著者
市川 正人 大久保 史郎 倉田 原志 倉田 玲 北村 和生 渡辺 千原 和田 真一 吉村 良一 松宮 孝明 山田 希 毛利 透 木下 智史 渡辺 康行 田村 陽子 須藤 陽子 斎藤 浩 森下 弘 佐上 善和 渕野 貴生 村田 敏一 多田 一路 水野 武夫
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

最近の最高裁判決を分析した結果、法分野ごとに最高裁の役割が異なり、また、最高裁の人的構成の影響が異なることが、明らかになった。最高裁裁判官の選任のありようについて、下級裁判所裁判官人事(「司法官僚」の形成)と関連させながら検討する必要性が明らかになったため、最高裁裁判官データベースの作成を進めた。アメリカ、カナダ、ドイツ、韓国、フランス、オーストラリア、イギリスに対する実地調査を行った結果、日本の最高裁・司法制度の特質と、他方、現代国家の司法・裁判所の共通点が明らかになった。以上を踏まえ、最高裁について人的、制度的な改革案をまとめた。
著者
田中 雅一 江田 憲治 小池 郁子 高嶋 航 上杉 妙子 金 柄徹 田辺 明生 福浦 厚子 森田 真也
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究プロジェクトの目的は、ナショナリズムや国民国家創出との関係で論じられてきた軍隊をトランスナショナルな視点から分析することにある。対象は、在日・在韓米軍を含むアジアの軍隊に限り、歴史・人類学的なアプローチをとる。自衛隊のイラク派兵の影響から在韓米軍の再編による地域への影響に至るまで、その研究成果は多岐にわたる。基地反対運動や平和運動もまたトランスナショナル化していることが明らかになった。
著者
新井 勝紘 西村 明
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、軍事郵便と従軍日記をパーソナルメディアとしてとらえ、資料の所在を明らかにするとともに、軍事郵便の内容や制度史、軍事郵便・従軍日記を記した人々の戦争に対する意識や対外認識についての考察を重ねた。そのために現地調査を実施し、資料の収集や写真撮影を行ない、その分析を試みた。また、研究成果を公開し、各地の研究団体と積極的に連携を図った。こうしたなかで現在、全国各地で個人及び保存機関などが軍事郵便・従軍日記の翻刻や出版をさかんに取り組んでいることを把握した。それにより軍事郵便・従軍日記がいまだに多くの人々に強い影響力をもっていることを認識するとともに、その内容分析の深化をはからなければならないという認識に至った。
著者
山室 信一 菊地 暁 坂本 優一郎 谷川 穣 藤原 辰史 早瀬 晋三 早瀬 晋三
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

専ら時間軸上で構築されてきた従来の学的パラダイムを空間軸に沿って見直し、これまでの空間把握の営みの成果を取捨選択しつつ、人文・社会科学における諸概念を再構成していくための基底的研究を進めた。文献会読、フィールドワーク、個別研究を通じて、政治学・経済学・農政学・地政学や、景観・海域・宗教・戦争で問題とされた空間に関する思想や実践のありかたを明らかにしつつ、従来前提とされていた諸概念を再検討した。
著者
青木 伸一 北田 敏廣 井上 隆信 加藤 茂 横田 久里子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

三河湾を対象海域として、気象、海象、陸域流出、内湾水質の4つの側面から総合的に温暖化影響について検討した。気象変動については、地表面近くの大気の安定成層化が夜間から早朝で進み化学物質の滞留が起こりやすいことを明らかにした。海象変動については、台風の大型化を見据えて2009年の高潮の特性を詳細に検討し、風場の急変が高潮の増幅要因となることを示した。陸域流出については、モデルを用いて地球温暖化による異常気象により栄養塩の流出が増大するこ可能性を示した。内湾水質については、観測値から0.024~0.06℃/年の水温上昇トレンドを示すとともに、貧酸素水塊の浅海遡上に対する風の影響を明らかにした。
