著者
松島 俊明 金森 克洋 大照 完
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.354-361, 1985-08-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1 4

早稲田大学のプロジェクトチームは, 楽譜を読み, 10本の指と両足で電子オルガンを演奏する知能ロボットWABOT-2を開発した.このロボットは, 人間と人工の声で会話することができる.この論文では, 楽譜のデータ構造に基づいた高速の専用ハードウエアによる検出と, 楽譜の知識を利用したアルゴリズムを用いて, 印刷楽譜だけでなく, インスタント・レタリング楽譜も約15秒で認識できる本ロボットの視覚システムについて報告する.印刷楽譜の自動認識については, すでに幾つかの報告があるが, ロボット肩上に設置されたカメラで, 譜面台上に無造作に置かれて湾曲・変形した楽譜を実時間で読み取らなければならないという演奏ロボットの目として十分に使用できるシステムはない.視覚系の出力はロボットの手に直接渡されるため, 演奏不能な不正データの出力は許されない.したがって本システムでは楽曲規則および楽譜のもつ冗長性を利用して, 識別結果の矛盾と不協和音の検査をすると共に, その誤り訂正および補間を行い, 音楽的により正しい認識結果を得ている.3パートからなる童謡程度の市販エレクトーン楽譜1枚について, 処理速度15秒以内, 認識率ほぼ100%の結果を得ており, 実時間演奏ロボットの視覚系としての機能を充分達成することができた.
著者
荒金 英樹 巨島 文子 神山 順 豊田 義貞 堀 哲史 松本 史織 八田 理絵 仁田 美由希 山田 圭子 樋口 眞宏 山口 明浩 草野 由紀 関 道子 永見 慎介 華井 明子 竹浪 祐介 森野 彰人 樹山 敏子 和田 智仁 村田 篤彦
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.1095-1100, 2015 (Released:2015-10-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

京都では食を支える地域作りを目的に様々な連携体制の構築に取り組んでいる。医科歯科連携体制として「京都府口腔サポートセンター」、京都市山科区での多職種連携を目指した「山科地域ケア愛ステーション」、京都府、滋賀県での食支援を目的とした「京滋摂食嚥下を考える会」を紹介する。京滋摂食嚥下を考える会では地域連携の基盤として嚥下調整食共通基準の導入と独自に作成した「摂食・嚥下連絡票」を提案、京都府基準として関連職能団体等の承認を得た。この基盤を背景に、地域連携を促進するため、研修会や調理実習を各地で開催している。また、京料理をはじめとした京都の伝統食関連産業の団体と連携し、介護食を地域の食文化と発展させる活動も展開している。平成27年度からは京都府医師会などの職能団体の協力のもと、府内各地での多職種、施設間連携を促進させるため、市民向けの食支援相談窓口を設置、府民の食支援と啓蒙活動を計画している。
著者
金丸 裕志 Yuji KANAMARU
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.29-40, 2023-03-01

民主政治における「大統領制化」の議論は、ポグントケらの研究を中心にこれまで数多く議論されてきた。本稿ではこの「大統領制化論」を検討し、その内容を「政策決定過程」と「選挙過程」とに分けて考えることでよりよく理解が進むことを示す。そして彼らの大統領制化論に対する批判のなかで、それを政治の「個人化(personalization)」とする議論を紹介し、とくに「選挙過程」に着目することで、今日、先進民主主義諸国だけでなく新興民主主義国や途上国でもみられるポピュリズムや新興政党といった政治の現象は、むしろ政治の「個人化」として理解する方が妥当であると結論付ける。
著者
新井 智之 金子 志保 藤田 博曉
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.539-544, 2011 (Released:2012-02-09)
参考文献数
25
被引用文献数
20 10

