著者
黒田 日出男 藤井 貞和 坂輪 宣敬 米倉 迪夫 玉井 哲雄 久留島 浩 宮崎 勝美 小島 道裕 杉森 哲也 藤川 昌樹 山口 和夫 藤原 重雄 佐多 芳彦
出版者
立正大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2005

中近世風俗画の高精細デジタルコンテンツの蓄積、画像史料研究用プラットフォームの開発、合戦図屏風研究用の語彙集積とデータベース化、研究成果公開の一端として博物館・美術館の展覧会での展示、絵画史料学的研究の飛躍的向上など。
著者
山中 高光 永井 隆哉 大高 理 植田 千秋 土山 明 田窪 宏
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

プレートの流動現象や、沈み込むスラブの運動を把握するためにはダイナミカルな構造研究をする上で、地殻やマントルの構成鉱物の環境変化(温度・圧力・成分等)に伴って、生じる転移・分解・融解・結晶内イオン交換反応等の諸々の構造変化のカイネティックスや機構を究明することが重要な課題である。本実験ではケイ酸塩鉱物や類似鉱物の圧力誘起による構造変化と逐次観察と動的構造の研究を行った。1.マントルの主構成鉱物であるカンラン石(Mg_2SiO_4)について分子動力学(MD)計算を用いて圧力誘起の構造転移のシミュレーションを行った。室温では35〜40GPa圧力領域で圧力誘起非晶質相転移が生じ、95〜100GPaで未記載な結晶構造に再結晶化することが計算から明らかになった。ダイヤモンドアンビル高圧発生装置と放射光X線を用いた高圧実験でカンラン石のGe置換体のMg_2GeO_4の圧力誘起非晶質相転移を実際に確認した。2.マフィックな珪酸塩鉱物が海洋地殻で水和物に変質し、それらがサブダクションでの低温(<500℃)で応力下での構造安定性を調べ水の挙動を研究する。そのためCa(OH)_2の圧力誘起相転移と準安定相の存在領域を放射光X線回折実験で決定しその機構を解明した。その結果水和鉱物は高圧下では脱水反応はせず、非晶質相として地殻内部にもたらされ、これらがマグマなどに重要な水の起源として考えられる。3.マルチアンビル高圧発生装置に装着し、SiO_2の同一の多形構造転移を示すGeO_2の圧力誘起非晶質相転移した物質についてS波とP波の弾性波速度を測定し、体積圧縮率や剛性率を求めた。これらの弾性波速度の温度・圧力変化の研究はサブダクション・ゾーンで生じる深発地震の発生の解明にも貢献した。また分子動力学から求められた温度圧力関数にした弾性常数の変化と比較し検討した。
著者
古野 貢
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

各守護の受発給文書の収集作業の結果、約6,000通を収集した。各守護の特色は、室町幕府内部での地位、分国配置(地理的・地域環境)、守護権力構造(守護代・奉行人・郡代など)の差により見いだし得た。今後はさらなる収集と、当該期の全体的理解に向けた検討を進める必要がある。
著者
西条 寿夫 田渕 英一 田村 了以
出版者
富山医科薬科大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

本研究では,海馬体における能動的な場所応答[特定の場所(場所フィールド)におけるニューロン活動の上昇]の形成機構を明らかにするため,課題要求性の異なる2つの場所学習課題(RRPSTおよびPLT1課題)を遂行しているラットの海馬体ニューロン活動を記録し,場所と報酬,および歩行移動に関する物理的諸因子(歩行移動のスピード,方向,回転角度)に対する海馬体ニューロンの連合応答性を詳細に解析した。RRPST課題では,ラットは,円形オープンフィールド内をランダムに移動することにより不特定の場所で,PLT1課題では,フィールド内に2つの報酬領域を設定し,その間を往復することにより,それぞれ2つの報酬領域で脳内自己刺激報酬を獲得できる。すなわち,RRPST課題と比較して,2つの報酬領域を結ぶ一定の軌跡上を移動するPLT1課題では,歩行移動の物理的諸因子に関する情報がより重要になる。