著者
MARK J. HUDSON MAMI AOYAMA TAKAMUNE KAWASHIMA TAKAYUKI GUNJI
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
Anthropological Science (ISSN:09187960)
巻号頁・発行日
vol.116, no.1, pp.87-92, 2008 (Released:2008-04-26)
参考文献数
59
被引用文献数
2

It is proposed that the so-called ‘protruding buttock’ figurines from Middle Jomon central Japan may be representations of steatopygia. The distribution of these figurines is associated with archaeological evidence for high population densities and possible intensive use of wild yams (Dioscorea japonica). Given the low fat content of these yams, it is suggested that nutritional stress in the diet of Middle Jomon hunter-gatherers of the Chubu highlands may be consistent with the fat accumulation on the buttocks apparently represented in the ‘protruding buttock’ figurines.
著者
秋月 高太郎 Kotaro Akizuki
出版者
尚絅学院大学
雑誌
尚絅学院大学紀要 (ISSN:13496883)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.17-30, 2012-07
被引用文献数
6

ウルトラマンはどのようなことばを話すのか。ウルトラマンが話すことばにはどのような特徴があるのか。このような問いについて、役割語の視点から明らかにする。ウルトラマンのことばは〈神様〉キャラクタの役割語である。〈神様〉キャラクタの役割語には、〈標準語〉である、常体(ダ・デアル体)である、自称詞は「わたし」、対称詞は「きみ」「おまえ」を用いる、平坦調イントネーションを用いるといった特徴がある。
著者
WINCHESTER Mark
出版者
神田外語大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、下記の3点を考察の軸として、アイヌ民族の近現代思想史の全体像に迫ることを目標とした。(1)近現代におけるアイヌ思想史の系譜構築の必要性、(2)アイヌ近現代思想史の日本思想史研究上の意義、(3)世界規模の社会的かつ歴史的、または哲学的な思想課題としてのアイヌ近現代思想史。26年度では、書籍などからの基礎的情報と研究上に必要なIT関連機器の補充的整備や、研究対象となる著述家の自筆原稿などの資料調査を行い、27年度では、さらに資料調査を重ね、論文の出版や研究成果の発表を行なった。
著者
Junya Sado Tetsuhisa Kitamura Yuri Kitamura Rong Liu Emiko Ando Tomotaka Sobue Yumi Sugawara Keitaro Matsuo Tomio Nakayama Ichiro Tsuji Hidemi Ito Takaichiro Suzuki Kota Katanoda Suketami Tominaga
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-18-0618, (Released:2019-03-08)
参考文献数
32
被引用文献数
10

Background: Coffee, which contains various bioactive compounds, is one of the most popular beverages. Further accumulation of evidence is needed, however, to confirm whether coffee consumption would be effective in preventing cardiovascular disease in the general Japanese population. Methods and Results: We evaluated the association between coffee consumption frequency (never, sometimes, 1–2 cups/day, 3–4 cups/day and ≥5 cups/day) and mortality from all causes, heart disease, and cerebrovascular disease, in 39,685 men and 43,124 women aged 40–79 years at baseline, in a 3-prefecture cohort study. The coffee consumption frequency was assessed on questionnaire. Cox proportional hazards regression modeling was used to assess the association between coffee consumption frequency and all-cause and cardiovascular disease mortality with adjustment for potential confounders. During 411,341 and 472,433 person-years in men and women, respectively, a total of 7,955 men and 5,725 women died. Coffee consumption frequency was inversely associated with all-cause mortality in both genders (P for trend<0.001). In addition, the risks of mortality from cerebrovascular disease in men (P for trend<0.001), and heart disease in women (P for trend=0.031) were inversely associated with coffee consumption. Conclusions: In this Japanese population, coffee drinking has a preventive effect on all-cause and on cardiovascular mortality in men and/or women.
著者
谷村 省吾
出版者
素粒子論グループ 素粒子論研究 編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.1-89, 1992-04-20 (Released:2017-10-02)

量子力学系の断熱変化に伴う位相因子-Berryの位相というものがある.それは断熱変化ののちに量子系が元の状態に戻っても,元に戻らない余分な位相因子である.これに似た現象が古典力学にもある.自力で変形可能な,宙に浮いた物体-例えば猫,名前はTomとい-は,変形して元の形に戻っても,その向きは元通りにならない,つまり宙返りすることがある.これらの現象はともに接続の微分幾何の言葉で捉えられることを解説する.また,接続の微分幾何はゲージ理論の一側面を担っているが,この幾何学の観点から見るとき,量子系・古典系・ゲージ理論に多くの類似点・対応物があることがわかる.これらの点について一般的に考察する.最後に具体例を構成する.とくにその例の中で,複素射影空間P^2(C)上の新しい型のインスタントン的な接続を示す.
著者
福井 一喜
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.397-418, 2020 (Released:2020-12-25)
参考文献数
43
被引用文献数
3

