著者
関根 一希
出版者
立正大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

オオシロカゲロウは同調的な一斉羽化をし, 大量発生に至ることもある河川棲の水生昆虫である。これまで, 本種はオスとメスからなる両性個体群とメスのみの雌性個体群が認められる地理的単為生殖種であること, また, 日本各地に分布する雌性個体群は, 西日本の個体群に起源する単為生殖系統によって維持されていることを明らかにしてきた。さらに, 両性個体群であったとしても, 両性生殖系統と単為生殖系統とが同一河川内に生息することもあり, このことは東日本である福島県・阿武隈川や埼玉県・荒川の個体群において明らかとなってきている。両系統が生息する河川内では, 一斉羽化の時間帯にずれが生じており, 単為生殖系統のメス個体は, 両性生殖系統のオスやメス個体よりも比較的早い時間に羽化することも明らかになってきた。これまで, カゲロウ類の一斉羽化の適応的意義としては, 仮説1. 交尾相手発見の容易さ説と仮説2. 捕食者の飽食説が挙げられていた。オオシロカゲロウの雌性個体群では, 交尾相手のオス個体はいないことから, 仮説1は当てはまらないが, 同調的な羽化は認められる。したがって, オオシロカゲロウの一斉羽化では, 捕食者による被食を頭打ち, つまり飽食させることで, 羽化個体の生存率および繁殖成功率を上げるといった仮説2が主な適応的意義であると考えられる。しかし, それではなぜ, 両性生殖系統と単為生殖系統とが同一河川内に生息する場合に, 一斉羽化の時間帯にずれが生じてしまうのか。本研究ではオオシロカゲロウを研究対象とし, カゲロウ類の一斉羽化はなぜ生じるのか, といった適応的意義について新たな解釈「繁殖干渉相手からの逃避説」を得ることを目的とする。
著者
松沢 純平 村上 卓弥 小林 一穂 関口 将弘 大崎 馨
出版者
独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
pp.JOSH-2020-0026-CHO, (Released:2021-09-10)
参考文献数
10

防衛装備庁先進技術推進センターでは,平成27年度から令和2年度にかけて、自衛隊員による災害派遣等の任務における救助活動や物資搬送をはじめとする作業の迅速化・効率化を目的とし,隊員の負担を軽減しつつ野外・不整地での迅速機敏な行動を可能とする高機動パワードスーツの研究を実施した.高機動パワードスーツは,人が装着した状態で災害派遣等の任務を実施することが必要となるため,装着者の安全性確保が重要となる.したがって、本研究においては,高機動パワードスーツの使用場面や仕様を決定していく段階から,研究者・製造者・運用者といった多数のステークホルダーの意見を取り入れたリスクコミュニケーションを踏まえつつ,ロボット介護機器の安全設計の支援のためのリスクアセスメントひな形シートに準拠したリスクアセスメントを行うことにより安全設計を実施した.また,野外での装着試験では,標準性能試験法の考え方を用いた模擬不整地や模擬災害環境等を活用することで試験の再現性と装着者の安全性を確保し,より効果的で安全な試験評価手法を検討した.本稿では、高機動パワードスーツの研究における、一連の安全性確保の取組みの結果について紹介する.
著者
関 伸一
出版者
森林総合研究所
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.193-205, 2010 (Released:2012-12-03)

東シナ海北東部の男女群島でそれぞれ異なる季節に5回の鳥類調査を行って観察種を記載するとともに、これまで文献に記載されている記録の整理を行い、男女群島における鳥類の観察記録をリストとしてとりまとめた。現地調査では75種が観察され、これまでの記録と併せて179種となった。このうち確実な繁殖記録があるのは6種のみで、繁殖している可能性のある種を含めても18種であった。男女群島は、他の地域とは地理的に隔離されていることに加えて面積が限られているために、島嶼環境に適応したアカヒゲ、ウチヤマセンニュウなどの種が分布する一方で、ウグイスやカワラヒワなど面積の大きな島では広域的に分布する種の一部が欠落し、単純で特異な繁殖鳥類群集が生じたと推測される。 渡り鳥については、個体数に関する記録が少ないため、渡りの中継地としてのこの地域の重要牲を評価することは困難であった。しかし、春期の調査において高い割合で記録される渡り鳥があり、これらの種では男女群島を経由する渡りのルートを利用する個体が恒常的に存在すると推測された。
著者
関口 秀夫
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.69-78, 2021 (Released:2021-09-07)
参考文献数
28

