著者
鈴木 典夫 守山 正樹 福島 哲人 坂本 恵 永幡 幸司 丹波 史紀 山川 充夫
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.月1~2回の研究会及び学習会活動を行ってきた。2.中越地震被災地及び他地域の被災地(福岡市・神戸市など)でのヒアリングを行った。3.調査活動として、仮設住宅100世帯の面接による2年継続の「避難所及び仮設住宅における生活調査」、「生活のストレス調査」、「住宅再建に関する調査」、小学生を対象とした「震災体験・認識調査」及びワークショップを実施した。4.「被災住民の生活再建と災害復興に向けた課題」と題したシンポジウム、「もとめられる医療通訳者養成研修プログラムとは何か」の研究交流集会、「災害ボランティアシンポジウム」、他各調査の現地報告会を開催した。5.成果については、「日本音響学会」「国際騒音学会:Inter-Noise」「日本居住福祉学会」等において発表。論文としては、『厚生の指標』に「新潟県中越地震で被災した児童による避難生活で体験した出来事の評価」等を発表。その他、関連会合にて講演その他で公表した。6.中越沖地震が発生したため、再度ボランティアの調整、ニーズの拾い上げ等での情報収集をするとともに、研究成果を活かし、児童支援並びに地域復興支援にあたった。7.研究成果報告書(全159頁:80冊)を作成した。8.福島大学において、「災害と復興支援」という授業を開講した。
著者
伊東 龍一 後藤 久太郎 斎藤 英俊 吉田 純一 吉野 敏武 山口 俊浩
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、江戸時代の建築図面のうち、立面および断面を描く建地割について作図技法・描法を検討し、また江戸時代の建地割の特徴を鮮明にするために中世以前の建地割も調査対象に加えて分析し、様々な技法の使用があったことを明らかにするとともに、それらの時代的変遷として、とくに平面図(指図)を附属するものはとしないもの、寸法線を記入しないものとするもの、朱線・朱文字の使用しないものとするものを指標とすることができ、これらは大凡、18世紀前期を境に前者から後者に移行することが明らかになった。これにともない図の名称も、18世紀前期を境に「地割」などから「建地割」になった。
著者
卜部 格 根来 誠司 島 康文 四方 哲也
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

競争的共存が起こる簡単化した系を用いて、タンパク質分子に対して変異と選択を繰り返すと、それをコードしている塩基配列や機能は変化することができるのだろうか。このことをE.coli内の1遺伝子であるグルタミン合成酵素遺伝子に対して変異と選択を繰り返す実験室内進化系を構築することによって観察した。そして、その遺伝子に対する分子系統樹を作成し、塩基配列および分子機能の変化過程を観察した。また、どの配列をもったものが全体の何割を占めるのかという情報から、集団構造の変化を示した。その結果、グルタミン合成酵素をコードする塩基配列と活性は集団内に2種類以上の異なった配列、違った活性を保持しながら変化し、多様化していくことが観察された。集団構造の変化から、それぞれの配列を持つ菌体の増殖速度は、集団がどういった配列を持ったもので構成されているかによって変化することが示された。さらに、実験室内進化系では、その時々の株を-80℃で保存することが可能である。そのため、一度実験室内進化系で消失した株をその後の変異と選択との繰り返しで残った集団と競争実験することが可能である。そこで、実験室内進化系の途中段階で消失した変異体と後の世代の集団と競争させた結果、実験室内進化系の途中で消失した株は、後の世代の集団と安定して共存した。このことは、個々の菌体が持つ増殖能が培養に用いた培地、温度等の外部環境によって決まっているのではなく、集団構造に依存して変化することをより強く示している。本研究では、E.coli内のグルタミン合成酵素に変異と選択をかけるサイクルを繰り返す実験室内進化系において、その酵素が多様性を保ちながら変化することが観察された。
著者
小田 福男 加藤 敬太 乙政 佐吉 西本 章宏
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