近年,日本の観光政策は観光振興による雇用拡大や経済成長を目指してきた.しかし各県の2012年から2016年の観光経済振興を分析すると,観光客数や消費額はほぼ全国で増加したが,観光産業の雇用拡大や付加価値額の増加は大都市圏とりわけ首都圏に集中し,地方圏では観光の基幹産業化や既存の地域経済格差を覆すような経済振興が生じた県はほぼ見られない.それは観光のサービスとしての宿命である貯蔵の不可能性と機械化による生産性向上力の小ささが地方圏に条件不利性として作用し,他方で大都市圏では立地優位性によって観光産業集積が累積的に増大し,知識集約的な都市的サービス業との連携による経営の合理化の機会も拡充されるからである.観光振興を促進する観光政策はすべての地域で有効とは限らず,大都市圏と地方圏との地域格差を再生産する構造を持つ.COVID-19を契機に,日本の観光政策は経済振興への偏重から転換し,観光の「豊かさ」の意味を再考すべきである.
著者
牛渡 亮
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.73-83, 2013-07-19 (Released:2014-08-31)
参考文献数
19

本稿の課題は,スチュアート・ホールによって1970年代に展開されたモラル・パニック論の内容を詳らかにするとともに,このモラル・パニック論と1980年代以降に展開される彼の新自由主義論との結びつきを明らかにすることにある.ホールによれば,モラル・パニックとは,戦後合意に基づく福祉国家の危機が進展するなかで人々が感じていた社会不安や恐怖感の原因を,社会体制の危機そのものではなくある逸脱的集団に転嫁し,当該集団を取り締まることで一時的な安定を得ようとする現象である.本稿では,このモラル・パニックを通じて高まった警察力の強化に対する能動的同意を背景に,それまでの合意に基づく社会からより強制に基づく社会への転換が起こり,そのことがサッチャリズム台頭の基礎となったことを示した.したがって,本稿での作業は,ホールが「新自由主義革命」と呼ぶ長期的プロジェクトの端緒を理解するための試みであると同時に,オルタナティヴの不在により今日ますます勢いを増す新自由主義を理解するための試みでもある.
著者
諸井 陽子 小林 元 菅原 亜紀子 石川 和信
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.401-404, 2020-08-25 (Released:2021-03-15)
参考文献数
9

背景 : ソーシャルメディアの汎用化に伴い, 倫理・プロフェショナリズムに関わる問題が出現している. 目的 : 医療系学生や医療専門職に対するソーシャルメディア利用の教育や研修に用いるチェクリストを開発する. 方法 : わが国の事例を分析・区分化し, 事例に基づいたチェックリストを作成する. 結果 : モラルハザード事例は3区分に分けられ, 10項目からなるソーシャルメディア利用のチェックリストを作成した. 考察 : ソーシャルメディアが日常生活に深く関わってきている現在, そこで展開・交換される内容について, 医療系学生・医療専門職の誰もがモラルハザードに陥る可能性がある. 事例を踏まえた教育ツールを開発した.
著者
島倉 大輔 田中 健次
出版者
一般社団法人 日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.104-112, 2003-07-15 (Released:2018-06-15)
参考文献数
7

医療業界では,組織事故と考えられる医療事故が多く発生している。組織事故を防止するために,医療現場では医師や看護士など人間による防護の多重化が行われている。しかし,事故原因を取り除くために実施された防護が,新たな事故を誘発したり,防護作業を行う作業者が多重化に安心して抜きを行う恐れがあり,多重化はかえって事故を招く危険性がある。本研究では,医療現場など人間による防護の多重化の有効性に着目する。人間による防護の多重化は,複数の人間が同質の防護作業を行う同種防護の多重化と,複数の人間が異なる作業を行う異種防護の多重化に分類される。本研究では,同種防護と異種防護の多重化に相当する模擬実験により,人間による防護の多重化の有効性の検証を試みた。結果として、同種防護を多重化する場合,防護の二層への絞込みがもっとも事故防止に有効であること,通常事故防止に有効であると考えられている三層以上の多重化は逆効果であり,むしろミスの発生率が下がる可能性があることが明らかとなった。一方,異種防護を多重化する場合は,防護を多重化するほど,事故防止に有効であることも明らかになった。
著者
アレクサンドル クラーノフ フョードル クバーソフ
出版者
国際忍者学会
雑誌
忍者研究 (ISSN:24338990)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.2, pp.14-23, 2019 (Released:2020-09-01)
参考文献数
1