海馬体から37個の場所ニューロンを記録し,PLT課題ではRRPTS課題と比較して,すべての物理的因子に対するニューロンの選択性が増加していることが判明した。以上の結果は,課題要求性により,入力情報の特定のパラメータに対する海馬体ニューロンの応答選択性が増加し,より重要な情報に応答性が能動的にシフトしていることを示唆している。さらに,31個の海馬体ニューロンに対して,2つの報酬領域のうちの1つの場所を無報酬にするPLT2課題をテストした結果,6個のニューロンで,報酬の変更により場所フィールドが移動することが判明した。以上の結果は,海馬体では,1)場所フィールド内における能動的な入力情報の選択,および2)場所フィールド自体の可塑的な変化(Remapping)により,海馬体に入力される広範な感覚情報が処理されていることを示唆している。
著者
吉岡 基
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

イルカ類の飼育下繁殖の促進ならびに種の保存策実行のために必要となる,イルカ精子の凍結保存技術の確立に向け,ストロー法による最良な凍結条件を探るため,精液の希釈法,液体窒素ガス曝露時間,凍結後の融解時間について実験を行い,後の精子性状を比較した.その結果,まず,バンドウイルカ2頭,カマイルカ1頭について,新たに訓練によって精液採取が可能となった.そして,バンドウイルカ精子については,8%グリセリン含有卵黄クエン酸ナトリウム溶液で2回にわけて最終3倍希釈して凍結を行った場合,35℃温湯中での凍結精子の融解時間を15,30,60秒の3条件間で比較したところ,15秒区では他の2区に比べて融解後の精子性状に低下がみられた.また,希釈精液封入後のストローの液体窒素ガス暴露時間を0.5,2,5,10,15,20,30分の間で比較したところ(液体窒素液面からストローまでの高さは約5cm),5分以上暴露区では生存率約50%以上の比較的良好な成績が得られ,とくに15分区では活力が最も高くなった.またこれらとは別に,原精液を同じ希釈液で2段階希釈せず,1回希釈で最終倍率(×3)まで希釈しても,凍結・融解後の性状に違いがみられなかったことから,この手順がより簡便な希釈・凍結法となる可能性が示唆された.また,シャチについて精液採取訓練を継続した結果,わずかな検体数ではあるが,活発な運動性を示す精子を大量に含む精液が採取され,その凍結保存を行うことができた.バンドウイルカ1頭を対象に凍結精子を用いた人工授精を試みた結果,受胎させることに成功し,約1年間の妊娠期間を経た後に,国内最初の凍結精子を用いた人工授精イルカの誕生に成功した.
著者
藤崎 源二郎 木村 寛 北川 義久 藤平 秀行 落合 昭二 木村 茂
出版者
宇都宮大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

有限次代数体kのガロア拡大K/kのガロア群がp進整数環(p:素数)I_pのカロ法群に同型であるとき,K/kをI_p-拡大という.I_p-拡大K/kに対して中間体の列k=k,⊆k_1⊆…⊆k_n⊆…⊆K,k_n/kはp^u次巡回拡大,が唯一つ定まる.k_nのイデアル類群のp-シロ一群の位数をp^<en>とすれば,十分大きなすべてのnに対してe_n=λ_n+μp^n+vとなる整数の定数λ(≧0),μ(≧0),Vが定まる(岩澤類数公式).λ,μをI_p-拡大K/kの岩澤不変量という.有限次代数体kに1のpべき乗根すべてを添加した体k_∞はkのI_p-拡大体となる.k∞/kをkの円分I_p-拡大とよぶ.岩澤不変量λ,μの研究は代数的整数論における中心的課題の一つであり,とくに円分I_p-拡大のλ,μの研究は重要かつ興味あるものである.本研究ではとくに円分I_p-拡大のλについて考察した。すなわち,研究代表者藤崎はkが有理数体のあるガロア拡大(ガロア群が(2,2)型アーベル群,四元数群,二面体群など1のとき,kの円分I_p-拡大のλについてある結果(kの部分体のλとの関係)を得た.また,特別なpについて計算例を集めた。研究分担者木村茂はネバンリンナ理論の発展についての総合報告を執筆発表した。研究分担者木村寛は授業資料として計算機から電算機に至るまでの発達を文献対比により整理した.また,中学校の課題学習で扱う教材を事例毎に考察した.
