著者
木戸 聡史 須永 康代 廣瀬 圭子 宮坂 智哉 田中 敏明 清水 孝雄 佐賀 匠史 髙柳 清美 丸岡 弘 鈴木 陽介 荒木 智子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E4P1197, 2010

【目的】本研究目的は、トイレ内の転倒者の検出による迅速な発見と保護を可能とするため、トイレでの転倒状態をより正確に検出するための解析アルゴリズムを構築することである。そのため、我々は静止画熱画像パターンを用いて健常被験者を対象に、正常なトイレ動作と、模擬的に再現したトイレでの転倒姿勢を16パターンのアルゴリズムで判別分析した。各アルゴリズムにおいて求めた判別率を検証し、より有効な転倒検出方法を検討した。<BR>【方法】被験者は歩行及びトイレ動作が自立できる健常成人男性5名とした。身体特性は、身長172.5±5.5cm、座高93.1±2.2cm、胸囲91.2±3.9 cmだった。熱画像センサはTP-L0260EN (株式会社チノー製)を用いた。熱画像センサの特性は解像度0.5 &deg;C、視野角60°、frame time 3 Hz、data point 2256 (47×48)で、地上から2.5mの高さに設置した。被験者が腰掛けるADL(日常生活動作)練習用便座の高さは0.4mとし、便座から0.4m離れた床面5か所に、印をつけた。被験者は模擬的な正常トイレ動作(NA)を1回実施した。NAは、トイレへの入室、便座への着座 、便座からの立ち上がり、トイレからの退室からなる動作とした。その次に、転倒を想定した姿勢変換(FA)を1回実施した。FAは、あらかじめ印をつけた5箇所の位置で、長座位(開脚・閉脚)、仰臥位(開脚・閉脚)となり、便座に対して着座する方向を変更して実施した。それらの動作および姿勢変換を熱画像センサで記録した。記録した熱画像のデータは47×48=2256 pointの温度データで、3Hzの間隔で取得した。被験者1人あたり、NAから20個、FAから60個の熱画像データを任意に抽出した。抽出した熱画像データは、熱画像のエリアを4、9、16、25、36、49、64、81エリアに分割し、分割した各エリアの分割内平均温度(Avg)と分割内最高温度(Max)を求めた。8×2=16個のデータ処理パターンごとに、被験者5名分のNAの100データとFAの300データを用い、判別分析を実施して、正常/転倒の判別率を求めた。統計解析ソフトウェアはSPSS Ver.17.0を用いた。<BR>【説明と同意】対象者に対して、ヘルシンキ宣言に基づき研究の趣旨と内容について口頭および書面で説明し同意を得た後に研究を開始した。なお本実験は、植草学園大学倫理委員会の承認を受けて行った。<BR>【結果】実験時の周囲温度は24.8±0.2&deg;Cで、被験者がいない状態の熱画像パターンの温度は最低23.9&deg;C、最高26.9&deg;C、25.1±0.3&deg;Cだった。NAの100データの温度は最低24.2&deg;C、最高31.5&deg;C、26.0±1.1&deg;Cだった。FAの300データの温度は最低24.2&deg;C、最高31.8&deg;C、26.0±1.0&deg;Cだった。熱画像パターンから被験者の表情は判別できなかった。4分割でMax(4Max)の判別率は75.0%、4Avgは88.0%、9Maxは90.8%、9Avgは90.5%、16Maxは94.0%、16Avgは94.3%、25Maxは96.8%、25Avgは96.0%、36Maxは96.3%、36Avgは95.5%、49Maxは95.0%、49Avgは96.3%、64Maxは96.8%、64Avgは97.3%、81Maxは96.3%、81Avgは97.8%で最大だった。81Avgでは判別分析で用いた81分割エリアのうち、判別率を導くための判別式の係数となった領域は21箇所だった。判別分析に使用したNA+FAの400データのうち、誤検出した数は、NAをFAと判別したものが1個、FAをNAと判別したものが9個だった。NAをFAと判別したものは判別式に使用しない領域に被験者の最高温度の領域があった。またFAをNAと検出した例は、便座に近接した領域で被験者の最高温度の領域がある場合が多く、便座に着座したパターンとの判別が困難だった。<BR>【考察】本研究は健常者をモデルとして、転倒を検出するためのアルゴリズムを検証した結果、熱画像センサのデータを81分割して各エリア内平均値を判別分析すると、トイレ動作の転倒を97.8%の判別率で検出した。誤検出した2.2%をさらに減らすためには動作や姿勢変換の加速度などの変化を転倒の判定に加えることが有効と考えられた。現状では、誤検出の部分を有人による看視で補助すれば転倒の判定は可能と考えられる。また本実験では、被験者の最高表面温度は約32&deg;Cで熱画像センサの温度分解能は0.5&deg;Cのため、室温31&deg;C以下で使用する条件下であれば、1秒以内に転倒が判別できる、被験者のプライバシーに配慮できる特性が得られた。今後は転倒判別に時系列的な要素を加えてより実用的な転倒判定を目指す。並行して病院や施設のトイレに熱画像センサを設置し、フィールドによる試験を実施する。<BR>【理学療法学研究としての意義】本研究では、高齢者・障害者のADL支援に関するニーズを理学療法士として見極め、現場に必要なシステム開発への発想・着眼とシステムの検証を実施した。研究結果は病院および介護老人保健施設に必要な機器開発のための重要な基礎的データである。
著者
河野 裕之 髙橋 儀平 竜口 隆三
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.22, no.51, pp.701-706, 2016 (Released:2016-06-20)
参考文献数
3

