著者
山本 真実 浅野 みどり 野村 直樹
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.4_733-4_744, 2020-09-20 (Released:2020-09-20)
参考文献数
29

本稿では,時間を言語として見る立場から,療育教室に通う子どもの母親が語る我が子の成長を,時間のことばとして記述することにより,対話を通じ母親が理解する成長とはどのようなものか,成長をナラティヴとして理解するとはどのようなことかを議論する。筆者(山本)は,母親との対話と療育教室での参与観察を行い,成長がどのような刻み方(punctuation)を有した時間で語られるかに注目した。母親が語る時間のことばには,①別々に語られる時間のことば,②相反する時間のことばがせめぎ合う葛藤,③全ての時間を等価に語る時間のことば,があった。母親は,どんな時間も選ばれる価値を等しく持つとする『等価な時間』という視座を獲得し,それに沿って成長を理解していった。『等価な時間』とは,成長をナラティヴとして理解するための考え方であり,これまでの成長の理解を見つめ直すときに役立つ時間のことばのポリフォニーのことである。
著者
鈴木 博人 加藤 亘 島村 誠 畑村 真一 野村 真奈美 日置江 桂
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.353-365, 2009-05-31
被引用文献数
1

本研究では,列車運転規制に利用することを目的に,日本海沿岸部における冬期(11月から3月)の寒冷前線に伴う突風に対して,レーダーエコーデータを用いた突風警戒基準を開発した.突風を発生させる可能性のある親雲の検出基準は,1km格子のレーダーエコーデータにおいて,80mm/h以上のエコー強度が10格子以上存在し,なおかつそれらの格子における最大のエコー頂高度が6km以上の場合とした.この基準を用いることで,2005年冬期から2008年冬期までの4冬期において,日本海及びオホーツク海の沿岸部で発生した人的被害を伴う全突風3事例を検出できる.また,人的被害のなかった事例を含めた全突風7事例のうち,4事例を検出できる.本研究で定めた突風検出基準を用いて,次のような列車運転規制方法を考案した.突風検出基準を超過するレーダーエコーが現れた場合には,その地点の北から南東までの方角において約38km以内の範囲を突風の警戒範囲とする.鉄道の線路がその警戒範囲内に含まれる場合には,その区間における列車の運行を停止する列車運転規制を実施することにした.この方法を羽越本線新津・酒田間及び白新線新潟・新発田間に適用したところ,これらの路線が突風の警戒範囲に含まれる時間及び回数は,4冬期の平均で1年あたり150分及び4.0回であることが分かった.この検証結果に基づき,上記区間において本研究で開発した列車運転規制の試行を2008年1月28日から開始した.
著者
野村 充利
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.7, pp.81-87, 2002-03

「光源氏は琵琶を弾かない。」私が、この修士論文において、このテーマを選んだのは、『源氏物語』において、他の楽器においては最も演奏回数の多い光源氏が、物語中三十九例見られる「琵琶」を何故一度も演奏しなかったのかについて疑問に思ったからである。そのことを明らかにするために『源氏物語』において「琵琶」を演奏する者は、どんな者たちなのであるのか、またそれらの者に何かの共通点はあるのかということについて本文を考察し、それらの者と光源氏とを比較してみたい。
著者
野村 岳志
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.123-132, 2016-03-01 (Released:2016-03-18)
参考文献数
41

肺エコー診断が集中治療領域に浸透してきている。肺エコーの利用といえば胸腔内の液体貯留の確認のみと考えられていたが,プロトコール化されたアーチファクト画像の理解により種々の病態が把握できるようになった。肺をエコーで診るというより,胸膜の動きと種々のアーチファクトを組み合わせて肺の状態を把握すると考えたほうが分かりやすい。そしてベッドサイドで短時間に種々の病態が診断できるようになり,不安定な患者状態のpoint-of-care診断に占める肺エコー診断の役割が増している。今後,異常呼吸音,副雑音などを聴診技法で教育するように,肺エコーも教育が必須となる診断技法と考える。この総説では,基本的な知識と主に診断に用いられる所見,肺エコーでの代表的な診断法,またピットフォールなどについて解説する。
著者
野村 真由美 尾崎 知伸
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.2L105, 2018 (Released:2018-07-30)

本研究では,政治家の日常の発信であるTwitterに焦点を当てる.議員のツイートから論点となりそうな単語を抽出するとともに,それらを整理し,また論点に対する立場から議員を分類する.
著者
野村 恭一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.9, pp.2046-2053, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
20
被引用文献数
3 1
著者
野村 知子 天野(吉田) 恭子 中島 幸範 高妻 和哉 須摩 茜 樋口 和彦 杉山 義宣 西村 直記
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.89-99, 2019-10-01 (Released:2019-10-24)
参考文献数
39

