dynamic strengths of steels (S55C, SCM3, SUJ2, SK3) hardened from HV340 to HV850 by heat treatment were obtained from stress-strain relations measured by the present method. As a result, it was found that the yield strength of hard steels increases roughly linearly with increasing hardness and that under dynamic loading was 20∼30% higher than that under static one. Those strengths are also found to become maximum in the vicinity of HV700.
著者
井尻 憲一 江口 星雄 黒谷 明美 山下 雅道 長岡 俊治 Ijiri Kenichi Eguchi Hoshio Kurotani Akemi Izumi Yamashita Masamichi Nagaoka Shunji
出版者
宇宙開発事業団
雑誌
宇宙開発事業団技術報告 = NASDA Technical Memorandum (ISSN:13457888)
巻号頁・発行日
pp.46-60, 1997-01-31

メダカ(ヒメダカ:成魚)およびイモリ(アカハライモリ:成体雌)の行動および姿勢をパラボリックフライト中の微小重力下で観察した。結果および考察は以下の通りである。メダカ:純系HO5および雑系の成魚は暗視条件下では両方とも輪を描く回転運動を示した。しかし、明視条件下ではHO5系は輪を描く回転運動を示したが、雑系は示さなかった。他の純系HB32Cはどちらの場合も回転運動を示さなかった。このように、微小重力に対する成魚メダカの行動上の反応には系による違いが存在した。イモリ:水中のイモリはゆっくりとした回転、うねりを示しながら泳いだ。空気中では、ほとんどのイモリが微小重力下においても水槽の底面にとどまっていた。何匹かのイモリは無重力時に浮かび上がってきた。それらは前肢を体側に沿わせたまま、空気中を体をうねらせて泳いだ。AAEU(水棲動物実験装置)カセット中のイモリは、AAEUカセットの厚さが成体イモリの身体の幅くらいしかないため、水中でも空気中でもカセットの表面に張り付いていた。イモリは、宇宙空間のAAEUカセットの中で産卵中でも姿勢を保ち続けることができると考えられる。MU-300型航空機からの機械的振動が実験ラックに伝わった。メダカ・イモリの行動に及ぼす影響を評価するため、振幅および周波数スペクトル解析するように振動を記録した。
著者
片岡 祐子 菅谷 明子 福島 邦博 前田 幸英 假谷 伸 西﨑 和則
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.10, pp.1258-1265, 2018
被引用文献数
2

<p> 新生児聴覚スクリーニング (以下 NHS) を全例公費で実施した場合と, 全例実施しなかった場合で, NHS および要精密検査例を含めた難聴児の診断にかかる費用, その後に必要となる教育, 福祉, 補聴等にかかる公的費用について岡山県のデータをもとに試算し, NHS の費用対効果について検討を行った. 義務教育機関については NHS 実施例の方が非実施例よりも地域の公立学校 (難聴学級, 支援学級を含む) 進学率は7.6%高かった. また NHS 実施例の方が特別児童扶養手当受給開始は4.3カ月早く, 障害児福祉手当受給率は8.8%低く, 人工内耳装用率は6.9%高かった. NHS と精査, 教育, 福祉, 補聴にかかる公的費用は, 年間出生数16,000人の自治体を想定すると, NHSを実施した場合では795,939,526円, 非実施では807,593,497円であり, NHS を実施した方が11,653,971円低く, NHS を全額公費負担にしたとしても償還できる可能性が高いという結果であった. また NHS と以後の精査にかかる費用としては, 1段階 NHS と確認検査まで実施する2段階 NHS を比較すると, 2段階 NHS の方が経済的効率は高かった. 教育および福祉費用の軽減の背景には難聴児, 障害児の義務教育の受け入れ状況の年代による変化も関与している可能性はあり, 統計学的な限界はあるものの, NHS を全額公的助成で行う意義は十分あると考える.</p>
著者
黒坂 寛 中谷 明弘 菊地 正隆 真下 知士
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

胎生期における顎顔面の形成は複雑かつ精巧に行われ、その発生過程の不具合は口唇口蓋裂等の顎顔面形成不全の原因となる。同疾患は多因子性疾患であり、胎生期における遺伝的要因と環境的要因に大きな影響を受けて発病する事が知られている。本研究では家族性に頭蓋骨早期癒合症、多数歯アンキローシスを呈する患者や口蓋裂と先天性欠如歯を持つ患者のエキソーム解析を行い新規遺伝子変異を同定した。今後は同新規遺伝子変異の機能解析を細胞株や動物モデルを用いて行い、同疾患の病態をより詳細に解析する予定である。またレチノイン酸シグナルとエタノールの過剰投与の相互作用についても顎顔面形成不全を引き起こす新規メカニズムを解明した。
著者
山内 脩 小谷 明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.4, pp.369-382, 1988-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
68
被引用文献数
11

