著者
長谷川 耕二郎 福田 富幸 北島 宣
出版者
高知大学
雑誌
高知大学学術研究報告. 農学 (ISSN:03890473)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.15-23, 2003-12-25

雌雄同株のカキ'西村早生','禅寺丸'を供試して2年枝単位に満開前2週間と満開時の結縛処理を行い,結縛処理が雄花と雌花の花芽分化と花芽発育,および花芽数に及ぼす影響,ならびに新しょうの乾物率に及ぼす影響について調査した.結縛処理には1.6mmの被覆線を用い,処理開始後50日後に被覆線を取り除いた.1.満開前および満開時の2年枝結縛により,'西村早生'と'禅寺丸'における雄花と雌花の花芽はそれぞれ5月30日と6月9日に分化し,一方,対照区の雌花の花芽はそれぞれ6月9日と6月22日に分化した.2.満開前および満開時の2年枝結縛により,'西村早生'と'禅寺丸'における雄花と雌花の花芽は6月中旬または下旬までにがく片形成または花弁形成の段階に発達したが,7月初旬以降11月中旬までの花芽の発達は花弁形成以降の段階までは進まず,両結縛処理区と対照区との差違はなくなった.3.満開前および満開時の2年枝結縛により,'西村早生'雌花の花芽数と'禅寺丸'雄花の花芽数は対照区に比べて増加した.4.満開前および満開時の2年枝結縛により,'西村早生'および'禅寺丸'の新しょうの乾物率はそれぞれ5月下旬と6月上旬に急激に増加し,両品種の結縛処理区の乾物率は対照区に比べて,5月上旬から6月中旬まで高くなる傾向がみられた.以上のことより,'西村早生'および'禅寺丸'において,満開前および満開時の2年枝結縛処理が新しょうの乾物率の増加を促進し,両品種の花芽分化を早めるものと考えられた.
著者
長谷川 耕二郎 福田 富幸 北島 宣 尾形 凡生
出版者
高知大学
雑誌
高知大学学術研究報告. 自然科学 (ISSN:03890244)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.41-52, 2004-12-31

カキ枝の永久および一時結縛処理が雄花と雌花の花芽分化・発育と花芽数,新しょうの乾物率ならびに翌春の雄花と雌花の着花数および新しょう生長に及ぼす影響について調査した.なお,給縛処理は11年生と17年生の'西村早生'および'禅寺丸'を供試して,2年枝単位に2000年の満開前2週間に1.6mmの被覆線を用いて行った.一時結縛処理は60日後に被覆線を取り外し,永久結縛処理は被覆線を取り外さなかった.1. 2年枝の永久および一時結縛処理により,'西村早生'ど禅寺丸'における雌花の花芽はそれぞれ6月5日と6月8日に分化し,一方,対照区の雌花の花芽はそれぞれ6月15日と6月18日に分化した.雄花の分化時期も一時結縛および永久結縛区により,10日程度早まった.2. 永久および一時給縛処理により,'西村早生'と禅寺丸'における雄花と雌花の花芽は6月中旬または下旬までにがく片形成または花弁形成の段階に発達したが,7月中旬以降3月初旬までの花芽の発達は花弁形成以降の段階までは進まず,両結縛処理区と対照無処理区との差違はなくなった.3月初旬から3月下旬にかけて,'西村早生'ど禅寺丸'における雄花と雌花の花芽は雄ずいおよび雌ずい形成期に発達したが,処理間の差異はなかった.3. 永久および一時結縛処理により,花芽分化期以降の'西村早生'雌花ど禅寺丸'雌花と雄花の花芽数は対照区に比べて増加した.4. 永久および一時結縛処理により,'西村早生'および'禅寺丸'の新しょうの乾物率はともに6月上旬以降に対照区に比べて増加し,また,両品種の葉の乾物率は結縛処理により,5月下旬以降著しく高まった.5. '西村早生'および'禅寺丸'両品種において,永久および一時結縛処理により,翌春に萌芽した新しょう上に着生した雌花と雄花はともに増加したが,処理にかかわらず,上位の新しょうでは雌花,下位の新しょうほど雄花の着生が多かった.新しょう長は両結縛区で短くなったが,永久結縛区は一時結締区に比べて,抑制の程度が著しかった.以上のことより,'西村早生'および'禅寺丸'において,満開前の2年枝結縛処理は結縛の取り外しの有無にかかわらず,新しょうの乾物率の増加を促進し,両品種の花芽分化が早まり,花芽数が増加するものと考えられた.なお,結縛を取り外した方が取り外さないよりも,新しょうの発育にとって好適と考えられた.
著者
長谷川 陽子
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

