著者
中沢 正治 小佐古 敏荘 高橋 浩之 持木 幸一 井口 哲夫 長谷川 賢一
出版者
東京大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1988

本研究は、CR-39固体飛跡検出器にポリエチレンなどの適当なラジエ-タを組み合わせ、ラジエ-タ物質と中性子の核反応で生じた荷重粒子CR-39への入射量を調整することで、全体として中性子感度曲線が、中性子線量当量換算係数のエネルギ-依存性をできるだけ再現するような最適ラジエ-タの組み合わせと飛跡計数方式を見出すことを目的としている。咋年度までに、標準的なラジエ-タ付きCR-39線量計および飛跡読み取りシステムの試作と予備的な中性子感度曲線の校正(検証)実験を行なった。本年度は、まず中性子検出効率の理論的検討を行ない、実験的に確証するため、東大原子力工学研究施設内の重照射設備およびブランケットにおいて中性子照射実験を行った。試料として、CR-39プラスチックに厚さがそれぞれ0.86,1.90,4.02mg/cm^2のポリエチレン、および厚さ5mmの^6Li_2CO_3を密着させたものを使用し、人体のアルベド効果を模擬するため、後方にポリエチレンブロックを置いて行なった。その結果、各ラジエ-タ厚で、中性子エネルギ-に依存する検出効率の実験値は、誤差の範囲内で比較的良く計算値と一致した。つぎに、これら4種の感度特性と、ラジエ-タ無しの特性からレムレスポンスを近似的に求めるため、重み係数を最小2乗法により求めた。これによると再現性は良好である。特に、中性子線量当量換算係数が大きく変化する100KeVから1MeVの中性子エネルギ-領域の再現性に優れていることが明らかとなった。しかし、10MeVを超えると、検出器感度が低下するため、レムレスポンスの再現性が悪くなる。この対策として、薄いアルミ板をCR-39プラスチックの前面に置くことのより、感度を高められることが確認されている。以上より、小型・計量で取り扱いが容易な中性子個人被爆線量計の実用化の見通しがついた。
著者
田村 真広 菅井 直也 関矢 貴秋 保正 友子 山本 美香 平野 優 阪野 貢 保住 芳美 矢幅 清司 池田 幸也 大橋 謙策 北本 佳子 阪野 貢 長谷川 豊 馬場 清 原田 正樹 平野 和弘 平野 優 保住 芳美 宮脇 文恵 矢幅 清司 芦川 裕美 岡 多枝子 田中 泰恵 崔 太子
出版者
日本社会事業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

高等学校の専門教科「福祉」の教育改善と教師教育に関する総合的研究である.(1)理KOMI論を活用して介護福祉の基礎から実習教育を一貫させる教材開発、(2)高等学校福祉科の卒業生の就労状況や福祉教育への意識を調査したライフコース研究、(3)での後期中等教育段階にEUおけるケアワーカー養成・教員養成システムを調査した研究、(4)特色ある高校づくりの要に教科「福祉」を位置づけた教育課程改革の実態調査.これらの研究成果をもとに、教科「福祉」の教員教育のあり方について問題提起した.
著者
田沢 純一 長谷川 怜思 長谷川 美行
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.6, pp.269-285, 2008-06-15
参考文献数
116
被引用文献数
5