目的:本研究では決定木分析を用いて,大腿骨頸部骨折患者の歩行自立に関わる要因を明らかにし,歩行自立を判断するためのモデルを提示することを目的とした.方法:対象は大腿骨頸部骨折を受傷し,退院時に歩行能力の評価が可能であった者108例(男性26例,女性82例,平均年齢77.2±12.8歳)とした.検査項目は年齢,性別,Body mass index(BMI),入院期間,術式,骨折分類,脳神経障害の既往の有無,骨折の既往の有無,退院時の理学療法評価として術側と非術側の膝伸展筋力,10 m最大歩行時間,Functional reach test(FRT),Mini Mental State Examination(MMSE)とした.対象者を退院時の歩行能力により,自立群と非自立群2群に分け,両群間で各評価項目における平均値の比較をt検定,χ2検定を用い解析した.また2群間の比較において有意差をみとめた項目を独立変数,退院時の歩行自立度を従属変数とした決定木分析を行った.結果:全対象者108例の内,自立群は55例,非自立群は53例であった.2群間の比較で有意差がみられた項目は,年齢,性別,術式,骨折分類,脳血管障害の既往,術側と非術側の膝伸展筋力,10 m最大歩行時間,FRT,MMSEであった.決定木分析の結果,対象における正分類率85.2%であり交差検証による誤差率は0.042であった.歩行自立の要因として非術側の膝伸展筋力,FRT,MMSE,脳血管障害の既往が選択され,4つの要因により7群に分類される決定木が示された.結論:決定木分析の結果から,大腿骨頸部骨折患者では非術側の下肢筋力から評価し,その値によって動的バランス能力や合併症の有無を確認することで歩行自立を判断できる可能性が示された.
著者
上田 智 金光 理
出版者
福岡教育大学
雑誌
福岡教育大学紀要. 第三分冊, 数学・理科・技術科編 = Bulletin of University of Teacher Education Fukuoka. Part III, Mathematics, natural sciences and technology (ISSN:0532811X)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.49-59, 2023-03-10

“Development of High-Tech Teaching Materials for Earth Science Education” (Ueda et al., 2022) was astudy on how to develop a WebAR planet globes using A-Frame. By actively introducing the developedhigh-tech teaching materials to earth science education, Ueda et al.(2022) attempted to arouse students’interest in learning and to realize effective learning through various expressions unique to the digitalenvironment. The authors demonstrated the usefulness of high-tech teaching materials in earth scienceeducation. However, several points for improvement were raised. One of them is the addition of pinchoperation to the developed high-tech teaching materials. Therefore, the purpose of this study is to improvethe functionality of these teaching materials by adding a program that enables pinch operation. In addition,a method of comparing planets by WebVR using a HMD (Head Mounted Display) is also discussed.
著者
尾形 敏郎 金子 達夫 大林 民幸 佐藤 泰史 村井 則之 垣 伸明 森下 靖雄
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.317-319, 1999-09-15 (Released:2009-04-28)
参考文献数
11

症例はエホバの証人信者の45歳の女性で, 動悸および息切れを主訴とした. 右室流出路狭窄を伴うバルサルバ洞動脈瘤破裂の診断のもとに, 手術を施行した. 術中所見からは, 右室二腔症と心室中隔欠損症を合併したバルサルバ洞動脈瘤破裂であった. 無輸血下にバルサルバ洞動脈瘤切除およびパッチ閉鎖, 異常筋束切除および右室流出路パッチ拡大, 心室中隔欠損直接閉鎖を行った. 先天性心疾患の中でバルサルバ洞動脈瘤破裂と成人の右室二腔症はおのおの頻度が少なく, 両者の合併はさらに稀である. 両者を合併したエホバの証人信者の手術症例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告した.
著者
金井 嘉宏 嶋田 洋徳 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.159-170, 2003-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、脅威刺激に対する注意バイアスに対処スタイルが及ぼす影響について検討することであった。大学生50名を実験参加者とし、ドットプローブ課題を行った。単語の呈示条件は500ms,1500msの2条件であった。上下に対呈示された単語が消えるとすぐに、どちらかの単語と同じ位置にドットが呈示された。参加者はドットの位置の判断をボタン押しで求められた。注意バイアス得点を従属変数とする分散分析の結果、対処スタイルの主効果が有意傾向であった。対処スタイルによって注意の向け方は異なるが、注意の方向は明らかにされなかった。また、500ms条件では、脅威語に対する注意の向け方に対処スタイルによる違いはみられないが、1500ms条件ではsensitizersの注意の向け方は明らかにされなかったが、repressorsは脅威語に注意を向けることがわかった。本研究の結果は、不安の情報処理モデル理論から考察された。
著者
金谷 正敏 大谷 昇 高橋 淳 西川 猛 勝野 正和
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.642-652, 1995-07-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
86
被引用文献数
2