ハンナ・アーレントの1920年代から1958年までの論考が、その後の著作に重要な影響を与えていることを論証するため、当該期間に著された論考の原文による読解をおこなった。今年度は主として『全体主義の起源』、草稿である『カール・マルクスと西欧政治思想の伝統』と、同じく草稿である『政治の約束』の前半部を中心的に読み解くことで、アーレントの思想が、『人間の条件』執筆以前に完成された形で提示されていたことを論証することができた。1920年代のアーレントの思想から、連綿と受け継がれてきた「実存哲学」思想が、『人間の条件』以前までの論考の中に主軸として発展させられていたことを確認した。従来の研究ではこのアーレントの「実存哲学」思想には、全体主義につながる契機となるのではないかとするマーティン・ジェイを代表とする指摘を受け、重要視されることはなかった。しかし、この「実存哲学」こそが、アーレントの人間の『複数性』と「個別性」とを訴えかける貴重な契機となっていることが了解されたのである。この成果をもとに、前年度までに学会報告等において知り合うことができた、国内の他のアーレント研究者の協力を求めて話し合うことで、より多面的な見地から、意見を伺うことができた。また、1920年代から1930年代にかけてのアーレントの思想を改めて追う中で、「公的空間」における「創造の契機」こそが、アーレントにとって最も重要であったことを再確認した。このことは、アーレントの「公的空間」が、その中での問題解決を最初から見込んでいるものではないとする、思想射程を明確化する機会ともなった。上述してきた研究成果を、発展させ、アーレントの思想における「他者存在」と「政治的公共空間」とがどのようにその思想の中核となっていったかを明確化した上で、博士論文の執筆を行った。
著者
北山 兼弘 清野 達之 里村 多香美 相場 慎一郎 長谷川 元洋 鈴木 静男
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

この研究の目的は、樹木多様性がどのように熱帯降雨林生態系の機能を支配しているのかを明らかにすることであり、地域レベルの種多様性が極端に異なるハワイ諸島とマレーシアの比較を行った。4年間に渡り、2地域に設けた土壌発達傾度に沿った複数の森林試験地において毎木調査を行い、木部の肥大成長量を算出した。また、全試験地に設置されたリタートラップからリター回収を2週間から1ヶ月毎に行い、回収したリターの器官別仕分け及び乾重測定を行い、リターの生産速度を明らかにした。ハワイ諸島については過去2年の、マレーシアについては過去4年のリター生産量が明らかになった。肥大成長量にリター生産量を加味して、森林の地上部純一次生産量を算定した。土壌栄養の減少に植物や従属生物がどのように適応しているのかを明らかにするため、特に共生菌根菌に焦点を絞り、マレーシアの代表的なサイトに於ける菌根バイオマスと菌体バイオマスの定量化を行った。各サイトから土壌を採取し、細根、菌根、土壌の3つに仕分けし、エルゴステロールを生化学マーカーとして菌体量の定量分析を行った。また、土壌微生物群集の群集解析を生化学的PLFA法を用いて行った。また、貧栄養に対する樹木の適応を組織解剖学的に明らかにするために、材の通導組織観察と葉の水ポテンシャル測定を行った。以上の結果、地域の種多様性が高いと、土壌栄養塩の減少に対して、組織的、生態生理的により栄養塩利用効率の高い(適応的)種への入れ替わりが起こり、熱帯降雨林の機能は維持されるとの新たな知見が得られた。一方、地域の種多様性が低いと、種の入れ替わりが起こらず、土壌栄養塩量を反映して森林の機能は大きく変化した。この結果により当初の作業仮説は指示された。
著者
吉野 博 長谷川 兼一 岩前 篤 柳 宇 伊藤 一秀 三田村 輝章 野崎 淳夫 池田 耕一 岸 玲子 持田 灯
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、ダンプビルの原因となる高湿度環境を解決するための最適設計法・住まい方の提案に資する資料を構築することを目的とする。そのために、住宅のダンプビル問題の実態を全国的規模で把握し、居住環境と居住者の健康状態との関連性を統計的に明らかにした。また、室内の湿度変動を安定させる機能をもった様々な多孔質の建材(調湿建材)等の高湿度環境緩和技術の使用効果について、実測やシミュレーションを用いた評価を行った。
著者
桜井 万里子 橋場 弦 師尾 晶子 長谷川 岳男 佐藤 昇 逸身 喜一郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

