著者
田中 俊太郎 倉爪 亮 長谷川 勉 米田 完 玉木 達也
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2003, 2003
被引用文献数
1

2足歩行機械の安定動歩行を実現するために, 簡単な単一質点モデルで計算された重心軌道を多質点モデルを用いた収束計算により修正することで, 動的安定点に近い ZMP 軌道, 重心軌道を同時に得る手法を提案する。
著者
長谷川 夕希子 中神 朋子
出版者
医学書院
雑誌
糖尿病診療マスター (ISSN:13478176)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.78-79, 2015-01-15

Non-caloric artificial sweeteners(人工甘味料;NAS)は安価で,砂糖の何倍もの甘味をもつ成分で,天然には存在せず人工的に合成されたものです.サッカリン,スクラロース,アスパルテームなどがあり,カロリーを抑えて甘味を感じるため,耐糖能異常や2型糖尿病患者の嗜好品によく使われてきました.一方で,NASと体重増加や2型糖尿病の発症リスク上昇の関連も報告されており,NASの使用に関しては議論の余地があるところです.多くのNASは消化管で消化されず,そのまま通過するため,腸内細菌叢に影響を与えるのではないかといわれます.また,腸内細菌叢の変化がメタボリックシンドロームと関連することも多くの研究結果から明らかとなっています.そこで,本研究ではNASが腸内細菌叢や耐糖能にどのように影響するか検討しています. 方法としては,10週齢のC57BL/6マウスに,それぞれサッカリン,スクラロース,アスパルテーム,スクロース,グルコースを飲水中に混ぜて投与し,11週後に経口ブドウ糖負荷試験を行いました.するとサッカリン,スクラロース,アスパルテームを投与したマウスは耐糖能異常を示しました.
著者
鬼頭 真弓 長谷川 將 井上 正之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.82-85, 2013-02-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4
被引用文献数
1

キチンに担持させた金(III)化合物を用いる,還元性有機化合物の検出における反応条件を再検討した。反応時に用いる塩基を従来の炭酸ナトリウムから炭酸アンモニウムに変えることで,金ナノ粒子の生成による呈色が鮮やかな色調に変化した。またキチンに担持させる金(III)化合物の量を従来の五分の一まで減少させることができた。さらに,銀鏡反応やフェーリング液の還元では検出が困難であったギ酸エステルの還元性も検出できることが明らかとなった。
著者
倉賀野 妙子 長谷川 美幸 和田 淑子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.307-314, 1984

クッキーについて, 定速圧縮破断による破断特性を明らかにするとともに, これらの基礎的物性値が硬さ, もろさなどの官能評価の客観的指標となりうるかどうかについて検討した.<BR>クッキーは小麦粉濃度を40, 45, 50%の3水準とし, バター, 砂糖, 卵の配合比はScheff&eacute;の3成分系の単純格子計画法に従って, おのおの9試料とした.応力-ひずみ曲線の測定はダイナグラフによった.<BR>1) みかけの応力-ひずみ曲線は材料配合比により著しく異なった.また, クッキーの破壊はみかけの破断ひずみが0.19~0.33cm/cmの少ない変形領域で発生し, みかけの破断応力は1.08~5.73×10<SUP>7</SUP>dyn/cm<SUP>2</SUP>, みかけの破断エネルギーは1.09~6.05×10<SUP>6</SUP>erg/cm<SUP>3</SUP>であった.<BR>2) みかけの破断応力<I>P<SUB>f</SUB></I>とみかけの破断エネルギーEnの間には高い相関が認められ, 回帰式<I>E<SUB>n</SUB></I>=-0.21+0.97<I>P<SUB>f</SUB></I>を得た.<BR>3) クッキーの材料配合比とみかけの破断応力, みかけの破断エネルギーとの間におのおの3次の推定式, 推定曲線を得た.<BR>4) みかけの破断応力<I>P<SUB>f</SUB></I>と官能による硬さの評価値<I>S<SUB>H</SUB></I>, みかけの破断エネルギー<I>E<SUB>n</SUB></I>と官能によるもろさの評価値<I>S<SUB>B</SUB></I>との間に, おのおの<I>S<SUB>H</SUB></I>=6.33log<I>P<SUB>f</SUB></I>-2.47, <I>S<SUB>B</SUB></I>=-3.46log<I>E<SUB>n</SUB></I>+1.18を得た.定速圧縮破断時のみかけの応力-ひずみ曲線から, クッキーの硬さ, もろさで表せる官能特性の程度を同時に推測できることが示唆された.
著者
金本 麻里 中村 敏健 明地 洋典 平石 界 長谷川 寿一
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第9回大会
巻号頁・発行日
pp.63, 2011 (Released:2011-10-02)

