著者
加藤 照之 CATAPANG Her KOSHIBA Frit PARK PilーHo FEIR Remato GERASIMENKO ミハエル BEAVAN John 小竹 美子 平原 和郎 中尾 茂 笠原 稔 GERASIMENKO Michael D HERBERT Cata FRITZ Koshib PILーHO Park RENATO.B. Fe MICHAEL Gera JOHN Beavam FEIR B. Ren
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

西太平洋地域は収束するプレート境界が複雑に入り組み、多くの海盆やトラフがあって地震や火山噴火の活動の盛んな地域である。この地域のプレート運動とその境界の非剛体的変形を検出して監視することにより各種の地殻活動の予測に役立てられると同時にプレート運動の機構がより詳しく明らかにされると期待される。最近のGPSによる基線解析では1000kmを1cmの精度で計測することが可能である。そこで本研究では、これまでの日米科学協力事業等による基礎調査をふまえて西太平洋地域にGPS連続観測網を構築した短期間の観測研究により当該地域の変位場を明らかにすることを目的とした。本研究では、IGS(国際GPSサービス機構)のグローバル観測網の手薄な地域に観測点を建設して資料を蓄積すると同時にIGSによるデータを取り込みながら得られたデータを解析して観測点の速度ベクトルを算出するという観測と解析を並行して実施するという方式をとった。平成7年度には気象研究所と共同で南鳥島に連続観測点を建設したのを手始めに、トラック島、マニラ、大田、ウラジオストックに観測点を建設しいずれも現地収録方式により観測を開始した。また、平成8年度にはポートモレスビ-に観測点を建設した。これにより、別途設置した石垣島とパラオとを合わせ8点のGPS連続観測点を建設し、IGSの他の観測点と合わせ西太平洋に1000kmスケールのGPS連続観測網を建設することができた。この観測網から取得できた1995年7月からのデータを用いて基線解析を実施しつつある。ここでは最高精度による基線解析を実施するため新たにfiducial freeによる解析方法を考案した。この方法ではIGSグローバルサイトの観測点を取り込み、観測網全体がバイアスを持たないようにしたうえ、どの観測点も固定しないで解くという方法を用いる。ソフトウェアはBernese software Ver.4.0を用い、IGS精密暦を使って解析を実施した。こようにすると、座標の絶対値は正確には求められないが、基線は正確に求められる。このようにして基線を求めた上でHeki(1996)によるつくば(TSKB)の速度を与えて固定し、全観測点の位置座標を決定する。このような解析を毎日のデータについて実施し、各観測点の時系列を得た上で直線近似によって速度ベクトルを求める。求めた速度ベクトルをマップにまとめたところいくつかの新しい事実が判明しつつある。1)マニラの観測点は北西に約4cm/yrの速度で移動しつつあり、フィリピン海プレートによる圧縮の影響が顕著である。2)石垣の観測点は南南東へ約6cm/yrで移動しつつあり、フィリピン海プレートが押している影響は見られない。このプレート境界はむしろカップリングは弱く、背孤である沖縄トラフが拡大しつつあるのを見ているものと考えられる。3)グアムはフィリピン海プレートないにあるにも関わらず、その変位速度は剛体的変位から考えると速度が小さすぎる。マリアナトラフの拡大の影響を受けているものと考えられる。4)大田、上海、イルク-ツク等の東アジアの観測点はすべてヨーロッパに対して東向きの変位を持ち、インドプレートの北方への衝突による大陸地殻の東への押し出しの影響を見ているものと考えられる。以上を要するに、本研究によって西太平洋地域にはじめてGPSの連続観測網が構築され、テクトニクス研究の基礎を築くことができたと同時に、日本の南西諸島,フィリピン,マリアナ諸島などにおいて従来の剛体的プレートモデルでは説明できないようなプレート境界部における非剛体的変位が明らかになりつつある。このことをふまえ、今後もこの地域にGPS観測点を増強すると共にその観測領域を東アジアに拡げ,当該地域のテクトニクスを明らかにすべく観測研究を強化する予定である。また、本観測網は「海半球ネットワークプロジェクト」(新プログラム:研究代表者 深尾良夫)に引き継がれ、引き続き観測を続行する予定である。
著者
青木 繁 BUI Huy Duon YANG Wie KNAUSS Wolfg 北川 浩 岸本 喜久雄 YANG Wei HUY Duong BU WEI YANG WOLFGANG KNA MAIGRE H. RAVICHANDRAN ジー ROSAKIS Ares NAKAMURA Tos 天谷 賢治
出版者
東京工業大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本研究は,日米中仏の4ヶ国の研究者の共同研究により実施するのもので,材料の破壊プロセスにおける微視的な内部構造変化について総合的に検討するとともに,それらを踏まえたメゾスコピック材料モデルを構築することを目的とする.すなわち,本研究では,原子レベルならびにナノレベルにおける微視的アプローチ,不均質材料,材料界面,高分子材料,複合材料の損傷・破壊モデルの検討,および,衝撃荷重や環境など外因の影響を踏まえた材料モデルの考察など,種々の立場から,材料モデルの構築を進めるとともに,相互に協力,啓発を行い,それらを統合化した材料の寸法尺度,時間尺度に対する階層構造を的確に捉えたメゾスコピック材料モデルの構築を目指している.本研究において設定した調査テーマは下記の通りである.(1)分子動力学法を基礎とする材料モデルの構築,(2)材料の損傷・破壊現象のミクロとマクロメカニクス,(3)界面強度特性とミクロ・マクロ材料モデル,(4)不均質材料の特性発現機構と損傷機構のミクロ・マクロモデル,(5)複合材料の損傷過程とミクロ・マクロモデル,(6)ミクロ構造を考慮した高分子材料モデルの形成とマクロ特性,(7)破壊のプロセスゾーンの損傷モデル,(8)衝撃荷重下における材料の破壊モデル,(9)材料の環境強度に及ぼす電気化学因子のモデル化また,東京工業大学,カルフォルニア工科大学,エコールポリテクニークにおいて共同研究を実施するとともに,中国,カナダ,アイルランド,ポルトガルにおいて調査研究を実施した.それらの結果,材料の内部微細構造の変化のダイナミクスを多面的に捉えるための分子動力学法,境界要素法,有限要素法などの種々の方法に基づくモデリング手法についての知見が得られた.
著者
西 義郎 シャルマ スハヌ・ラム シュリクリシャン 武内 紹人 SUHANU Ram Sharma KRISHAN Shree
出版者
神戸市外国語大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