古代ギリシア世界、とりわけポリス市民共同体において、前古典期までに成立、発展してきた社会規範と公共性概念に関して、その歴史的発展の様相を明らかにするとともに、古典期におけるそれらのあり方、とりわけ公的領域と私的領域の関係性を、法や宗教など諸側面から浮かび上がらせた。
著者
藤田 陸博 番匠 勲 橘 治国 長谷川 和義
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

本研究で対象としたゴルフ場は、1992年調査、1993〜1994年造成期、1995年完成となっている。したがって、本研究の期間内では必ずしも十分な現地測定が出来ない。本研究の内容を、次に示すように分類できる。(1)現地での測定ゴルフ場の造成がどのように水文環境に影響を及ぼすかを直接知るためには、現地での測定が極めて重要である。本研究では、水位計2台、雨量計2台、濁度計1台を5〜11月の期間にわたって現地に設置し、測定を続けてきた。また、月に1度の頻度で現地河川水を採水して水質の調査をしてきた。上述したようにゴルフ場はまだ造成中なので各種の測定値に基づいて明確な結論を出す段階ではないが、河川流出量が若干変化しているようである。(2)理論解析ゴルフ場の造成にともなう流出機構の変化を求めるのに、貯留量〜流出量の関係を検討した。測定値は必ず誤差を伴うので、変化の程度が誤差範囲内のものであるか否かを判断する必要がある。誤差範囲といっても明確な基準があるわけではなく、これまで個人の経験に基づいて判断されてきた。本研究では、流出モデルとして貯留関数法を採用して流出量の確率応答を求めることによって、推定された流出量の信頼限界を得ようとした。流出量の確率密度関数が必要となるが、流出量の1〜4次モーメントを求める理論式を新しく誘導した。また、実測降雨量を解析より、時間単位の小さな降雨量は指数分布で表されることが分かった。降雨量を独立な指数分布に従う不規則関数として、流出量の1〜4次モーメントを得た。得られ主な結果を以下に示す。1.流出量の2〜4次モーメントには、流出モデルのパラメータ、降雨量の2〜4次モーメントの他に降雨量の平均値が関係している。したがって、降雨量の規模ごとに資料を整理する必要がある。定常・非定常の降雨系列について検討した結果、流出量はガンマ分布で近似できることを理論的に明らかにした。
著者
吉村 昇 長谷川 誠一 鈴木 雅史
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

有機系絶縁材料は,電気的・機械的特性が優れているため、無機系材料に代わって配電機器材として広く使用されている.しかし有機絶縁材料は,トラッキング劣化やトリ-イング劣化などの有機系材料特有の絶縁劣化と絶縁破壊現象を起こすことが知られている.特にトラッキング劣化は,有機絶縁材料の信頼性と寿命特性を検討する上で非常に重要である.一方で,環境問題として公害の悪化,汚染物質の長距離越境輸送などによる酸性雨問題が注目され,これが屋外で使用される有機絶縁材料に及ぼす影響が懸念されている.本研究では以上の点を考慮し,有機絶縁材料の耐トラッキング性に及ぼす酸性雨の影響,劣化過程を総合的に検討し,その劣化機構を解明することを目的とした.その結果,酸性雨は有機絶縁材料の耐トラッキング性を大きく低下させることを示し,酸性雨が汚染物質としての外的要因で作用する場合と,荷電時の電解液として作用する場合の双方の影響とその劣化過程を明らかにした.また,それぞれのパラメータの経時変化を実験的見地から検討し,それぞれの劣化機構を明らかにした.
著者
増子 崇 武田 信司 長谷川 雄二
出版者
社団法人エレクトロニクス実装学会
雑誌
エレクトロニクス実装学会誌 (ISSN:13439677)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.116-124, 2005-03-01

デカメチレンビストリメリテート二無水物(DBTA)を酸成分として合成したポリイミド, エポキシ樹脂, および銀フィラーからなるコンポジットフィルムを調製し, それらの種々特性を検討した。硬化前においては, Tgを超える温度領域でメルトダウンし, 熱可塑型フィルムに特有の挙動を示したが, 硬化後においては, 含有するエポキシ樹脂成分の橋かけ化の効果により, 上記の温度領域での流動が抑制された。これらのフィルムを介して, 異なる熱ひずみを有する材料同士を貼り合わせたときの接着強度は, 主としてフィルムの弾性率と応力緩和特性の影響を受けることがわかった。本報では、ポリイミドの構造とフィルム特性との関係について詳細に論じた。
著者
丸田 恵美子 長谷川 雅美 上田 正文 関 剛 山崎 淳也
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