北海道から極東ロシアまでの北方圏における、北海道地域企業の産業クラスター形成と極東ロシア地域とのリンケージ・需要搬入による継続的活性化、地域ブランド強化の現状と方策を究明した。その結果、次のような知見が得られた。(1)産業クラスター形成における企業家活動、地域オープン・イノベーションのユニークな重要性。(2)地域ブランド・マネジメントにおける新規顧客とリピート顧客の異質性、各々で異なったアプローチを適用することの重要性。(3)北海道と極東ロシアとの地域間国際交流に関して、特に住宅・住宅建材分野でのロシア極東地域の現状の厳しさと長期的視点の重要性。
著者
森 淳二朗 鈴木 不二一 小池 和男 稲上 毅
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成13年度・14年度の研究で得られた成果は、以下のごとくである。1 従来、企業理論は、経済学において展開されてきたが、森論文は、法理論として、すなわち、株式会社制度の法解釈論として、新たな企業理論を展開できることを論証している。これまでの企業理論は、「所有と経営の分離」に株式会社の特徴があるとみており、会社法もその考えを前提にして組み立てられている。これに対して、森論文は、株式会社には、「所有と経営の分離」だけでなく、「所有と経営の協働」の側面もあることを明らかにし、その両面を前提にして会社法を組み立てる必要があることを指摘している。この新たな企業理論を前提にして、森論文は、ドイツの共同決定制度とはまったく異なる論理で、従業員がコーポレート・ガバナンスに関わることの正当性と積極的意義を明らかにしたのである。2 新たなコーポレートガバナンス・モデルは、米国型のように株主利益のみを重視するのでなぐ、株主利益重視と従業員利益重視の両立を目指している。稲上論文は、このような両立性を志向する試みは、決して特異なものではなく、国際的な理論潮流においても、そうした方向を目指す流れが強まっている状況を分析している。3 従業員は具体的にどのような意味において企業の効率性に寄与しているのか。小池論文は、従業員の技能形成がどのように形成され、またその技能の特殊性のもつ意味を、企業、業種、職種の三つに区別しながら、明らかにしている。4 鈴木論文は、これまでわが国の労働組合・従業員が企業において現実にどのような役割を果たしてきたか、またその役割がどのように変化しているかを分析している。
著者
吉田 修 七里 泰正 奥野 博 寺井 章人 岡田 裕作 吉村 直樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

今回の疫学調査では1990年および1995年の尿路結石患者の年齢、性、部位、初発・再発別頻度と治療法別頻度につき調査表による集計を行った。1997年時点の日本泌尿器科学会専門医教育認定施設(1,197施設)に調査を依頼し、1995年調査では439施設より計85,239例の情報が集積された。初発上部尿路結石症の年間罹患率(10万対)は1965年の43.7から1995年には80.9へと大幅に増加した。1980年日本人口を基準に年齢調整した年間罹患率は1965年54.2、1995年68.9であった。1965年時点の年齢階級別人口をコホートとみなした年間罹患率の経時的変化では、若い世代ほど年間罹患率の増加は著明であった。また、1965年全人口(9830万人)をコホートとみなすと、1965年43.7、1975年64.0、1985年88.9、1995年110.9と顕著な増加を示した。これらの結果から、近い将来も日本人全体での年間罹患率の増加傾向は継続すると推察された。治療法別では、86〜87%がESWL単独で、またPNL、TULおよびESWLとの併用療法も含めると97〜98%がendourologyで治療されており、従来の開放手術は3%以下に激減した。ESWL装置の全国設置台数は1990年258台、1995年528台であった。上部尿路結石症の推計患者数(1990年115,500例、1995年147,700例)からみて、ESWL治療患者数は1990年44,000例、1995年57,800例と推計され、ESWL装置1台あたりの治療症例数にすると1990年の171例から1995年には109例と減少していた。このことから、わが国のESWL装置は既に飽和状態に達していると考えられる。
著者
田中 仁 許 衛東 宮原 曉 山田 康博 堤 一昭 秋田 茂 青野 繁治 片山 剛 三好 恵真子 今泉 秀人 大谷 順子 竹内 俊隆 高橋 慶吉 木村 自 思 沁夫 西村 成雄 丸田 孝志 江 沛 許 育銘 周 太平 李 朝津
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

