著者
坪内 暁子 奈良 武司 丸井 英二 青木 孝
出版者
順天堂大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

新型インフルエンザ(H1N1)の発生・流行によって、「新型インフルエンザ」という名称は周知されたにも関わらずマスコミ報道等の影響で正しく理解されていない可能性が非常に高いと考えられたため、流行が収まるのを待って予備調査を実施した。その結果、リスク認知とリスク回避行動とが、リスクマネジメントの概念通りに正しくリンクしている勤労者(危機管理担当者)に対して、高齢者は自らの身体的リスクを認識した上で、新型インフルエンザ対策に関する情報収集等に強い関心を示し、マスコミや広報から得た知識を正しく認識できていない割合も他のグループより多いが、行動面で慎重でリスク回避の方向に進む傾向があることがわかった。その一方で、中学生他若者層は、知識吸収能力は高く対策についても正しく理解しているが、行動に関するリスクの認識が甘く、知識と行動とが合致せず危険性が高いことがわかった。H1N1型の国内発生・流行時の関西の高校生がカラオケ店に殺到した事件が裏付けとなる。中学生と、高校生・大学生を比較した場合、知識に関する設問でほとんど有意差がみられなかったため、調査モデル国の台湾では対象を中学生に絞った。台湾の中学生の行動は、日本の勤労者に近い行動をとること、講義や広報、マスコミ(一律の政府報道)に依存し、より慎重であることがわかった。また、全体的に、高病原性と低病原性のリスクを正しく理解していないことがわかった。以上から、リスク認知とリスク回避の関係は非常に密接であり、「感染症教育」の効果としての行動リスクの低減への期待値は非常に高いという結論を得た。
著者
土山 明 中野 司
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

本研究は、火山爆発の原因であるマグマ発泡現象のアナログ実験として含水珪酸塩ガラスの加熱発泡実験をおこない、高分解能X線CT装置によるマイクロトモグラフィーを用いた3次元構造の時間発展(4次元構造)の観察法と解析法を確立し、さらにこれにより発泡過程とそのメカニズムを理解しようとするものである。平成17年度に含水流紋岩質ガラス(黒曜石)を用いて確立した観察法・解析法を、本年度は含水玄武岩質ガラスに適用した。天然物には実験に適したサンプルがないので、サンプルは内熱式高圧炉で合成した。これをステンレス製の字具に固定し、一定温度(675,700℃)で一定時間(5〜20分)加熱後冷却しCT撮影をおこなうというサイクルを繰り返した。CT撮影はSPring-8のBL20B2においておこなった(25keV、画素サイズ:3.14μm1344x1344マトリクス)。これにより、従来知られていない発泡様式を発見した。玄武岩質ガラスではサンプルの壁などから不均一核形成が始まり、数100ミクロンの泡へと成長していく。やがてサンプル壁のある場所より、多数の微細な泡(1ミクロン程度)が発生し、この泡に富む部分がシャープな境界を持ちながらサンプル内部に向かって一定速度で進行し、やがて発泡は停止する。流紋岩質ガラスでは均一核形成・成長によってのみ発泡を続けたのと対照的である。多数の微細な泡の生成によって、効率的に水を系外に逃がすことができるので、非爆発的な噴火が予想される。実際の高温での減圧発泡においても、この発泡様式がおこるとすれば、玄武岩質マグマの非爆発的な噴火を、今回新しく発見した発泡様式で説明することができる。今後、さらなる超高分解能でのCT撮影や、条件を変えた実験、また天然の玄武岩の組織観察などにより、これを検証することが必要である。
著者
三浦 要一
出版者
高知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

明治30年の古社寺保存法の制定後は、特別保護建造物の資格あるものが定められ、保存修理事業が開始された。明治以降に解体修理が竣工した古社寺建造物は、建立当初の建築形式を解明するために、文献資料から検討を加えることが必要になる。本研究は四国地方の4つの寺院を事例に、文化財修理の方針とその内容を明らかにした。本研究は古社寺建造物の修理に関する文献研究の有用性を提示し、今後の基礎資料になるものである。
著者
福間 良明
出版者
立命館大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、戦後沖縄の総合雑誌を可能な限り洗い出し、そこにおける戦争観の変容や位相差を検証することを目的として、進めてきた。戦後沖縄の雑誌メディアについては、これまでに系統的な整理すらなされていなかった。戦後の沖縄では、「うるま春秋」(うるま新報社・1949年発刊)や「月刊タイムス」(沖縄タイムス社・1949年発刊)、「世論週報」(沖縄出版社・1951年発刊)、「月刊沖縄」(月刊沖縄社・1961年発刊)など、多くの政治雑誌・総合雑誌が存在した。日本本土から週刊誌や総合雑誌が流入するなかで、これらの多くは淘汰され、その言説布置やメディア特性については、これまで顧みられることはなかった。本研究では、これらのメディア史を解き明かしながら、そこにおける戦争観の位相差や変容について、考察を進めた。
著者
中井 淳一
出版者
埼玉大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