中部日本の太平洋側と日本海側の山岳域を比較して、森林の動態に対して積雪がどのように関与しているか、温暖化による積雪量の減少が森林の動態にどのような影響を与えるかについて以下のような結論を得た。冬季、日本海側では降雪日が多く、大気の水蒸気飽差(VPD)が低いために、森林限界付近での常緑針葉樹は、太平洋側に比べて葉からの水分消失量が少ない。積雪も多く、この中に埋まって越冬したシュートでは水分の減少はみられない。そのように、太平洋側に比べれば緩和された環境であっても、日本海側気候の北アルプス乗鞍岳・樹木限界のオオシラビソでは、冬季に積雪に埋まって保護されないと、強光ストレスと乾燥ストレスを受けて、葉の枯損や生育期間の光合成抑制といった影響を受け、やがては幹が枯損する。これを補うのが、積雪下で越冬できる下部のシュートであり、この部位が1本のオオシラビソ個体の90%以上の生産力をもっていると推定される。したがって温暖化によって積雪量が減少すると、この部位も減少し、オオシラビソ個体の存続も危ぶまれる。一方、冷温帯に優占する日本海型のブナの実生は、冬季に積雪の保護がないと、凍結・融解によ導管内にキャビテーションが生じ、翌春に開葉できずに枯死する。そのために、日本海側では積雪の保護を受けて、容易に実生が定着できるが、太平洋側では定着することができない。日本海型ブナは、太平洋側ではギャップ内に芽生えれば越冬はできるが、との後の数年間に、光合成系の強光阻害や晩霜害によって結局は枯死するので、冬季に積雪の保護がない太平洋側山地に定着することはできない。このことから、現存の日本海側に優占しているブナ林は、温暖化によって積雪量が減少すると更新が困難になる危険性があるということができる。
著者
中嶋 琢也 河合 壯 長谷川 靖哉 湯浅 順平
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

通常、高分子電解質の交互積層(Layer-by-Layer)法による薄膜の作成には水媒体が用いられるが、水分の存在は薄膜の応用を大幅に制限している。特に、水素貯蔵材料などの禁水系材料や電子デバイスのコーティングには無水条件が望まれ、非水系へのLayer-by-Layer法の展開が必要とされる。我々は、イオン液体がそのイオン組成により種々の物質、特に、ポリマーに対する溶解性を制御できることから交互積層膜作製の媒体として利用できると考えた。さらに、いくつかのイオン液体はセルロースやシルクならびにカーボンナノチューブなど難溶性の物質を容易に溶解できることから、分子性溶媒では達成できない薄膜が作製できると期待される。また、ナノメートルスケールで垂直方向に設計が可能な交互積層薄膜作製法の開発により、イオン液体含有高性能センサー作製のための基礎技術が確立できる。以上より、本研究では、典型的な高分子電解質、カーボンナノチューブならびにセルロースを材料とした交互積層薄膜の作製を行った。いずれの材料においても、規則的な膜厚成長が確認され、特にセルロースにおいては高透明、高強度の薄膜を与えた。
著者
犬尾 武彦 伊藤 進 長谷川 英之 後藤 隆人
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.135-136, 1974-06-25

患者は63才,男.昭和47年2月頃より咳嗽,5月11日38℃に発熱,咳嗽,喀痰と共に喘鳴,呼吸困難,チアノーゼ出現、18日に緊急入院した.入院時頸部,前胸部に皮下気腫を認め,白血球14,800,血沈72/60,胸部レ線で右下肺に円形陰影と縦隔洞並び頸部に気腫を認め,動脈血ガス分析で低O_2血症,呼吸性アシドージスあり.気管切開,O_2吸入,抗生剤等の治療にて呼吸困難改善せず入院第4病日に死亡した.剖検にて右肺S_10。に原発した腺癌で,気管分岐部リンパ節に7.5.×5×5cm大の大きな乾移巣あり,一部は連続性に右主気管支に突出,強い狭窄をおこしていた.縦隔洞気腫の発生経路については肉眼的に穿孔部は不明でヨ右主気管支の癌転移巣の壊死部よりもれたか,または右肺の問質性肺気腫が原因がと推定される.
著者
加瀬 卓 小平 進 寺本 龍生 久 晃生 古川 和男 山口 博 捨田利 外茂夫 長谷川 博俊 郭 宗宏 西堀 英樹 北島 政樹 向井 万起男
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.2055-2059, 1992-07-01
被引用文献数
11