生体系の金属イオンにはタンパグ質に組み込まれて存在するものや低分子錯体として存在するものなどがあり,それぞれなんらかの存在理由をもっている。モデル低分子錯体の挙動を明らかにすることは,生体系低分子錯体の挙動はもとより金属イオンと一般の生体物質との相互作用の様式と役割を理解する基本となるとともに,未知の錯体の存在やその機能を示唆することにもなるであろう。アミノ酸,ペプチドの錯形成反応より,低分子混合配位子錯体に鞍いて静電的相互作用,水素結合,あるいは芳香環スタッキングという弱い相互作用が配位子間に起こりうることが明らかとなった。また,DNAインターカレーターであるいくつかの芳香環含有白金(II)錯体とモノヌクレオチドとの間で希薄水溶液中安定な会合体が形成されることから,これをモデルとして核酸の関与する非共有結合性相互作用のエネルギーに関する知見を得た。
著者
臼井 和也 加井 謙二郎 妹尾 宏 大谷 明
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.19, no.38, pp.61-66, 1995-08-24
被引用文献数
4

HDTV test broadcasting using the MUSE system was started in 1991. At present HDTV is broadcasting everyday for 11 hours. The MUSE system transmits sound signals in a digital scheme. The digital signal has a region which enables transmission of data other than sound called a data channel. Using the data channel, new broadcasting multimedia services can be provided. In this paper, service functions for the multimedia service are discussed. An experimental system to evaluate the functions for the service is developed using the MUSE data channel and the HDTV display. Experimental programs are also developed for evaluation tests.
著者
堀内 由樹子 田島 祥 鈴木 佳苗 渋谷 明子 坂元 章
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.13-24, 2016

本研究では、中学生を対象とした 2 時点の縦断調査を実施し、レーティング区分ごとのゲーム ソフト利用による攻撃性および暴力に対する規範意識への影響を検討した。調査は、2008年度末と2009 年度末に実施し、東京、千葉、埼玉の公立中学校12校、1218名の中学生が分析対象となった。分析の結 果、男子学生では、C区分の暴力的ゲームソフト利用によって、1 年後の暴力に対する規範意識が低下 することが示された。B区分の暴力的ゲームソフトや非暴力的ゲームソフト利用ではこのような影響は 見られず、レーティング区分によって影響が異なることが一部で示唆された。
著者
坂元 章 渋谷 明子 笠原 章子 松尾 由美 田島 祥 佐々木 輝美 渋谷 明子 笠原 章子 (七海陽) 田島 祥 佐々木 輝美 堀内 由樹子 松尾 由美 寺本 水羽 鄭 姝 倉津 美紗子 Anderson Craig A. Gentile Douglas A.
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

3歳児クラスから高校生までの子どものゲーム利用による攻撃性、社会的適応の影響を検討した。ゲーム利用時間やゲーム上の交流経験が攻撃的傾向や社会的適応に影響することが示された。また、保護者の介入行動は子どもの学齢が低い場合には介入の効果は高いこと、子どもの学齢や介入する問題の種類で介入行動の効果が異なることが示され、子どもの発達段階や問題にあわせて介入方法を調整する必要性が示唆された。レーティングについては、家庭での認知度が低いこと、レーティング区分毎の攻撃的傾向に対する影響について一貫した結果が見られなかったことから、効果的な介入の手段とするために工夫や検討が必要であることが示された。
著者
入谷 明 三宅 正史 内海 恭三 細井 美彦
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