This report summarizes the series of studies on which legislated as JIS S0026 on Mar. 2007, “Standardize the layout of the toilet operation equipment and appliance in public rest room”, is based. The authors implemented user verifications with the cooperation of approximately 100 persons with disabilities (physical and visual), the main group of people to whom extra consideration should be given. According to the verifications, the study proposed the appropriate measurements for installation of the three fixtures (toilet paper holder, flush button, and call button), including the allowable range, as the recommended standard layout.
著者
髙木 美希
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 = Journal of Bunka Gakuen University and Bunka Gakuen Junior College (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.125-139, 2019-01

中国ムスリムの諸民族は中華世界に居住し、中国文化とイスラーム文化双方の影響を受けながら独自の文化を形成してきた。しかし、1949 年に中華人民共和国が成立した後、中国国内では1949 年以前の服装は「封建的」なものであるとして徹底的に排除され、人民服が実質的な国民服とされた。このため、他の民族と同様に、中国ムスリムの伝統服の制作・継承・保存も停滞状態にあると言える。現在、中国国内の博物館や観光地、書籍などで中国ムスリム諸民族の民族衣装が紹介されるが、そのなかには洋服をもとにデザインしたような現代的な衣装が多く、伝統服であるとは言い難い。このような状況をふまえ、本研究では1949 年以前の中国ムスリム女性の服装に関して残された写真をもとに分析し、2 体の服装を再現する。さらに、デザインやパターンを図で示すことによって、中国ムスリム女性の伝統的な服装が未来へと継承されていくことを目指す。
著者
田中 祥司 髙橋 広行
出版者
日本商業学会
雑誌
JSMDレビュー (ISSN:24327174)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-7, 2020 (Released:2020-04-24)
参考文献数
28

本稿は,ブランドの本物感における知覚・認知の程度の違いによる階層性に注目しながら,下位ランク(階層)から上位ランク(階層)への移行に影響を与える要因の解明を試みたものである。具体的には,潜在ランク理論を用いた分析によって,ブランドの本物感の階層性(四つのランク)を見出した。同時に,その階層性と本物感を構成する要素との関連について,上位のランクになるほど,物象的から象徴的な要素へと移行することを示唆した。さらに,上位のランクに移行する際に影響を与える要因を検討した結果,企業のこだわりが一貫して重要な要因であること,最初の移行(ランク1からランク2),および,最後の移行(ランク3からランク4)においては,こだわりに加え,感情的関与も重要な要因であることを明らかにした。
著者
秋山 仁志 坂元 麻衣子 赤間 亮一 安藤 文人 髙橋 幸裕
出版者
日本歯科医学教育学会
雑誌
日本歯科医学教育学会雑誌 (ISSN:09145133)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.27-34, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
9

抄録 日本歯科大学生命歯学部では, ICTを活用して最新の医療情報を収集, 分析, 評価する方法およびモラルに則って効果的に利用する技術や表現方法を含む能力を修得するため, 第1学年前期に歯科医療情報学実習を行っている. 第1学年学生は, G-suite, Moodleの利用方法, 情報倫理, 教育著作権, タッチタイプ習得, 画像処理法, データ分析, プレゼンテーション実践, 文書作成, ICTを用いた遠隔共同作業, インターネットによる歯科医学情報の収集を履修する. 「インターネットによる歯科医学情報の収集」 において, 第1学年学生はパソコンルームにて時間配分に従い与えられた5つの課題に対して初めて扱う医学中央雑誌Web (医中誌Web), PubMedを使用し, インターネットを利用して歯科医学情報を収集した. 学生は得られた情報と与えられた課題に適した文献1つを配布用紙に記載して提出した. 終了後に実施した学習後のフィードバックアンケートでは, 「インターネットによる歯科医学情報の収集の仕方が理解できた」 が98.4%, 「インターネットにより的確に調べることができると思う」 が94.6%, 「PubMedで文献を検索することができた」 が82.9%, 「医中誌Webを用いて文献を検索することができた」 が96.9%であった. 本実習により医中誌Web, PubMedを利用したインターネットによる歯科医学情報の収集は, 第1学年学生の歯科に対する意識の向上に有効であることが示唆された.
著者
片岡 一則 横田 隆徳 位髙 啓史 津本 浩平 長田 健介 石井 武彦 西山 伸宏 宮田 完二郎 安楽 泰孝 松本 有 内田 智士
出版者
公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター)
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2013