本稿ではソ連の忍者とも呼べる作家ロマン・キム(1899 ~ 1967)の伝記について新知見を含めて紹介する。ロマン・キムはソ連で初めて忍者・忍術を紹介した人物である。1927 年にボリス・ピリニャークの本への長い解説文である「蛇足」によってロシア語で初めての忍術の紹介を行った。キムは1960 年に入り忍術関係の小説を出版を計画し、1964 年の『幻の学校』に結実した。そのなかでは大衆的な読み物でなく歴史文献に基づいた忍術の知識が広く含まれている。キムは1922 年より秘密警察に協力し、日本に対する密偵として活動を始めた。対日本防諜で活躍したキムだが1937 年に日本の逆スパイの容疑で逮捕され、禁錮20 年を宣告されるが、戦後に免罪された。戦後は文筆業によって大人気作家になった。最近では1950年代から死ぬまでKGB と関係があることがわかったが、まだ経歴に謎と矛盾は多い。
著者
荻原 祐二
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.177-183, 2015 (Released:2015-12-27)
被引用文献数
3 18

This paper examined the characteristics and patterns of uncommon names in present-day Japan. Uncommon names have increasingly attracted a remarkable amount of attention, both in the academic field and in society at large. In order to capture the underlying nature of the phenomenon of giving uncommon names to babies, it is important as a first step to describe the characteristics of uncommon names and to systematically categorize them within a structured framework. However, past research mostly focused on names that were too unique and unclear about how they were to be read (kirakira names), which reflected partial and potentially misleadingly extreme aspects of the phenomenon. Moreover, previous research has used unique names that were possibly invented and hypothetical, which is not productive to understanding the actual phenomenon of giving uncommon names and might produce/reproduce "anecdotal names" or "urban legend names." Therefore, in this article, names that were uncommon (not too unique) and real (not hypothetical) were examined. It is suggested that there are two ways of giving uncommon names: (1) giving an uncommon reading/pronunciation to Chinese characters and (2) giving uncommon Chinese characters. There are three typical ways of providing uncommon readings: (1-1) abbreviating the common reading of Chinese characters, (1-2) reading Chinese characters with the pronunciation of a foreign word that corresponds to its semantic meaning and (1-3) giving readings based on the semantic meaning of Chinese characters. In contrast, there are two typical ways of giving uncommon Chinese characters: (2-1) giving Chinese characters that are not encountered frequently in daily life and (2-2) including silent Chinese characters that add to the semantic meaning without contributing to the pronunciation. The characteristics of uncommon names and future directions in research investigating uncommon names in Japan were discussed.
著者
石田 浩
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-18, 2012 (Released:2013-03-18)
参考文献数
83
被引用文献数
9

この講演では,社会科学において原因と結果を特定していく因果推論の可能性について考えてみます.調査観察データに基づいて因果推論を試みる手法として (1) クロス集計表によるアプローチ,(2) 回帰分析によるアプローチ,(3) パネル調査データを用いた手法,(4) 反実仮想の枠組み,の4つを取り上げて詳しく検討します.最後に,社会に内在する「因果効果の異質性」に着目したオーティス・ダドリー・ダンカンの考え方と,「生成過程としての因果関係」に着目したジョン・ゴールドソープの考え方を紹介します.そしてこの2つの考え方が実は補完的であり,調査観察データを用いた因果推論の過程で,社会科学者が本来引き受けるべき重要な課題を,2人の偉大な社会科学者が指摘していることを主張します.
出版者
国立国会図書館
巻号頁・発行日
vol.2022年, no.(740), 2022-12-01
著者
篠田 優香 佐伯 緑 竹内 正彦 木下 嗣基
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.179-187, 2021 (Released:2021-08-26)
参考文献数
32

タヌキのロードキル発生状況を,茨城県阿見町から千葉県成田市までの約35 km区間において32ヶ月間にわたり記録した.この間に124件のロードキルが確認され,秋に多く発生していた.また,この約半数が全体の3分の1に満たない水田優占地帯で発生した.ロードキル発生要因を景観構造の観点から解明するため,ロードキル数を目的変数,土地利用割合を説明変数とした偏最小2乗(PLS)回帰分析を行った.その結果,「水田」と「緑の多い住宅地」が,ロードキル数に対する変数重要度の大きい正の要因であることが明らかとなった.さらに,水田優占地帯においては,大区画水田が単一的に広がる景観と,樹林地や住宅地と混在した小区画水田が残存している景観では,ロードキルの発生時期と発生場所に違いが見られた.これらのことから,タヌキのロードキルは,秋季の分散に伴う行動特性に加え,周辺の土地利用割合,タヌキの生息地利用と景観構造との相互作用による影響を受けていると考えられた.