著者
山本 克之 浜岡 隆文 川初 清典 工藤 信樹 清水 孝一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究は,筋組織酸素濃度計測における皮下脂肪層の影響を系統的に解析し,その影響を除去し得る絶対値計測可能な近赤外分光(NIRS)組織酸素モニタを開発して,本装置の最も効果的な適用分野と考えられるスポーツ医学の分野で,その有効性を実証することを目的とした.1.時間分解法を用いたin vivo計測と多層モンテカルロシミュレーションにより,組織の不均一性を考慮して,筋および脂肪層の平均的な光学特性(吸収係数,散乱係数)を決定した.2.光拡散理論を適用し,吸光度変化と吸収係数の非直線的関係をも考慮した組織酸素濃度算出式を理論的に導出し,その具体的な係数を上記光学特性から決定した.3.脂肪層の影響で近赤外分光法の測定感度が大きく減少するので,測定感度を脂肪厚で補正することにより,均質な系を仮定した上記理論式に適用可能な補正式を決定した.また,安静時の筋酸素消費量を磁気共鳴スペクトル法と試作装置で計測・比較し,補正法の妥当性を確認した.4.NIRSの運動能力の評価法として,トップレベルの選手(ノルディック複合ナショナルチーム,13名)を対象に測定を実施し,高地トレーニングにより筋組織酸素濃度回復速度が6日後で11%,11日後で20%程度増加することを見出した.5.NIRSの筋代謝の評価法として,筋収縮・弛緩に伴う血液量変化から局所的血液酸素飽和度を,筋収縮時の酸素濃度低下率から局所的筋酸素消費量を測定する手法を考案し,1収縮ごとに酸素飽和度と酸素消費量を推定できることを検証した.6.当初の計画を進展させ,200チャネルの受光系を有する組織酸素濃度画像化システムを試作し,膝屈曲・伸展運動時の大腿部各筋の酸素化・脱酸素化ヘモグロビン量,血液量の時空間変化をイメージングすることに成功した.
著者
小寺 彰 伊藤 一頼 塚原 弓 玉田 大 林 美香
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本プロジェクトは、現代国際法学において流布し国家責任条文草案でも前提とされている、あらゆる義務違反は責任を生じさせるという「一般法としての国家責任法」を観念し得るのかという問題に、歴史的・分野横断的観点から迫ってきた。本年度は、プロジェクトの集大成として、国家責任法の歴史、実定法としての国家責任法の評価に関わる報告及び総括を行う研究会を行った。第一に、「第一次大戦以前の国際法・国際法学における『責任』―国際法における国家責任法成立」と題する報告が行われ、19世紀以前には、正戦論において戦争の正当原因の一つとして賠償義務の存在が想定されていたこと、また、正戦論を前提としなくとも、慣習法たる責任法が戦争回避の手段として否定されていたわけではないことが確認され、国際法の国家責任法が成立したのは19世紀後半以降であるという従来の理解に修正を迫ることが出来た。また、19世紀の学説、実行共に、その適用対象を外国人損害に限定していたわけではなく、そうした観念は、むしろ戦間期に成立した可能性が指摘された。第二に、「国際法における緊急避難の考察」と題する報告が行われ、国家責任条文草案成立以前の実行における緊急避難法理には、権利として存在する「自衛型」と義務違反の存在を否定する「不可抗力型」のものが存在し、一般法を志向し二次規範として機能する条文草案上の緊急避難とは異なり、事案に応じて一次規範のレベルで機能していたことが指摘された。本プロジェクトによって、「一般法としての国家責任法」という観念が歴史的に一貫して採用されてきたわけではないこと、また、「責任」の意味や効果も個別の分野によって変わりうることが浮き彫りにされたことが大きな成果と言える。このことは、一般法としての国家責任法を想定すること自体検証を要することを意味し、条文草案の評価及び国家責任法の解釈論に大きな影響を与えるものである。