1970年1月から1991年9月までに当教室において経験した,痔瘻に随伴した肛門管癌7例について検討した.7例のうちわけは男性6例,女性1例で,年齢は43〜77歳(平均59.1歳)であった.痔瘻または膿瘍発症から癌確診までの期間は4年〜47年(平均22.9年)であった.主訴として粘液分泌,肛門部痛,腫瘤・硬結触知,出血,肛門狭窄,などが認められた.7例全例に腹会陰式直腸切断術が施行され治癒切除4例,非治癒切除3例であった.組織型は粘液癌3例,高・中分化腺癌3例,扁平上皮癌1例であった.7例中4例は,初回生検で確定診断可能であったが,残りの3例は癌確診までに頻回の診断手技を要した.長期にわたり痔瘻を有し,粘液分泌,腫瘤・硬結触知などの症状を呈する症例については癌の合併を考慮し瘻管切除を含む頻回の生検を施行して確定診断を下すべきであると考えられた.
著者
岩瀬 正則 長谷川 将克
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

木質系バイオマスあるいは廃プラスチックと酸化鉄を混合・圧縮し、これを流量1000cc/minのアルゴン気流下、高周波誘導加熱炉内にてモリプデンサセプターを用いて1400〜1800℃の高温に加熱したマグネシアるつぼ内へ投入して、急熱した。なお[Pt-20Rh]-[Pt-40Rh]熱電対により温度を測定した。発生するガスは、これを捕集してガスクロマトグラフィーによりCO,CO2,CH4,H2を定量し、水蒸気発生量は重量測定によって求めた。いっぽう凝縮相は炭素、酸素、鉄をLECO炭素、酸素分析装置あるいは化学分析により定量した。以上より反応生成物の化学種、存在比、分圧比等を求めた。その結果、上記の条件下では、気相中の主成分は水素と一酸化炭素であり、炭酸ガスならびにメタンはほとんど生成しないこと、および凝縮相には金属鉄が生成することを明らかにした。以上の実験結果を不均一系熱力学を用いて解析し、気相と金属鉄については、ほぼ熱力学平衡が成立すること、および金属鉄中の炭素に関しては、生成する固体炭素の結晶性に依存し平衡には到達する場合と相でない場合があることを見出した。すなわち、木質系バイオマスでは、鉄中への浸炭が非常に迅速に進行するが、プラスチックでは、浸炭が遅れることを見出した。これらの結果を総合し、炭酸ガスおよびメタンを生成させず、一酸化炭素と水素を副産物として得ることのできる製鉄法の基礎学理を確立することができた。上記の目的を達成するための具体的条件をまとめれば以下のようである。1.混合圧縮体を急熱することが必要。2.温度は高温ほど望ましい。3.圧縮体中のC/Oモル比を1.1以上にする。
著者
西嶋 尚彦 長谷川 聖修 尾縣 貢 國土 将平
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究は「子どもの体力低下要因について発育発達および社会生活的側面から体系的,総合的に調査研究し,体カ低下の要因」を究明することを目的とした先行研究プロジェクトを発展的に継承し,子どもの体力向上プログラムの実践的検証と,そのための運動,遊び,生活習慣改善に関する科学的根拠を総合的に解明するものであった.以下の4つのサブプロジェクトを実施した.課題a)走・跳・投などのスポーツに基礎的運動の成就と習熟を決定する主要動作実験協力校を依頼し,関連する単元で疾走向上プログラムを実践し,単元の前後に運動動作の成就と体力を測定した.構造方程式モデリングを適用して,小学生の疾走運動の成就と習熟を決定する主要動作と技能を分析した.課題b)健康のための体力つくり運動の運動特性と体力向上効果実験協力校を依頼し,体力つくりに関連する単元で体力向上プログラムを実践し,新体力テストを用いて体力測定を実施した.小学校と中学校での体力向上プログラムの効果を実践的に検証した.課題c)体力向上に有益な運動遊びの体力・運動特性基本運動の熟練者である体育専攻学生と未熟練者の一般学生男女を対象として,基本的運動遊びである蹴球の体力・動作・運動・戦術特性を検討するために,項目反応理論分析を適用して.蹴球動作・運動・戦術の成就と習熟のための達成度評価基準を分析した.課題d)体力向上のための主体的な生活習慣改善を決定する要因実験協力校を依頼し,体力つくりに関連する単元で体力向上プログラムを実践し,健康習慣,運動習慣,生活時間など健康生活に関する調査と体力測定を実施した.小学生と中学生の体力向上のための主体的な運動生活習慣の改善を決定する要因を分析した.
著者
丹後 弘司 重松 敬一 大竹 博巳 山田 篤史 荒井 徳充 大竹 真一 勝間 典司 加畑 昭和 川口 慎二 黒田 大樹 小磯 深幸 河野 芳文 酒井 淳平 辻 幹雄 槌田 直 中井 保行 二澤 善紀 長谷川 貴之 横 弥直浩 吉田 明史 吉田 淳一
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究グループが作成を進めてきた、理系分野への進学を目指した高校生を対象とし、より広い立場からの高等学校と大学との連携を意識した新しい高等学校数学の実験的教科書・教材を教育現場で使用し、具体的問題を抽出しつつ改善を図る研究を進めた。研究成果としては、教科書紙面、投げ入れ的な実践で教材として用いることができるコラム、授業実践で用いた教材がある。これらの成果は、生徒・授業実践者の感想や授業観察者の評価とともに報告書にまとめ上げた。
著者
坂毛 宏彰 深野 淳 板倉誠也 長谷川美和 辻田忠弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.105, pp.1-8, 2005-10-28

