著者
諸岡 篤 長尾 信 安永 正 西牧 克洋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MR, 磁気記録 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.124, pp.1-4, 2008-07-03

HDDの高記録密度化に伴うサーボ書き込み時間の増大を避けるため、磁気転写による一括記録が提案され、その実用化が期待されている。本件では垂直媒体に対する磁気転写方法の一つである'Bit printing(BP)'について、短ビット転写特性と将来性を検討した。本転写方法では、70nmの短ビット長においてもヘッド記録に近しい再生波形で、尚且つ同等の出力で記録可能でき、スペーシング損失は80nmでも8dBと小さく、ヘッド記録の際に発生する書き繋ぎも発生しないことを確認した。また、加えて媒体Hc付近のHaで出力が最大となることを示した。これらのことに加えて、原理的に印加磁界強度の制限を受けないBPは、高Hc媒体における短ビット記録で有利と考えられる。
著者
北川 治男
出版者
麗澤大学
雑誌
麗澤学際ジャーナル (ISSN:09196714)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.A15-A25, 1997

人間は不可避的に老い、そして死ぬ存在である。しかし人間が人間たるゆえんは、掛け替えのない自己自身や他者の生命の減衰と亡減を強く意識し、自覚する存在であるところにある。老年期とは、各人の人生のあらゆる側面において「縮減(リダクション)」が迫られる時期である。縮減とは、身体的諸機能が衰えること、退職、社会的活動や影響力の減少、配偶者との死別などを含む。老年期を迎えるに当たって、我々は「縮減の哲学」をもつことが必要となる。リダクションは、縮小、減少、減力などを意味する言葉で、生産、製造、産出などを意味するプロダクションとは対をなし、その対局に位置する言葉である。老年期を迎えるとき、我々は、生命の発展を期し事物の創造に携わる「生産(プロダクション)」という視点で人生の意味を捉えてきたそれまでの生き方から、かげりゆく生命力や影響力に直面して「縮減(リダクション)」という視点で自己の人生の意味を捉え直し、自己の人生哲学を再構成していくことが迫られるのである。老年期は、縮減における、縮減を通じての「自己成全(セルフ・フルフィルメント)」の時期である。それは生の充実や発展ではなく、生の全局面における縮減を前提にして、自分なりのまとまりのある人生を築き上げていく時期である。我々は老年期において、自己の縮減という自己の有限性の自覚を介して生き方の機軸の転換が求められる。それは同時に、人生の意味の深化でもある。老年期は、より深いところで自己の人生の意味を受け止めていくことのできる時期でもある。老年期には「生産(プロダクション)の哲学」から「縮減(リダクション)の哲学」への転換が求められるが、それは今日の限りない生産と消費の循環という高度産業社会の価値観や信念体系と真っ向から対立するものである。老年期に求められる「縮減の哲学」は、現代社会の哲学と全く相反するものになっているので、現代に生きる我々は、老いと死を受容することが本当に難しくなっている。だからこそ老いと死の受容の問題を生涯学習の中核的な課題に据え直すことは、高度産業社会の価値観や信念体系に基本的な反省を促すうえで必須の課題でもある。今日のように困難になった老いと死の受容のためには、介添えが必要である。老いと死の受容は、老いつつある人・死にゆく人と、当人を取り巻く近しい人々の間に、揺るぎない確固とした信頼関係が成り立っていなければ達成できない。また老いと死の受容を試み、受容にチャレンジする人の真摯な企て・生き方は、身近に居る後続世代の人々に深い形成作用を及ぼす。人間の生を、出生から死にいたるまでのライフ・サイクル全体から捉えれば、「発達(ディベロプメント)」の彼方に横たわる縮減を視野に入れた人間形成論が必要になってくる。この新たな人間形成論は、子供と大人の発達や異世代間の相互規制をも含む人間形成だけではなく、人間の生の必然的契機である縮減を受容することによる自己成全までを考察の対象とするものである。このような人間形成論に基づけば、若い世代も老年世代も、老いと死という人生に不可避の事態をいかに受容していくのかが、生涯学習の必然的な課題となるのである。
著者
佐々木 惠雲
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.232-233, 2005-03-01