水越層は九州中央部の水越地域に分布し,黒色頁岩と薄衣式礫岩で特徴づけられる上部ペルム系(Lopingian)で,全層厚は1,690mに及ぶ.南部北上帯の登米層,飛騨外縁帯の森部層上部,黒瀬川帯の球磨層と層相が似ている.水越層のフズリナ類フォーナはLepidolinaを含み,NeoschwagerinaとYabeinaを欠くことで,南部北上帯・飛騨外縁帯のものに類似するが,黒瀬川帯のものとは異なる.腕足類フォーナはボレアル型-テチス型混合フォーナであり,飛騨外縁帯,南部北上帯,プリモリエ南部の中〜後期ペルム紀腕足類フォーナに種属構成が似ている.以上のことから,水越層は飛騨外縁帯のペルム系の南西延長部に相当し,南部北上テレーンの構成要素であると考えられる.また,ペルム紀中〜後期に水越地域はより北方の飛騨外縁帯と南方の南部北上帯にはさまれてその中間に位置し,これら全体は北中国東縁に存在したと考えられる.
著者
斉藤 崇 長谷川 仁志 鬼平 聡 阿部 豊彦
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1)ラットintermediate conductance型Ca-activated K channel(lmK)の構造配列決定と機能解析:BKチャネルとともに内皮依存性血管過分極因子の標的分子とされるlmKチャネルの心血管病態における発現修飾を検討するため、種々の心血管病態モデルの作成が容易な実験動物であるラットのlmKチャネルのcloningを行った(GenBankへ登録:AF149250)。本遺伝子のcoding regionは1278塩基対で、翻訳蛋白産物は425アミノ酸からなり、ヒトおよびマウスと塩基配列で88%、95%、アミノ酸配列で各々ほぼ98%の相同性を示した。6個の膜貫通部位を有し、S5とS6間には本チャネルの特異的阻害物質とされるcharybdotoxin感受性aspartate residueが、またcarboxy-terminal側には細胞内Ca sensorの役割を担うcalmodulin-binding domainおよびtyrosin phosphorylation consensus sequenceがあり、またpromotor領域にはNFkB、heat shock protein、AP2などでregulationされる部位が存在した。これらの事実から本チャネルの発現調節とその活性化が細胞増殖刺激と密接に関連することが確実となった。さらに、本遺伝子をHEK細胞に発現させ、その細胞電気生理学的特性を解析し、本チャネルは細胞内Ca濃度上昇により活性化され、charybdotoxinにより抑制されるなど、これまで生理学的に予測されていたlmKの特性が再現された。2)心血管病態におけるKCaチャネル発現の変化:ラット心筋梗塞モデルを用いて、KCaチャネルの分子種5種類(BK、lmK、SK1、SK2、SK3)のmessenger RNAの発現をRT-PCR法、RNase Protection Assay法により経時的に追跡し、BKおよびlmKの発現は梗塞後1〜3日をピークとする初期増強と7日以降再度upregulationを示す後期増強相からなる2峰性ピークを形成することを見いだした。また、in situ hybridizationおよびラットlmKに対する特異抗体を用いた免疫組織染色の結果、lmKはmRNAレベルのみならず、翻訳蛋白発現のレベルでもその発現が亢進することが確認された。さらに組織内局在について検討すると、lmKは対照時には主として血管内皮細胞および血管平滑筋に局在するが、梗塞心では単核白血球、繊維芽細胞などの浸潤細胞にも著明な発現が見られ、初期上昇相はこれら細胞浸潤により特徴づけられる炎症反応に、後期上昇相は梗塞巣内の血管リモデリングに一致することが明らかとなった。この所見は、これまで生理学的、薬理学的に示されてきた病態での過分極-弛緩連関の代償性増強現象をKCa発現修飾の面から説明するはじめての所見と考えられる。また、以上のlmK発現の増強は、アンギオテンシンllのl型受容体拮抗薬の投与によりほぼ完全に抑制されることなどが明らかとなり、lmK発現調節の細胞内情報伝達系にMEK/ERK系の関与が示唆された。さらに、NO生合成長期抑制モデルにおいても同様なlmK発現の増強を見いだしており、lmKは心血管病態時における血管リモデリングの共通なkey moleculeである可能性が高まってきた。これらの成果は、平成13年3月31日よりアメリカ合衆国フロリダ州オーランドで開催されるExperimental Biology 2001におけるアメリカ生理学会主催の血管系カリウムチャネルに関するシンポジウムにおいて招待講演として発表するとともに、Journal of Clinical and Experimental Pharmacology and Physiologyに公表予定である。
著者
平田 直 長谷川 昭 笠原 稔 金澤 敏彦 鷺谷 威 山中 浩明
出版者
東京大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2004