まず本共同研究が、調査担当言語・方言に多少の変更はあったが、ほぼ予定通りに遂行され、予想を上回る成果を上げたことを強調しておきたい。このことは、なによりも、調査については、インド側研究分担者を主とし、Anthoropological Survey of India出身の臨地調査のベテランをその任に当てたことに負うものである。本共同研究は、1.ヒマチャル州(HP)のチベット語方言【武内(1方言)担当】及びウッタル州(UP)のチベット・ビルマ語系言語(TB)【シャルマ、シュリクリシャン(各1言語)担当】の調査と分析、2.当該地域のTB系言語の分布と社会言語学的調査(主に複数言語併用状況の調査)、3.UPのTB系言語の比較研究及び調査の総括(西担当)の3つの部分からなり、3の比較研究と総括以外は総て本年度中に完了し、3については、各調査担当者の報告及び論文が出揃った時点で西が行う計画であった。1については、武内・シャルマは予定より多くの言語・方言の資料を収集できた。武内はTot(Stod)とKhoksarの2方言を、シャルマはRongpo(Rangpa)語とByans語の2言語の調査を行った。当初、シャルマはRongpo語のみを、シュリクリシャンはByans語をそれぞれ調査する予定であったが、現地の実情に即して計画を変更し、シャルマがこの2言語を、シュリクリシャンはDarma語の調査を行い、各言語の音韻と年法構造の予備的調査・分析を終え、1000項目以上の語彙し200以上の文例を収録した。武内も、上記の2方言について、同様の分析と語彙の収録を終えている。このような質・量共に信頼度の高い資料が入手できたことで今後この地域のTB系言語の研究が大きく進展することになると言えよう。興味深い成果として、UPのTB系言語のいずれにも、一部の語彙に声調対立(高/低)が発見されたこと、逆に、HPのチベット語方言については、いずれも分節音素は、中央チベット語方言的変化を示しているにも拘らず、Khoksar方言には全く声調対立が認められず、Tot方言でも極めて限られた語彙にしか声調対立が認められないこと等を挙げることができる。ただし、この状況が声調喪属の結果なのか、声調発生の萌芽期を示唆するものかは今後の検討が必要である。2については、TB系言語・方言の分布状況は、西[1986、1990]が諸文献の記述から推定したものを確認する結度となったが、調査言語・方言はその分布の詳細が明らかにされた点が重要である。また、1909年刊のLinguistic Survey of Indiaに言及されたRangkas語が予想通りに既に死滅している事実が確認されたが、これ以外のUPのTB系言語はいずれは同じ運命を辿ることが予測され、早急に調査する必要がある。その意味で、今回のプロジェクトが単年度の予算しか認められなかったことは大変残念である。この地域は、TB系言語と並び、インド系のGarhwal語(UttakashiとChamoli)とKumaun語(Pithoragarh)が話されており、TB系言語を母語とする者は、いずれも母語とこのいずれかの言語の2言語使用者である。また、学齢期以降は、Hindi語を習得するので、これが高位言語として彼らの使用言語レパトリ-に加えられる。従って、TB系言語共同体には、基本的に3言語併用状況が認められることになることが明らかになった。今回の調査対象地域の言語は、ランカス語と同様に、いずれも近い将来死滅する可能性の高い言語である。その意味で今回の調査は時宜を得たものであった。この他にも、ヒマラヤ地域には、同じ様な状況に置かれたチベット・ビルマ系言語が数多くあり、早急に調査を行う必要がある。また、そのような調査を効果的に行うためには、チベット・ビルマ系言語を専門とし、臨地調査のベテランであるインド人学者と共同で行うことが肝要である。なお、以上の諸成果及び3つの総括と比較研究は、1992年度中に東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所刊Monumenta Serindicaシリ-ズ(英文)のモノグラフとしてまとめて発表する予定である。
著者
水崎 隆雄 VASILYEV S.A LUKASHEVICH アイ.アイ 佐々木 豊 大見 哲巨 LUKASHEVICH アイアイ
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

量子効果の極めて大きい偏極原子状水素(H)は絶対零度まで気体であり、充分低温まで冷却出来ればボ-ス凝縮を起こすことが期待されるなど、この新しい量子系の基礎物性は低温物理の最も重要な問題の一つである。京都大学では、液体H面上に吸着された2次元Hの性質を調べ、2次元巨視的凝縮相(Kosteritz-Thouless転移)の達成の可能性を検討し、2次元視的凝縮相出現に今一歩の所にある。一方、Kurchatov研究所のLukashevichのグループは早くからHの研究に着手に、mm-ESRを研究手段として研究成果をあげてきた。ここ数年間はKurchatov研究所とフィンランドのTurku大学との共同研究による局所的磁場を用いた2次元Hの研究が続けられており、既に2次元巨視的凝縮相が実現している可能性を指摘している。京大とKurchatov研究所の研究は相補的であり、2次元HのシグナルをESRで直接観測することにより今まで間接的な測定から類推されてきた2次元Hの研究を飛躍的に進歩させることが本協同研究の目的である。(1)京大側が2次元偏極原子状水素の基礎物性の研究を行ない、K-T転移の最適化条件を調べた。特に、2次元Hは液体^4Hの表面励起と強く結合して吸着されているが、表面励起とバルクのヘリウムの励起との結合が弱く、それが2次元Hの冷却の限界を決めていることが判明した。(2)Kurchatov側では120〜140GHzのESR装置を用意した。特に、2次元H観測に適したファブリベロ-型キャビティーを開発し、低温でのテストを近く行なう予定である。(3)各グループが各段階での研究に相互に参加し、装置の設計や議論を集中的に行なった。平成9年2月〜3月にかけてKurchatov側の研究者が2人来日して、京大の超低温装置にESR装置を設置し、127GHzでHのシグナルを観測することに成功した。ESRによる2次元Hの直接観測の共同研究をH9年度も継続して、K-T転移の探索を行う。
著者
田中 二郎 ビーゼリー メガン 大野 仁美 中川 裕 大崎 雅一 菅原 和孝 BIESELE Megan 野中 健一 太田 至 早木 薫 池谷 和信 早木 仁成
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

1.生活史に刻印された変容の歴史、定住化に伴う産業の変遷、畑の請負い耕作やヤギの委託の変化、および、グイ語、ガナ語と隣接諸言語との接触史に関する資料の収集などにより、狩猟採集民サンとカラハリ族をはじめとする近隣農牧民の交渉史、共生関係の動態が明らかにされた。2.サンの年長男性の生活史を収集・分析し、過去の狩猟活動、婚外性関係、成人式、農牧民より取り入れた呪術的観念等の詳細が明らかにされた。3.サンの食用および物質分化としての昆虫利用を調査し、とくに昆虫食が食生活に占める質的重要性を明らかにした。さらに、哺乳類、取類、爬虫類を含む動物の形状や行動に関する精密な認知が予見、凶兆、習性や形態の起源神話といった象徴的解釈と密接に相関していることを明らかにした。4.グイ語とガナ語の言語構造と語彙に関する記述を精密化し、正書法を提案した。5.過去30年間に及ぶ人口調査のデータを用いて、サンの人口動態を解明した。6.サンとカラハリの儀礼の比較分析から、サンはいくつかの要素をカラハリからとりいれてきたにもかかわらず、呪術的要素は伴わなかったことを明らかにした。7.子供の言語・身体発達と社会化の過程を、狩猟採集の衰退、平等主義の変容、学校教育の導入など「近代化」の諸問題との関連において明らかにした。8.カラハリ砂漠の辺縁部植生移行帯では、ジャケツイバラ科落葉喬木モパネは家畜の飼料、物質文化として重要なばかりでなく、宗教儀礼などにおいても重要な象徴的役割をもつことが明らかにされ、さらに、この土地の利用権をめぐる民族間の争いがアイデンティティーの問題との関連で生起し、総選挙など国家レベルでの問題にも深く関わっていることが明らかになった。9.平成9年度には、ボツワナ政府主導のサンの移住という歴史的な事件が発生し、これに伴う諸問題の解明が急がれたが、多くは将来の課題となった。
著者
福田 アジオ 周 正良 朱 秋楓 白 庚勝 巴莫曲布む 劉 鉄梁 周 星 陶 立ふぁん 張 紫晨 橋本 裕之 福原 敏男 小熊 誠 曽 士才 矢放 昭文 佐野 賢治 小林 忠雄 岩井 宏實 CHAN Rohen PAMO Ropumu 巴莫 曲布女莫 陶 立〓
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