サイコパシーは、反社会的特徴を持つ人格障害であり、他者の心的状態の認知能力の障害との関連が臨床研究により示されている(Blair, 2005)。先行研究(Ali et al., 2009;2010)では非臨床群を対象に表情・視線・音声刺激が表す感情についての認知課題が用いられ、高サイコパシー傾向者が感情理解に障害を持つことが示唆された。本研究では、その拡張として、感情的側面を含まない他者の心的状態の認知にも障害が見られるかを、大学生を対象に、Dumontheilら(2010)が成人を対象に作成した心の理論課題の成績とサイコパシー尺度得点との関係を見ることで検討した。この課題は相手の視点に立った振る舞いが遂行に必要となるコンピューター上の課題である。その結果、サイコパシー傾向と心の理論課題の誤答数とに正の相関が見られた。つまり、サイコパシー傾向が高いほど感情的側面を含まない他者の心的状態の認知に障害が見られることが示唆された。
著者
稗田 蛍火舞 砂川 陽一 刀坂 泰史 長谷川 浩二 森本 達也
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.146, no.1, pp.33-39, 2015 (Released:2015-07-10)
参考文献数
73
被引用文献数
2 2

高血圧は心血管疾患,脳卒中などの疾患の発症につながる動脈硬化の主要危険因子の一つである.多くの臨床研究から血圧を管理することは,これらの罹患率,死亡率の減少につながることが明らかになっている.しかしこれらの合併症に対する予防効果は降圧薬を用いた治療をもってしても50%未満である.近年,健康的な食事が生活習慣病を予防するだけでなく,治療につながるのではと考え,食品の持つ効果について注目が集まっている.塩分制限,適度なアルコール摂取,およびカロリー制限などの食生活の改善が高血圧の予防のために重要である.また,古くから日本と中国で日常的に飲まれてきた緑茶は降圧効果を有すること,さらにはその有効成分はカテキンであることが明らかとなった.このように降圧効果を持つ食品に関して多くの研究が行われ,これらの機能性食品がレニン・アンジオテンシン系抑制や抗酸化作用,利尿作用,交感神経抑制作用,および血管拡張作用を有する一酸化窒素の合成促進作用などによって降圧効果を示すことが報告されている.今後これらの機能性食品を土台にして,日常の食生活を改善することによって血圧を管理し,健康寿命を延ばすことができると期待される.本総説は動物実験やヒト臨床試験で降圧効果を有することが報告されている機能性食品とその成分についてまとめたものである.
著者
伊藤 真二 山口 仁志 小林 剛 長谷川 良佑
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.529-536, 1996-06-05
参考文献数
12
被引用文献数
14 10

グロー放電質量分析法(GD-MS)により,ニッケル基耐熱合金中の合金元素(Al, Si, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Cu, Y, Nb, Mo, Ta及びW)並びに微量元素(B, C, Mg, P, S, Zn, Ga, As, Zr,Cd, Sn, Sb, Te, Pb及びBi)の定量法を検討した.スペクトル干渉などについて詳細に調べた結果, Se, Agを除いてその影響がないことを確認した.JAERI CRM, NIST SRM, Bs CRMs, BCS CRMs及び自家製Ni合金標準試料の16種を測定し,表示値とGD-MS測定値から得られた相対感度係数(RSF)を評価した.RSF値による補正を行ったGD-MS定量値の正確さ(σ<SUB>d</SUB>)をファンダメンタル・パラメータ法-蛍光X線分析法(FP-XRF)による値と比較した結果, Cr, Feではやや劣るものの,そのほかの合金元素はFP-XRFによる定量値の正確さとほぼ同等であった.繰り返し分析精度は, P, Sを除いて相対標準偏差(RSD)で2.5%以内と良好な値であった.実用ODS合金MA 6000の合金成分の定量値は,FP-XRF定量値とよく一致した.又,有害微量不純物元素などの定量結果は,黒鉛炉原子吸光法による値あるいは化学分析値と一致し,本法がNi基耐熱合金の合金成分から微量成分元素定量に適用できることを確認した.
著者
長谷川 瞬 國貞 雄治 坂口 紀史
出版者
公益社団法人 日本表面真空学会
雑誌
表面と真空 (ISSN:24335835)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.344-349, 2019-06-10 (Released:2019-06-10)
参考文献数
23
被引用文献数
1