多くの動物は眠るが、睡眠の分子メカニズムはまだ良くわかっていない。この状況は、Hypocretin/Orexin(Hcrt)とその受容体が発見され大きく進展した。本研究は、ゼブラフィッシュを用いて動物の睡眠と覚醒の分子機構を明らかにすることを目的としている。そこで蛍光カルシウムプローブG-CaMPを神経細胞に発現させ神経細胞の機能とゼブラフィッシュの行動との関係を探ることを計画した。本研究において蛍光カルシウムプローブG-CaMP2を改良したG-CaMP-HSを新たに開発した。G-CaMP-HSはG-CaMP2と比較して高感度であるとともに、細胞内でのタンパク質の安定性が増しており、安静時の蛍光強度が高いという特徴を持つ。これに関連して、蛍光カルシウムプローブの性能向上に関する特許を申請した。次にG-CaMP-HSをGal4-UASの下流につないだコンストラクトを作成し、ゼブラフィッシュに導入することにより遺伝子改変ゼブラフィッシュを作成した。このゼブラフィッシュと運動ニューロン(Caudal primary neuron : CaPニューロン)にGal4を発現するゼブラフィッシュ(SAIGFF213A)とを掛け合わせることによりCaPニューロンにG-CaMP-HSを発現するゼブラフィッシュを作成した。CaPニューロンの活動をイメージングにより解析したところ、CaPニューロンのバースト発火に伴い、G-CaMP-HSの蛍光強度が変化することが観察された。この成果はProc Natl Acad Sci USAに報告した。ゼブラフィッシュの神経細胞からG-CaMP-HSを用いて神経活動をイメージングにて解析することが可能となったことにより、今後HcrtニューロンにG-CaMP-HSを発現させ解析することにより睡眠覚醒のメカニズムの解明が進むと考えられる。
著者
宮口 英夫
出版者
創価大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本年は、2008年に相模湾を直撃ならびに接近した台風13号(SINLAKU)について、台風接近時からの海洋環境と生物群集の動態を調査した。研究計画通りに試料採集を行うことができた台風13号(SINLAKU)について、台風接近時からの海洋環境と生物群集の動態を調査し、台風通過の生物生産に及ぼす影響を評価することを目的とした。台風最接近時には約100mm激しい豪雨が見られ、約10PSUの急激な塩分低下を引き起こした。栄養塩濃度は、台風通過直後に、本調査海域の同時期に見られる通常値に比べ、硝酸+亜硝酸は約3倍、燐酸は約3倍、珪酸は約7倍、増加した。台風に伴う豪雨-暴風によって、陸水の流入や海水の鉛直混合により栄養塩の供給が起こり、さらに、台風通過後5-7日後に、全栄養塩濃度の減少が見られ、植物プランクトン生産に栄養塩が使われたことが考えられた。クロロフィルα量は、台風通過直後は低い値を示していたが、3-5日後に、同時期の通常値に比べ約5倍の、最大値12mg m^<-3>を示した。クロロフィルα量の変動には10-180μmの大型植物プランクトンの分画が寄与していた。植物プランクトン群集構造に関しては、台風通過前は珪藻Skeletonema costatumが優占し、台風通過直後(8月19-20日)に珪藻S. costatum、Pseudo-nitzschia multistriata、Thalasionema nitzchioides、Leptocylindrus minimus、渦鞭毛藻Protoperidinium minutum、Prorocentrum gracileなど比較的多くの種で大部分を占めた。第1ピーク時にS. costatumが優占した後、S. costatumの減少に伴い、Chaetoceros tenuissimusが優占した。第2ピーク以降はLeptocylindrus danicusが優占した。以上のように、台風通過後の群集構造にはS. costatum、C. tenuissimus、L. danicusが大きく寄与しており、これら3種による優占種の変遷がみられた。MDSプロットによる解析の結果、A(8月16-18日;台風通過前、8月25-27日;最大細胞密度時)、B(8月19,20日;台風通過直後)、C(8月21日;低細胞密度1)、D(8月28日;低細胞密度2)、E(8月29-30日;細胞密度第2ピーク時)に分類された。台風通過に伴う植物プランクトン群集構造は、A→B→C→D→A→Eと変遷していったと考えられた。台風通過により、植物プランクトンの群集構造は、一時的に激変したが、約5日後には台風通過前の群集構造に戻った。過去観測した台風の結果と同様の傾向が見られた。
著者
真木 太一 善 功企 守田 治 新野 宏 前田 潤滋 野村 卓史
出版者
九州大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2006