クロロゲン酸はコーヒー豆に多く含まれ,血管機能改善作用を有することが知られている.本研究では,クロロゲン酸飲料の単回摂取が冷水負荷後の末梢部皮膚温および皮膚血流に及ぼす効果について検討した.健常女性24名を被験者とし,クロロゲン酸飲料(クロロゲン酸270mg含有)あるいはプラセボ飲料を用いたランダム化プラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験を実施した.試験飲料摂取50分後に水温15℃の水浴に1分間両手を手関節部まで浸漬する冷水負荷試験を実施した際の指先の皮膚温と皮膚血流の変化を観察した.試験完遂者は21名であった.クロロゲン酸飲料摂取時の冷水負荷後の皮膚温の回復はプラセボ飲料摂取時と比較して有意に高く,同様に皮膚血流の回復もクロロゲン酸飲料摂取時に有意に高かった.以上の結果より,クロロゲン酸飲料摂取は冷水負荷により低下した皮膚温および皮膚血流の回復を早める効果があることが示唆された.
著者
野村 和晴
出版者
独立行政法人水産総合研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、ニホンウナギにおいて2世代でクローン系統作出を可能にする雌性発生条件について検討した。ウナギ精子を遺伝的に不活性化する紫外線の照射条件は400 μW cm-2 s-1 の強度で35~75秒間(1,400~2,800 erg/mm2)だった。第二極体放出阻止は、受精後3分に、水温0℃の海水に、5~15分間浸漬という低温処理で可能だった。さらに、第一卵割阻止を可能にする高圧処理条件について検討したところ、受精後40~45分に、9,000~10,000 psiの圧力条件で、4分間という条件によりゲノムを倍加した4倍体の作出が可能であった。
著者
野村 紀匡
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.485, 2020-10-01 (Released:2020-10-01)

今月号の特集は,「カスタマーハラスメントと情報」と題してお届けします。昨今,カスタマーハラスメントが社会問題化しつつあり,対応が急務となっています。2018年3月に厚生労働省が発表した「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書は,顧客や取引先からの著しい迷惑行為について「カスタマーハラスメント」という用語を紹介しました。同報告書はパワーハラスメントとカスタマーハラスメントとでは対応策が異なるとしながらも,労働者の安全への配慮という観点からは類似性があり,事業主のみならず社会全体でカスタマーハラスメントに対応する機運の醸成が必要である,との意見を示しています。図書館など情報に関わる業界においても,利用者と接する場面でカスタマーハラスメントにあたる事案が起こり,無視できない問題となっています。本特集では,カスタマーハラスメントが発生する背景やその事例と対策を「情報」という切り口から紹介します。はじめに池内裕美氏(関西大学)に,カスタマーハラスメントとそれをめぐる諸問題について,心理学の知見や関連分野の先行研究を踏まえて概説いただきました。田代光輝氏(慶應義塾大学)には,インターネットの普及とカスタマーハラスメントとの関連という観点から,これまで発生した問題の構造を分析いただくとともに,悪意ある攻撃への対応方法を,事例を交えて説明いただきました。梅谷智弘氏(甲南大学)には,情報技術をいかしたカスタマーハラスメント対策の一例として,大学図書館における遠隔対応ロボットの事例を,その開発や運用実験の経緯も含めて紹介いただきました。加藤俊徳氏(株式会社脳の学校)には,脳科学の観点からカスタマーハラスメントを起こしやすいカスタマーの脳とその仕組みを解説いただきました。本特集が,カスタマーハラスメントについての理解を深め,その現状や今後の対応について考える契機となれば幸いです。(会誌編集担当委員:野村紀匡(主査),青野正太,大橋拓真,寺島久美子,南雲修司)
著者
岡本 玲子 岩本 里織 西田 真寿美 小出 恵子 生田 由加利 田中 美帆 野村 美千江 城島 哲子 酒井 陽子 草野 恵美子 野村(齋藤) 美紀 鈴木 るり子 岸 恵美子 寺本 千恵 村嶋 幸代
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.47-56, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
24