日本仏教は「葬式仏教」と化していると批判されて久しい.しかし最近,一般の人々の間で「葬式仏教」のイメージと葬儀や中陰,年忌法要のもつ重要性が混同されているように感じられる.確かに,いわゆる「葬式仏教」は仏教の本質とはまったくかけ離れたもので,仏教の教えそのものを人々に伝えることが大切であることはいうまでもない.しかし葬儀や法要を単なる儀式ととらえ,意味がないと捨て去るのではなく,これらのもつ新たな可能性や重要性を見直す時期に来ているのではないだろうか.最近,グリーフケアが世界中で注目されている.グリーフとは,愛する人や近しい間柄の人との死別に対する反応である.しばしば悲しみのあまり,不眠や食欲不振,不安感などの症状が現れることもあるが,この反応は誰にでも起こりうる正常な反応で,普通は自然に消滅していくものである.ところが長期間経過しても悲しみから抜け出せずうつ病になる場合や,喪失直後はそれほど深いグリーフを示さず,何年か経てうつ病を発症することもある.
著者
諸岡 篤 長尾 信 安永 正 西牧 克洋
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.32, no.28, pp.1-4, 2008-07-10

HDDの高記録密度化に伴うサーボ書き込み時間の増大を避けるため、磁気転写による一括記録が提案され、その実用化が期待されている。本件では垂直媒体に対する磁気転写方法の一つである'Bit printing(BP)'について、短ビット転写特性と将来性を検討した。本転写方法では、70nmの短ビット長においてもヘッド記録に近しい再生波形で、尚且つ同等の出力で記録可能でき、スペーシング損失は80nmでも8dBと小さく、ヘッド記録の際に発生する書き繋ぎも発生しないことを確認した。また、加えて媒体Hc付近のHaで出力が最大となることを示した。これらのことに加えて、原理的に印加磁界強度の制限を受けないBPは、高Hc媒体における短ビット記録で有利と考えられる。
著者
大畠 雅之 田中 賢治 中村 昭博
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.313-317, 2004-12

漏斗胸に対する胸骨翻転術,胸骨拳上術に変わる治療として2001年よりNuss法を行っている. Nuss法は金属プレートにより変形胸骨を表面より支える方法で現在まで12例に施行した. 8例にステンレス鋼を4例にチタン合金のプレートを使用した. 手術時間は48分から4時間11分で平均1時間47分であった. 出血量は前例20g以下であった. 術後の鎮痛として10例に硬膜外麻酔を用いた. 術後合併症が2例に発生し,1例は皮下気腫,他の1例は術後金属プレートの偏位のための金属プレートの抜去術が行われた. Nuss法後2年が経過した1例に金属プレートの抜去術が行われたが,胸郭の変形,再陥凹を認めていない. 多くの患児とその家族は術後の結果に非常に満足しているが,成長過程にある小児の場合注意深い経過観察が重要であると思われる.
著者
重松 峻夫 石沢 正一 森川 幸雄 倉垣 匡徳
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.5-15, 1965-01-20

九州の四つの大手炭坑と137の中小炭坑をそれぞれ合して,その従業員及び扶養家族の1961年度における生命表を,社会保険,労災保険の資料により作製した。得られた平均余命・生存率・その他の生命表指数を検討し,次のような結果を得た。 1) 大手炭坑の従業員ならびにその家族の生命表からみた健康度は,全国平均よりも遙かに優れていた。 2) 中小炭坑の従業員並びにその家族の健康度は,全国平均より優れているが,大手炭坑よりも劣っていた。 3) 大手炭坑の20∼54才の従業員の健康度は,同年令階級の全国平均よりも非常に優れているが,中小企業では逆に著しく劣っていた。 4) 55才における平均余命は,中小炭坑の従業員がもっとも大であって,全国平均のみならず,大手炭坑よりも優れていた。 5) 大手炭坑の男の従業員ならびにその家族は,55&Sim;60才の年令階級を除き,他のすべての年令階級において,全国平均より健康度において優れていた。55∼60才の年令階級においては,大手炭坑の男は全国平均より劣っていた。 6) 大手炭坑について調べたところでは,坑内労働者およびその家族の健康度は,坑外労働者およびその家族よりもかなり劣っていた。家族を除き労働者のみを比較しても,坑内労働者は坑外労働者に比し劣っていた。ただしこの坑内・坑外の差は,過去に比し小さくなったと考えられる。
著者
伊藤 榮子
出版者
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.11-21, 2005-03-15