著者
平井 松午 溝口 常俊 出田 和久 南出 眞助 小野寺 淳 立岡 裕士 礒永 和貴 鳴海 邦匡 田中 耕市 渡辺 誠 水田 義一 野積 正吉 渡辺 理絵 塚本 章宏 安里 進
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、各地に所蔵される近世後期に作成された実測図もしくは実測図系絵図の作成法とその記載内容・精度の比較検討を行い、その上で近世実測図を用いたGIS 解析法の確立を目指したものである。その結果、徳島藩・金沢藩・鳥取藩では藩領全域をカバーする測量図がそれぞれ独自の手法によって作成されていたこと,また近世後期の城下絵図についても測量精度が向上して,これらの測量絵図が GIS 分析に適した古地図であると判断した。
著者
中山 徹 大石 正 宮城 俊作 中林 浩 宮川 智子 前田 真子 白石 克孝
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.イギリスの緑地再生の試み、パートナーシップ型都市再生のあり方をコミュニティフォレストの事例を中心に考察してきた。採炭地・工場跡地で始まった事例は、地域再生の原動力となるが、コミュニティが主体的に組み立てる環境改善事業のなかで展開する、青少年の参加・学校での環境教育の展開・地場産業の育成・企業の環境保全への努力であることを証明した。中でもブラウンフィールドを多く保有する地域であるマージー・フォレストでは、環境面の向上のみでなく、経済面や観光面を含む幅広い観点からの森林の多機能性に着目し、様々な役割があることを評価し、基盤整備の一つとして捉えた計画が進められている。具体的事例からは、既存の林地の2倍以上に植林を増やし、連続した林地を形成すべく地域の3割近くを林地にする計画・予定が提案され、新たな植林の促進が主な取り組みであることがわかった。既に整備された場所についても新たな植林による更なる環境向上が計画されていることから、環境再生には時間と労力を要することを提示しているといえる。2.森林の再生と保全を趣旨とし、持続可能な地域発展と行政・企業・団体・住民のパートナーシップの形成、地域経済の活性化の目標を明確に示して事業が進められており、これら4つの条件のバランスがうまくとれているといえる。日本におけるエコツーリズムの事例は全国にあるものの、住民や地元企業の協力を得て、継続的に事業を行っていくことは容易ではない。パートナーシップを形成しやすい仕組みづくりを国として整え、点と点を結ぶ広域的な整備や長い眼で見た持続的な地域発展を考慮した事業展開が必要であろう。イギリスのように、地域住民の権利と責任の意識を根付かせるには、法的整備によるエコツーリズムの活性化と、住民の意識に自然環境や地域資源の保全と再生の重要性を訴えかける草の根的な活動を有機的に連携し実施して行くことが求められよう。
著者
服部 英雄 五味 文彦 神田 由築 高野 信治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

差別される環境に耐えて、力強く生きた人びとの歴史を明らかにした。これまでの歴史叙述では賤民視された彼ら彼女らは貧しく劣悪な環境におかれ、虐げられた生活のみを強いられたとされてきた。それは一面ですべてではない。教科書には河原ノ者は河原に住んだと記述するものがある。このような歴史理解では、子孫が祖先の活動を誇ることはできない。「ムラ」がなかなかに解体しなかったのはなぜか。富みは確実にあった。皮革製品・製作加工業の独占である。海外交易にても不足を補充、富みを蓄積した。周囲の目は残酷で冷たかったが、かばいあうムラの中は暖かく、一般ムラよりもむしろ真に人間らしい、やさしさがあった。
著者