脳は高度に発達した生体バリアに守られているため薬剤の送達が極めて困難な部位である。本研究では、この生体バリアを克服して核酸医薬を脳内に送達して機能させるウイルス・サイズの薬剤送達システムを、高分子材料の自己組織化(高分子ミセル化)に基づいて構築した。すなわち、(1)血管内腔側内皮に局在するグルコース輸送タンパク質を標的とするグルコース結合型高分子ミセルを創製し、血管内腔からの脳内薬物移行を制限する内皮細胞バリア(血液脳関門)を突破して核酸医薬を脳内送達する事によって、アルツハイマー病(AD)の発症に関わる酵素の産生を抑制する事に成功した。(2)生体内で速やかに酵素分解を受けるmRNAのミセル内包安定化を達成し、脳室内局所投与による単鎖抗体のその場産生を実現する事によって、AD発症に関わるタンパク質であるアミロイドβ量を有意に低下出来る事を実証した。
著者
髙橋 昂也 前田 幸嗣
出版者
九州大学大学院農学研究院
雑誌
九州大学大学院農学研究院学芸雑誌 (ISSN:13470159)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.27-38, 2015-02

日豪EPAが2014年4月に大筋合意に至り,豪州産牛肉については,セーフガードを設定した上で,冷凍牛肉の関税率は19.5%,冷蔵牛肉の関税率は23.5%まで,それぞれ段階的に引き下げられることが決定した。また,現在,わが国が参加している環太平洋経済連携協定(TPP)交渉では,日米の協議において,牛肉の関税水準およびセーフガードが争点の1つとなっている。以上のようにわが国では現在,関税削減などによる国産牛肉生産への影響が懸念されているところである。そこで,本稿では,わが国における牛肉の貿易自由化に関する計量経済研究のサーベイを行い,牛肉の貿易自由化の影響を計量経済学的に分析する際の課題を明らかにする。
著者
髙橋 夢加 岡田 誠 笹木 大地 本村 浩之 木村 清志
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.181-185, 2018-11-05 (Released:2018-11-05)
参考文献数
11

The carangid genus Decapterus Bleeker, 1851 is characterized by single finlets behind both the second dorsal and anal fins, no scutes along the anterior curved part of the lateral line, two low papillae on the shoulder girdle, and a well-developed adipose eyelid. Members of the genus are distributed in tropical to temperate areas of the Pacific, Indian and Atlantic oceans, and are commercially important food fishes. Four species (D. akaadsi Abe, 1958, D. kurroides Bleeker, 1855, D. smithvanizi Kimura, Katahira and Kuriiwa, 2013 and D. tabl Berry, 1968), characterized by a red caudal fin, are included in the red-fin Decapterus group. In 2016 and 2018, three specimens [216–304 mm in standard length (SL)] of D. kurroides, previously recorded from the Red Sea and east coast of Africa to the east coast of Australia and the Philippines, were collected from Kumano-nada, Pacific coast of Mie Prefecture, Japan. Additionally, a single specimen (191 mm SL) collected from Japanese waters in the East China Sea (west of Kyushu) in 2006 was also identified as D. kurroides. The specimens represent the first records of the species from Japanese waters, the Kumano-nada specimens being the northernmost record for the species. Decapterus kurroides is the most similar to D. akaadsi, but differs from the latter in the following characters: scutes more numerous on the straight part of the lateral line (30–32 vs. 26–29 in D. akaadsi), longer head (head length 29.9–33.0% SL vs. 26.7–30.1%) and longer snout-anus distance (55.8–60.4% SL vs. 51.2–54.6%) [measurements for both species modified from Kimura et al., (2013)]. Decapterus kurroides is also distinguishable from D. smithvanizi and D. tabl by having fewer cycloid scales on the curved part of the lateral line (45–52 vs. 54–62 in D. smithvanizi, 61–72 in D. tabl) and a deeper body (body depth 23.4–27.2% SL vs. 19.4–22.5%, 16.6–23.0%). A new standard Japanese name “Kitsune-akaaji” is proposed for D. kurroides.
著者
吹譯 友秀 山﨑 翠 髙橋 和長 土井 崇広 川口 正美 榎本 啓吾 吉野 宏毅 内本 勝也 西村 真紀
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.65-72, 2021-04-25 (Released:2021-04-22)
参考文献数
7
被引用文献数
1