著者
澤木 宣彦
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

消費電力が大きな従来型の計算機システムの弱点を克服するための結合量子井戸構造における波動関数の変化を利用する新しい演算システムの構築の可能性を探ることを目的とする。1.結合ドット構造への電子波束の注入法を探るため、磁場中の量子ディスク、量子細線における電子波束の運動を詳しく検討した。磁場が強い場合には波束の崩壊は起こらないこと、磁場に直交する電界を印可すると、波束は横方向へのドリフト運動を行うことがわかった。2.電子線露光法により、砒化ガリウムにシリコンを原子層ドープした構造に微小電界効果トランジスタを作製した。チャネルの幅ならびに長さは100-500ナノメートルとし、サイドゲート構造とすることによりチャネルの伝導制御を試みた。ドレインには分岐点を設け、原子層ドープ構造におけるパーコレーション的な伝導の効果を見いだすことを試みた。しかし、今年度の実験ではそのような効果を見いだすことはできなかった。サイドゲートによるポテンシャル変調が十分でなかった可能性がある。3.結合ドット構造からの信号の光による入出力の方法として、プラズモンポラリトンを用いる方法の有効性を検討した。半導体量子井戸構造の試料の表面に電子線露光法によって金属膜グレーティングを作製した。ヘリウムネオンレーザの光を特定の角度から入射することによって、半導体表面にプラズモンが励起できた。ついで、この角度付近で、量子井戸からの発光の強度が増加することを見いだした。量子井戸の励起子系と表面に局在した電磁波との相互作用の可能性が実証された。
著者
上山 大信
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究の目的は,反応拡散モデルを空間離散化した場合にあらわれるカオス的な動きをするパルスの出自の解明と,その普遍性を明らかにすることであった.結果として,P-modelおよびGray-Scottモデルにおいて,カオス的パルスの存在が示され,特にP-modelにおけるカオス的パルスの出自については,数値的に解の大域構造を得ることに成功し,2つの経路を経て,カオス的パルスが出現することがわかった.周期的な振る舞いからカオス的な振る舞いへの遷移は大きく分けて"Intermittency","周期倍分岐","トーラス分岐を経るもの"の3つに大別されるが,我々が対象としているカオス的パルスは,"Intermittency"および"周期倍分岐"の2通りの遷移により生じていることが判明した.また,連続モデルとの関係において,粗い空間離散化により,カオス的パルスが得られるパラメータ領域において,細かな,つまり十分連続モデルの近似となっているような接点数でのシミュレーション結果は,興味深いことに動きのないスタンディングパルス定常解であることがわかった.これは,これまでの空間離散化の影響に関する研究が主にスカラー反応拡散方程式のフロント解に関するものであり,その場合には,動いているフロント解が離散化の影響により停止するというものであったが,それとは全く異なる結果である.つまり,空間離散化により,停止しているものが動きはじめる場合があるというはじめての例である思われる.これらの成果については,フランスにおける国際研究集会「Invasion phenomena in biology and ecology」において発表を行った.