平成計年〜3年度にわたり中国江南地方において実施した本調査研究は当初の計画どおりすべて実施され、予定した研究目的に達することができた。江蘇省常熟市近郊の農村地帯、特に白茆郷を対象とした揚子江下流域のクリ-クに広がる中国でも典型的な稲作農村の民俗社会の実態とその伝承を記録化することができ、また浙江省の金華市および蘭渓市や麗水市における稲作の民俗社会を調査することが出来た。特に浙江省では中国少数民族の一つであるシェ族の村、山根村の民俗事象に触れることができ、多大な成果を得ることが出来た。2年度は前年度の調査実績を踏まえ、調査地を浙江省に絞り、特に蘭渓市殿山郷姚村、麗水市山根村、同堰頭村の3か所を重点的に調査した。ここでは研究分担者は各自の調査項目に従って、内容に踏み込み伝承事例や現状に関するデ-タを相当量収集することができた。また、この年度には中国側研究分担者8名を日本に招聘し、農村民俗の比較のために日中合同の農村調査を、千葉県佐倉市および沖縄県読谷村の村落を調査地に選び実施した。特に沖縄本島では琉球時代に中国文化が入り込み、民俗事象のなかにもその残存形態が見られることなどが確認され、多大な成果をあげることが出来た。3年度は報告書作成年度にあたり、前年度に決めた執筆要項にもとずき各自が原稿作成したが、内容等が不備がありまた事実確認の必要性が生じたことを踏まえ、研究代表者1名と分担者3名が派遣もしくは任意に参加し、補充調査を実施した。対象地域は前年度と同じく蘭渓市殿山郷姚村、麗水市山根村の2か村である。ここでは正確な村地図の作成をはじめ文書資料の確認など、補充すべき内容の項目について、それを充たすことが出来た。さらに、年度内報告書の作成をめざし報告書原稿を早急に集め、中国側研究分担者の代表である北京師範大学の張紫晨教授を日本に招聘し、綿密な編集打合せを行った。以上の調査経過を踏まえ、その成果を取りまとめた結果、次のような点が明らかとなった。(1)村落社会関係に関する調査結果として、中国の革命以前の村落の状況と解放後の変容過程に関して、個人の家レベルないし旧村落社会および村政府の仕組みや制度の実態について、また村が経営する郷鎮企業の現状についても記録し、同じく家族組織とそれを象徴する祖先崇拝、基制について等が記録された。特に基制については沖縄の基形態がこの地方のものと類似していること、そして沖縄には中国南方民俗の特徴である風水思想と干支重視の傾向があり、豚肉と先祖祭祀が結びついていることなどから、中国東南沿海地方の文化との共通性を見出し、日中比較研究として多大な成果をあげることが出来た。(2)人生儀礼および他界観といった分野では、誕生儀礼に関して樟樹信仰が注目され、これは樹木に木霊を認め、地ー天を考える南方的要素と樹木を依り代と見立て、天ー地への拝天的な北方的要素が融合した形と見られる。また成人儀礼ではシェ族に伝わる学師儀礼の実態や伝承が詳細に記録され、さらに貴州省のヤオ族との比較を含めた研究成果がまとめられた。特に中国古代の成人式の原始的機能が検出され、また先祖祭祀との関わりや道教的要素の浸透など貴重なデ-タが集積された。その他、中国民俗の色彩表徴の事例などの記録も出来た。(3)民間信仰および農耕儀礼として、年中行事による季節観念と農業生産との関係、農耕社会における祭祀の心理的要因や農耕に関する歌謡によって表出された季節的意味などに焦点をあて、ここではさらに日本の沖縄との比較を含めて分析された。さらに建築儀礼に関しても詳細に報告され、沖縄の石敢当を対象に中国との比較研究もまとめられた。(4)口承文芸および民俗芸能については稲作起源神話の伝承例を初めとし、江南地方の方言分布とその特徴ならびに文化的影響の問題について、さらに金華市と沖縄の闘牛行事の比較研究などに多大な成果を得ることが出来た。(これらは報告書として刊行予定)
著者
和田 正平 PIUS S.B MASAO F.T 小田 亮 阿久津 昌三 栗田 和明 渡辺 公三 江口 一久 端 信行 PIUS S.B. MASAO F.T.
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

本調査はケニア、タンザニア、ザイ-ル、カメル-ン、ガ-ナを主要調査国として1989年から3年間(3年目は調査総括)伝統的政治構造と近代化の比較研究を目的に実施された。調査開始後の1990年頃からアフリカには「民主化」の気運が急激に高まり、複数政党制へ転換する要求運動が実現にむけて動きだした。1991年11月ザンビアで一党独裁が打倒され、12月にはケニアの一党制廃止がきまった。こうした独立時を彷彿させるような急激な民主化運動は社社主義の挫折という国際関係の大変化に呼応しているが、内実、根強い部族主義から噴出している面も否定できない。調査は政治人類学的な視角から住み込み調査法によって行なわれ、以下のような調査成果が得られた。ケニアでは、新しく結成された二大野党FORDと民主党の支持基盤について調査を行なった。民衆の民主化要求では裏面で小数派のカレンジン族出身の現大統領に対する反政府運動であり、新党の結成は新しい部族の対立と反目を生み出している。他方部族の基盤である農村では西ケニアを中心に住み込み調査を行なった。地方では、近代行政とは別個に伝統的権威をもった長老会議が実質的な力をもっていることが明らかにされた。具体的にはアバクリア族のインチャマのように長老会議は邪術者によって構成されているが、個別利害をこえて裁判等を行ない、その権威は正当化されている。タンザニアでは逆に伝統的な長老会議は衰退、共同体儀礼の消滅が記録された。調査したイラク族の村ではウジャマ-開発が強行された後、行政組織はCCM(革命党)に密接に関連するようになり、長老会議は家庭内のもめ事を解決するだけに機能が縮小した。しかし、かつて首長制があったニャキュウサ族ではCCMの影響もさほど強くなく、長老会議の権威がまだ維持されていて、土地の再分配等に大きな発言力をもっている。ザイ-ルでは1990年にカサイ州、クバ王国を調査した。現王朝は17世紀前半の王から数えて22代目にあたり、今日も伝統的権威をもった王が、実効的な統治を行なっている。今回は、王国に生きる人々の社会空間の場がどのようにつくられるかを目的に調査を行なった。具体的にはクバ王権とその傘下のショウア首長権を対比し、両者の最大の質的差異が女性の「集中=再分配」システムから発していることが明らかになった。王権の形成史を女性の授受関係を通してみることがいかに重要な視点であるかを明示できたと思う。カメル-ンでは19世紀末から20世紀初頭にかけて、北部フルベ諸王国で創作された抵抗詩「ムポ-ク」を採録した。「ムポ-ク」はヨ-ロッパ人の前では決して明かすことのなかったフルベ族の本心が、詩というメタフォリックな形で表現された貴重な資料である。伝統的な吟遊詩人「グリオ」が朗唱の中で暗に植民地政府を批判し、世論を形成していった社会状況がこの詩からうかがい知ることができる。また北西部州では、マンコン王国の伝統的王制と近代文明的価値をめぐって調査を行なった。歴代伝承されてきた王の伝統的諸儀礼と近代化に対応する社会と文化の変容過程に注目し、両者が功緻に融合している状態を観察し、その実態について民族誌的記録をとることができた。ガ-ナでは中部アシャンティ王国の王都クマシにおいて現地の歴史資料に依拠しつつ、歴代王位の継承方式のついて調査を行ない、アサンテ王における王位をめぐる相克の歴史を明らかにした。王朝は統合と分裂を繰り返したが、王母を核とする「血の原理」に着眼し、王位継承を論じたところに、今回の研究の新しい展開がある。ト-ゴでは、中部山岳地方に居住するアケブ族の首長制の形成と解体に関する調査を行ない、同地方の伝統的政治組織が海岸諸王国の奴隷狩りに対抗していたことを証明することができた。以上、調査を分担した各個は、成果報告として論文を作成中であり、国立民族学博物館論文報告や学会誌等に寄稿する予定になっている。
著者
藤田 禎三 ターナー マルコム リード ケネス エゼコビッツ アラン 水落 次男 小林 邦彦 松下 操 TURNER Malcolm w REID Kenneth b m
出版者
福島県立医科大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