1.臨時地震観測による余震活動調査震源域およびその周辺に、約100点の臨時地震観測点を設置して余震観測を行った。対象地域の速度構造が複雑であることを考慮し、余震が多く発生している地域では、平均観測点間隔を5km程度、震源域から遠い領域では、それよりも観測点間隔を大きくした。この余震観測により、余震の精密な空間分布、余震発生の時間変化、余震の発震機構解などが求められた。余震は、本震、最大余震、10月27日の余震の3つの震源断層の少なくとも3つの震源断層周辺域とその他の領域で発生していることが分かった。3次元速度構造と余震分布との関係が明らかになった。本震の震源断層は、高速度領域と低速度領域の境界部に位置していることが明らかになった。余震分布は、時間の経過とともに、余震域の北部と南部に集中した。27日のM6.1の余震の直前には、この余震に対する前震は観測されなかった。2.GPSを用いた地殻変動調査震源域にGPS観測点を10点程度設置し、正確な地殻変動を調査した。本震の余効変動が観測された。内陸地震の発生機構に関する基本的データを蓄積した。3.地質調査による活断層調査震源域およびその周辺において、地質調査を行い、地震に伴う地形の変化、また活構造の詳細な調査を行った。4.強震動観測による地殻及び基盤構造の調査強震動生成の機構解明のために、本震震央付近で大加速度を記録した点周辺に10台程度の強震計を設置し、余震の強震動を観測した。余震の強震動記録から、地殻及び基盤構造を推定し、強震動が発生した機構を明らかにした。
著者
長谷川 耕二郎 北島 宣
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

カキ果実の離脱過程は"誘導段階"→"決定段階"→"実行段階"と考えられるが、離脱過程に関与する要因は明らかではない。本研究は、離脱過程に関与する要因を明らかにするとともに、離層細胞の形態形成と離脱過程における形態的変化を明らかにし、"実行段階"を分子細胞生物学的に捉えようとした。離層細胞は満開6週間前から識別されはじめ、満開4週間前には離層組織が観察でき、満開1週間後にはほぼ完成していた。樹上環状剥皮処理果実と室内水差し処理果実の離脱の推移はほぼ同様であり、両者の離脱過程はほぼ同様であると考えられた。20℃→5℃の変温処理では子房より果梗が顕著に早く離脱するので果梗と子房の離脱過程は異なると考えられた。エチレン発生量は離脱前に増加し、果肉部より果梗部から発生していた。さらに、35℃、20℃で離脱前に急激に多量のエチレンが発生し、変温処理では少量ではあるが離脱前にピークを示しており、少量のエチレンが離脱に密接に関係していると考えられた。採取果実のジベレリンとサイトカイニン様物質処理による、離脱、呼吸量、エチレン発生量の違いはみられず、これらは離脱過程に関係していないと考えられた。35℃処理、20℃処理、20℃36時間後5℃処理、20℃24時間後5℃処理、20℃12時間後5℃処理の順に自然離脱と強制離脱の差が小さく、離脱の実行段階の進行は温度に依存していると考えられた。35℃、20℃、20℃48時間後→5℃、20℃36時間後→5℃、20℃24時間後→5℃処理ですべて離脱したが5℃処理は離脱せず、20℃では24時間までに決定段階に入っていると考えられた。20℃処理果実の離層細胞は処理24時間後から凝縮した核が散在的に観察でき、時間の経過に伴ってその数は増加した。このことから、果実の離脱は核の断片化によるアポトーシスである可能性が示唆され、実行段階は核の断片化で捉えられると考えられた。
著者
粟生田 友子 川里 庸子 菅原 峰子 櫻井 信人 長谷川 真澄 瀧 断子 鳥谷 めぐみ 太田 喜久子 小日向 真依 白取 絹恵
出版者
新潟県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

環境因子に対して高齢者が示す反応からせん妄発症リスクを予測し、環境による発症リスクを軽減する方法を検討することを目的に、入院中の高齢者のせん妄発症に関わる物理的・人的環境因子に対する高齢者の認知の様態を明らかにし、せん妄発症群と非発症群の比較関連検証を行った。結果、物理的・人的環境に関して2群間に差が認められた項目は<部屋の位置><看護師の訪問頻度><緊張感を助長する検査の有無><他の患者との交流><不安を助長するものがある>であった。
著者
徳丸 勝悟 長谷川 洋 坂本 英至 小松 俊一郎 河合 清貴 田畑 智丈 深見 保之 秋田 昌利 都築 豊徳
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.521-526, 2005-05-01
被引用文献数
7