台風0613号は9月10日にフィリピン沖で発生し、石垣島に接近した後、東シナ海を北東進して佐世保市付近に上陸し、大きい被害を与えて玄界灘から日本海に抜けた。風速は石垣島で69.9m/s、長崎県で50m/sを越えた。佐賀県唐津市の大雨は、台風が2000kmも離れていた時の前線刺激に起因する。豪雨と土砂災害の特徴が解明された。竜巻が宮崎県や大分県で5個発生し、特に延岡市では、列車の転覆被害があり、3名の死者が発生した。佐賀・長崎県を中心に潮風害が非常に激しく、米の作況指数が佐賀地域で42であり、潮風害と海岸からの距離との関連性が調査され、指数関数的に減少し15kmまで及んだ。台風時の降雨が少なく、長崎県での潮風害樹木の特徴が塩分付着との関連性から評価された。潮風害と人工衛星リモートセンシング画像評価による植生指数・健全度(NDVI)の低下との関連性が解明された。潮風害に強い防風林樹種が選定された。延岡市の竜巻はF2と評価され、長さ7.5km、最大幅200mであった。竜巻の被害特性は、屋根瓦などの二次的飛散物による増加があり、市内・住宅地での被害が大きく、突風による被害増大の関連性が評価された。また、屋根のケバラ付近の固定強度に問題があることが判った。アンテナ支線の避雷コイルの破損状況からの竜巻の特徴が解明された。宮崎県の竜巻発生頻度の多さと積乱雲発生との関連性やレインバンド中の積乱雲のモデルによるシミュレーションが評価された。竜巻発生への地形の影響の関与が調査され、半島や島の影響が空気力学的に裏付けられた。長崎県での停電、長崎・北九州の海上空港の台風害の特徴が裏付けられた。台風による高齢者や障害者の不便と支援の在り方の対応特性が提示された。台風と文教施設、農業用施設ハウスの被害から被害発生要因と対策が考察された。暴風・竜巻等によるリスク低減対策がアンケート調査や建築物の被害評価基準の問題点が指摘された。
著者
藤部 文昭 高橋 清利 釜堀 弘隆 石原 幸司 鬼頭 昭雄 上口 賢治 松本 淳 高橋 日出男 沖 大幹
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

970年代まで行われていた区内観測による26都府県の日降水量データをディジタル化し, 高分解能かつ長期間の降水量データセットを作成した。このデータや既存の気象データを利用して著しい降水や高低温・強風の長期変化を解析し, その地域的・季節的特性等を見出した。また, 極値統計手法を様々な角度から検討し, 各方法の得失を見出した。さらに, 全球数値モデルを用いて, 降水極端現象の再現性に対するモデルの水平解像度の影響を調べ, 今後モデルと観測データを比較するための統計的手法の検討を行った。
著者
石原 孟 山口 敦 藤野 陽三
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

浮体式洋上風力発電システムを対象に、浮体と風車の連成振動を考慮した応答予測モデルを開発するとともに浮体の係留を含む構造物の大変形を考慮できる新しい解析モデルを提案し、風力発電設備用浮体の波浪応答予測システムを開発した。また、風車の回転と制御を考慮した風車応答予測システムを開発し、浮体の波浪予測モデルと合併させることにより、浮体式洋上風力発電設備の応答を求めることを可能にした。さらに、浮体式洋上風力発電所設計のために日本全国任意地点において設計波高および設計風速を求める手法を開発した。
著者
津田 誠
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

イネにおける白穂発生は,非生物的ストレスによる減収要因である.白穂発生程度の違いを明らかにするために,新しい遠赤外線乾燥法を用いて穂に含まれる水分の構成を調べた.穂の水分には蒸発しやすい部分(成分1),やや蒸発しやすい部分(成分2)があった.成分2は生育と気象変化に対して安定していたが,成分1は不安定であった.二つの成分が占める割合は品種で異なり,成分1が多い品種ほど塩害による白穂発生が大きい傾向があった.
著者
池田 栄史 根元 謙次 佐伯 弘次 中島 達也 後藤 雅彦
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2006