1).マンノース結合蛋白(MBP)はマン-スやN-アセチルグルコサミンに結合特異性を持つ血清レクチンの一つで、補体活性化能が有り、生体防御上重要な役割を演じている。MBPによる補体活性化のメカニズムに関しては次の2つの説が提唱されている。一つは、補体第一成分C1と同様にMBPはC4,C2の分解にプロテアーゼ成分としてC1の亜成分C1rとC1sを用いるとする考え方である。これはイギリスのReid博士らのMBP-C1r/C1s複合体が形成し得ることを示した再構成実験に基づく。一方,我々の連休からヒト血清MBP画分からC4,C2分解活性能を有するプロテアーゼMASP(MBP-associteel sereine pntease)が単離されたことより、MBPはMBP-MASP複合体を形成して働いているとする見方である。生体的でMBPによる補体活性化(レクチン経路)のメカニズムを解明する上で、MBPとC1r/C1s,MBPとMASPなどの結合性が重要な手がかりとなる。そこで、MBP-MASP,C1の亜成分間の結合性を結合定数の測定により検討した。Reid博士らの調製したC1と我々の調製したMBP-MASPを材料として蛋白成分間の結合状態を調べる装置であるBiacoreを用いてMBP-MASP,MBP-C1r/C1s,C1g-MASP,C1q-C1r/C1s各々の結合定数を求めたところ、これらの値はほぼ同程度てあることが判明した。血清中よりMBP-MASP,C1q-C1r/C1sのみ得られることを考慮すると以上の結果は、これら2つの複合体は何らかの制御機構を受けてin vivoで形成される可能性を示唆している。2).MBP欠損患者が高頻度(白人で5-7%)で知られており、幼児における易感染性との関連が報告されている。これらMBP欠損患者のMBP遺伝子では塩基230の点突然変異でコドン54がGGC→GACに変化していることが明らかにされている。これはMBP蛋白のグリシン(G)がアスパラギン酸(D)への置換につながる変異であり、この結果,変異MBPは合成されても生体内で分解が速いものと推定されている。アメリカのEzekouitg博士らは正常タイプのMBP(MBPG)と変異MBP(MBPD)のリコンビナント体を作製して両MBPの性状を検討した。その結果MBPGがヒト血清中の補体活性化能を示したのに対して、MBPDには本活性が損われていた。そこで,このような活性の違いの原因を解明する目的でMBPとMASPとの反応性に着目して検討を行った。その結果、EZRkouitg博士の調製したリコンビナントMBPのうち、MBPGはヒト血清MBPと同様にMASP共存下、補体成分C4,C2分解を伴なう補体活性化能を示したが、MBPDにはその活性が見られなかった。更に、MBPとMASPとの結合性を検討したところ、MBPGはMASPと結合したのに対して、MBPDは結合しなかった。以上の結果より、MBPDに補体活性化能が損なわれている原因として、MASPとの結合活性がないことが明らかとなった。(投稿中)。3).リウマチ患者血清中のIgGの多くは、非還元末端のガラクトースが欠損して次のN-アゼチルグルコサミン残基が末端に位置している異常な糖鎖構造をしている。MBPはN-アセチルグルコサミンに親和性を持つので、このガラクトース欠損IgGにMBPが結合すると補体活性化をおこし、それがリウマチの病態と関連がある可能性が考えられる。そこで、リウマチ患者血清IgGへのMBPの結合性を調べたところ、正常人のIgGに比べて、より多くのMBPが結合することがわかった。更に、このMBP結合性IgGをプロテインGカラム及びMBPカラムを用いて単離後、MBP-MASPによる補体活性化能をC4消費を指標に調べたところ、明らかな活性化を示した。また、このIgGはIgMタイプのリウマチ因子と複合体を形成していた。これらの結果より、リウマチ患者血清中の異常な糖鎖構造をもつIgGを含大複合体がMBP-MASPを介したレクチン経路の活性化を起すことが明らかとなった。
著者
古澤 賢治 路 林書 中川 信義 李 暁西 植田 政孝 LU Lin shu LI Shao Xi 路 林暑
出版者
大阪市立大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

1.本研究は、中国の産業立地と広域経済圏の発展可能性を主たる課題とした.調査対象としては,北京,天津,山東,遼寧を含む環渤海領域と上海デルタを「竜の頭」とする長江経済圏を軸にし,それらの比較をしたいと考えた.広大な中国の研究は対象を絞り込まねばならないが,同時に中国の多様性を実際に体験し,様々な状況を比較検討する素地を固めることも不可欠である.2.具体的な研究課題としてはまず,90年代前半の大幅な外資導入によって引き起こされた中国各地の変化についての状況認識し,その意義を分析することであった.外資導入により,中国各地の変化は確かに急速であり,投資環境の整備で産業立地の改善は大きく進展した.とはいえ,各地の一部の指導者には中央政府の援助と外資導入に依存することを望むだけの者もいる.3.次の研究課題は,企業間,地域間の協力関係の進展についてであった.我々は各地における地域連携システム確立による広域経済圏の形成を調査した.しかし,企業の自律性は依然として行政的に阻害されており,地域間の協力関係は展開できないでいるのを改めて認識させられた.社会経済構造の根本的変革は容易ではなく,市場経済の発展に不可欠な地域経済の自由往来は思ったほど進んでいない.4.今回の調査研究ではまた,自動車と家電産業を中心に外資企業の進出状況と中国各地の産業拠点政策についても認識を深めた.国際的技術水準における格差は別にして,外資企業の中にも現地化に努力し,中国の技術者を養成する姿勢を示すものも多い.さらに各地の指導者の多くが,それぞれの特色を生かした発展の重要性を自覚し始めているように見えた.
著者
渡利 徹夫 江尻 晶 森下 一男 佐貫 平二 渡辺 二太 西村 清彦 天野 恒雄 成原 一途 岡本 正雄 笹尾 真美子 霍 裕平 沈 慰慈 沈 学民 李 健剛 張 大慶 王 孔嘉 兪 国揚 王 兆申 方 瑜徳 張 暁東 万 元熈 万 宝年 邵 育貴 朱 思錚 武藤 敬 関 哲夫 熊沢 隆平 大久保 邦三 岡村 昇一 足立 圭三 東井 和夫 佐藤 哲哉 孟 月東 藤原 正巳 羅 家融 藤田 順治 SHEN Xuemin SHEN Weici FANG Yude WANG Zhaoshen WANG Kongjia YU Guoyang HUO Yuping WAN Yuanxi WAN Baonian LI Jiangang ZHANG Daqing ZHANG Shaodong LUO Jiarong MENG Yuedong SHAO Yugui ZHU Sizheng 万 元煕 李 建剛 愈 国揚
出版者
核融合科学研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

本計画立案時点において、トーラス型プラズマ装置として核融合科学研究所(NIFS)ではJIPP T-II U及びCHSが稼働中であり、準定常運転を目指す大型のLHDが建設中、他方合肥の等離子体物理研究所(ASIPP)ではHT-6M装置が稼働中、準定常運転を目指す大型のHT-7が建設中であった。またこの時点では「高ベータプラズマの閉じ込め研究」を共同研究の主要なテーマとしたが、基本となるプラズマ加熱が未だうまく行かない状態にあったASIPP側では大電力イオンサイクロトロン加熱の実現をHT-6Mの第一優先項目としたので、本計画もこの方面への研究協力に力点を置くことにした。本計画の3年間に、日本から合肥への派遣延べ21名,合肥から日本への招聘延べ18名を含む交流が実行された。平成5年度:ASIPPは採用していたカーボンリミターの材料の選択に問題があるとしてこれを撤去した。引き続きイオンサイクロトロンアンテナのファラデイシールドと呼ばれる部分の構造に問題があるというNIFS側の指摘に基づきこれも撤去した。これらの結果として、加熱の効果を示す「アンテナの負荷抵抗の増大」が観測された。NIFSのイオンサイクロトロン加熱において実績のあるチタンゲッターをHT-6Mに持ち込み不純物の制御を試みた。その結果ターゲットプラズマの質が向上した。入射電力は多少増大したものの未だ本格的な加熱には至らなかった。平成6年度:NIFSにおいて実績のある、固体ボロンを使ったボロニゼーションを試みた。不純物の流入が減少し、表面加熱に関する実験を行なう事が出来た。不純物の問題はいくらか改良されたものの、アンテナは絶縁破壊が起り大電力入射を妨げている。これを解決するために「長いアンテナ」を製作することにした。NIFSは2イオン共鳴加熱に移行することを主張していたが、HT-6Mでは磁場を0.9T以上にする上での技術的問題とASIPP内の実験テーマの優先順位の問題があって、2イオン共鳴加熱への移行は持ち越すこととなった。NIFSではLHDのイオンサイクロトロン加熱のための技術開発研究を行なっている。この一部としてASIPPの同軸切替器を改造して使用することにした。平成7年度「長いアンテナ」を装着し、第2高周波加熱以外に2イオン共鳴加熱の実験も行なった。予備的なものであったが、水素と重水素の成分比等の基本データも
著者
長沢 和俊 趙 靜 張 樹春 劉 文鎖 王 宗磊 李 肖 王 炳華 杉本 良 昆 彭生 荒川 正晴 櫻井 清彦 大橋 一章 岡内 三真 WAN Zong Lei WAN Bin Hoa ZHANG Shu Chun ZHAO Jung 劉 文すお 趙 静 昆 彭夫 劉 玉生 柳 洪亮 小澤 正人 于 志勇 李 宵 夏 訓誠 昆 彰生
出版者
早稲田大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