著者
前野 紀一 原田 仁平 黒田 登志雄 鈴木 啓三 東 晃 菅 宏
出版者
北海道大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1989

氷は気候や生命を含む地球上の数多くの現象や過程に関与し、その中で重要不可欠な役割をしている。この様な氷に関して、これまで多数の調査、研究が行われてきたがその多くは個別の分野で発表され、相互の情報交換が乏しかった。本総合研究は、わが国の種々の研究機関で氷に関連した研究を進めている総勢27名の研究者が集まり、氷の構造と物性に関する総合的理解を得る目的で組織された。本年度は各研究分担者間で相互の研究交換を実施するとともに、11月14、15日の2日間北大低温科学研究所で「氷のシンポジウム」の集会を催し、分担者以外の多数の参加者も加えて密な情報交換を行なった。この研究集会の成果は121ペ-ジの報告書としてまとめられた。本年度の総合研究の中では、氷の微視的構造の問題として、プロトン配置の対称性、プロトン配置に関連しての相転移、この相転移の進行を促進するアルカリ添加物の効果およびその誘電的・熱的検証、等が議論された。また雪結晶の成長機構、過冷却水からの氷成長、および氷の内部融解も新らたな研究課題として重要視された。力学特性としては依然として未解決の問題が多い多結晶氷のクリ-プ、雪の破壊機構等が議論された。高圧氷に関してはダイヤモンドアンビルによるその場観察の方法、高圧水のスペクトル解析が取り上げられた。なお、南極やグリンランド氷床深部の氷に関する測定からは、地球環境問題や氷床流動ダイナミックスにおける氷研究の必要性が示された。地球外の氷の問題としては、木星や土星の氷衛星の特徴が明らかにされ、その詳しい解釈には氷の広い圧力、温度領域における物性の解明が必要であると結論された。生命科学に関連しては生体高分子の水和の問題が取り上げられ、特に蛋白質の不凍水の動的性質が調べられた。
著者
熊木 俊朗 大貫 静夫 高橋 健 佐藤 宏之 福田 正宏 臼杵 勲 國木田 大 高橋 健
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、古代から中世における日本列島の北方地域の社会変動について、特に中世アイヌ文化の形成過程に関する問題を中心に考古学的な検討をおこなった。具体的には、北海道東部地域を主な対象としてオホーツク文化の考古資料分析と擦文文化集落の発掘調査を行うことによって、この地域におけるオホーツク文化の終末とその後の擦文文化の展開・終末の過程を解明し、中世アイヌ文化が成立するまでの社会変化の実態を復元した。
著者
山本 芳美
出版者
都留文科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本課題では、19世紀末から20世紀初頭に、欧米や東南アジアに出稼ぎや移民した者を含めた日本人彫師の活動を研究した。各地の研究機関、大学、図書館、博物館などで、新聞や雑誌、古写真、公文書のデータベースや所蔵資料を調べ、香港、シンガポール、フィリピン、タイ、インド、イギリス、アメリカ、カナダで複数の日本人彫師が活動したことを解明した。本研究により、英米に渡った彫師Yoshisuke Horitoyo、香港の野間傳の足跡が判明した。また、船で渡航した当時、客を彫師のもとに効率よく送りこむ、ホテル、古美術商、写真師、彫師間のネットワークが横浜、神戸、長崎に形成されていた可能性も明らかとなった。
著者
對馬 達雄 今井 康雄 遠藤 孝夫 小玉 亮子 池田 全之 山名 淳
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、戦後ドイツを通底する課題である「過去の克服」という課題に、これまで等閑視されてきた精神史、文化史、広く人間形成の側面からその本質に迫ることを目的としている。本年度は、7名の分担者が交付申請書記載のそれぞれの研究テーマに則して、文献・資料の分析を進め、2回の全体研究会を通じて、共同研究としての統一性を保ちつつ研究を進めた。より具体的には、まず遠藤は、州憲法及び基本法の制定を通して、ナチズム克服の理念としてキリスト教の復権が行われたこと、小玉はナチズムにより解体の危機に瀕していた家族の再建に関する議論と施策が行われたこと、渡邊はナチ教義の注入手段と化していた歴史教育の再建において、ヴェーニガーの「政治的歴史教育」の理念が重要な役割を果たしたことを明らかにした。