本研究は、幼少期から学童中期までの学習経験が、その後の成長にもたらす影響を知るため、家庭・学校・社会の生活区分の調査項目、現在の人格的特性の自己評価項目を135人の看護短大生を対象に調査した。結果の分析は「はい」70%以上の集団と「いいえ」50%以上の集団に分けて行った。両集団に統計学的に有意差が認められたのは家庭生活であり、学校・社会生活には両集団に鮮明な差はなかった。その結果、以下のことが明確になった。 1.「はい」の集団の家族は、家庭内の規則遵守・習慣形成などで厳しい。忍耐や知的抑制、自己抑制への関心が高い。社会的な伝達機能の育成・知的能力への関心も高く、希望と上昇志向も同様である。2.「いいえ」の集団は「物事の判断は直感に頼る方」であり、感情表出もしないで抑えてしまう可能性がある。この集団の家族は「応答性の質」と「発達の臨界期」を無視する可能性がある。
著者
塚田 和美 伊藤 順一郎 大島 巌 鈴木 丈
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.67-73, 2000-04-01

心理教育が精神分裂病者の家族の感情表出(EE)を低下させ,再発を予防することが,欧米各国で報告されている。我が国の現状に即した心理教育が,同様の効果を持つかどうかを検証することは有意義だと思われる。そこで国府台病院に入院した85例の精神分裂病者とその家族を無作為に介入群と対照群に振り分け,心理教育の効果を検定した。すべての重要な家族員は入院直後,退院直後及び退院9ヶ月後にEEを測定され,介入群の家族は毎月1回,計10回の心理教育を受けた。その結果,介入群の退院後9ヶ月までの再発率は,対照群に比して有意に低下した。また,再発しやすいハイリスクグループである高EEのみの検定でも,同様の結果となった。一方,EEの下位尺度である批判的言辞(CCs)と情緒的巻き込まれすぎ(EOI)については,高CCsが両群とも時間の経過とともに有意に低下したにも関わらず,高EOIは介入を受けなければ低下しないことが明らかになった。これにより,国府台モデルの心理教育はEEの低下と再発予防に有効であることが証明された。
著者
金谷 さとみ
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.285-287, 2005-06-20

社会情勢と臨床教育 地域で暮らす要介護高齢者, 障害者およびその家族は保健, 医療, 福祉にまたがるサービスニーズを持っており, 地域での関係機関, 職種間の連携は非常に重要なものとなる。介護保険制度の導入で要介護(支援)高齢者におけるものはかなり整備されたが, 介護保険対象外の障害者においても同様の整備がすすんでいる。現在, 保健, 医療, 福祉の方向性は, 入院期間の短縮と在宅ケアの推進へ, そして中央機関から地方機関へと大きく流れを変え, 理学療法は理学療法士の数が圧倒的に少ない現状と, 増加を見込まれる将来を踏まえ, 前述のような社会変化とともに, その役割も少なからず変化していくものと考えられる(図1)。生活支援系での理学療法は, 医療施設で一時的に提供される機能回復とは異なり, 長期的な経過の中で提供される機能回復, 機能維持(または低下の予防), 機能低下への適切な対応と捉えることができる。そして, その目的は対象者の生活全体を支援し, (本人の望む)社会参加や社会活動を促すことにあり, つまり, それは保健, 医療, 福祉のみならず, 教育, 雇用, 都市計画などを包括するノーマライゼーション(normalization)を目的とする考え方に到達する。
著者
下山 節子 水町 淑美 平川 オリエ 田中 利恵
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学intramural research report (ISSN:13478877)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.159-167, 2005-03-01

腹膜透析および血液透析者の家族が抱える健康問題を比較し、透析者家族のQOL向上を目指した看護援助の課題を明らかにすることを目的として研究を行った。対象は、腹膜透析者の家族22名と血液透析者の家族43名。健康関連QOL尺度SF-36日本語版1.2による質問紙調査を実施した。調査期間は、2002年3月(腹膜透析者の家族)と2003年9月(血液透析者の家族)であった。腹膜透析の家族と血液透析者の家族のQOLを比較した結果、腹膜透析者の家族は、精神的負担感が強いことが明らかとなった。特に、精神的健康感が低かったのは、腹膜透析者の家族の年齢60歳以上、女性、家族自身が病気をもっている、透析歴5年未満の家族であった。週3回外来通院する血液透析とは異なり、腹膜透析が在宅療養であることも家族の精神的負担を強くしていると考えられる。腹膜透析者の家族がもつ精神的健康問題については、家族に対するカウンセリングや家庭訪問など積極的な介入の必要性が示唆された。
著者
石井 京子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.186-194, 1997-10-30