症例は61歳の男性で, 上腹部痛, 発熱を主訴に近医を受診し, 肝左葉に腫瘤を指摘され紹介となった.当院のダイナミックCTで肝外側区と一部内側区におよぶlow density tumorを認め, その辺縁部は徐々に不均一に造影された.腫瘍マーカーは正常範囲であった.胆管細胞癌を第1に疑い, 平成15年4月7日にリンパ節郭清を伴う肝左葉切除術を行った.病理組織像では腫瘍のほとんどが肉腫様構造を呈し, ごく一部に腺管様構造を認めた.また, その境界には移行部を認めた.肉腫様変化を伴う胆管細胞癌と診断した.術後経過は良好であったが, 外来通院中に残存肝へ転移が出現した.化学療法, 放射線療法にて一定の効果を得たが徐々に状態が悪化, 平成16年1月15日に永眠された.肉腫様変化を伴う胆管細胞癌の報告は極めて少なく, 本邦では我々が検索しえたかぎり13例を認めるのみであった.その臨床的特徴をまとめたので報告する.
著者
田崎 和江 長谷川 香織 松本 和也
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.87-104, 2002-03-25

かつての鉱山活動は重金属を外界に排出し,今日でも水質や土壌汚染の原因となっている.岐阜県神岡町にある大規模なZn-Pb鉱山の一つである神岡鉱山は,神通川の重金属汚染源となってきた.Cd,Pb,ZnそしてFeなどの重金属が高原川-神通川水系に未処理のまま廃棄され,下流域の住民の健康に影響を与えた.重金属の中でも特にCdは,イタイイタイ病の病原物質と見なされた.Cd汚染問題は未だに解決されていない.消石灰を投入し,中和凝集処理された廃滓の沈殿池が神岡鉱山にいくつか存在する.廃滓や廃棄場から排出された汚染水は,神通川の上流の高原川に流れ込んでいる.本研究では,重金属を含む堆積物の特性を明らかにするため,高原川-神通川水系にある五つのダムの堆積物を採取した.ダム堆積物の鉱物的・化学的組成を明らかにするため,それぞれの試料についてXRD,ED-XRFによる分析を行った.その結果,神岡鉱山の上流域に位置する浅井田ダムの堆積物はCd,粘土鉱物そして有機物が少なく,神岡鉱山の下流域に位置する新猪谷ダム,神通川第一,第二,第三ダムにおいては,汚泥,スメクタイトそしてZn,Cdのような重金属が多く含まれていることが明らかになった.また,本研究では,水中の重金属の浄化能力を見積もるための実験を行った.その結果,バクテリアを使ったバイオレメディエーションは重金属の固定に効果的であることを示した.室内実験系においてバイオフロック中の糸状菌は,一週間で細胞壁の表面にPb,Zn,Cdを選択的に濃集した.バイオレメディエーションの能力を持つバクテリアは,鉱山地域における下流のダム堆積物中でも重金属を固定する重要な役割を演じている.
著者
大谷 雅夫 川合 康三 宇佐美 文理 大槻 信 伊藤 伸江 森 真理子 齋藤 茂 金光 桂子 緑川 英樹 森 真理子 齋藤 茂 大谷 俊太 深沢 眞二 楊 昆鵬 愛甲 弘志 乾 源俊 浅見 洋二 中本 大 神作 研一 長谷川 千尋 中島 貴奈 日下 幸男 原田 直枝 小山 順子 福井 辰彦 稲垣 裕史 伊崎 孝幸 竹島 一希 中村 健史 好川 聡 橋本 正俊 二宮 美那子 檜垣 泰代 川崎 佐知子 有松 遼一 畑中 さやか 山田 理恵 本多 潤子 大山 和哉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

室町時代の和漢聯句作品を広く収集し、それらを研究分担者ほか研究会参加者が分担して翻字し、『室町前期和漢聯句資料集』(2008年3月)、『室町後期和漢聯句資料集』(2010年3月)の二冊の資料集を臨川書店より刊行した。また、その中の二つの和漢聯句百韻を研究会において会読した上で、詳細な注釈を作成してそれを『良基・絶海・義満等一座和漢聯句譯注』(臨川書店、2009年3月)および『看聞日記紙背和漢聯句譯注』(臨川書店、2011年2月)として出版した。
著者
長瀬 啓介 長谷川 鎭雄
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.321-326, 1995-05-25