広禁制帯幅半導体シリコンカーバイド(SiC)は,耐環境用デバイスやパイスーデバイス用半導体材料として,また, GaNなどの基板としても注目されている.従来, SiCバルク単結晶の育成は困難であったが,最新の改良型昇華法成長め研究開発により,大口径バルク単結畠成長が可能になった.6H形および4H形SiCの単結晶が成長できるようになり,数々のデバイス試作が行われている.結晶性改善においては種々の欠陥の中でデバイス作製上問題となるマイクロパイプ欠陥の低減も進展している.本稿では,進展著しいバルクSic単結晶研究の現状と今後の課題を述べる.
著者
志賀 裕二 金谷 雄平 河野 龍平 竹島 慎一 下江 豊 栗山 勝
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.418-423, 2016 (Released:2016-06-22)
参考文献数
26
被引用文献数
3 5

症例は53歳の女性である.不眠とうつ病で発症し,進行性認知機能低下,具体的な幻視,パーキンソン症状,イオフルパンSPECTで線条体への著明な集積低下,IMP-SPECTで後頭葉の脳血流低下などを認め,レヴィ小体型認知症(dementia with Lewy bodies; DLB)と診断した.亜急性に舌突出と咬舌が出現し救急入院した.レボドパ,ロチゴチン,ロピニロールの高容量投与で,ドパミンD1受容体が長期に刺激状態で,急激な増量で生じた舌ジストニアと診断した.また声門閉鎖を伴う喉頭ジスキネジアによる呼吸困難も出現した.抗精神病薬による薬剤過敏性およびレボドパ過剰投与などが関連した病態と推定され,致死的にもいたる症例であった.
著者
川又 華代 金森 悟 甲斐 裕子 楠本 真理 佐藤 さとみ 陣内 裕成
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
pp.2022-017-E, (Released:2023-03-19)

目的:身体活動の効果のエビデンスは集積されているが,事業場では身体活動促進事業は十分に行われておらず,「エビデンス・プラクティス ギャップ」が存在する.このギャップを埋めるために,本研究では,わが国の事業場における身体活動促進事業に関連する組織要因を明らかにすることを目的とした.対象と方法:全国の上場企業(従業員数50人以上)3,266社を対象に,郵送法による自記式質問紙調査を行った.調査項目は,身体活動促進事業の有無,組織要因29項目とした.組織要因は,事業場の健康管理担当者へのインタビューから抽出し,実装研究のためのフレームワークCFIR(the Consolidated Framework For Implementation Research)に沿って概念整理を行った.目的変数を身体活動促進事業の有無,説明変数を組織要因該当総数の各四分位群(Q1~Q4),共変量を事業場の基本属性とした多重ロジスティック回帰分析を行った.最後に,各組織要因の該当率と身体活動促進事業の有無との関連について多重ロジスティック回帰分析を行った.結果:解析対象となった事業所は301社であり,98社(32.6%)が身体活動促進事業を行っていた.Q1を基準とした各群の身体活動促進事業の調整オッズ比は,Q2で1.88(0.62–5.70),Q3で3.38(1.21–9.43),Q4で29.69(9.95–88.59)であった(傾向p値 < .001).各組織要因と身体活動促進事業との関連については,CFIRの構成概念のうち「内的セッティング」に高オッズ比の項目が多く,上位から「身体活動促進事業の前例がある」12.50(6.42–24.34),「健康管理部門の予算がある」10.36(5.24–20.47),「健康管理部門責任者の理解」8.41(4.43–15.99)「職場管理者の理解」7.63(4.16–14.02),「従業員からの要望」7.31(3.42–15.64)であった.考察と結論:組織要因該当数と身体活動促進事業の有無に量反応関連が認められ,組織要因の拡充が身体活動促進事業につながる可能性が示唆された.特に,社内の風土づくりや関係者の理解の促進が有用であると推察された.
著者
金子 惇
出版者
横浜市立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究の目的は目的①:わが国の保健医療分野で使用可能なへき地尺度を開発する目的②:へき地尺度を用いたへき地医療に関する臨床研究ネットワークを構築するの2点である。へき地と都市部における疾患や患者層の比較、医師、看護師などの医療従事者を確保するため人的・経済的支援の分配などはいずれも重要な検討課題だが、「へき地」に含まれる地域は多様であり、段階的かつ客観的なへき地尺度に基づいて検討する必要がある。保健医療分野におけるへき地尺度の開発は本邦初であり、既存の医師偏在指標と補完的に用いることにより、へき地医療の可視化、政策立案に必要な臨床研究の促進に繋がると考えられる。
著者
田中 良之 金 宰賢
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