高齢者の老人病院への入院により, 家族がその後の高齢者介護に対しどのような意識を持つのかを明らかにすることを目的に, 家族に郵送質問紙調査と医療者による患者実態調査を行った。さらに, 同対象の2年後の追跡調査を行い, 実際の退院に関与した要因の分析を行った。分析は老人病院に入院中の高齢者の家族のうち, 家族調査と医療者側の患者実態調査が揃っている561名について行った。結果は次のとおりである。高齢者の平均年齢は79.0歳で, 75歳以上では女性が多い。入院中の家族は37.8%が高齢者の退院後の生活場所として家庭を考えているが, 医師・看護婦の在宅可能者の判断と一致しなかった。家族の家庭意向に影響する要因は今回以前の入院経験と入院期間, 住居に段差問題がない, 福祉サービスの利用経験, 今回の入院期間の長さ, 現在の痴果度, 家族の面会頻度などである。2年後の追跡調査の結果, 自宅への退院は5.7%であった。退院に関与する要因は入院期問が6ケ月以内である, 現在の痴呆が軽度, 入院時の家族の意向が在宅介護, 医師・看護婦が在宅可能の判断などであった。このように入院中の在宅介護意向と実際の退院へ影響する要因は類似している。今後は在宅介護の意向を持っている家族が, 入院期間が長期になるとその意欲を失っていくことを防ぐために, 家族への頻繁な面接や退院に向けての家屋の改造などの専門的援助が, 入院時から継続して行われることの必要性が明らかになった。
著者
瀬井 房子
出版者
筑波大学
雑誌
筑波フォーラム (ISSN:03851850)
巻号頁・発行日
no.62, pp.10-14, 2002-06

私はつくば市の隣伊奈町に16年前開業している一介の助産婦です。この16年の間に2000人以上の新しい命との出会いがありました。16年前の思い出を語るつもりではありませんが、私共の家族は夫の勤務先であるインドネシアに双子の乳飲み子と …
著者
梶本 五郎
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.387-391, 2000-08-20

本学学生の自宅生306名と単身生活生142名について,揚げ物と妙め物の回数,さし油の有無,使用後のフライ油の保存方法,廃棄までの使用回数,廃棄の目安,廃食油の処理法,捨て方などについてアンケート調査を行い,既報の調査結果と比較検討した。 1.自宅生と単身生活生の割合は68および32%で,自宅生の家族構成では4人家族が最も多く,ついで,5人,3人,6人の順であった。前回(1969年)調査に比べ,6人家族の割合の減少と,8人以上の家族はなく,核家族化,少子化傾向があらわれている。 2.揚げ物を行う回数は,自宅生の家庭で週1回が最も多く,ついで,2回であった。家族数が多くなるほど揚げ物を行う割合は高い。単身生活生は全く揚げ物をしない者が半数を占め,行っても月1回程度であった。 3.さし油を行う割合は自宅生と単身生活生で75%および68%で,前回の調査結果の60%よりやや高い傾向にあった。 4.使用後のフライ油は瓶,缶に移し保存するが60%で,40%はフライ鋼に入ったままの保存であった。 5.廃棄するまでのフライ油の使用回数は,自宅生の家庭で1〜2回が40%,単身生活生で50%を占め,4回までで廃棄する割合は両者ともに90%であった。 6.廃棄の目安は,フライ油の色で判断する割合が最も高く,ついで,使用回数であった。 7.廃食油として出されたフライ油の処理は,紙,布にしみ込ませて捨てる方法と市販の凝固剤で固めて捨てる方法が最も多く,両者で75%を占めていた。一方,廃食油を出さない割合は4%,生活排水に流す割合は自宅生の家庭では2%と少ないが,単身生活生の1割は生活排水に流していた。
著者
大嶋 一泰
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.25-30, 1997-09-08