われわれは平成6年から同8年にかけて、トルファン地区の総合調査を実施した。調査はそれぞれ分担研究者の専門により、美術史学の大橋教授はベゼクリス、トスクチ仏洞を、故書学の荒川助教授はトルファン文書の研究を行なったが、とくに共通のフィールドとしては、交河故城西方の溝西墓の発掘調査に全力を傾注してきた。周知の通り交河故城は今から2200年前から広くこの地方を支配してきた車師前国の都城で、溝西墓にはその車師前国時代の墓と、5世紀の高昌国から唐代にかけて、この地方に進出した漢民族の古墓群があり、その総数は2000基以上もある。以下、溝西墓の発掘調査を中心に、3年間の研究実績を総括してみると、次の通りである。(1)平成6年度:初年度はまず全隊員により、トルファン地区のGeneral Surveyが行われた。即ち高昌故城、アスターナ、ベゼクリクチ仏洞、蘇交塔など、トルファンの主要史跡を踏査し、各遺跡の史的意義、トルファン文書との関連などを調べた。さらに共通のフィールドとしての交河故城西方の溝西墓については、頼るべき地図がないので、新疆測量部の協力により、溝西墓(東西約3km、南北約1km)全域の測量を開始した。この測量により平成6年度末までに全域の1/500地図が出来上った。また王炳華氏の選定により、溝西墓のほぼ中心部で4か所の高昌国時代の墓を試掘した。その際、田中地質コンサルタントKKの協力を得て、遺跡の電磁波探査、気球による航空測量などを行なった。こうした物理探査は中国とくに新疆では最初の試みで、多くの考古学関係者の関心を集めた。この年に発掘した第2号墓からは墓碑が出土し、この墓は某氏の妻氾氏の墓で、589年に没したことが確認された。これによって溝西墓は、交河城にいた高昌貴族(6〜8世紀)と唐人の墓であることが分り、今後発掘地域を拡大することにより、アスターナと同じようなミイラ、古文書、絹織物等、副葬品の出土が期待された。(2)平成7年度:2年目には西北部の高昌国の豪族、麹氏と張氏の螢城から2か所、中央部のマウンドのない墓(三年物理探査で発見)2か所、南部の唐代の墓と思われるもの5墓計9基の墓を発掘、2個の墓誌、未盗掘の墓1基を発掘した。発掘後、墓の中央にトレンチを入れ、墓の構造も検討した。また田中地質の気球により前年度失敗した溝西墓、交河故城の空中撮影に成功した。今年度は9基の墓を発掘したが、ここは盗墓が盛んでほとんど盗掘されており、かつ墓室内の湿度・気温が意外に高く、有機物やめぼしい遺物は、ほとんど出土しないことが明らかになった。(3)平成8年度:そこで今年度はまず次の基礎調査の達成をめざした。(1)遺跡全域の1/500地形図の作成。…これは平成6-7年度に完成した。(2)250m四方の遺跡地図の完成…本年度の夏、不足分を補って完成。(3)全古墓の実測(Numbering)とデータベース化…実測は今夏終り、現在早稲田大学電算室でデータベース化しつつある。ついで本年度の発掘調査は、遺物の出そうな高い地域の墓4か所で8基の墓を発掘した。しかしこれらの高い地区の墓はいずれもすっかり盗掘されていて、遺骨のほか何も残っていなかった。そこで発掘主任の岡内教授は発想の転換をはかり、車師前国期の墓を発見し、ここを発掘した。その結果、そこから黄金の王冠、黄金の指輪、ブロ-チ、南海産の貝符、星雲文鏡が出土し、近くの17号墓からは黄金の髪飾り、トルコ石の首飾り、黄金製のバックルや脚飾りなどが出土し、車師人の王侯・貴族の黄金装飾品がワンセットで出土し、併出した星雲文鏡や五銖銭から、時代も前一世紀と特定でき、王炳華所長も「これだけ金製品がまとまって出土したことは新疆はもとより全中国でも珍しく、おそらく今年度の中国考古学で最も重要な発掘の1つ」と評価された。これらの出土品のうち王冠は明らかにスキタイ・サウロマタイ風で、ブロ-チや指輪は、西アジア工芸品の影響をましており、バックルや足飾りはモンゴル高原から青銅の類似品が出ており、貝符は南海産、漢鏡と五銖銭は中国の影響をまし、当時のトルファンが東西文明の十字路にあったことを示している。又殉葬馬や鉄鏃、轡の出土は車師が騎馬民族であることを示している。
著者
野村 亨 WOLLNIK H. MEUSER S. ALLARDYCE B. SUNDEL S. 稲村 卓 RAVN H. 中原 弘道 松木 征史 HANSEN G. D'AURIA J.M. 永井 泰樹 篠塚 勉 藤岡 学 和田 道治 池田 伸夫 久保野 茂 川上 宏金 福田 共和 柴田 徳思 片山 一郎 NITSCHKE J.M BARNES C.A. KLUGE W.K. BUCHMANN L. BARMES C.A. MEUSEV S. D´AURIA J.M. SUNDELL C.
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

本研究の目的は,原子核反応で生成するさまざまな短寿命の不安定核種を,その場で分離・選別し,さらに加速して二次ビ-ムとして実験に供する技術の開発とそれによる先駆的研究の実施であった。上記の実験技術は,現在世界的に注目されている先端的技術で,原子核物理学と関連基礎科学分野に全く新しい研究手法を導入するものと期待されている。本研究では,以下の研究課題を設定し,東大核研を軸にして,欧米の主な関係大学・研究所と共同開発・研究を実施した。その成果は,国際会議等に発表するとともに,論文として雑誌に報告されている。A.大効率・高分解能オンライン同位体分離器(ISOL)の開発・・・不安定核のその場分離・選別(ア)大効率ISOLイオン源の開発CERN(スイス)とTRIUMF(カナダ)等と共同開発を実施。表面電離型,FEBIAD型,ECR型イオン源を試作し,さまざまな不安定核原子のイオン化効率を測定。その結果を踏まえてイオン源の改良を行った。アルカリ金属元素については40%以上の大効率イオン化に成功した。また,ビ-ムバンチングについても成功した。(イ)超高質量分解能ISOLの光学計算M/ΔM【greater than or similar】20,000のISOLイオン光学系の設計を,東大核研・東北大・ギ-セン大学(独)の共同研究として実施。機械精度や放射線ハンドリングの観点から,そのフィ-ジビリティを検討。その成果は,東大核研の不安定核ビ-ムファシB.不安定核ビ-ムの加速技術の開発(ア)世界の現状の調査・検討不安定核ビ-ムの加速は,唯一例としてベルギ-の新ル-バン大学でサイクロトロンによって試験的に実施されている。そこでの現状を調査の上,CERN(スイス),GANIL(仏),TRIUMF(カナダ)等の加速計画を吟味し,種々の加速器の長所・短所を明らかにした。この結果は次の(イ)に反映されている。(イ)分割同軸型RFQリニアックの開発電荷質量比の極めて小さい,入射エネルギ-の非常に低い重イオンリニアックの設計・開発を東大核研で行った。そのさい,GSI(独)とTRIUMF(カナダ)の研究者に詳細な検討・批判をあおいだ。試作した分割同軸型RFQリニアックは順調に稼動し,世界的な注目を集めている。C.不安定核ビ-ムによる核物理・天体核物理学の研究(ア)レ-ザ-による不安定核の精密核分光GaAs,AlGaInPなどの固体結晶中に, ^<75>Br, ^<114m>In等の不安定核を打ちこみ,レ-ザ-による光ポンピングにより,娘核( ^<75>Seや ^<114>In)のスピン偏極を実現した。固体中の不安定核のスピン偏極は世界的に稀な成功例である。さらに,RADOP法により,娘核の核磁気能率を精密に測定した。これは,CERN(スイス)との共同研究である。(イ)不安定核の天体核反応率の測定東大核研・理研・GANIL(仏)との共同研究として宇宙における重元素合成機構において,不安定核の天体熱核反応に役割の研究を実施。 ^<13>Nの熱核反応率の測定に成功した。上述の研究成果の多くは,平成3年度に開催された国際会議(原子核・原子核衝突に関する第4回会議,於金沢;第2回放射性核ビ-ム国際会議,於新ル-バン大学[ベルギ-];第12回EMIS会議,於仙台等)の招待講演として発表されている。また,国際誌等に論文として報告した。本研究成果は国際的な反響をよび,東大核研の研究プロジェクトにその結果が活用されたばかりでなく,CERN(スイス),TRIUMF(カナダ),LANL(米)等の研究所から共同研究が期待されている。
著者
堀井 憲爾 和田 淳 SUNOTO M.A. SOEKART J. SIRAIT K.T. 河崎 善一郎 仲野 みのる 角 紳一 依田 正之 中村 光一 山部 長兵衛 鬼頭 幸生 SUNOTO M. E. SOEKARTO J. SIRAIT K. T. 堀井 憲爾
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