本研究では伊万里湾全域にわたる物理学的海底音波探査を実施し、詳細海底地形図および地質図を作成した。その上で、海底面および海底堆積層中で検出した音波探査反応体について、9つに類型化し、水中考古学的手法による確認調査を実施した。その結果、類型の一つから元寇沈船と思われる船体の一部と大量の磚を検出した。この調査により、元寇関連遺跡・遺物の把握と解明については、物理学的音波探査手法と水中考古学的手法の融合が有効であることを確認するとともに、これを今後の元寇沈船を含めた海底遺跡に対する新たな調査研究方法として提示するに至った。
著者
岡本 覚
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では従来までの漏水量の把握に留まらず,これまでに明らかにされてこなかった振動が及ぼす漏水の影響を調べることを目的として,漏水現象の発生機構の究明及び試験方法の確立を目指し,加速度センサとビデオカメラによる計測を行った.実際の暴風の風速に相当する最大風速約40m/sの風洞実験装置と2種類の散水装置及び実物かわらを使用して実験を行った.
著者
蟹江 憲史 WEBERSIK Christian
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、地球環境の変化が人間の安全保障に及ぼす影響についての調査である。第一に、干ばつが紛争に及ぼす影響に焦点を当て、アフリカにおける干ばつの政治的暴力に対する影響を調査した。アフリカの干ばつは、その多くの国々が天水農業に依存していることから、大幅な収入減少の原因となっている。今回の研究で、主に3つの人為的な気候変動要因が人間と国際間の安全を脅かしていることがわかった。すなわち、資源の枯渇、自然災害、および人間の移動である。本研究分担者は、この研究成果をアメリカ国際政治学会(ISA)年次総会にて発表し、現在「気候変動と安全保障」という題名の書籍の原稿を執筆中である。書籍ではまた気候変動を緩和するためによく計画された政策がいかに予期せぬ反対の結果を招いているかについても検証している。つまり、広域に渡る耕作地および森林地帯が太陽エネルギー、風力、バイオ燃料などの再生可能エネルギーの広域利用により併合されてしまうことで、全世界的な農業生産量を落ち込ませ、発展途上の経済社会にある最低限のサブシステンスレベルで生活する貧しい人々が購入できないほどの食物の価格上昇を招いているのである。この他、当フェローシップ中に、主にアジア地域で将来増加する熱帯低気圧への気候変動の影響に関する研究も開始した。本研究分担者はこれに関して、各種国際会議で発表するとともに、識者を招聘した日本での発表会などを主催した。この研究は、本研究分担者が既に行っている、ハイチにおける自然災害の長期的開発への影響に関する研究とも関連している。また、国連大学高等研究所のポスト・ドクトラル・フェロー二名と共同で、森林経営と気候変動に関する国連大学政策リポート中の一章を出版し、また2008年ポーランド・ポズナンで開催された気候会議でのあるサイド・イベントにて発表した。
著者
岩田 正孝
出版者
東京工業大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

研究目的:近年、世界的に異常気象と形容され多発している大規模化する台風、竜巻、暴風雨等の中でも"突風"災害も顕著な傾向にある。本報では、地表面近傍で発生する突風現象は急速に発達する積乱雲が要因との推測より、低コストを前提に"空を見上げる"程度での感覚で簡便な実写記録ができる魚眼撮影系によるPIV(Particle Image Verocimetry)解析を用いることにより、地上に影響を与える"雲の可視化抽出"を図りこの検出精度向上により防災に役立たせることを目的としている。なお実施形態例では現用のアメダス観測網に付帯させての"全天視野雲態挙動解析による突風検知システム"の構築提案も念頭にある。研究方法:雲態挙動の解析では鉛直方向に固定した全周魚眼(180°⊥360°)撮影系でインターバル撮影したデータをパソコンに収録後、PIV解析により各コマ間に記録された逐次移動した"雲位置の差分情報"より、全体雲の流線可視化解析を行う。この可視化により強風時での雲態の移動方向及び速度、竜巻現象があればその渦巻き度などを危険因子として求める。研究成果:魚眼映像による雲態挙動PIV可視化で得た知見を示す。○PIV解析に用いる被写体(雲状態)の解析に用いられる撮影コマ速度は、コマ間の相互相関が保持される範囲のおいて5sec程度の遅速でのインターバル撮影でも解析は可である。これにより、高解像度撮影を採用しても全体の撮影データ量の低減化が図られる。○全周魚眼撮影系では特有の誇張感はあるものの連続性のある全天映像が得られ、撮影時に写し込まれた太陽の輝点軌跡やそれによるハレーションはさほど解析には影響を受けない。○本報では一眼魚眼撮影の為、雲の高度位置情報が得られないために、三次元的には雲態挙動として上昇(多分、成長中と考える)なのか下降(多分、消滅中と考える)かの判別が困難な事を前提に、大雑把だが雲態の移動方位、速度の可視化は得られた。
著者
根本 清次 古家 明子
出版者
宮崎大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