また、池田は20世紀ドイツを代表する哲学者ハイデガー、リット、ヤスパースの「過去」に対する思想的対応の相違を腑分けし、今井は「政治的成人性」の理念を中核とするアドルノの教育思想の特質を「過去の克服」との関連で明らかにし、對馬は反ナチ運動の復権を司法界において最初に宣明した「レーマー裁判」の意義を検事ブリッツ・バウアーの思想と行動に関連づけて明確にした。そして、山名は「追悼施設教育学」の成立経緯とその今日的意味を「記憶文化」と関連づけて明らかにした。これらの研究成果は、平成23年3月に上梓された對馬達雄編著『ドイツ過去の克服と人間形成』の各論文として収録された。
著者
井本 正人 土居 靖範
出版者
高知女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

規制緩和の流れの下で、市場原理の活用では対応困難な過疎地域の移動ニーズにどのように応えていくかは交通運輸分野での大きな課題である。過疎地域住民の生活様式と移動ニーズに対応した移動のナショナルミニマムを効率的に確保することは地域生活にとってますます重要となってきている。ここでは、国内事例として、過疎が進行し、過疎バス対策も比較的に進んでいる高知県下の3町村の取り組みについて分析し、また、スウェーデン、スイスにおける移動のナショナルミニマムの考え方とそのレベルアップの取り組み実態について検討することによって、より国際的な視野のもとに過疎地域におけるより普遍的な移動保障のあり方を明らかにした。具体的には、主に次の3点の検討を行う。1.各自治体は、地域のそれぞれの実情をふまえ、法的・財政的枠組みの中で移動手段の組み合わせによる住民満足度の高い効率的運行パターンをどのようにして実現してきているか、検討を行う。2.効率的な運行を実現し、改善していくための主体(自治体、住民、事業者)と財政・負担のあり方について検討を行う。3.我が国の特殊性を明らかにし、過疎バス運行システムに関するより普遍的な考え方と傾向を明らかにするため、EU内での事例を紹介しながら、比較検討を進めるその結果、移動のミニマムについては、朝、診療所等に行き、昼自宅に帰ると行った形での一往復が物理的なミニマムで、朝、昼、夕刻の運行が一般的なミニマムと考えられている。交通手段の組み合わせによる住民満足度の高い効率的運行パターンの具体化方法は国、地域によって異なるが、総じて、路線バスとスクールバスを中心とする複数の移動手段の連携と、様々な移動ニーズの路線バスへの統合といった方法があり、それらにおいて低料金あるいは乗車無料といった方向性が見られる。我が国の場合、いわゆる縦割り行政の下でこうした取り組みがダイナミックには取り組まれにくいといった事情もあるが、財政負担を伴う低(無料)料金での運行については、その効率性の確保と住民の支持が不可欠であると考えられることが明らかとなった。
著者
田島 惇 中野 優 牛山 知己 大田原 佳久 太田 信隆 阿曽 佳郎
出版者
浜松医科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

本研究者らは合計152回(生体81、死体71回)の腎移植を施行してきた。なお本研究期間では、32例の死体腎移植を施行した。われわれの症例では、全例心停止後の腎提供のため、述後急性尿細管壊死(ATN)は不可避であった。この自験例において、ATN中の適切な免疫抑制法とその間の管理を中心に、検討した。1)術後ATN中の免疫抑制法について:シクロスポリン(Cs)の登場により、死体腎移植成績は飛躍的に向上した。Csが入手可能となってから、Cs(12mg/kgで開始)とlow doseのステロイド(60mg/dayより漸減)で免疫抑制を行ったが、1年間の死体腎生着率は80%弱と著明に向上した。Csの投与量は、主に血中のCs濃度および移植腎生検像から調節した。免疫抑制状態の指標としては、リンパ球サブセットOKT4/8が有用であった。この比が0.6以下の場合は、過剰な免疫抑制状態であると考えられた。拒絶反応の治療としては、従来のステロイド療法に加え、OKT3の使用が可能となったが、その有用性は高く、優れた臨床効果を示した。2)ATN中の管理:ATN中移植腎合併症の診断における超音波移植腎針生検は極めて有用である。生検像のDNA polymerase-αによる免疫組織化学により、ATNからの回復状態を評価することができた。