【目的】本研究の目的は,東日本大震災で津波災害を受けた自治体の職員が,震災半年後に印象に残ったこととして自発的に語った遺体対応業務とそれに対する思いを質的記述的に解釈することである.【方法】対象は一自治体の職員23名であり,個別面接により被災直後からの状況と印象に残ったことについて聴取した.【結果】自治体職員として行った有事の業務に関する262のデータセットのうち遺体対応に関するものはわずか21であった.遺体対応業務には,震災後,直後からの遺体搬送,約2か月間の遺体安置所,約3か月間の埋火葬に係る業務があった.それぞれの業務に対する職員の思いは,順に,「思い出せない,どうしようもない」,「精神的にやられた,つらい」,「機能マヒによる困惑」が挙がった.【考察】避難所と物資の業務については,創意工夫や今後の展望などが具体的に語られたのに比べ,遺体対応については非常に断片的であり,話すことにためらいが見られた.遺体対応業務は通常業務とは全く異質なものであり,準備性もないまま遂行した過酷なものであった.我々は有事に起こるこのような状況について理解し,今後に備える必要がある.
著者
高橋 輝美子 神原 知佐子 佐々木 彩 高橋 まり 小田 弘明 野村 希代子 杉山 寿美
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.559-566, 2020 (Released:2020-10-01)
参考文献数
10

本研究では慢性腎臓病(CKD)患者の不安軽減に対する料理教室の効果を明らかにすることを目的として、CKDステージ3a~5の患者94名を対象に、管理栄養士が実施する料理教室への参加理由や食事療法への不安感等に関するアンケート調査を実施した。料理教室への参加状況により3年以上継続群:A群、3年未満継続群:B群、不定期・非参加群:C群の3群に区分し、Kruskal -Wallis検定と多重比較を行った。その結果、「食事療法の食事をおいしいと感じている」、「気軽に相談できる患者同士のつながりがある」の項目で3群の各群間に統計的有意差が認められた。料理教室への参加理由で、「同じ病気の患者さんと知り合いたかった、話したかったから」、「料理教室での食事が楽しみだから」でA群とC群の間に有意な差が認められた。料理教室に継続して参加することが、患者に「治療食をおいしいと感じること」と「患者同士のつながり」をもたらし、両者が疾病や食事療法への不安軽減につながることが示唆された。
著者
野村 一俊 渡辺 充伸
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.969-972, 2013-10-25

大腿骨転子部骨折の骨接合術後に低出力超音波パルス(LIPUS)照射を加えることにより骨癒合を促進できれば,ラグスクリューのカットアウトを減少させることができ,術後の荷重時痛を早期に軽減でき入院期間が短縮できる.一方,LIPUS治療の診療報酬(5,000点)の算定は,開始時に1回しか算定できないため,回復期医療機関のLIPUS治療への理解と協力が得られなければ治療の継続は困難である.理解と協力を得るためには,地域連携クリティカルパスの活用が有用である.
著者
野村 哲志 井上 雄一 中島 健二
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.987-990, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
1

パーキンソン病(Parkinson’s disease; PD)患者は,睡眠障害を生じることが多い.原因としては運動症状,夜間諸問題や精神症状だけでなく,その他の睡眠障害である日中の眠気(Excessive daytime sleepiness; EDS),レム期睡眠行動異常症(REM sleep behavior disorder; RBD),下肢静止不能症候群(Restless legs syndrome; RLS),睡眠時無呼吸症候群(Sleep apnea syndrome; SAS)などが挙げられる.とくに,RBDはPDの病前症状として注目されている.PDの1/3にRBD症状をみとめる報告があり,運動機能障害,自律神経機能,認知機能の増悪因子であるという報告もある.PDの睡眠障害の原因は多様なので,詳細を充分検討した上で対処する必要がある.しかし,PDでのそれぞれの睡眠障害の対応についてはエビデンスが不足しており,データーの蓄積が必要である.
著者
岡 朋治 竹川 俊也 西山 正吾 野村 真理子 浅山 信一郎 松本 浩典
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究課題は、銀河系(天の川銀河)中に1億個以上浮遊すると考えられる「見えない」ブラックホール、および銀河中心に遍く存在すると考えられる「超巨大ブラックホール」の種となる「中質量ブラックホール」を、星間空間に広がる分子ガスの分布・運動の情報を使用する全く新しい手法によってくまなく検出しようとするものです。この研究によって、銀河系内のブラックホールの空間・質量分布が明らかにされます。これからブラックホールの合体・成長の様子を把握することができ、これを礎にして「ブラックホール天文学」が創始されることが期待されます。
著者
坂井 南美 野村 英子 花輪 知幸 大橋 聡史 奥住 聡
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

特に若い原始星L1527について、化学診断を通したエンベロープ・円盤構造の同定、円盤のワープ構造の発見など、独自の手法による成果を挙げてきた。このような初期円盤構造は、原始惑星系円盤で捉えられているリングやスパイラル構造、また、系外惑星における軌道面の多様性の起源の端緒を捉えたものであり、より多くの初期円盤の観測でその一般性を検証することが求められる。数auスケールでの円盤構造の高分解能観測によりこの課題に応えるとともに、多波長観測により、ダスト成長を円盤構造形成過程との関係から解明する。これらを通し、"原始星進化の過程で、惑星形成がいつ始まるか"という問題を提起し、その大要を明らかにする。