経管栄養患者はその療養上の方針から自ら味わうことなく食事を行うが、食に対する拒絶感、絶望感を抱きやすく、食の満足とはほど遠い位置にある。本研究では患者と共に意見を交えながら食事に対するニードを調査し、残存する機能を利用して食のQOLを向上する方法を開発してきた。平成15年度には視覚に訴える目的で写真製の食事カタログを作成し、同時に口腔内に用いて食事の匂いと味覚を与える食感ピースの原型を開発した。食感ピースは燕下することなく破棄されるものであり、味覚を付与するものである。材料について選定した結果、発泡マンナンが、これに適していることが明らかになった。すなわち、万が一の燕下の際でも無毒であること。燕下しにくい素材であること。多孔質であり、通気性を有することなどが評価の要因となった。平成17年度には視覚や味覚的に食感を付与する"場"として経管栄養患者のための食事会を企画し試行した。この際の患者インタビューの結果より、食感ピースについての微調整をおこない、大きさ、堅さ、味の濃さなどを調整する工夫をおこなった。さらに患者の意見により嗅覚成分について着目する必要が明らかになった。これは流動性を有するミキサー食が食材の混合であるため独特の臭気を有し、不快感につながるとの意見による。したがって香料による香りの調整が必要であることが明らかになった。嗅覚刺激の有用性については食の観点だけでなく、気分や感覚についての有用性が次第に明確化されつつあり、食のにおいと環境臭の関係についても今後明らかにしたい。現在まで食事会を行ってきた患者のアンケートの精細な分析によれば、経管栄養単独の場合と比較して、食満足度の向上を示す結果が示されたものの、経管栄養時の不快感、不安感には効果を有しないことが判明した。これらの結果については順次公表予定である。
著者
猿渡 亜由未 (2008-2009) 猿渡 亜由来 (2007)
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

平成20年度までの研究により,水塊ジェットや実験室スケールの砕波ジェットが着水したときに放出される二次ジェットが水面下の三次元渦構造との相互作用を経由してフィンガー形状及び飛沫へと分裂するメカニズムについて明らかにしたと共に,砕波ジェットのボイド率(体積率)分布を,ジェットの着水条件から予測する為のモデルを構築した.このジェットのボイド率はジェット-壁体衝突時の圧力応答を決定する重要なファクターとなる.フィンガーのサイズや飛沫の生成量等を決定する砕波ジェットの着水条件は,沿岸域における波浪条件により規定され,生成した飛沫の陸域への飛散量や沿岸域における波浪条件は海上の気象条件に依存する.そこで本年度我々は,メソスケール数値気象モデルによる沿岸域気象場の再現を行うと共に,その時の砕波飛沫の生成,輸送,拡散過程の数値計算法の開発を行った.数値気象モデルとして用いたのは近年よく用いられているWeather Research and Forecasting(WRF)を用いた.本モデルにより大量の砕波飛沫が生成された2009年台風18号通過時の気象場の追算を行い,計算結果の沿岸域海上気象場(気圧,風速,風向等)を観測結果と比較し,その再現性を確認した.今後,気象モデルを波浪推算モデルとリンクさせれば,荒天時の波浪場の再現を行う事もできる.また,飛沫の飛散過程は,飛沫濃度の移流拡散方程式を解く事により求めた.沿岸域の飛沫濃度分布を現地観測した既往研究の結果と数値計算結果とを比較し,濃度分布の再現性を確認した.
著者
吉田 重光 石崎 明 土門 卓文 足利 雄一 井上 貴一朗 黒嶋 伸一郎 沢 禎彦
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