本論文は、謎の浮世絵師、東洲斎写楽が一体誰であるかを解明する一つの手法として、写楽の役者絵で特徴的な目に着目し、写楽と葛飾北斎、歌川豊国、喜多川歌麿の特徴をモレリアン・メソッド(顔の場合は目や鼻、口の様に画面を細かく解剖し、その細部の形や構図、技法、色使いなどから絵画を分析する方法)による判別分析を行った。また、SD法(Semantic Differential Method)を用いた心理的な分析を行い、結果を比較することで写楽の浮世絵における目の特徴の分析する事によって写楽のなぞについての研究を行った。This research focused on the characteristic eyes of Sharaku's pictures of actors as one technique for clarifying just who was this mysterious ukiyoe master Sharaku Toshusai. Eye features in works of Katsushika Hokusai, Toyokumi Utagawa, and Utamaro Kitagawa were analyzed by distinction analysis using the Morerian method, and the SD method. We researched Sharaku's pictures based on these results.
著者
長谷川 千尋
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

連歌作品を研究する上で、作品に付された古注釈(江戸時代以前に執筆されたもの)は、すこぶる有益で欠くべからざる資料であるが、すべての本文が学会に提供されているわけではない。そこで本研究では、連歌の百韻・千句の古注釈の伝存状況を網羅的に調査した。その結果、『伊勢千句』『牡丹花宗碩両吟百韻』『宗牧独吟何人百韻』に関わる新出の古注を発見したのを始め、既存の古注にも新たな伝本を補い、未翻刻の古注を全翻刻し、基礎的研究を行った。
著者
小畑 秀文 小場 弘之 西谷 弘 長谷川 純一 山本 眞司 鳥脇 純一郎 松本 徹
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

本研究では日本人に多い胃がんと肺がんに焦点をあわせ、既に整備済みのマンモグラムデータベースと併せて、主ながん検診用画像のデータベース化の整備を行うことを目的としている。本研究は2年度にわたるが、この間に整備されたデータベースについて以下にその概要を述べる。胃X線二重造影像:本データベースは診断の難易度や病変の種類などのバランスがとれるように選別されたFCR像76枚から成る。このうち65枚が異常陰影を含む。胸部CT像:本データベースでは、肺がん検診に利用されるスライス厚10mmのものと、精密な検査に用いられるより薄いスライス厚のもの2種類を含む。肺がん検診用は症例数70症例であり、25症例が肺癌症例である。精密検査用については、症例数7症例で、いずれも肺癌症例である。胸部単純X線像:本データベースは間接撮影像50症例、直接撮影像50症例から成る。工学サイドの利用者であっても、一般的には撮影法やその読影法の基礎もわからないのが普通である。そのため、アルゴリズムの組立てに助けとなるように、それらに関する解説を用意したり、専門医のスケッチ画や診断所見を各画像ごとに与えるように努めた。