前報での議論を踏まえ,①「豊かな海」と海洋生態系の関係,②「豊かな海」をめぐる利害関係者の衝突,③水産業の社 会的位置と問題点,④「豊かな海」と里海と漁業の関係,⑤「豊かな生態系」(豊かな海)の価値および評価,の5つの課題 を検討する.
著者
関根 茂
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.509-517,023, 2003

1951年に日本初のセクショナル駆動方式の抄紙機が稼働開始して以来, セクショナルドライブシステムは飛躍的な進歩を遂げ, 現在は, 最新鋭全デジタルACドライブシステムが完成され, 新設抄紙機には, 広く適用されている。このように長い間に適用されてきたドライブシステムは故障率の増加が心配される磨耗故障期に達しているものでも, まだリニューアルされていないものがある。ドライブ装置は, アナログDCドライブから, デジタルDCドライブ, デジタルACドライブへと急速な変遷を遂げており, アナログドライブ装置については, 予備品確保の困難さ, 制御性能の不安定さ等の問題が表面化する時期が近づこうとしている。今後, 機械のスクラップアンドビルド計画と同様にドライブ装置の早め早めのリニューアル計画が推奨されるが, リニューアルに当っては, 技術的な検討項目をいろいろな観点からクリアーにして行く必要があり, 概略的なポイントの紹介をした。また, 旧来の高圧省エネ用インバータの更新には, 最近になって商品化された高圧インバータの適用が可能になってきた。また今まで固定速で運転していた高圧モータも高圧インバータを適用し, 可変速運転により大幅な省エネ効果も期待できる。
著者
岩槻 幸雄 関 伸吾 山本 彰徳 森澤 友博 稲野 俊直 斉藤 裕也 平嶋 健太郎
出版者
鹿児島県自然環境保全協会
雑誌
Nature of Kagoshima = カゴシマネイチャー : an annual magazine for naturalists (ISSN:18827551)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.467-480, 2020

Habitat and actual records of charr, Salvelinus leucomaenis, from Wakayama Prefecture were investigated by hearing survey and their reliable information. Hearing survey in Wakayama Prefecture suggested their habitat including both probable native and introduced individuals from most of Wakayama rivers, the Kinokawa (including the Kishikawa River), the Aridagawa, the Hidakagawa, the Hikigawa, the Kozagawa and the Kumagawa Rivers in Wakayama although the charr population (Kirikuchi charr) of the Hidakagawa River was considered as extinct in around 1960 of flood disaster by Kubo and Kimura in 1998. Subsequently, native Kirikuchi charr and hybrids between native Kirikuchi charr in Nara and the charr of the Ibigawa River population, Gifu were introduced into upper stream of Komoridani valley, the Hidaka River several times in early 1980. Probable and reliable information of native populations of Wakayama charr were reconfirmed from the Aridagawa and the Hikigawa Rivers and actual specimens of the charr were confirmed from the Aridagawa, the Hidakagawa, and the Hikigawa Rivers. Photographic reconfirmation of the charr was done in middle basin of the Kumanogawa River in Wakayama, too. Further detailed genetic analysis of their Wakayama charr populations would make evidence of native or introduced populations in future. Whitespots' condition on dorsal part of the body in true Kirikuchi charr in the inhibited river zones for the charr catch in the Yumitehara river, the Kawasako River were noted, being variable in presence or absence of dorsal part of the body in true Kirikuchi charr although it has been considered as generally having no whitespotted body of the true Kirikuchi charr before.
著者
関根 康正
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.504-505, 2009-12-31
著者
布川 清彦 井野 秀一 関 喜一 酒向 慎司
出版者
東京国際大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本研究の目的は,視覚障害者の環境認知における白杖を用いて能動的に作られた音の効果を実験的に検証することである.目的を達成するために次の4つの研究を計画した.研究1:白杖によって作られる音情報(反響音の物理的効果)の分析,研究2:白杖 によって作られる音情報における人の効果検証,研究3:白杖によって作られた音情報の効果検証,研究4:総合考察.本年度は,研究1と2を実施した.研究1と2の両方で,推定する対象を硬さにした.硬さを推定する対象としては,一辺の長さが300mmの正方形で,その厚さが12mmであるゴム板を用いた.また,使用する白杖には,視覚障害者に広く用いられているアルミニウムの主体とペンシルチップ(石突き)を用いた.研究1では,人を介在させずに機械的に一定の高さから白杖の先端を自動的に落とす装置を作成した.この装置を用いて,機械的に対象を打った時の音を録音した.ゴムの硬さは,20度から10度刻みで90度までの8種類を用意した.そして,周波数分析を行うプロトコルを作成して,周波数分析を行い,硬さに対する基本的な白杖の打撃音の特性を検証した.研究2では,白杖ユーザが利用する代表的な3種類の握り方を条件として,視覚障害白杖ユーザと晴眼大学生を実験参加者として,白杖で対象となるゴム板を叩き,触覚情報と音情報の両方を利用して主観的な「硬さ感覚」と「空間の広さ感覚」をマグニチュード推定法を用いて硬さを推定する実験を行った.研究1の一部について,国内学会で発表し,そのプロシーディングを出版した.
著者
石原 知洋 関谷 勇司
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2021-IOT-55, no.5, pp.1-6, 2021-08-30