(1)統合後の大阪大学における現代中国研究の部局横断的プラットフォームとして、中国文化フォーラムを改組した。(2)中国南開大学・台湾東華大学との研究セミナーの共同開催をふまえて、東アジア学校間交流の定例化をめざした。(3)『大阪大学中国文化フォーラム・ディスカッションペーパー』を刊行した。(4) 本研究の成果を、時間軸・社会空間軸・日中関係軸の三部構成とし、各部で歴史学と諸ディシプリンとの対話を提示する『共進化する現代中国研究』としてとりまとめた。
著者
深尾 浩次 中村 健二
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

高分子積層薄膜のガラス転移およびα過程のダイナミクスを誘電緩和スペクトル法により調べた.対象とした高分子はポリ2クロロスチレンで,アニール過程での時間変化を追跡した.その結果,誘電損失プロファイルがアニール時間とともに,シャープになり,緩和時間の分布が積層したままの薄膜では単一高分子薄膜と同様にブロードになっているが,アニールとともにバルクな状態での緩和時間分布に近づくことがわかった.一方,α過程の緩和時間の温度依存性は積層したままの状態では,アレニウス型に近いが,アニールとともに,より強い温度依存性へと移行することが確認された.これらの結果はバルク系でのこれまでの研究の結果とは異なり,積層高分子薄膜における特異な現象であることがわかった.
著者
大宮 勘一郎 香田 芳樹 和泉 雅人 フュルンケース ヨーゼフ 粂川 麻里生 斉藤 太郎 中山 豊 平田 栄一朗 縄田 雄二 川島 建太郎 大塚 直 臼井 隆一郎 桑原 聡 安川 晴基
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

現代の科学技術の進歩と発展に鑑みて、「人間」を再定義する必要は日増しに高まっているが、技術と人間との関係を近代思想として最も深く考え続けたのはドイツ思想であると言ってよい。本研究プロジェクトは、そのようなドイツの思想史に様々な角度から切り込んでゆくことにより、従来の人間観のどこが妥当性を失い、どの部分が維持・救出可能であるかを明らかにする作業に貢献をなし得たと考える。3回の国際シンポジウム、3回の国際ワークショップを行うことで、他文化圏の研究者らとの意見交換も活発に行い、議論を深めることができたのみならず、本プロジェクトの問題設定が国際的な広がりを持つものであることが確認できた。
著者
辻内 伸好 井上 喜雄 伊藤 彰人
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

歩行訓練に関してはトレッドミルが用いられるが,運動解析に基づく歩行評価指標の欠如から,運動学習効率を定量的に評価することができない.そこで,速度制御による負荷変化が可能な左右分離型トレッドミルを開発し,有効な歩行評価指標を用いて,指標と実際の歩行との相違点を視覚的に提示することによって,歩行障害者のバイオフィードバックを促進し,リハビリテーション効率を向上した.
著者
嶺井 明子 関 啓子 遠藤 忠 岩崎 正吾 川野辺 敏 水谷 邦子 森岡 修一 福田 誠治 松永 裕二 澤野 由紀子 大谷 実 高瀬 淳 木之下 健一 タスタンベコワ クアニシ デメジャン アドレット ミソチコ グリゴリー アスカルベック クサイーノフ セリック オミルバエフ 菅野 怜子 サイダ マフカモワ 伊藤 宏典 アブドゥジャボル ラフモノフ ズバイドゥッロ ウバイドゥロエフ
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

中央アジア4カ国は独立国家樹立後、国連やユネスコ加盟を果たし、脱・社会主義、民主的法治国家の樹立をめざし教育改革に着手した。国外からの協力と援助(ユネスコ、国際援助機関、ロシアなど)、及び国内事情(多民族国家、イスラム的伝統、都市と農村の格差、経済の人材需要など)の葛藤の中で教育政策が推進されている。初等中等教育の高い就学率、教育の世俗制、多民族への配慮などソ連時代からの正の遺産を多く継承しているが、教育へ市場原理が導入され競争的環境が強化されている。高等教育ではボローニャ・プロセスに対応した改革が進んでおり、無償制は後退している。
著者
吉田 睦 高倉 浩樹
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ロシアの極北地域におけるトナカイ牧畜文化は、ソ連邦崩壊後、集団化企業体制の崩壊するなかで地域的民族的な特質を示しつつ変容した。当該文化の担い手は少数先住民族であり、そのうち西シベリアのネネツ人と東シベリア(サハ共和国)のエヴェン人における実態を、経済・社会構造の変化、環境変化への適応と文化的再構築という現象的側面から現地調査した。その結果、当該文化が、諸局面に柔軟に対応する民族文化の重要な一要素として機能していることが確認できた。
著者
服部 英雄 井上 聡 細井 浩志 橋本 雄 柳 哲雄 櫻木 晋一 金谷 匡人 竹田 和夫 土居 聡朋 楠瀬 慶太
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