We investigated the adsorption states and diffusion behavior of Pt and Fe atoms on pristine and various light-element-doped graphene using first-principle calculations based on density functional theory to reveal the support that can keep particle size of metal clusters for a long time. We show a weak interaction between Pt, Fe atoms and pristine graphene. The corresponding diffusion barrier for a Pt atom on pristine graphene is only 0.14 eV, which causes rapid agglomeration of Pt clusters. However, light-element-doped graphene shows large diffusion barrier for metal atoms. Notably, O, Si and P doped graphene show large diffusion barrier for both Pt and Fe atoms. Therefore, these light-element-doped graphene is a promising support for Pt and Fe clusters.
著者
長谷川 守 服部 卓 猿木 信裕 石埼 恵二 木谷 泰治 町山 幸輝 藤田 達士
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.85-91, 1996-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1

McGill Pain Questionnaire (MPQ) は多くの国で標準化された Pain Rating Scale (PRS) であるが, 言語や文化の違いから, わが国では, 標準化されていない. 今回, われわれは慢性疼痛患者105人を対象に Meizack らの方法論に準拠した日本語版MPQ (J-MPQ) (疼痛表現は佐藤らによる) と他のPRSを同時に施行しJ-MPQの信頼性と妥当性を検討した. さらにSTAI (State-Trait Anxiety Inventory: 状態-特性不安尺度) によって状態不安とJ-MPQ得点との関連性を検討した. 検討の結果, J-MPQの信頼性と妥当性は証明されPRSとしての有用性は確認された. 各 subscale 間は比較的高い相関があり, 痛みの構造を評価する尺度としては独立性に問題があることがわかった. そのため, 他のPRSと最も相関が高く, 各 subscale の総得点であるPRI-T (Total score of the Pain Rating Index) をPRSの代表として使用するのが望ましいと考えられた. また, STAIとJ-MPQには低い相関しかみられず不安とJ-MPQ得点との関連性は低いと考えられた.
著者
長谷川 公一
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2004