会田 勝美
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.新しい光情報入力系の同定 魚類における網膜以外の新しい光情報入力系の分子基盤を明らかにするために,アユにおいて光受容能を持つことが示唆されている脳から光受容タンパク質の一つであるロドプシンのcDNA全長塩基配列を決定した。その結果,脳深部に発現しているロドプシンcDNAは網膜ロドプシンcDNAと塩基配列が完全に一致した。一方,魚類において光受容能を持つことが知られている松果体からは,エクソロドプシンcDNAがクローニングされた。この結果、脳内には異なる2種類のロドプシンが発現していることが判明した。2.生物時計機構の分子生物学的解析 メラトニンは環境の明暗情報ならびに時刻情報を伝達するホルモンである。魚類におけるメラトニン合成分子機構を明らかにするために,アユ網膜および松果体からメラトニン合成の律速酵素アリルアルキルアミランシフェラーゼ(AANAT)のcDNAクローンを2種類得た。RT・PCR法により,2種類のAANATのうち,AANAT1が網膜にAANAT2が松果体にそれぞれ特異的に発現していることを確認した。さらにリアルタイム定量的PCRによるAANAT1とAANAT2のmRNA定量法を開発し,網膜中のAANAT1と松果体中のAANAT2のmRNA量の様々な光条件における24時間変動を調べた。その結果,通常の明暗条件下は,網膜および松果体においてAANAT1とAANAT2のmRNAはそれぞれ生物時計によって制御されていることが判明した。3.メラトニン受容体の分子生物学的解析 縮重プライマーを用いたPCR法によりアユ脳に存在するメラトニン受容体のcDNAクローニングを試みてのところメラトニン受容体をコードしていると考えられるcDNA断片は得られていない。
著者
持田 澄子
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

強靭なコリン作動性シナプスを構築する培養上頸交感神経節細胞を用いて、1)プレシナプス構築と維持、2)構築されたシナプスの機能化、3)機能化したシナプスの時空間的活性化のメカニズムを解析し、コリン作動性シナプス構築・維持・強化・機能化を担い、シナプス活動に依存してダイナミックに変化するシナプス可塑性を担う蛋白分子の動態を明らかにすることを目的として研究を実施した結果、1)-3)を制御するものは、活動電位発火に伴って流入するCa2+、その濃度変化を感知して機能タンパク質を活性化するCa2+結合タンパク質群、流入するCa2+量を調節するCa2+チャネル制御タンパク質であることが確認された。
著者
酒井 たか子 加納 千恵子 李 在鎬 小林 典子 関 裕子 田中 裕祐 河野 あかね 清水 秀子 加藤 あさぎ 甲斐 晶子 董 然 孫 辰 杜 暁傑 阿部 宥子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

多言語背景で日本語を学習している年少者の学習支援に役立つ情報を提供する目的で、教科の学習に必要な語彙調査研究を行った。理科に関しては、小学校3年生から6年生の教科書の分析、教員による重要度判定を行い重要語彙の表を作成した。また学習言語を中心として日本語力診断テスト(SPOT、漢字SPOT、漢字テスト)を作成し、インターナショナルスクールでの縦断的研究、公立小学校での調査を行い、テストの有効性を確認した。
著者
野嶋 佐由美 阿部 淳子 畦地 博子 藤田 佐和 中野 綾美 UNDERWOOD Pa 宮田 留理
出版者
高知女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