時間法や航海技術を非文字知(民衆知・暗黙知)の視点で調査・分析した。時間には季節(日の出・日の入り)に無関係の絶対時間(定時法)と季節によって変わる相対時間(不定時法)とがある。不定時法が自然発生的で多用された。航海技術については、地形や潮流を知悉した航海術や漁撈法を調査・分析した。中世紀行文に記された港津発着の時間を手がかりに、当日の潮流、潮力、人力、風力を分析した。
著者
野村 竜也 山田 幸恵 鈴木 公啓 神田 崇行
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

対人不安・評価懸念の高い人間がどのような状況で人よりもロボットを好むかについて、心理実験による検証を試みた。本研究の最終目標である人間カウンセラーへの誘導を考慮し、個人の悩み等の自己開示を要求する実験を設定、人相手・ロボット相手による条件間での様々な指標による比較を行った。結果として、対人不安の高い人ほど人前よりもロボットの前で話すほうが緊張が低下する傾向にあることが確認された。これと並行して、ロボットが人よりも好まれる業務場面についての大規模サンプルによる社会調査を行い、対人不安の高い人は多くの場面で人よりもロボットとの対話を望む傾向が確認された。
著者
吉野 孝 林 良彦 山下 直美
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

多言語間コミュニケーションの方法として,機械翻訳を用いる方法と用例対訳を用いる方法がある.本研究では,多言語間コミュニケーションの高信頼化のために,折り返し翻訳の高信頼化に関する研究,多言語用例対訳の高信頼化に関する研究を行った.さらに,上記の研究成果を応用した,医療分野および教育分野を対象とした多言語支援ツールの構築に関する研究を行った.
著者
西田 周平 西川 淳 大塚 攻 澤本 彰三 佐野 雅美 宮本 洋臣 MULYADI RUMENGAN Inneke FM YUSOFF Fatimah MD ROSS Othman BH SRINUI Khwanruan SATAPOOMIN Suree NGUYEN Thi Thu NGUYEN Cho CAMPOS Wilfredo L. METILLO Ephrime
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

全海洋中で最も生物多様性が大きいが、人間活動や気候変動の影響も顕在化しつつある東南アジアの沿岸生態系を対象とし、動物プランクトンの種多様性に関する定量的知見を拡充した。既存試料の分類学的、遺伝学的、生態学的分析と補足的現地調査により、約20種の未知のカイアシ類を発見・記載し、既知種にも遺伝的に分化した隠蔽種が存在することを見いだした。また、既存の試・資料の分析・整理により新たに約16,000件の定量分布データを電子化した。ヤムシ類については、インド太平洋海域における種多様性の分布を明らかにするとともに、環境要因から種多様性(種数、多様度)を推定するためのモデルを作成・公表した。
著者
今栄 直也 磯部 博志 山口 亮
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

コンドリュール再現装置を開発した。装置に水素ガスを導入し、0.1から数千Paの任意の圧力で制御する。実験出発物質にはコンドライト組成の粉末焼結ペレットを用いた。還元雰囲気ではI型コンドリュールに一致する斑状の珪酸塩鉱物(フォルステライトとエンスタタイト)が晶出した。また、100Paより低い制御圧では鉄成分の蒸発により、メタル粒子は欠損したが、全圧が高い(千Pa以上)とこのメタル組織は認められた。一般に、丸い小さなメタル粒子はコンドリュールに不均一に含まれ、実験で生成した組織はI型コンドリュールをよく再現する。
著者
森 修一 橋口 浩之 伍 培明 服部 美紀 荻野 慎也 山中 大学 松本 淳
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