本論文では,現代日本の〈環境運動〉とそれが担うべき〈新しい公共圏〉について,環境社会学のパースペクティブから考察する。//政治・経済の諸改革の閉塞状況は「失われた10年」と呼ばれて久しいが,それとは対照的に,1990年代以降,日本の市民社会の成熟をうながし,環境問題に関する公共圏を少しづつ開き,活性化させようとする動きがあることに注目する。四大公害訴訟や大阪空港公害訴訟・新幹線公害訴訟に代表されるような,被害者および被害者支援運動中心の批判・告発型の運動から,環境問題・環境政策をめぐっても,政策志向的な,さらにはコミニュティ・ビジネス志向的な運動への大きな転換の動きがある。北欧諸国やドイツ,アメリカ合州国などと比較して,日本の環境政策の政策決定過程はなお閉鎖的ではあるが,〈新しい公共圏〉は,〈市民〉に向かって次第に開かれつつある。//〈公共圏〉とは〈公論形成の場〉,〈社会的合意形成の場〉であり,公共的な関心をもつ人びとが集って,対話をつうじて〈公益〉とは何かを討議し,社会的実践を行い,〈公共性〉と〈共同性〉という価値を実現し,政治教育を行う場である。旧来の閉ざされた公共圏に代わるこのような規範的な公共圏のあり方を,本論文では〈新しい公共圏〉と呼ぶ。//制度化に成功し,セカンド・ステージを迎えた環境社会学も,〈現場〉の運動の変化に対応して,政策分析能力・政策決定過程の分析能力,さらには,政策形成能力と政策構想能力を高めていくべきである。//環境経済学や環境法学と比較したとき,環境社会学の独自なパースペクティブは環境運動の分析にある。本論文は,1960年代の公害反対運動・住民運動から現在に至るまでの日本の環境運動の構造と動態を分析したものである。環境基本法や特定非営利活動促進法の制定,国際化・情報化などを契機に,日本の環境運動や環境NGO/NPOも,組織性と専門性,政策志向性を強めつつある。ヨーロッパやアメリカでは,とくに1980年代後半以降,政府・行政,企業とのあいだで,環境運動が従来のような敵対的な関係にとどまることなく,〈コラボレーション〉という,〈(1)対等で,(2)領域横断的で,(3)プロジェクト限定的で,(4)透明で開かれた協働作業・協働関係〉を構築しつつ,とくに従来国家や産業界との間での対立的なイッシューの典型だった原子力政策・エネルギー政策の分野においても,さまざまな政策転換の試みがなされている。//環境運動は未来志向的な〈例示的実践〉であり,〈先導的試行〉であるがゆえに,環境運動と公共圏の動態に焦点をあてた本論文は一つの現代社会論でもありうる。//全体は,4部からなる。//第I部「環境社会学の問題構成」は,環境社会学の全体的な動向を射程とした学問論である。とくに執筆者の依拠する「環境問題の社会学」に焦点をあてて,課題提示に努めた。//日本でも,ヨーロッパ諸国などと同様に,1990年代に環境社会学の組織化と制度化がすすんだ。内外の研究動向をふまえ,ほぼ2000年代以降を環境社会学の〈セカンド・ステージ〉と規定することができる。近年環境社会学会は急激に会員が伸びつつあるが,環境社会学と既存の社会学との間の距離が拡大するにつれて,環境社会学はアイデンティティ・クライシスに陥りかねないことを指摘し,セカンド・ステージの課題として,環境社会学の問題構成の特質,課題・方法・価値前提を,現場との関係で「政策科学化」が,主流の社会学との関連で「理論的深化」が,隣接の環境研究との関連で「学際化」が,海外の研究者との関係で,海外に発信する「国際化」が課題であると指摘する。おもに環境経済学や環境法学,既存の社会学との関係を考察し,政策科学化の必要性と意義を論じる。(第1章)。//では,環境社会学の学問的アイデンティティをどこに求めるべきか。環境問題の多様化がしばしば指摘されるが,共通の構造として,環境問題のダウンストリーム性を指摘することができる。生産・流通・消費,あるいは生産活動と生活過程中心のこれまでの社会科学および社会学のあり方に対して,環境社会学,とくに「環境問題の社会学」のアイデンティティは,排出・廃棄など,消費以降の〈ダウンストリーム〉へのまなざしにあることを説き,「〈ダウンストリームの社会学〉としての環境社会学」を提唱する(第2章)。//第II部「環境運動の社会学」は環境運動に関する理論的・概括的考察を課題とする。//まず,1960年代後半以来の日本の環境運動を,利害当事者としての地域住民を中心とする生活防衛的な住民運動と良心的構成員としての〈市民〉が普遍主義的な価値の防衛をめざす市民運動とに大別し,産業公害・高速交通公害・生活公害・地球環境問題の4類型を整理し,産業公害から地球温暖化問題に至る歴史と問題構造を概括する。現時点で,被害が顕著な〈現場〉をもたず,影響が不可視的であることに着目し,地球温暖化問題への対応の構造的な困難さを社会学的に説明する(第3章)。//ヨーロッパやアメリカと比較したとき,日本の環境運動の展開にとって,最大の隘路は人的資源・経済的資源の動員の困難さという壁である。オルソンのフリーライダー問題の提起をふまえて,フリーライダーを抑制しうるような目的的誘因・連帯的誘因の提供の意義と動員のあり方,環境NPOの予防的・監視的機能について考察する(第4章)。//環境経済学・環境法学に代表される社会科学的な環境研究のなかで,環境社会学のパースペクティブの独自性は環境運動の分析にある。〈現場〉の環境運動が,環境社会学の誕生とその後の展開過程に対してもちえた国内的・国際的文脈での意義を整理・検討し,近年の社会運動論の研究動向をふまえ,社会運動論の資源動員論・政治的機会構造論・文化的フレーミング論を統合する〈社会運動分析の三角形〉モデルを提唱する(第5章)。//〈現場〉の環境運動が急速に政策志向性を高めつつあるなかで,政策志向的な分析能力を高め,社会学独自のオールタナティブな政策提案を志向することは,環境社会学にとっても喫緊の課題である。社会学の政策科学化が遅れた構造的要因と,政策科学化することの社会的意義を述べ,政策科学としての環境社会学の可能性を展望する(第6章)。//第III部「環境運動の展開」は,環境運動の画期をなした1970年代から今日までの4事例に即し,それぞれの運動過程とそれらが関与していた公共圏の特質と限界を分析する。//70年代の典型事例として,国家による公共性の独占を批判し,新幹線の「影」としての騒音振動公害を集団訴訟によって社会問題として提起した新幹線公害訴訟の公共圏創出の意義と,司法消極主義の壁,弁護団主導化などの運動論的な課題を分析する(第7章)。//チェルノブイリ事故後の1987年,都市部の主婦層を中心に高揚した反原発運動は80年代の典型事例である。自己表出性とネットワーク性を重視し,日本における「新しい社会運動」の典型的な特質を備えていた。その構造と動態を分析し,そのような特性ゆえに一過的な高揚にとどまらざるをえなかったことを明らかにする(第8章)。//新潟県巻町の原発建設をめぐる住民運動は,1996年に日本初の住民投票を実現し,原発建設を事実上中止に追い込んだ。90年代の成功した環境運動の代表である。この運動がなぜ成功しえたのかを,青森県六ヶ所村の核燃料サイクル施設建設反対運動との対比のなかで,政治的機会構造・資源動員・フレーミングに注目して分析する(第9章)。//2000年代の典型事例として,原子力発電のような政府・事業者との対決型イッシューをめぐっても,環境運動が政策志向性を高めてきたことを国内外のグリーン電力の展開例をとおして分析する。とくに執筆者が提唱者となった,日本初のグリーン電力運動の背景と成功の要因,意義を,政治的機会構造・資源動員・フレーミングに注目して分析し,政府セクター・営利セクター・市民セクター間の相互浸透の必要を説く(第10章)。//第IV部「市民セクターと公共圏の変容」は,環境運動の変容と成熟,それに対応する環境問題と環境政策をめぐる公共圏の構造転換に焦点をあてた現代社会論である。//公共圏・公共性が今日,なぜ新たな社会学的焦点となりつつあるのか,社会学的な公共性論をふりかえり,公共哲学復権の意義と背景を論じ,パブリックの概念の変容と環境運動の社会的インパクトに注目しながら,公共性の5つの位相を抽出する(第11章)。//現代の環境運動の焦点は,リスク回避とスケール・デメリットの回避にある。小規模分散型の自然エネルギーに依拠した分権的な社会の構築をめざす,アメリカやヨーロッパの環境運動や持続可能な街づくりの事例を紹介し,その今日的な意義を総括する(第12章)。//NGO/NPOに代表される社会運動の制度化・政策志向化に焦点をあて,日本における1990年代の市民セクターの変容を,組織化の進展,市民オンブズマン活動,住民投票の戦略,コラボレーション,国際化・情報化のインパクトに着目して概括する(第13章)。//終章では,組織化・制度化・専門化の時代を迎えた環境運動の今日的な課題を整理し,人びとを新しい公共圏に誘う回路として,(1)例示的実践の提案と先導的試行,(2)コラボレーション,(3)地方からの変革,という三つのキーワードを提起し,本書全体をしめくくる。
著者
望月 美也子 長谷川 昇 山田 徳広 東 善行
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 60回大会(2008年)
巻号頁・発行日
pp.3, 2008 (Released:2008-11-10)