一卵性多子生産は一つの受精卵から数多くの同一遺伝子構成の個体を複製するという点で、胚の効率生産のみならず、遺伝的検定材料としての利用面に貢献できるものと思われる。しかし胚発生の過程において細胞は増殖と分化を繰り返して個体に発生する。胚の単離割球が個体に分化発生するためには全能性(個体への発生能力)を保持しているか、人為的に賦与させる必要がある。マウス胚では2細胞期の胚ゲノムの活性化が起こり、4細胞期胚の個々の単離割球全てには個体への発生能力がみられていない。しかし羊では8細胞期胚の単一割球の発生能力が報告されている。本研究ではウシとヤギ胚の初期胚の単離割球の発生能を調べると共に、それらの1卵性多子生産を試みた。胎児部と胎盤部に発生する部分に分化した胚盤胞期胚を均等に2分離して1卵性双生児は容易に作出された。金属刃での顕微操作で90%以上の確立で分離され、ウシでは60%以上の受胎率と20対以上の産子が得られた。8細胞期由来2割球(2/8)からはヤギではウサギ卵管中で37%の胚盤胞が得られ、4個の移植から1頭の産子が得られた。ウシでは同様にして20%の胚盤胞が得られた。他にウシでは初期分割期胚の回収が困難なため体外受精由来胚が実験に供され、1/8割球と2/8割球の胚盤胞への発生能はウサギ卵管中で20%であった。ヤギやウシでの1/8〜と2/8細胞の胚盤胞への発生能が認められたので、2/8細胞に1/2〜1/4細胞又は1/8細胞を集合させて2/8細胞の胚盤胞期以後の発生能を改善しようとした。さらに1/8細胞に未受精除核卵母細胞を電気融合させて、受精卵を再構成させた。ヤギ及びウシとも体内受精発育卵及び体外受精発育卵を材料として、8細胞からの割球の単離、融合用の除核卵母細胞の調整、及びそれらの電気融合、再構成胚の胚盤胞期への発生能の検定など一連の基礎技術が開発され、ヤギ・ウシ胚とも胚盤胞が得られているので今後の一卵性8つ子の生産が期待させる。
著者
江木 盛時 小倉 裕司 矢田部 智昭 安宅 一晃 井上 茂亮 射場 敏明 垣花 泰之 川崎 達也 久志本 成樹 黒田 泰弘 小谷 穣治 志馬 伸朗 谷口 巧 鶴田 良介 土井 研人 土井 松幸 中田 孝明 中根 正樹 藤島 清太郎 細川 直登 升田 好樹 松嶋 麻子 松田 直之 山川 一馬 原 嘉孝 大下 慎一郎 青木 善孝 稲田 麻衣 梅村 穣 河合 佑亮 近藤 豊 斎藤 浩輝 櫻谷 正明 對東 俊介 武田 親宗 寺山 毅郎 東平 日出夫 橋本 英樹 林田 敬 一二三 亨 廣瀬 智也 福田 龍将 藤井 智子 三浦 慎也 安田 英人 阿部 智一 安藤 幸吉 飯田 有輝 石原 唯史 井手 健太郎 伊藤 健太 伊藤 雄介 稲田 雄 宇都宮 明美 卯野木 健 遠藤 功二 大内 玲 尾崎 将之 小野 聡 桂 守弘 川口 敦 川村 雄介 工藤 大介 久保 健児 倉橋 清泰 櫻本 秀明 下山 哲 鈴木 武志 関根 秀介 関野 元裕 高橋 希 高橋 世 高橋 弘 田上 隆 田島 吾郎 巽 博臣 谷 昌憲 土谷 飛鳥 堤 悠介 内藤 貴基 長江 正晴 長澤 俊郎 中村 謙介 西村 哲郎 布宮 伸 則末 泰博 橋本 悟 長谷川 大祐 畠山 淳司 原 直己 東別府 直紀 古島 夏奈 古薗 弘隆 松石 雄二朗 松山 匡 峰松 佑輔 宮下 亮一 宮武 祐士 森安 恵実 山田 亨 山田 博之 山元 良 吉田 健史 吉田 悠平 吉村 旬平 四本 竜一 米倉 寛 和田 剛志 渡邉 栄三 青木 誠 浅井 英樹 安部 隆国 五十嵐 豊 井口 直也 石川 雅巳 石丸 剛 磯川 修太郎 板倉 隆太 今長谷 尚史 井村 春樹 入野田 崇 上原 健司 生塩 典敬 梅垣 岳志 江川 裕子 榎本 有希 太田 浩平 大地 嘉史 大野 孝則 大邉 寛幸 岡 和幸 岡田 信長 岡田 遥平 岡野 弘 岡本 潤 奥田 拓史 小倉 崇以 小野寺 悠 小山 雄太 貝沼 関志 加古 英介 柏浦 正広 加藤 弘美 金谷 明浩 金子 唯 金畑 圭太 狩野 謙一 河野 浩幸 菊谷 知也 菊地 斉 城戸 崇裕 木村 翔 小網 博之 小橋 大輔 齊木 巌 堺 正仁 坂本 彩香 佐藤 哲哉 志賀 康浩 下戸 学 下山 伸哉 庄古 知久 菅原 陽 杉田 篤紀 鈴木 聡 鈴木 祐二 壽原 朋宏 其田 健司 高氏 修平 高島 光平 高橋 生 高橋 洋子 竹下 淳 田中 裕記 丹保 亜希仁 角山 泰一朗 鉄原 健一 徳永 健太郎 富岡 義裕 冨田 健太朗 富永 直樹 豊﨑 光信 豊田 幸樹年 内藤 宏道 永田 功 長門 直 中村 嘉 中森 裕毅 名原 功 奈良場 啓 成田 知大 西岡 典宏 西村 朋也 西山 慶 野村 智久 芳賀 大樹 萩原 祥弘 橋本 克彦 旗智 武志 浜崎 俊明 林 拓也 林 実 速水 宏樹 原口 剛 平野 洋平 藤井 遼 藤田 基 藤村 直幸 舩越 拓 堀口 真仁 牧 盾 増永 直久 松村 洋輔 真弓 卓也 南 啓介 宮崎 裕也 宮本 和幸 村田 哲平 柳井 真知 矢野 隆郎 山田 浩平 山田 直樹 山本 朋納 吉廣 尚大 田中 裕 西田 修 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.Supplement, pp.27S0001, 2020 (Released:2021-02-25)
被引用文献数
1