インドネシア・スマトラ島に災害をもたらす沿岸豪雨強風帯の形成過程について,観測的研究を行った.長期衛星観測からは,エルニーニョ現象など年々変動に伴う沿岸豪雨帯の盛衰ほか,その気候学的特徴が明らかになった.また,レーダー等による集中観測から,沿岸豪雨強風帯を構成するメソ降水系の発達には,インド洋を東進する大規模な対流季節内変動とスマトラ沿岸を西進する日周期対流の相互作用が重要であること等が示された.
著者
後藤 忠徳 笠谷 貴史 荒木 英一郎 浅川 賢一 佐柳 敬造
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

H17年度には海底付近で人工電流を発生させた場合の地下構造探査の可能性を数値計算により確認した。2度の調査航海において深海曳航体へ搭載した人工電流源を用いて海底電気探査を実施した。またスマトラ地震の余震活動データなどを解析して海底地震観測の精度の議論を行った。これらの結果に基づき、豊橋沖海底ケーブル先端へ接続可能な海底磁力計や海底地震計などの開発や改良を行った。H18年度にはこれらの海底観測機器の水中動作試験を行った。またケーブル敷設船へ乗船し、豊橋沖海底ケーブルの引き上げ・ケーブル先端への分岐装置取り付け・ケーブル再敷設作業を行った。H19年度には新規に開発・改良を行った海底観測機器を豊橋沖海底ケーブル先端の分岐装置へ接続した。深海での接続作業にはJAMSTEC調査船および無人探査機を用いた。この結果、東海地震想定震源域の海底に地震・地殻変動・地下水流動などの総合観測ステーションを構築することができた。また海底ケーブルに流れている人工電流を用いた人工電磁探査モニタリングも開始することができた。観測成果の一例として、平成19年6月には掛川で発生したM4.3の地震波動に伴って海底電場が変動することが明らかとなった。一方、豊橋沖海底ケーブルを用いた海底下モニタリングに先立って、同海域の地殻電気伝導度構造を知る目的で、H18年度からH19年度にかけて自己浮上式の海底電位差磁力計(OBEM)など、のべ12台を東海沖海域へ設置した。これによって沈み込むフィリピン海プレートやその上の島弧地殻の電気伝導度構造を明らかにすることができた。以上の海底ケーブル観測システムの紹介、海底電気探査の成果および間隙水圧変動に伴う電磁場変動現象に関して、複数の研究成果として報告した。
著者
内藤 克彦 水野 幸男
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

年間の湿度変化を踏まえた上で、自然状態において絶対湿度の3〜20mg/cm^3の条件下でがいしのフラッシオーバ電圧に及ぼす絶対湿度の効果を調べた。試料として懸垂がいし、ピンがいし、ステーションポストがいし、ラインポストがいし、長幹がいし、高分子がいしを用いた。印加電圧は、交流電圧、雷インパルス電圧、開閉インパルス電圧および直流電圧とした。高分子がいしについては、フラッシオーバ電圧に影響を与えると考えられる表面の撥水性に関する基礎実験も実施した。本研究で得られた結果を以下に示す。1. 3年間の湿度実測データを解析した結果、絶対湿度は冬期に最小値3mg/cm^3の程度、夏期に最大値20mg/cm^3程度を示し、その間は緩やかに変化することがわかった。2.懸垂がいしおよびピンがいしに正・負雷インパルス電圧を印加した場合には、フラッシオーバ電圧は絶対湿度の上昇とともに低下することが確認された。現行のIEC(国際電気標準会議)規格の湿度補正係数に修正が必要と思われる。3.それ以外のがいしでは、フラッシオーバ電圧は絶対湿度とともに上昇した。現行のIEC規格の湿度補正は、ほぼ妥当と考えられる。4.高分子がいし外被に使用されるシリコーンゴム表面の水滴に関しては、電圧印加時に振動すること、形状が変化し水滴同士が結合する場合があること、従ってフラッシオーバしやすくなることがわかった。5.シリコーンゴム表面汚損時のフラッシオーバ電圧は汚損直後には低いが、時間経過とともに徐々に上昇し、1週間程度で一定値になることがわかった。