インドネシアは、11月から4月に至る雨期には、ほゞ連日の雷雨に見舞われ、年間雷雨日数は、多いところでは150日にも達する世界的な雷多発地帯の一つである。雷の特性は、わが国の夏形雷に近いと思われるが、高緯度のわが国の雷との比較研究は意義がある。一方、インドネシアの電力施設は、現在、急速な開発途上にあり、送配電システムの雷防護対策は、極めて重要な技術として,その基礎となる雷の研究が重視されている。雷の研究は、自然雷の観測と共に,人工的に雷を制御し、誘発させて、雷放電特性を詳細に解明するロケット誘雷実験が欠かせない。ロケット誘雷実験は、わが国において、本研究組織のメンバ-により十数年の実施経験がある完成された技術である。このメンバ-とインドネシア側の大学、研究所のメンバ-の共同によるロケット誘雷実験が、昭和64年度より開始されて、平成2年4月6日には、インドネシアではじめての誘雷に成功した。本年度のロケット誘雷実験は、昨年度に引続き,ジャカルタの南ボゴ-ル地区のプンチャ峠近くの国営グヌンマス茶園内で、平成3年12月19日から平成4年2月19日までの2ケ月間実施された。同地点は、標高が1400mあり、ジャカルタ平原を見下ろす絶好の実験地である。この茶園内の小山の頂上に9基の発射台を立て,地上電界の測定・監視により、雷雲の接近時に、直径0.2mmの接地されたスチ-ルワイヤ付きロケットを真上に向って発射した。ロケットは英国製の船舶用救命索発射用ロケットを利用し、約500mの高度に上昇する。上昇途中でロケットから上向きのリ-ダ放電が進展し、その直後にロケットに落雷が起り、ワイヤに沿って雷電流が流れ、ワイヤは爆発燃焼してア-ク放電となる。実験期間中に30回近くロケット発射の機会があったが、ロケット不良が多く、うち15回の正常飛行により6回の誘雷に成功した。電流値は、現在詳細解析中であるが、最大12KAに達し、電流の極性はわが国の夏雷と同じく、負が5回と多く,正が1回であった。地上電界は、針端コロナ電流で最大3μAに達し、10kV/mを越える強電界を示した。今回の実験での特記すべき結果は、わが国の実験でもこれまで観測されなかった,避雷針への誘雷に成功し、流し写真の撮影にも成功したことである。12月25日,17:30の最大ー12kAに達する雷放電の第1線が、ワイヤに沿って発射台へ放電した後、約0.5秒後の第2撃が,発射台より約4m離れた10mの高さの避雷針へ放電した。その後,0.06秒後の第3撃もやはり避雷針へ放電しており、避雷針の保護効果は、多重雷の後続電撃に対して極めて有効な場合があることが確認された。15回の発射のうち1回は、ロケットが上昇途中でワイヤが地上から切れ、雷雲と大地との間の空間にワイヤが張られるという珍しい状況となり、いわゆる雷雲内放電誘発の実験となったが、残念ながら誘電には成功しなかった。今後,この方式の実験を再挑戦する必要を認めた。また,1回は空間電界計を塔載したロケットを打上げたが、電界計の不調のため観測に失敗した。この他,インドネシア電力公社の援助により、実験場内に300mの試験用配電線を架設し、誘雷放電時にこの配電線に誘導されるサ-ジ電圧の観測の準備を進め、特に分圧測定システムの技術について指導を行った。今年度は、実験の開始時と中間段階で、日本側から計5名が実験に参加し、技術指導と共同観測を行ったが、ロケットの操作、デ-タの観測記録は,すべてインドネシア側の責任で実施され、この実験に関する技術移転はほゞ完了したと考えてよい。しかし、英国製ロケットの不良が多く、次回からはわが国のロケットを輸出する必要があり、また一部の高度測定技術(電流波形記録,電磁界変化記録など)については、来年度以降も引続き技術指導と援助が必要であり、これに沿った施策推進が望まれる。なお、次年度以降も、乏しい資金ではあるが、インドネシア側で実験を継続する意向があり、日本側もできる限りこれに協力する覚悟である。
著者
村井 康彦 小野 芳彦 コーニッキー ピーター 白幡 洋三郎 園田 英弘 パンツァー ペーター スミス ヘンリー 飯田 経夫 山折 哲雄 KORNICKI Peter SMITH Henry PANTZER Peter ピーター コーニッキー ペーター パンツァー ヘンリー スミス
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

本年度の調査は、17世紀まで世界の先進文化をリ-ドしていたラテンヨーロッパ、特にスペイン・ポルトガルとそれらによって植民地化されていたラテンアメリカにおける日本文化の現状を調査する事を中心軸に据えた。また先進国の中でも、調査をやりのこしていたアメリカ合衆国を加えた。スペイン・ポルトガルの両国は、現在ヨーロッパ先進国に対する農業生産物の供給国として、むしろ開発途上国的な色彩を持っている。そこで、日本の工業製品はこの両国との競合関係にはなく、日本製品の出超の事態にある。家電製品、自動車等は、いうまでもなくスペインやポルトガルの製品が日本には皆無であり、日本製品のみが両国に進出している。しかしながら、ヨーロッパ先進諸国、ドイツ・イギリス・フランスの製品と比較すれば、日本製品の進出は少ない。現地調査の結果、日本の生活文化として特に注目に値するのは、テレビゲーム、盆栽、テレビアニメの3つでであることがわかった。テレビゲームは、ポルトガル・スペインのおもちゃ屋の店頭でもっとも目立つ場所に飾られており、他国の製品の出番はほとんどないといってよい。じじつジェトロのマドリード支部での聞き取り調査でも現在の日本・スペイン間の貿易に、テレビゲームが占める割合は他の電気製品・工業製品を大きく圧倒するとの事であった。盆栽は、ヨーロッパ先進諸国でも相当の普及を遂げているが、ラテンヨーロッパでは現地の独自の盆栽文化が育っている事が特徴である。すなわち、ドイツ・フランス・イギリスでは、どちらかといえばまだ日本の伝統的な盆栽文化が尊重されており、愛好家は日本趣味の持ち主や日本通である事が多いのに対して、ラテンヨーロッパでは盆栽協会の会長以下幹部を現地人が占めており、盆栽愛好が庶民層にまで広がっている様子がうかがえた。またブラジルの調査でも、多数の日系人の存在にもかかわらず、盆栽協会の活動にブラジル人が進出しており、盆栽が庶民層に普及している事がはっきりした。先進ヨーロッパ諸国と違って、盆栽がもはやエキゾチシズムの対象でもなく、日本趣味の対象でもなくなっている。すなわち本当に現地に根を下ろした生活文化に育っている事は注目に値する。また、茶道・華道とは違って日本人の枠を離れて現地化しつつある点に盆栽文化の特徴があるようだ。テレビアニメはラテンヨーロッパでは極めて頻繁に放映されている日本製の番組である。朝の子供番組の時間帯には毎日2、3本の日本製アニメが吹き替えで放映されている。先進ヨーロッパのうちドイツ・イギリスではほとんど放映がみられないのに比較してフランスでは頻繁に放映されている。テレビアニメに関しては先進ヨーロッパ対開発途上的ラテンヨーロッパという対照がみられない。むしろカトリック圏(スペイン・ポルトガル・フランス、そして未調査ではあるが現地情報によればイタリアも含めてよい)では日本製アニメが多数放映されているのに対してプロテスタント圏ではほとんど放映がないと分析するのがよいだろう。その原因は、視聴者の好みから来るよりは、放映する側の思想にあるのではないかと考えられる。すなわちプロテスタント圏では子供向けに、全体として堅い教育番組が多いのに対して、カトリック圏では娯楽番組にも十分な放映時間を割いているという事情が考えられる。アメリカ合衆国の日本生活文化ではやはり食品が注目に値する。ドイツやイギリスでも同じであるが、インスタント食品としてのカップヌードルがこれらの国では相当の進出を見せている。ところがスウェーデンではほとんどこの種のインスタント食品はみられなかった。日本企業の関心の持ち方にも左右されるであろうが、むしろ、現地の食習慣が進出の多少に影響しているものと考えられる。
著者
高橋 劭 T Takahashi (1990) 安井 元昭
出版者
九州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