健康食品に含まれていたタダラフィルおよびタダラフィル構造類似物質であるノルタダラフィルおよびホモタダラフィルの立体配置を確認した.製品はインターネットで購入し,タダラフィルを検出したはちみつ加工品1製品および錠剤1製品ならびにノルタダラフィルおよびホモタダラフィルを検出した飴1製品を使用し,各製品から各成分を単離精製した後,円二色性(CD)分散計を用いてCDを測定した.その結果,各製品より単離精製した成分のCDスペクトルは6R,12aR体標準品のCDスペクトルと一致したことから,製品に含まれていた成分は6R,12aR体であると確認された.タダラフィルは6R,12aR体が立体異性体の中で最もホスホジエステラーゼ5阻害作用が強いという報告があることから,ノルタダラフィルおよびホモタダラフィルも作用の強さを期待して,6R,12aR体を製品に使用した可能性がある.
著者
小川 麻萌 岩越 景子 中嶋 順一 髙橋 夏生 坂牧 成恵 小林 千種
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.51-55, 2021-04-25 (Released:2021-04-22)
参考文献数
12

臭素化植物油(Brominated Vegetable Oil:以下BVOとする)の分析において,前処理として知られるメチル化について,その反応効率を算出する場合に有用と考えられた1H-NMRの適用性について検証した.検討の結果,BVOをメチル化した際,未反応物の構造に由来するメチン基と生成物の構造に特徴的なメチル基,およびおのおののプロトン数とそのシグナル積分比を用いて1H-NMRにより簡便にBVOのメチル化効率を算出することができた.また,1H-NMRのシグナルおよびGC上のピーク面積の経時変化から,計算により得られた結果とGCで定量した結果は相対的にほぼ一致していた.したがって,BVOのメチル化効率を算出する際に1H-NMRを適用することは有効であることが判明した.
著者
丸山 道生 栢下 淳 高見 澤滋 渡邉 誠司 高増 哲也 東口 髙志
出版者
一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会
雑誌
学会誌JSPEN (ISSN:24344966)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.310-316, 2019 (Released:2020-06-15)
参考文献数
13

本邦では2019年末より,現行の経腸栄養用誤接続防止コネクタである医薬発第888号広口タイプコネクタ(以下,現行コネクタと略)が廃止され,誤接続防止コネクタに係る国際新規格であるISO80369-3(以下,ISOコネクタと略)が導入される.ISOコネクタのオス型コネクタは内腔の最小口径が狭いため,ミキサー食の注入に際し,注入圧の上昇によって注入が困難になる懸念がある.今回,小児病院3施設それぞれにおいてミキサー食の胃瘻注入を行っている患児の家族3名,看護師3名の計6名に対し,各施設の標準的ミキサー食の注入を行い,現行コネクタとISOコネクタの比較を行った.同時に,用いたミキサー食の物性も検討した.注入実験において,観察項目のミキサー食の投与時間,シリンジ持ち替え回数,主観的評価の「負担感」と「問題なく使用できるか」,いずれにおいても現行コネクタとISOコネクタで統計学的な有意差は認められなかった.この結果から,ISOコネクタでのミキサー食の注入は現行コネクタと変わりなく可能と判断された.
著者
髙田 琢弘 吉川 徹 佐々木 毅 山内 貴史 高橋 正也 梅崎 重夫
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.29-37, 2021

<p>本研究は,過労死等の多発が指摘されている業種・職種のうち,教育・学習支援業(教職員)に着目し,それらの過労死等の実態と背景要因を検討することを目的とした.具体的には,労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センターが構築した電子データベース(脳・心臓疾患事案1,564件,精神障害・自殺事案2,000件,平成22年1月~平成27年3月の5年間)を用い,教育・学習支援業の事案(脳・心臓疾患事案25件,精神障害・自殺事案57件)を抽出し,性別,発症時年齢,生死,職種,疾患名,労災認定理由および労働時間以外の負荷要因,認定事由としての出来事,時間外労働時間数等の情報に関する集計を行った.結果から,教育・学習支援業の事案の特徴として,脳・心臓疾患事案では全業種と比較して長時間労働の割合が大きい一方,精神障害・自殺事案では上司とのトラブルなどの対人関係の出来事の割合が大きかったことが示された.また,教員の中で多かった職種は,脳・心臓疾患事案,精神障害・自殺事案ともに大学教員と高等学校教員であった.さらに,職種特有の負荷業務として大学教員では委員会・会議や出張が多く,高等学校教員では部活動顧問や担任が多いなど,学校種ごとに異なった負荷業務があることが示された.ここから,教育・学習支援業の過労死等を予防するためには,長時間労働対策のみだけでなく,それぞれの職種特有の負担を軽減するような支援が必要であると考えられる.</p>
著者
髙橋 喜子
出版者
国立公文書館
雑誌
北の丸 : 国立公文書館報 (ISSN:02865750)
巻号頁・発行日
no.53, pp.143-162, 2021-03