本研究者らの開発したリンパ球除去を、ATN中のステロイド抵抗性の拒絶反応の治療に応用し、優れた効果が得られた。またリンパ球除去システムを、従来のシステムより安全かつ容易なシステムへの改善の試みを行った。Cs血中濃度測定では、FPIA法がベッドサイドで簡便にできる点が優れている。Cs腎毒性のレニン-アルドステロン系の関与が示唆された。ATN中のCMV感染症に対するガンシクロビル、白血球減少に対するColony Stimulating Factorの有用性が確認された。死体腎の潅流液としてUW solutionを用いた場合、従来のコリンズ液よりATNの期間が短縮される可能性が示された。静岡県の死体腎提供の分析をした。
著者
村瀬 敏之 大槻 公一
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

サルモネラに感染した鶏は本菌に汚染された鶏卵を産出する可能性がある。産卵直後では卵黄よりも、菌の増殖には適当な環境ではない卵白内に菌が存在する場合が多いといわれているため、鶏卵内のサルモネラは、卵黄膜を介して卵黄内に侵入することによって増殖を開始すると考えられる。本研究では実験的汚染モデル卵を用いて、卵内におけるサルモネラの動態を各種血清型間で比較し、抗サルモネラ卵黄抗体の存在がサルモネラの動態に及ぼす影響を検討した。SPF鶏卵の卵黄膜上にサルモネラ(SE並びに血清型インファンティス(SI)及びモンテビデオ(SM))の生菌を100個接種し、25℃で6日間インキュべートしたところ、卵黄内への侵入率及び卵黄内菌数は血清型間で有意な差を認めなかった。また、本菌が卵白内を卵黄に向かって運動することはまれであるが、卵黄の近傍に存在することは増殖に好都合であることが示唆された。SM自然感染を認めるコマーシャル産卵鶏が産出した卵の抗サルモネラ卵黄抗体を検討したところ、断餌による換羽の誘導に伴い感染した鶏が増加した可能性が示唆された。供試卵からサルモネラは検出されなかった。不活化SEワクチンを接種したコマーシャル採卵鶏が産出した卵とSPF卵を用いて、汚染モデルによりSEの卵内動態を比較した。卵黄内への侵入性には両卵のあいだに差が認められなかった。しかし、卵黄にSEを直接接種し24時間後の生菌数は、SPF卵に比べワクチン接種鶏から得られた卵において有意に少なかった。したがって、卵黄内のSEの増殖が卵黄抗体により阻害される可能性が示唆された。
著者
山下 祐介
出版者
弘前大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究では「創発性」の概念をめぐって、次のような形でその明瞭化を試みた。まず理論研究として、社会学における「創発」概念の取り扱いについて、おもにG.H.Meadの理論に依拠しながら吟味を行った。人間的な意識発生のプロセスそのものに、そもそも創発性の契機が内存していること、またそうした個人の中からわき出てくる創発性が、社会の創発性にどのようにしてつながっていくのかを検討していった。またこうした理論的吟味と並行しながら、実態調査として、いくつかのネットワーク型組織を調査した。(1)長崎県雲仙普賢岳噴火災害・阪神淡路大震災のそれぞれの災害における災害ボランティアの活動から、非日常時のネットワーク組織を、(2)過疎地域・都市地域での地域づくりグループの活動から、日常時のネットワーク組織を、という形で、ネットワーク団体の形成・発展・解消の過程を比較検討していった。以上の研究を通じて、「創発性」概念が、社会を考察する上できわめて重要な位置を占めていることを確認した。と同時に、この「創発性」の社会学を、これまで社会学が主に手がけてきた「共同性」の社会学と接続していく必要であるとの感触もえた。とくに問題解決プロセスの中で、社会の「創発性」および「共同性」がいかに位置づけられるか、に注目すべきである。両概念の接続により、社会学の理論研究および実証研究のさらなる進展が見込まれるが、本研究ではこの点の指摘にとどまった。
著者
鈴木 範男 DAVID L. Gar GARBERS david L. GARBERS Davi
出版者
金沢大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