ハワイのレインバンドは雲頂高度が3kmと低く、温かく氷晶は形成されないが降水強度が100mmh^<-1>以上の強い雨を降らせる。このレインバンドは早朝ハワイ島の風上海上にア-ク状に発達し、降雨の開始と同時に動きはじめ陸上に強いシャワ-をもたらす。レインバンドの通過に伴いスコ-ルラインと同様、風は急変するがスコ-ルラインと異なり気圧変化は殆どない。スコ-ルラインと異なる強力な雨を降らせる機構が考えられる。研究は1985年、研究代表者も参加したハワイ島でのキングエア機による観測デ-タの解析から始めた。観測機は種々の高度でレインバンドに垂直及び平行に飛行し、その航路にそって6秒毎に温位、気温、水蒸気量、雲粒、キリ粒、雨滴の含水量、降水粒子の粒度分布、雲粒空間濃度が図示された。解析の結果強力なレインバンドでは下層に強い収束帯が形成されていること、下層の湿った空気が上層に傾斜しながら上昇(sloped updraft)すること、キリ粒のRecycleで下層での降水粒子が急速に成長すること、従って研究代表者が先に見い出したように雲頂ですでに雨滴が多く観測された。雲底が低く、貿易風帯は高湿なので雨滴の蒸発は少なく、従って“cold dome"の形成は弱い。しかし下層(数百米以下)で温度の不連続帯が観測され、レインバンドはこの帯にそって発達していた。この温度不連続帯は海陸風による場合と、海流に起因するものとの2つが考えられた。更にレ-ダ観測との比較で、強く長続きする雨を降らせるレインバンドは垂直方向の風が飽物線型の時形成されることが分かった。3次元数値モデルとの比較の結果、風のジェットが雨で下層に輸送され、強い下層収束帯が形成されるためと結論された。この時雨の集積が風のジェットの高度で行われることがレインバンドの強弱を支配し、降雨機構が強力なレインバンド形成に密接に関連していることが分った。更にハワイのレインバンドの特徴を明らかにするために1990年ハワイ島で再び大規模な研究が行われた。エレクトラ機の他、ドップラ-レ-ダ2台、地上ネットワ-ク50台が持ち込まれ、観測は2ケ月に渡り膨大なデ-タが得られた。解析はこれからである。ハワイから更に南下すると逆転層高度が高くなり、又弱くなる。雲はこの逆転層を突き抜き圏界面まで達する。雲はバンド雲に発達、強力な雨を降らせる。圏界面温度は-80℃と低く、雲内には氷晶の成長が考えられる。ミクロネシア・ポナペ島で新しく開発したラジオゾンデを飛揚した。これは内にテレビカメラがあり、降水粒子が入るとフラッシュがたかれ、映像が地上に伝送される。驚いたことに霰や雹が観測され、氷晶の数も0.1/ccと多く南洋の雲は氷晶を多量成長させていることが分かった。この雲は雲底から0℃層までの雲の厚さが4kmと厚いので氷晶がなくとも雨滴成長は行われる。降水への氷晶の役割を3次元数値モデルで研究を行った。南洋の雲で氷晶が成長しないと雨はシャワ-性となり短時間で止む、一方水滴が凍って雹が成長すると、雨は雲のライフの後半から降りはじめるが雨は長続きする。もし氷晶が成長すると飽和水蒸気圧が水より氷で低いこと及び雪は2次元的に成長することから氷晶成長が雨滴成長より著しく早く、過冷却雲粒を捕捉して霰を作る。このため雨は早くはじまり、強く、長続きする。霰成長を通しての過程の方がWarm Rain型より大きい雨滴が作れる。氷晶はWarm Rain型の雨滴形成より高い高度で成長する。従って、風があると降水粒子の落下位置が異なり風が飽物線型の時Warm Rain型の場合、下層収束帯を弱めるように降るが、氷晶成長を通しての霰は逆に下層収束帯を強めるように降る。このため雲は強力に成長、強い降雨が長時間続く。このように南洋の雲でも氷晶があれば降水能率が著しく増加することが分かった。氷晶の西太平洋南洋でのスコ-ルラインへの寄与に関する研究は今後の大きな研究課題である。
著者
藤善 眞澄 王 宝平 王 勇 内田 慶市 尾崎 實 宮下 三郎 籔田 貫 薗田 香融 大庭 脩 WAN Bao Ping WAN Yong 永井 規男 日下 恒夫
出版者
関西大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

研究テーマ「佛僧の往来」「江戸時代の日中関係」「漢籍と和書の相互交流」「浙江人の日本留学と中国近代文化」の四分野にわたって例会発表を行い、その一部は東西学術研究所々報等に掲載されている。さらに従来の成果をもとに本年度の調査研究を加味し<浙江と日本>のタイトルで業績発表を行うことが決定されており、すでに以下の論文15篇が提出されている。(1)藤善眞澄「入宋僧と杭州・越州」(2)大庭脩「浙江と日本-1684年より1728年に至る間の寧波船の動向」(3)宮下三郎「李仁山種痘書について」(4)籔田貫「寛政12年 遠灘漂着唐船萬勝号について」(5)松浦章「浙江と倭冦」(6)高橋隆博「浙江の漆芸-螺鈿器と識文漆器をめぐって-」(7)尾崎實「後浪推前浪-浙江人の場合-」(8)内田慶市「ヨーロッパ発〜日本経由〜中国行き-西学東漸のもう一つのみちすじ-」(9)毛紹晢「稲作の東伝と江南ルート」(10)王勇「鑑真渡日の動機について」(11)蕭瑞峰・徐萍飛「浙東の唐詩ルートと日本平安朝の漢詩」(12)屠承先・呉玲「呉越国の文化と日本」(13)王宝平「傅雲龍の日本研究の周辺」(14)呂順長「中国の省による留日学生派遣の事始め」(15)謝志宇「留日浙江人の夏馬尊について」これらは平成8年度中に出版し報告書にかえたい。今年度は王勇の漢籍・和書の調査を中心に置き、藤善眞澄による日中交通路の調査ならびに史蹟、資料の蒐集を併せ実施し、多大の成果を得ることができた。これらは逐次発表を行いつつ、次の目標につなげていきたいと思う。
著者
藤井 光男 藤井 治枝 大西 勝明 丸山 惠也 趙 玉志 古賀 義弘 ZHAO Yu-Zhi 李 占祥 趙 亨済 李 占国 とう 必きん 加茂 紀子子 高久保 豊 劉 永鴿 柴崎 孝夫 菊地 進 大橋 英五 小林 英夫
出版者
日本大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

我々の国際学術共同研究は、日本企業のアジア進出に伴う国際分業の進展と、技術移転・労務問題との関連を調査・解明することを目指している。このため第1年度(平成8年度)ではまず韓国・中国の研究者(複数)を招請して、日本の自動車と同部品企業や浜松テクノポリスを訪ねて研究交流を図り、また他方では中国東北部長春の有力国有自動車企業、第一汽車のほか、大連経済開発区の日系三資企業を調査して、実態解明に努めた。次に第2年度(平成9年度)では、引き続いて前述第一汽車の補足調査を進める一方で、北京地域の首鋼日電など電機・電子企業や、さらに上海・蘇南地域の電機や繊維・アパレル関連日系三資企業や郷鎮企業の調査を実施した。そして第3年度(平成10年度)では、韓国蔚山地域の現代自動車や同重工業、ついでソウルの現代電子など財閥系企業の資料採訪を行い、最後に上海蘇南地域の郷鎮ビッグビジネス数社を調査して実態分析の締めくくりとした。こうして我々は冒頭に掲げた研究課題に沿い、東アジアの代表的諸産業の企業研究に関してかなり詳細な資料を収集し、実態を解明し得たと考えるので、今後は理論的・実証的検討によってこれを体系化し、研究書として刊行することを企画している。
著者
長澤 泰 山下 哲郎 岡 ゆかり BARUA Sanji
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