患者の自己決定や意志決定を支えることのできる看護介入を発展させていくことを目指し、患者の意志決定を支える看護実践モデルの開発を行うことを目的として、本研究を企画した。本研究は、患者の意志決定を支えた看護場面を想起して記述する自由記載法とアンケートによる実態調査とを行った。本研究の結果から、看護者は、患者が【自分らしさの保持】【現在の生活の維持】【自己の力の発揮】【希望の探求】【再編成に向かう力の充填】などを重視しながら、《病気を持ちながらの日常生活の調整》《生き方の選択》《病気をもった自己の受け入れ》《治療の選択》《家族との関係の調整》などの領域に関して、患者が積極的に意志決定をしている様子を捉えていた。また、看護者の内的取り組みとして、(1)患者の力を信じること、(2)患者の意志や意向を重視して添う関係を形成すること、(3)看護者自身が自己をコントロールしながら看護にあたること、(4)患者にとって最善の選択を願い模索すること、をあげることができよう。看護者が用いていた方略として、《共にいる》《守る》《保つ》《保証する》《整える》《補う》《広げる》《導く》《引き出す》の方略が抽出され、それらは直接患者を支える【患者の力の発揮を支える】側面と、それまでの前段階としての【看護の力を集約する】側面に分類された。【患者の力の発揮を支える】側面において看護者は、患者との関わりの中で、患者の迷いに付き合いながら共に過ごしたり、生活や身体状況を整えながら、患者の行動を見守るなかで、患者を知り、相互の理解を深めていた。そして、患者が安心感をもてるような状況を整え、意志決定に向かう意欲を育むと共に、患者のもつ力を高めながら、患者の意志決定を支えていた。【看護の力を集約する】側面には、《把握する》《判断する》《方向性を探る》《体制を作る》の4つが含まれていた。看護者は、専門的な知識や技術を駆使して患者のおかれている状況を捉え、アセスメントを行って必要な援助を判断すると共に、利用可能な資源や力を集めて患者の意志決定を支えることのできる体制を整えていた。さらに、意志決定を支える看護の特徴として、1具体的ケアを通しての支援、2患者の意志決定への自信を高める支援、3意志決定のプロセスにおける体験や学びの活用、4プロセスとしての意志決定を支える看護、5看護者が陥るジレンマなどが浮かび上がってきた。
著者
小川 博之 小林 康徳 平木 講儒
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

固体ロケットプルームによる電波干渉の直接的原因として,(1)燃焼ガス中に含まれるアルミ・アルミナ粒子による散乱吸収,(2)燃焼ガス中に含まれる自由電子,を取り上げ,それぞれについて電波減衰量を見積もった実験で観測される減衰量,電波減衰の周波数依存性から,電波干渉の直接原因は燃焼ガス中の自由電子であると結論づけた.自由電子による電波減衰を評価するパラメタである,自由電子密度と電子衝突周波数を求めるための解析モデルを構築した燃焼ガス流れ中の自由電子密度変化を解析できるモデルにより,プルーム中の自由電子密度分布を求めたプルーム中の化学反応は凍結しており,自由電子のモル分率は変化しないこと,自由電子数密度は巨視的物理量から求めることができることを示した.混相流解析を行い,アルミ・アルミナ粒子が流れ場に及ぼす影響が小さいことを示した.1次元プラズマスラブを仮定した電波減衰解析,2次元プラズマモデルによる電波の伝播解析を行った.電波の回折・屈折の効果は無視できないことがわかった.電波減衰量は周波数に対して弱い負の相関があること,電子密度に比例し電子衝突周波数に反比例することを示した.地上燃焼試験において,電波とロケットモータプルームの干渉実験を行ったモータの燃焼末期を除き定性的に理論どおりの結果が得られた.自由電子数密度が理論よりも小さく見積もられたが,これは不純物Naの量を実際と比べて大きく見積もっていたためと考えられる.燃焼中モータプルームによる電波の変調はないことがわかった.燃焼末期の電波減衰の振る舞いは現時点では説明がつかないため,今後研究を継続して明らかにする必要がある.今後,実際のロケット飛翔へ適用できる解析ツールの整備を行っていく予定である.