精子活性化ペプチド(SAP)は構造と活性の特異性から次ぎの5種類に分けられる。SAP-I Gly-Phe-Asp-Leu-Asn-Gly-Gly-Gly-Val-GlySAP-IIA Cys-Val-Thr-Gly-Ala-Pro-Gly-Cys-Val-Gly-Gly-Gly-Arg-Leu-NH_2SAP-IIB Lys-Leu-Cys-Pro-Gly-Gly-Asn-Cys-ValSAP-III Asp-Ser-Asp-Ser-Ala-Gln-Asn-Leu-Ile-GlySAP-IV Gly-Cys-Pro-Trp-Gly-Gly-Ala-Val-CysSAP-V Gly-Cys-Glu-Gly-Leu-Phe-His-Gly-Met-Gly-Asn-CysSAP-Iの場合SAP-Iとその誘導体はより大きな前駆体タンパク質として卵巣内の栄養細胞で合成され,processingを受け成熟卵母細胞の周囲のゼリー層付加されるものと考えられる。SAPが精子細胞膜上の特異的受容体に結合すると,細胞膜上のリン酸化型グアニル酸シクラーゼが付活化され,直ちに脱リン酸化され,不活性化される。この脱リン酸化に伴って膜結合性グアニル酸シクラーゼのSDS電気泳動上の見かけの分子量が低下する。バフンウニ精子の膜結合性グアニル酸シクラーゼは構成アミノ酸1125残基のタンパク質として合成されるものと考えられる。この酸素の成熟タンパク質のリン酸化型は131kDaで脱リン酸化型は128kDaである。リン酸化型グアニル酸シクラーゼは約24molのリン酸を含み,脱リン酸化型は約4molのリン酸を含む。これらのリン酸はホスフォセリンとして存在するものと考えられる。バフンウニ精巣からクローニングされたグアニル酸シクラーゼcDNAの塩基配列から予測されるタンパク質の一次構造の解析及び他の膜結合性グアニル酸シクラーゼの一次構造との類似性から,バフンウニ精子の膜結合性グアニル酸シクラーゼは単一の膜貫通領域で分子がほぼ等分の細胞外,細胞内領域に分けられ,細胞内領域にはキナーゼ様領域と触媒領域が存在するものと推定される。キナーゼ様領域には9残基のセリンが,触媒領域には15残基のセリンが存在する。グアニル酸シクラーゼの脱リン酸化,不活性化及びSDS電気泳動上の見かけの低分子化が連動した現象であることを着目し,プロテインホスファターゼの阻害剤存在下で精子ホモジェネートにSAP-Iを加え低分子化を指標として脱リン酸化(不活性化)に関与するプロテインホスファターゼの性質を検討した結果12μMのカリキュリンAが低分子化を約30%抑制し,かつグアニル酸シクラーゼ活性を高いレベルに維持する作用があることを見いだした。オカダ酸,ミクロシスチン-LRはSAP-Iによって誘起されるグアニル酸シクラーゼの低分子化及びそれに伴う不活性化には顕著な効果を示さなかった。酸素活性の測定及びSAP-I架橋実験の結果からグアニル酸シクラーゼ及びSAP-I結合タンパク質は精子尾部に局在していることが明かにされたが,精子尾部に存在するCa^<2+>非依存性プロテインホスファターゼは分子量の違いから3種類(250kDa,43kDa,30kDa),オカダ酸に対する感受性の違いから2種類存在することが本研究で明かにされたが,これだけでは上記のホモジェネートを用いた実験結果を説明することができないことから,グアニル酸シクラーゼの脱リン酸化を特異的に起こすプロテインホスファターゼの検索をするために基質となるグアニル酸シクラーゼ(部分精製の脱リン酸化型酵素)をcAMP依存性プロテインキナーゼの触媒サブユニットと[r-^<32>P]ATPによる再リン酸化を試みたが成功しなかった。膜結合性グアニル酸シクラーゼを特異的にリン酸化する精子細胞内の内在性キナーゼを検索する過程で,バフンウニ精子の1%CHAPS可溶化画分中にセリン残基が特異的にリン酸化される48kDaタンパク質を見いだした。[r-^<32>P]ATPでリン酸化される精子ホモジェネート中の48kDaタンパク質は反応液中に生理的濃度のcAMP,cGMPを加えることによって特異的に脱リン酸化された。精製の結果この48kDaタンパク室は等量の39kDaタンパク質と会合しており,native状態では400kDaの大きさのタンパク質として存在していることが明らかになった。48kDaタンパク質に対する抗体を作成し,これを用いて,λgt11-バフンウニ精巣cDNAライブラリーよりイムノスクリーニングした結果3.3kbのcDNAクローンが得られた。このcDANの塩基配列はマウス脳皮質に局在するDN38mRNAと60%のホモロジーがあった。