日本集中治療医学会と日本救急医学会は,合同の特別委員会を組織し,2016 年に発表した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG) 2016 の改訂を行った。本ガイドライン(J-SSCG 2020)の目的は,J-SSCG 2016 と同様に,敗血症・敗血症性ショックの診療において,医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことである。改訂に際し,一般臨床家だけでなく多職種医療者にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインとすることによって,広い普及を目指した。J-SSCG 2016 ではSSCG 2016 にない新しい領域[ICU-acquired weakness( ICU-AW)と post-intensive care syndrome(PICS),体温管理など]を取り上げたが,J-SSCG 2020 では新たに注目すべき4 領域(Patient-and Family-Centered Care,sepsis treatment system,神経集中治療,ストレス潰瘍)を追加し,計22 領域とした。重要な118 の臨床課題(clinical question:CQ)をエビデンスの有無にかかわらず抽出した。これらのCQ には,本邦で特に注目されているCQ も含まれる。多領域にわたる大規模ガイドラインであることから,委員25 名を中心に,多職種(看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)および患者経験者も含めたワーキンググループメンバー,両学会の公募によるシステマティックレビューメンバーによる総勢226 名の参加・協力を得た。また,中立的な立場で横断的に活躍するアカデミックガイドライン推進班をJ-SSCG 2016 に引き続き組織した。将来への橋渡しとなることを企図して,多くの若手医師をシステマティックレビューチーム・ワーキンググループに登用し,学会や施設の垣根を越えたネットワーク構築も進めた。作成工程においては,質の担保と作業過程の透明化を図るために様々な工夫を行い,パブリックコメント募集は計2 回行った。推奨作成にはGRADE方式を取り入れ,修正Delphi 法を用いて全委員の投票により推奨を決定した。結果,118CQ に対する回答として,79 個のGRADE による推奨,5 個のGPS(good practice statement),18 個のエキスパートコンセンサス,27 個のBQ(background question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。新たな試みとして,CQ ごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報を取り入れた。J-SSCG 2020 は,多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。なお,本ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載するものである。
著者
清野 義人 中谷 明光 西川 恒夫 吉田 長作 末松 章雄 東村 一東 伴 義之
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.304-311, 2008 (Released:2008-08-06)
参考文献数
8
被引用文献数
5 5

ラベンダーオイルの品種特性の評価手法を開発するために,ラベンダーおよびラバンジンオイル中の香気成分の解析を行った.材料は茨城県つくば市で栽培した Lavandula angustifolia 9 品種,lavandin(L. angustifolia × L. latifolia)6 品種,北海道北広島市および長崎県雲仙市で栽培した lavandin 3 品種を用いた.開花直前のがくのエーテル抽出物を質量分析検出器付ガスクロマトグラフィー(GC-MS)で分析した.得られた香気成分定量結果から,ラベンダーオイルの特徴的な香気成分であるリナロールとその誘導体である酢酸リナリル,ラバンデュロールとその誘導体である酢酸ラバンデュリルおよびボルネオールと,ラバンディンオイルの特徴的な香気成分である誘導体のカンファーの含有比を算出した.同じ栽培地では採取日により含有比に経時変化が認められたが,品種間の含有比における相対的位置関係には変動がなかった.栽培地や栽培年を変えた場合,同じ品種の含有比に差がみられるが,品種間の含有比における相対的位置関係に変動はなかった.このことから,がくの発育ステージを揃えて同栽培地で同日採取することにより,含有比によるラベンダー品種特性の評価が可能であると考えられた.