まず、記紀にあらわれるモガリは期間に長短があること、また、古墳主体部の墓墳周辺の存在する柱穴が「殯屋」であるこという見解が一部で定説扱いされていることを確認した。このうち、古墳主体部周辺の柱穴については、柱穴が墓墳に切られた例もあり、墓墳内に石棺を囲んで掘られた例もあることから、造墓前や埋葬前の「結界」である場合があると考えた。この他にも、古墳築造時の作業用の覆い屋であるとの指摘もあることから、少なくとも「殯屋」は否定されることが明らかになった。次に、松山市葉佐池古墳1号石室出土人骨付着のハエ蛹を実態顕微鏡下で観察した。その結果、ハエの種はニクバエ属とヒメクロバエ属のものであることが明らかとなった。この両者のハエの生態が、前者は死後すぐに死体にたかり産卵する一般的なハエであるのに対して、後者は死体が腐敗した後にたかり産卵する種であることから、葉佐池古墳1号石室出土人骨は、死後少なくとも1週間前後は、ハエが活動するような明かりのある場所に置かれており、埋葬されていなかったことが明らかとなった。また、えびの市島内地下式横穴墓において、埋葬後腹部に発生したガスによって骨盤腔外に排出された便が検出されたことから、ガスが腹腔内に充満する期間、おそらくは2〜3週間の間にはモガリを終えて埋葬されたことがうかがえた。以上から、古墳時代のモガリは、古墳上で行われたものではなく、1週間前後以上で2〜3週間以内の間行われるのが通常であった可能性が高く、香川県宮ヶ尾古墳線刻壁画のような小屋状の施設が、これらの所見に最もふさわしい「殯屋」のあり方であると考えられる。また、記紀に記載されたモガリ期間の長さは、死者の階層の高さに基づく墳墓築造と葬送儀礼の長さを反映したものと考えられる。
著者
金 ヨンロン
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.63-76, 2014-05-15 (Released:2017-06-01)

太宰治の『パンドラの匣』は、一九四五年一〇月二二日から翌年一月七日にかけて「河北新報」に連載された。連載の期間は、初期占領改革が行われる一方で、天皇制の維持、即ち象徴天皇制の成立への道を露呈する時期であった。まさに戦中から戦後へ、軍国主義の<断絶>と天皇制の<連続>の運動が同時進行しているこの時期、『パンドラの匣』は、「健康道場」というフィクショナルな空間を創造し、「玉音放送」が流れた一九四五年八月一五日を<断絶>として受け入れる青年に対して、戦後日本の思想を「天皇陛下万歳!」という叫びに求める<連続>の主張を突きつける様相を描いている。本稿では『パンドラの匣』における<断絶>と<連続>のせめぎ合いを同時代において捉え直すことで、その批評性を問う。その際、手紙の形式に注目し、共通の記憶を呼び起こす「あの」という空白の記号に日付という装置が加えられ、様々な同時代の文脈が喚起される過程を明らかにする。
著者
菅沼 克昭 金 槿銖 根本 規生 中川 剛
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

すずウィスカは、衛星の機器故障を引き起こし深刻な問題となっているが、未だにメカニズムが未解明であった。本研究では、 過去に取り組み例の無い真空中の温度サイクル環境におけるウィスカ形成を調べ、大気中よりも真空中に於いてウィスカが細く長く成長することを明らかにした。さらに、すず表面の酸化膜の存在が影響することを突き止め、真空中ばかりで無く、大気中における温度サイクル・ウィスカ成長メカニズムを解明した。