初年度には途上国型「癒しの環境」研究として、バングラデッシュ農村部での伝統助産婦による分娩と都市部産科病院での病院分娩を比較した。また、スリランカではその殆どが施設分娩であることから、病院の大小や 病院へのアクセス、療養環境が施設選択に与える影響を調べた。第2年度は先進国医療施設型のフィンランドを事例として、先進国でも分娩の環境には家庭回帰が見られることを、病院のしつらえを限りなく家庭に近づける事例を用いることにより実証した。最終年度の今年はオランダにおいて、助産婦の活動を追跡することを中心に、家庭分娩が望まれる理由、その環境、社会的背景を調査・分析した。全分娩の1/3が家庭分娩であり、その背景に助産婦の社会的地位が高いこと、オランダの地理的条件が、緊急時に患者を早急に病院へ搬送することができることなどがある。それだけではなく、サービスを受ける側の意識に分娩は病気ではないので病院は必要なしとの判断が働いていることも確認された。今年度は同時に、周辺のヨーロッパ諸国の状況を示し、何故似たような地理的・文化的背景を持ちながらオランダが特異な例であるかを証明した。3年間に途上国および先進国の自宅型・施設型分娩の比較を行った。出産の場の選択にあたっての行動様式は、地域の社会や文化に依拠しながら、お産は「家庭的な」雰囲気のなかで行われることを最良とする文化の多いことがわかった。同時に社会の発展段階により、「安全」に対する要求が高まり、その「安全」の確保が充分な段階になると再び「家庭的な」環境を求めることとなる。今後の日本を始めとする先進国型医療施設の技術進歩に伴い、医療技術の優先度はある程度弱まり、より患者の療養環境を重視する声が高まることと思われる。分娩環境のこのような文化・社会・経済状況の違いの中での相違は、産科の療養環境を越えて広く一般医療の患者環境に示唆を与えるものである。
著者
池淵 周一 土屋 義人 VIEUX Baxter WAHL Iver M. CONNER Harol YEH Raymond CRAWFORD Ken 亀田 弘行 中北 英一 田中 正昭 桂 順治 村本 嘉雄 光田 寧 土屋 義人 SASAKI Yoshi EMERRY Garry w. SHARFMAN Mark GARY W. Emer HAROLD Conne BOXTER E Vie IVER N. Wahl KENNETH C. C 土岐 憲三 池渕 周一 YOSHI K. Sas RAYMOND W H IVAR M Wahr CRAIG St Joh MARK Sharfma STEPHAN Ewan GARY W Emery J R Cruz KENNETH C Cr YOSHI K Sasa
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

弱点を改善する方策を見い出すために、いくつかの実験を行った.これらの研究を通して家の軒高における耐風速設計や,気象情報に応じた有効な避難方法,強風災害の予防策などを提言した.3)局地的に激しい気象災害の防止軽減に関する日米防災会議;科学技術庁防災科学技術研究所,京都大学防災研究所,オクラホマ大学国際災害研究センターなどが協力して上記国際会議をオクラホマ大学で開催し,日米あわせて約50名の参加のもと,メソスケールの激しい気象擾乱のメカニズム解明とその観測システム,洪水予測,土砂害予測,災害リスクの評価などについて研究の現状と今後の共同研究のテーマ等を議論した.風水害の防止軽減に関する世界戦略の研究討議;本共同研究のメンバーが2回会合をもち,3年間にわたる共同研究の成果とりまとめ方針を協議するとともに,とくに日米の暴風雨に伴って発生する風水害の軽減化の知見,技術をさらなるステップアップするため今後とも共同研究を継続していくことを合意した.戦略としては防災産業のコンセプトを提言し,今後はそのための研究予算を保険会社等の民間資金の導入も含めて日米双方とも鋭意努力することを確認した.なお,阪神・淡路大震災に関しても日米双方のメンバーが現地に入り,建物被害の実態を調査し,今後,日米双方の耐震設計のあり方を協議する素材を取得した.最終報告書は英文で100ページ程度にまとめて発行することにした.
著者
片山 一道 川本 敬一 大島 直行 多賀谷 昭 小池 裕子 柴田 紀男
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

本年度は、次年度以降に予定している本格的な現地調査にむけて、南部クック諸島で、形質人類学、比較言語学、および先史考古学の予備的な総合調査を実施することを主眼とした。形質人類学では片山と多賀谷と川本とホ-トンが、比較言語学では柴田とモエカアが、そして先史考古学では大島とサットンが、それぞれのパ-トを担当した。形質人類学に関係した調査としては、まず、マンガイア島、ミチアロ島、およびラロトンガ島で、検査に供する古人骨を発掘するための先史時代の埋葬遺跡の分布調査、有望と思われる遺跡の時代性や埋葬状況などについての実地検証と記録をおこなった。そして、マンガイア島のツアチニ洞窟遺跡に埋葬された古人骨について、計測と肉眼観察の方法によって、先史マンガイア島民の身体特徴、古病理、古栄養などに関する基礎デ-タを収集した。さらに、ニュ-ジ-ランドのオタゴ大学で、トンガやニュ-・ブリテン島のラピタ時代の遺跡から出土した古人骨資料などについて、形質人類学の各種の検査を行って、比較分析用のデ-タを集めた。先史考古学の調査としては、まず、ラロトンガ島、ミチアロ島、マンガイア島、アイツタキ島で先史遺跡の分布状況を広く踏査した。そのあと、ミチアロ島では、テウヌ遺跡全体の清掃作業や実測を行った。その結果、この遺跡が、マラエ、各種の石製構造物、複合墓地、石棺墓などから成る巨大な複合遺跡であることが判明した。さらに、マンガイア島では、ツアチニ洞窟内で新たに発見した土壙墓の試掘、イビルア・スワンプ周辺の先史居住遺跡の実測と遺物の表層採集を実施した。イビルア遺跡では、この地域では従来報告例のないタイプの剥片石器を含む多数の石器遺物を採集するとともに、この遺跡が、相当な年代にわたるとおぼしき生活遺物の包含層が堆積するという点で、次年度の本格的な発掘調査のために有望な候補地であることを究めた。この他に、ラロトンガ島では、アツパ、アロランギ、アロア・タロ、マタベラ、ムリ、アバチウの合計六カ所のスワンプから、人類の住居による植生の変遷過程を編年的に分析するための花粉分析用、および放射性炭素分析用のコアを採集した。これらのコアは、ニュ-ジ-ランドのマッシ-大学で分析中であるが、現在までに、南部クック諸島での人類の最古の居住時期が3000年BP以前に遡るらしいという予備的な知見が得られている。言語学の調査としては、マンガイア島とラロトンガ島とマウケ島で、各島出身の古老などのインタビュ-を通じて、マンガイアやラロトンガやマウケの南部クック諸島の各方言、およびペンリンなどの北部クック諸島方言の古層語彙や口承テキストの採集に努めた。これらは古クック諸島語の形態を復元するための基礎資料となるはずのものであるが、これまでに、プロト・ポリネシア語のs*とf*の発音の分化の歴史についての興味ある知見が得られた。これらの現地調査とは別に、川本は、クック諸島に現住するポリネシア人から集めた歯型の石膏模型について、種々の歯冠形質の発達程度を分析して、クック諸島のいくつかの島でのこれらの形質の出現頻度を求めた。歯科人類学の方法で、他集団との比較研究を行ったところ、歯の特徴で見る限り、北部クック諸島と南部クック諸島の間では相当な地域差が認められること、北部クック諸島人はメラネシアのグル-プに近いのに南部クック諸島人は他のポリネシア人集団に近縁であること、類モ-コ群と呼ばれる形質のクック諸島人での出現率がハワイのポリネシア人やグアムのミクロネシア人に近似することなどを明らかにした。