患者が予期に反して虚脱に陥り、心肺機能を停止した場合には、医師は原則として直ちに蘇生術を施し、患者の救命をはかるべきである。しかし、救命が成功しない場合や、一旦救命が成功しても直ぐに虚脱に陥り、心肺機能の停止を繰り返して死の転帰を取る場合もある。これらの場合には、心肺蘇生術の実施は医学的に無益であると考えられるばかりでなく、患者に耐え難い負担をかけ有害であるとさえ言える。そこで、事前にこれまでの経緯や患者の症状などから、患者がやがて虚脱に陥り、心肺機能を停止するであろうと予測され、しかもその際には蘇生術の実施は無益であり、これを差控えるべきであると考えられる場合には、医師は例外的に蘇生術を差控えるべきであるとの決定を下し、これをDNR(Do Not Resuscitate)オーダーとしてカルテに記載し、患者のケアにあたる看護婦その他の医療スタッフにもそのことを周知徹底させて置くことが望ましい。しかし、蘇生術を実施することの医学的無益性の判断やそれに基づくDNRオーダーの発行の決定は、医学的な専門知識と判断を要する医師の専権的な裁量事項に属するし、DNRオーダーの発行につき、医師が患者やその家族に説明し、その理解と同意を得るにはかなりの慎重な配慮や時間を要するので、医師は父権主義的に患者やその家族への説明と同意を要しないと考えたり、救命が成功しても患者に意味のある生存を与え得ない場合には、蘇生術の実施は無益であると一方的に決定してしまう傾向がある。しかし、患者やその家族は、蘇生術の実施により多少なりとも延命が可能であるならば、相続その他の関係も絡んで、蘇生術の実施を希望する場合があるので、医師は患者との紛争を避けるためにも、患者やその家族に説明をし、その理解と同意を得て、心肺機能停止の際の対処の仕方を決定することが望ましい。しかし、患者がやがて心肺機能の停止に至ると予測されるが、その際には蘇生術を実施しても患者に負担をかけるだけで無益であると考えられるので、蘇生術の実施を差控えたいと、患者やその家族に説明し、その理解や同意を得ることは決して容易ではない場合があるであろう。そこで、心肺蘇生術の実施やDNRオーダー発行についての医師の権限やガイドラインを定めて、患者とのトラブルを生じないようにする必要があると思う。その際、アメリカのニューヨーク州を初めとして制定されたDNR法の諸規定やその施行に伴って生じた諸問題を検討し、参考とすることが有益であると思う。
著者
鈴木 孝子
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.103-109, 2002

本報告は、現代の家族にとって支援となるものを二一ズの側面からグループインタビュー法を適用し、調査した結果である。虐待を受けて苦しむ子がその典型例であるが、困難な問題をもつ児童の背後には、必ず、子どもを十分に育てられない親や家族の存在がある。子どもの発達・成長には親や家族の生活が健康で安定して営まれていることが欠かせない。家族と家庭は、子どもの成長を育む第一の支援環境である。そこで、児童の家族自体がリスクを抱えているとき、子どもに対する援助と併行して家族を援助、支援する働きかけも重要になる。現代の家族は、大きな社会の変化の波に余儀なく曝されている。夫婦、親子、男女の役割、家族関係のありかたが変化している。子どもたちの育つ環境、困難を乗り越える環境づくりを支援するためにも、家族の内と外から専門職が支援するシステムやプログラムづくりが、一つの課題となる。
著者
奈良間 美保 堀 妙子 山内 尚子 塚本 雅子
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-8, 2001-02-28
被引用文献数
4

本研究は、先天性の疾患により排泄管理を必要とする幼児の日常生活の自立の特徴を、健康児との比較から明らかにすること、また排泄行動の自立の関連要因を明らかにすることを目的とした。排泄管理を必要とする幼児の母親、保育園に通園する健康児の母親を対象に質問紙調査を行い、患児の母親58名、健康児の母親107名の回答から以下の結果を見いだした。1)排泄管理を必要とする患児は、健康児に比較して排泄の自立に明らかな遅れが認められたが、必ずしも生活全般の自立に遅れはなかった。2)導尿などの特殊な処置を行っている患児は、排泄行動の自立の遅れが顕著であった。3)患児が規則的な排便習慣を達成していないことは、排泄行動の自立が遅れることと関係が認められた。4)患児の家族は健康児の家族より、食事内容の調整を積極的に行っていた。家族が食事内容や生活時間を調整することは、患児が規則的な排便習慣を確立することと関係が認められた。
著者
三浦 剛史 松本 常男 野村 敏 田中 伸幸 清水 建策 粟屋 ひとみ 塚本 勝彦 松永 尚文
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.361-367, 1999-08-20
被引用文献数
4

当科に入院したIII,IV期肺癌患者73例に対する病状説明の過去2年間の内容を検討した.肺癌であるということは全体の71%で患者本人に伝えられていたが,予後について説明されたのは11%に過ぎなかった.入院時のアンケート調査では患者本人の91%が告知希望であったが,52%の家族は反対していた.患者,家族ともに告知を希望していた群では全例で病名が伝えられていた。本人の希望はあるものの当初は告知に反対であった家族の59%で説得に成功して病名告知がなされた,非告知の症例では腺癌およびPS2以上の症例が比較的多かった.