目的;病歴上に記録された, 気管支鏡検査前に行われた説明の現状を明らかにする。方法;筑波大学付属病院呼吸器内科診療グループで1991年4月1日より1992年3月31日に施行された気管支鏡検査例の病歴119例を調査の対象とした。病歴上の, 気管支鏡検査前に行われた検査に関する説明の記録の存否と, 目的, 手技, リスク, 代替方法に関する記録の内容を調査した。結果;説明に関する記録は全検査例の63.0%にあたる75例にみられた。目的・手技・リスクの3領域について説明が記録されていた例は, 35例であった。記録された説明項目は一定ではなかった。考察;説明の質を維持する目的では, 説明の記録率は必ずしも十分とはいえないと考えられた。記録内容の不均質を改善し説明の質を向上するために, 説明内容と記録の標準化が必要であると考えられた。
著者
長谷川 豊祐
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.62, pp.1-27, 2009
被引用文献数
2

原著論文【目的】日本の大学図書館における業務電算化システムの導入が1994 年に8 割を超え,2002 年には99%の大学図書館が「電算化図書館」となった。現在は,インターネットや電子資料を活用した利用者志向の図書館サービスが多くの大学図書館で提供されるようになり,大学図書館は程度の差こそあれ「電子図書館」となった。本研究は,利用者志向の図書館サービスの展開を支える基盤となっている発注・支払,受入,目録,貸出・返却などの業務電算化の課題構造を図書館員の立場から解明する。【方法】2 グループ各6 名の大学図書館員を出席者としたフォーカス・グループ・インタビューを実施した。インタビューでは,図書館業務電算化に関する印象,図書館業務電算化が図書館に及ぼした影響,および図書館業務電算化の今後の方向など,探索的課題について話し合ってもらった。インタビューによって収集した発言内容を因果対立関係に着目して分析した。【成果】電算化の課題を10 個にカテゴリー化し,課題の構造を概念図として導いた。電算化における効果と課題として,1) 省力化と機能向上,2) 図書館の力量低下,3) 未完成なパッケージ,の3 点が明らかになった。
著者
中嶋 琢也 長谷川 靖哉 湯浅 順平 河合 壯
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

電荷の局在状態の光制御を実現するシステムを目指し、ジアリールエテン、ターアリーレン(ジアリールアリーレン)へのイミダゾリウム環の導入を行った。光化学反応に伴い、導入されたイミダゾリウム環は正電荷が非局在化したイミダゾリウム型と局在化したイミダゾリニウム型に相互変換する。本年度は、この正電荷の局在構造変化によるソルバト、イオノクロミズムや反応性の発現など興味深い特徴を見出した。(1)イミダゾリウム置換ジアリールエテンはトルエンからピリジンまで幅広い極性の溶媒中においてフォトクロミック反応を示すことを見出した。閉環体における局在正電荷はルイス塩基結合サイトとして働き、高ドナー数を有する分子やアニオンと特異的に相互作用する。その結果、π共役構造を変化させ、マルチクロミック特性(光、溶媒、イオン応答)を示すことを見出した。(2)ジチアゾリルイミダゾリウムは種々の溶媒中で可逆的にフォトクロミック反応を示し、(1)と同様に、ソルバトクロミズムを示した。この場合、溶媒のドナー数ではなく誘電率に応答した吸収ピークシフトを示した。低極性溶媒中において局在カチオンはヨードアニオンと強く相互作用し、イミダゾリニウムのN(1)-C(2)-N(3)の二重結合性を低下させ、π共役系の縮小により低波長シフトを与えた。さらに、局在カチオンの高い反応性は、強い求核剤であるメトキシドとの求核付加反応によりphoto-gated reactivityとして実証された。
著者
長谷川 直哉
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