2020 年からの COVID-19 発生により,多くの大学では遠隔講義の導入が進んだが,一部講義については対面授業や,対面と遠隔のハイブリッド型の授業などが選択的に実施されている現状がある.そのため,学生が対面・ハイブリッド授業の出席のため大学に登校した際に,同日の遠隔講義を大学から受講する状況が発生している.複数の学生が持ち込んだ機器によりリアルタイムの遠隔講義を受講するにあたり,大学の,特に無線ネットワークの品質確保が重要となる.そこで,我々は無線コントローラから得られる基地局と接続ステーションの統計情報を収集し,無線環境の可視化および個々の基地局・ステーションの接続状況について可視化・解析が可能なシステムの開発をおこなった.本システムにより,個々の基地局や利用者それぞれのクライアントについて,過去に遡って接続状況を調べるとともに,問題点の洗い出しを行うことが可能となった.
著者
清水 新二 金 東洙 川野 健治 関井 友子 服部 範子 廣田 真理
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.アルコール関連問題の一つとして位置づけられたドメスティック・バイオレンス(DV)に関する研究は、わが国で初めての試みである。それに加え、全国データが収集されたことは今後の研究のベースラインを設定するものであり、研究成果の集合的蓄積上大きな貢献と考えられる。2.実践的な実態調査が中心であったこれまでのDV研究に対して、今回の調査研究は学術的、研究的視点から実施された。その結果、(1)特にDVと過剰飲酒の相関性が明らかになったこと、ならびに(2)全国一般住民のDVの経験率はこれまでの行政を中心にしたどの全国調査よりも低い事実が判明したこと、などは大いに論争的なものであり、今後さらに展開するDV研究の第二段階開始を刺激するインパクトをもつ。3.上記の研究上のみならず、現実の問題解決に向けた対策上の示唆が明らかな形で導き出されたことも、確実な成果といえる。具体的には、(1)DVの世代連鎖に関する分析からは、16歳前の家族暴力の目撃経験、被害経験は本人のDV被害とは無関連だが、DV加害に最も強く関与していることが判明した。DVの世代的再生産を抑止する上で、現在のDV予防、介入の重要性が示唆された。また(2)臨床調査の結果からは、アルコール依存症の場合断酒が成功するとDV行為も劇的に減少する事が確認され、DVと過剰な飲酒の関連性が浮き彫りにされたのみならず、今後アルコール臨床がDVの防止、介入に有効であることが示唆された。4.国際比較の点では、日本は米国、英国などとともに行動的というよりも言葉による暴力が比較的に多く観察された。身体的暴力の自己申告ではアフリカ諸国が目立つが、アメリカは相当に高い経験率が観察されている。日本は英国、チェコ、などとともに中位の上位国に位置づけられる。アフリカ諸国では性的虐待を含めて、多くの被害体験が報告されている。また国際共同調査の観点からは20数カ国もの多国間の共同性の確保の難しさと問題点も整理された。
著者
松本 伊智朗 湯澤 直美 関 あゆみ 蓑輪 明子 永野 咲 加藤 弘通 長瀬 正子 丸山 里美 大谷 和大 岩田 美香 大澤 亜里 鳥山 まどか 佐々木 宏 杉田 真衣 山野 良一 田中 智子 上山 浩次郎 藤原 千沙 吉中 季子 福間 麻紀 大澤 真平 藤原 里佐 川田 学 谷口 由希子 中澤 香織 伊部 恭子 山内 太郎 新藤 こずえ 小西 祐馬 加藤 佳代
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、子どもの貧困の現代的特質を明らかにすると同時に、政策的介入と支援のあり方を検討することである。そのために、大規模な子ども・家族を対象とした生活調査(3万人対象)を北海道で行った。あわせて、女性の貧困に関する理論的検討、社会的養護経験者に対する調査を行った。それらを通して、経済的問題、時間の確保、追加的ケアへの対応、ジェンダー平等の重要性、子どもの活動と経験、社会的ケアと社会保障制度の問題について検討を行った。