【目的】 アスタキサンチンは、カロテノイドの一種であり、エビやカニの殻、鮭の身などに含まれている赤橙色の色素である。既に、肥満マウスにおいて、アスタキサンチンの抗肥満作用が報告されているが、細胞レベルでのメカニズムの検討は行われていない。 そこで本研究では、3T3-L1脂肪細胞を用いて、細胞増殖の程度と脂質代謝に及ぼす影響を明らかにするために行われた。 【方法】 細胞増殖に及ぼす影響を調べる際には、3T3-L1細胞を培養し、アスタキサンチンを添加して、細胞がconfluenceに達するまでの経過を観察した。脂質代謝に及ぼす影響を調べる際には、細胞がconfluenceに達した時点で、インスリンを培養液に加え、脂肪細胞へと分化させた。充分に脂肪を取り込んだ細胞に、アスタキサンチンを添加し、取り込まれた脂肪がどのように変化していくかを観察した。 【結果・考察】 3T3-L1細胞を培養し、あらかじめアスタキサンチンを添加しておくと、前脂肪細胞の増殖を有意に減少させた。一方、充分に脂肪を取り込んだ成熟脂肪細胞に、アスタキサンチンを添加すると、コントロールに比べ蓄積脂肪が減少し、細胞質グリセロール量が増加する傾向がみられた。 以上のことから、アスタキサンチンは、脂肪細胞の増加を防ぎ、成熟脂肪細胞の蓄積脂肪を積極的に分解することが明らかとなった。
著者
宮地 隆雄 長谷川 まどか 田中 雄一 加藤 茂夫
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.31, pp.1-6, 2011-07-05