CSRは企業行動に対する予防的措置機能を持つことによって、はじめて本来の意義が機能する。CSRの予防的機能を担保するものがSRI(社会的責任投資)である。SRIの本質は、企業行動の収益至上主義的側面を抑制し、環境や社会との共生的側面との調和を促すものである。SRIが市場メカニズムにビルトインされることは、投資家が市民に代わって企業行動に対するサステイナブル・ガバナンス機能を持つことを意味する。環境金融の視点は、企業が主体となるCSRから投資家の社会的責任(ISR)へと中心命題が移行しつつある。
著者
吉仲 賢晴 福原 知子 長谷川 貴洋 岩崎 訓 安部 郁夫
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.340-346, 2008 (Released:2009-03-26)
参考文献数
20

廃木材のリサイクルが重要視されている中,生産量が増加している新たな木質系素材としてファルカタに着目し,炭化物を製造してそのトリクロロエチレン (TCE) 吸着性能を評価した。ファルカタを様々な温度で炭化した結果,800℃炭化時にヨウ素吸着性能が極大となった。また,BET比表面積や細孔容積は900℃炭化で最大となり,それぞれ444m2 g−1, 0.196mL g−1であった。また,TCE吸着性能は平均細孔径が最も小さくなった800℃炭化物で最大となり,市販活性炭よりも高い吸着性能を示した。市販活性炭に比べると比表面積や細孔容積の値で劣るファルカタ炭化物が市販活性炭よりもTCE吸着性能が高くなったのは,TCEの吸着に適した径の細孔が多かったためだと考えられ,比表面積や細孔容積の値だけでは,溶液中に低濃度で存在する有機化合物の吸着量を推定することは困難であることが確認された。これらの結果より,ファルカタから製造した炭化物はTCE汚染地下水の浄化に有効な吸着剤になりうることが示された。
著者
長谷川 誠 松井 丈夫 森田 恭平 石田 宏司
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育学会年会物理教育研究大会予稿集
巻号頁・発行日
no.22, pp.130-131, 2005-08-06
被引用文献数
1

光の分光、各色光の波長の簡易計算、さらにはCDやDVDのトラック間隔の計算を簡単に行うことができる理科実験プログラムを紹介する。1000本/mmのスリットが設けられた透過型回折格子フィルムに懐中電灯の光をあてて、透過光をスクリーン上で分光させる。このとき、スクリーン上での光の中心からある色までの距離、ならびに回折格子フィルムからそのスクリーン上のその色までの距離を測定すれば、その色の光の波長を簡単な乗除計算で求めることができる。さらに、CDまたはDVDから透明なディスク片を作成し、これを回折格子の代用として懐中電灯の光を分光させた状態では、上記の波長の値を用いて、CDやDVDのトラック間隔(回折格子の格子ピッチに相当する)を簡単に計算することができる。この実験内容は、小・中学生向けの理科実験講座などで実際に演示しているが、特に困難も無く波長の計算を行ってもらっている。
著者
長谷川 公一 吉原 直樹
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

平成9・10年度は、おもに地球温暖化問題、エネルギー問題への取り組み、とくにCOP3以降の、環境NGOおよび地方自治体の役割を中心に、主要政令指定都市で調査を行った。ただしゴミ問題やリサイクル問題などと比較して、自治体とNGOのコラボレーション(対等な協働関係)の本格的な展開は今後の課題である。生協のような消費者団体、とくに生活クラブ北海道が中心となって1999年度から電気料金の5%相当分をグリーン料金として拠出しあい、その資金を風力発電事業に投資しようとする「グリーン電力料金」の運動は、消費者として電力会社および自治体に対して「意思表示」を行い、電力多消費的な自分たち自身のライフスタイルを見直し、節電の経済的動機づけをはかろうという新しいスタイルの運動として注目される。平成11年度は、主に東北・北海道の町村レベルでの風力発電、バイオマスなど再生可能エネルギー開発を中山間地域での地域おこしと結びつけようとする先進的な取り組みについて関係者への聴取調査、資料収集を行った。原子力開発のメッカだった東海村では、99年9月のJCO臨界事故を契機に、行政・住民の原子力に関する不安感、国や県の原子力行政に関する不信感が高まっており、人口1万人規模の東北の中山間地域の内発的な地域おこしをモデルとした地域づくりへの転換が模索されている。以上をもとに環境問題における市民的公共性の新しい担い手として、環境NGOを位置づけなおし、その新しい存在意義を考察し、論文にまとめた