今回の研究では、口腔内および口腔以外のリンパ管を介した免疫機構を明らかにするため、免疫で重要な役割を果たす複数のタンパク質の研究を行いました。その結果、口腔内では部位によりリンパ管の果たす役割が異なる可能性を、また口腔以外では、いくつかのタンパク質が相互連携していることを明らかにしました。以上から、全身のリンパ管は、物質輸送だけではなく免疫機構にも関与することが分かりました。
著者
篠田 壽 竹山 禎章 荘司 佳奈子 島内 英俊
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

強力な骨吸収抑制薬として知られる一連のビスホスホネート(BP、BPs)系化合物の中から8種のBPsを選び、歯周病治療薬として、どのBPが最も高い可能性を有するかについて種々の検討を行った。その結果、(4-メチルチオフェニル)チオメタンビスホスホネート(TRK-530)に高い可能性が見出されたので、このBPを中心にその薬理作用、作用機序、安全性について検討し、概ね以下の結論を得た。1.TRK-530は、LPS, PGE2,IL-1等による骨吸収の促進を、用量依存的に抑制した。2.現在、骨粗髪症治療薬あるいは高カルシウム血症治療薬として最も広く使用されている窒素含有BPs(N-BPs)は、LPS刺激によるPGE2産生の増加を用量依存的に増強するのに対して、TRK-530はこれを用量依存的に抑制した(マウス頭蓋冠骨器官培養系)。その機序は、抗酸化作用に基づくCOX-2の発現抑制に基づくものと推測された。3.N-BPsは、骨芽細胞系のセルラインにおいて、アルカリホスフアターゼ活性を抑制するのに対して、TRK-30は、用量依存的に増加させた。4.ラットやウサギの歯槽骨に局所投与したTRK-530は、投与部位の骨密度と骨量を著明に上昇させた。5.全身的あるいは局所的に投与したTRK-530は、ラットの実験的歯周炎モデルにおいて用量依存的に歯槽骨の吸収を抑制し、歯周組織の破壊を抑制した。6.BPsの副作用の一つとして報告されている抜歯後の骨壊死に関して、ラット抜歯窩の修復に及ぼす効果を検討した。N-BPsの一つであるゾレドロネートの大量全身投与は、抜歯窩の修復を遅らせるのに対して、TRK-530にはそのような作用は認められず、むしろ修復を促進する傾向が見られた。以上、本研究により、TRK-530は、多くのBPsの中でも歯周病治療薬としての比較的優れた性質を有することが示唆された。
著者
小野寺 昇
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

成長期における不定愁訴の発現と運動の関連性について横断的・縦断的に研究した。横断的研究の対象者は741名、縦断的研究の対象者は41名であった。以下の成果を得た。身体活動量の多い・少ないが不定愁訴発現に関連した。生活習慣が不定愁訴発現に関連した。朝食摂取が不定愁訴発現に関連した。肥満と動脈の硬さが関連した。中学生男子の身長伸び率と動脈の硬さが関連した。横断的研究と縦断的研究の評価が一致した。
著者
栗田 英幸
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

特に1970年代以降、途上国において、天然資源の豊かさと社会的繁栄との間に負の相関関係が顕著に見られるようになってきている。この現象は、「資源の呪い」と呼ばれ、さまざまな社会科学の分野において、メカニズムと処方箋の積極的な解明努力が行われてきた。その結果、「資源の呪い」研究は、不安定な資源収入に大きく規定されたマクロ経済管理の失敗へと収斂してきている。「資源の呪い」現象が、マクロ経済管理の困難さ故に民主制度の軽視と汚職を生じさせ、結果として「呪い」現象を生じさせているというのである。しかし、資源諸国において民主制度を変質させ、汚職を一般化している要因は、マクロ管理の失敗のみではない。ミクロから見るならば、資源開発という膨大な被影響住民の意思の無視を伴わざるを得ない特徴が、民主制度の進展を妨げ、変質させる、もうひとつの大きな要因なのである。本研究は、フィリピンの鉱山、ダム、石炭火力発電所、灌漑に関する開発プロジェクトの事例を整理し、大規模資源開発が合意形成の困難さ故に民主制度を変質させていることを、論理的およびケーススタディーの積み上げから説明した上で、NGOの近年のグローカルに張り巡らされたネットワークを通した活動から得られるようになってきた民主制度変質修正に関する成果を通して、「資源の呪い」克服の処方箋として、地域住民を起点とし、NGOのネットワークを媒介として多国籍企業本国や消費国の市民とつながり、民主主義や環境、人権を正当化の根拠として機能するグローカルネットワークが必要であることを明らかにした。