著者
大泰司 紀之 増田 隆一 中郡 翔太郎 須藤 健二 太子 夕佳
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的である琉球列島ジュゴン復元対策として得た結論は;(1)沖縄島に常住する3~4頭について、詳しく調査を行ない、その保全対策を充実させる。(2)フィリピンルソン島北部の沿岸と島嶼についてフィリピンと共同調査・共同保全を行い、増加個体が八重山諸島に分散してくるのを待つ。しかしそれらによる個体群回復や分布復元の可能性は乏しいと言わざるをえない。(3)マレーシアなどのジュゴンが数百頭レベルで常住している地域において、捕獲個体による人工繁殖を行う。その成功を待って、西表島に佐渡のトキの場合のようにジュゴン保護センターを設置し、増やした個体を適地を選んで放す。
著者
西村 直子 西條 辰義
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は,理論・実験の両側面から,自主流通米価格形成センター方式の入札市場における価格形成メカニズムの意味を解明し,コメの実勢需給をより反映できる代替市場制度を提案することを目指すものである。コメ市場は銘柄米ごとに,1人の売り手(農協)に多数の買い手(卸)が入札する,売り手独占体制である。また,買手と売り手ともに市場の常連である。参加者は互いの状況に関する豊富な情報を持っていると考えてよいため,オークション分析ではあまり用いられない完備情報ゲームとして分析するのが適当である。理論研究においては,コメ入札市場のゲームモデルを構築し,その均衡の特性を分析した結果,コメ価格設定ルールと上記情報環境の特殊性により,売り手独占市場にも関わらず,独占価格や競争均衡価格を含む多くのナッシュ均衡が存在することがわかった。さらに,その複数均衡から精緻化を経て抽出した均衡では,競争均衡に近い配分のみが達成されることがわかった。加えて,実際のコメ市場では,売り手の指値に上限を与えるルールがあるが,これはむしろ,売り手が将来の需要変化を懸念する場合には,指値設定を高止まりさせる誘引を与えることがわかった。以上の理論分析を基にデザインした実験を実施した結果,上記理論に整合的なデータが観察された。したがって,コメ入札市場現場では約定価格下落が懸念されているが,むしろこれは適正価格(=競争均衡価格)への収斂過程における下落傾向である可能性が強いことが判断できる。一方コメ入札市場との比較対象として第二価格入札市場を分析したが,完備情報下では通常の入札行動とは異なる行動が生じることに気づいた。これは参加者心理的な側面に由来するものと思われる。関連して,第二価格入札と競りとの同値性にも疑問が生じた。この点については今後の研究課題として継続していく予定である。2005年,実験経済学の世界組織ESAの公認を受けた初のコンファレンスを主催した。
著者
佐伯 久美子
出版者
独立行政法人国立国際医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ヒトES細胞において確立した独自の好中球分化誘導法を駆使してヒトiPS細胞からの血液細胞分化誘導を検討したところ、マクロファージ主体となってしまった。しかし、分化誘導初期には骨髄系の前駆細胞は存在し、これをマクロファージが貪食していると思われる所見を得た。このようなマクロファージによる血球貪食はヒトの疾患でも知られており、その培養系モデルとなる可能性を想定して分子機構の解析を試みた。I型インターフェロン(IFNα1、IFNα2、 IFNβ1)の発現をRT-PCR により解析したところ、ヒトES細胞では3株中1株のみで、ヒトi PS細胞では4株全てにおいて分化誘導に伴ってI型インターフェロンの発現が認められた。以上のように、ヒトiPS細胞からの血球分化においてI型インターフェロン産生が高頻度である傾向を認めた。しかしながら、ヒトiPS細胞の株数(さらには供給元)を増やし、培養条件を詳細に検討したところ、一部の細胞株において、低密度培養条件において好中球優位の分化が認められた。一方、ヒトES細胞でも細胞株数を増やして詳細に検討したところ、細胞株によってはマクロファージ優位の分化が認められた。以上より、ヒトiPS細胞における血球貪食による好中球分化不全には再現性が必ずしも無いことが明らかとなった。