画像認証方式は,覗き見攻撃に弱い傾向があり,近年,これに対して様々な対策が研究されている.これまで我々は,画像の高周波成分は離れた位置からの認識が困難という性質に着目した重畳画像認証方式を提案し,その有効性を検証してきた.しかし,本方式は重畳する画像によっては,認証に適さない画像となる可能性があった.そこで本稿では,前景および背景画像の構造に着目し,それらの高周波成分に応じて前景画像の補正を行う手法について検討を行ったので報告する.Although graphical passwords are easy to memorize, they are vulnerable against an observation attack. To solve this problem, we propose a graphical password method which is difficult for observers to recognize pass-images. And we have conducted a user study about usability and robustness against shoulder-surfing. This method uses hybrid image, but a hybrid image which is not suitable for authentication may be used in this method. In this paper, we study on improvement of our method by considering image structure.
著者
長谷川 幸代
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第16回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.125-130, 2019 (Released:2019-06-14)

近年ではビックデータの活用に注目が集まっており,図書館でも,データを活用してサービス改善の方策を検討する試みが見られる。本研究では,インターネットを利用したアンケート調査を行い,図書館利用頻度に関わりのある事柄を分析した。集計結果から,公共図書館の利用頻度及び他の図書館や公共施設の利用頻度の分布の概観を確認し,「インターネット利用」と個人特性のうち「外的没入」が利用頻度に影響を与えるかを分析した。分析結果によれば,公共図書館の利用について,非利用層が半数を超えていること,利用層の中では定期利用層も存在し,他種の図書館や公共施設より利用頻度が高い傾向が見られた。各種SNSの利用状況と公共図書館利用頻度には,弱いながらも有意な正の相関関係が示されたが,インターネット閲覧時間と図書館利用頻度の間に有意な相関は見られないことが分かった。最後に,個人特性のうち,外的没入の度合は図書館利用と関連が無いが,尺度を構成する一部では有意な正の相関が確認された。
著者
古賀 政利 上原 敏志 長束 一行 安井 信之 長谷川 泰弘 岡田 靖 峰松 一夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.67-73, 2009
被引用文献数
3

背景および目的:脳卒中では緊密な連携の重要性が強調されている.脳卒中地域医療における急性期病院の実態を明らかにする.<br> 方法:急性期病院2,185施設に対しアンケート調査を行った.<br> 結果:有効回答46%で,うち52%が脳卒中患者を診療していた.多くが,地域医療圏は二次医療圏(45%)であるとし,その中心的役割は急性期病院(69%)と回答した.他の急性期病院,回復期リハ病棟,一般診療所,維持期施設事業所,周辺地域全体,自治体との連携が良好は75%,75%,74%,69%,73%,34%であった.医療(介護)情報を既に共有しているのは20%(14%)で,共有する予定51%(51%),共有する予定なし25%(30%)であった.医療保険と介護保険のシステムでは十分なリハビリを提供しにくいとの回答が67%に達した.<br> 結論:脳卒中連携において中心的役割を担う急性期病院でも,地域での情報共有は未だ十分ではなかった.<br>
著者
長谷川 辰雄 土井 章男 松田 浩一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.15, pp.13-18, 2003-02-14
参考文献数
2

本論文は,格子模様の網タイツや網目状のフィルムシートなどで物体を覆い,それを一般的なデジタルカメラで撮影し,ステレオ画像計測で3Dモデルを簡易的に構築するシステムを提案した.一般向けデジタルカメラは低価格で高解像度という特徴があるため,取り扱いが容易で画像処理精度を向上させることが可能である.格子模様の交差点をステレオ画像計測のマッチング点とし,2値化及び細線化によって交差点を抽出した.このとき,交差の角度が大きい箇所では,細線化によって歪みが生じるため,本論文では,それを修正するアルゴリズムを提案した.これらの処理によって,正確に抽出した交差点を元に,自動的に四角形ポリゴンの3Dモデルの構築が可能となり,また,ハードウェア構成が,デジタルカメラ,三脚,及びPCで構築できるため,システムの構築費が低価格で実現できた.The 3D object was covered with film sheet of grid, or the grid net, and it took pictures of that with the general digital still camera, and the system that the model 3D was built easily with stereophonic image measurement was developed. The digital still camera for the general purpose is high resolution in the low price. And that handling was easy, and it could improve image management precision. The crossing point of the grid pattern was the matching point of the stereophonic image measurement, and the crossing point was extracted by binarization and thinning. At this time, the distortion occurs by thinning in the point that angle big. This research developed the algorithm which corrected the distortion. This research built the model 3D of the quadrangle polygon automatically by the crossing extracted precisely. And, the construction cost of the system was a low price because hardware configuration could be built with the digital still camera and the tripod and the PC.