著者
阿古 智子 小島 朋之 中兼 和津次 佐藤 宏 園田 茂人 高原 明生 加茂 具樹 諏訪 一幸
出版者
学習院女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

急成長を続ける経済発展、世界の投資を吸収し続ける中国市場、その拡大する市場を武器にした外交戦略、等々、いまや中国を抜きには世界もアジアも、また経済も政治も語ることはできない。しかし一方では、日中間をはじめとして、さまざまな緊張要因をも中国は作り出している。中国国内に目を向けると、経済発展の裏で貧富の格差は拡大し、また腐敗は深刻化し、人々と政府との緊張関係は時には暴動となって表れている。こうした中国の国内、国際問題は、一面からいえば全て中国政治および社会の統治能力(ガバナビリティ)と統治のあり方(ガバナンス)に強く関連している。本研究は、現代中国の政治、社会、経済におけるガバナンス構造とそのための制度形成に注目し、中国社会がどのような構造問題に直面しているのか、またどのように変わろうとしているのか、という問題について、国際的学術交流をつうじてとらえ直そうとしたところに意義がある。本年度は、2009年2月9-11日にフランス・現代中国研究センターとの共催で、香港フランス領事館文化部会議室にて、総括を行うための第3回国際ワークショップを開催した。オーストラリア国立大学、香港バプティスト大学、米・オバリンカレッジなどの研究者らと共に研究成果を発表し、現代中国のガバナンスの特徴と変容について、経済・社会・政治の各分野から、積極的に議論を行った。ワークショップで議論した内容は、今後、フランス・現代中国研究センターの発行する学術誌に各々の論文や特集として発表するか、メンバー全員の論文を一つにまとめ、1冊の書籍として刊行することを目指している。日本の研究者が海外に向けての発信力を高めるという意味でも、当研究は一定の成果があったと言える。
著者
佐藤 賢一 福田 舞子
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では近世日本科学史・自然災害史の史料に関する総合的研究を進め、以下の項目について成果を公開した。(1)和算家・石塚六郎兵衛と横川玄悦の事績を明らかにした。(2)近世日本の測量術におけるオランダ由来の技術の実態を解明した。(3)博物学者・田中芳男の史料群の構成を明らかにした。(4)仙台藩の和算の通史を刊行した。(5)宮城県の自治体史における災害記事の一覧を分析し、その歴史的背景を明らかにした。
著者
大谷 吉生 瀬戸 章文 吉川 文恵 古内 正美
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ガス分子に近い大きさを持つナノ粒子をエアフィルタで捕集できるかどうかは、ナノ粒子製造工程における有害なナノ粒子への曝露に関連し、労働衛生の分野で大きな関心事である。本研究では、マクロ分子を単分散ナノ粒子代替粒子として使用し、エアフィルタのナノ粒子捕集効率を測定する試験法を提案し、その評価を行った。その結果、エレクトロスプレーと微分型静電分級器(DMA)を用いてポリエチレングリコール(PEG)分子を発生させ、荷電中和後、DMAで分級すれば、PEG分子量を変えることにより、粒子径2.6μm以上で、マクロ分子イオンをフィルタ試験用ナノ粒子として使用できることを明らかにした。
著者
上原 景子 金澤 貴之 フーゲンブーム レイモンド 中野 聡子 山田 敏幸
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究の主な目的は、聴覚障害児の英語学習促進を支援する手立てとして、英語字幕の呈示方法と授業で使われる英語の視覚化の方法を開発することである。障害者差別解消法の施行を背景とした聴覚障害児支援のあり方と英語教育改革実施を目指す英語教育の変化を視野に、英文を読む際の眼球運動測定の実験や聴覚障害児に聞き取りやすい口頭英語のあり方の実験、小中高の英語の授業の実態把握、聴覚障害をもつ大学生や英語上級者への英語学習経験についての調査を行った。それらの結果に基づいて、「コミュニケーション能力の育成」を目指す新しい英語の授業における聴覚障害児の支援についての提案を行う。
著者
稲場 圭信 櫻井 義秀 濱田 陽 金子 昭 関 嘉寛
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、環太平洋のアジアの国々(具体的には、日本、台湾、韓国、タイ、シンガポール、インドネシア、オーストラリア)を調査地域とし、宗教NGOの社会的活動、弱者救済活動、災害支援活動を実地調査した。様々なネットワークが交錯するグローバルな地域間連携が存在する環太平洋において、宗教NGOはローカルからトランスナショナルの様々なレベルで他の市民セクターと連携するネットワーク型へと変容し、市民社会を作る社会的アクターとして機能している実態が明らかになった。