著者
奥村 一彦 冨岡 敬子
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

舌原発低分化型扁平上皮癌細胞SASから得られた高浸潤と低浸潤性の細胞を用いた.蛍光Differential Display法とRT-PCR法により確認されたcDNA断片で浸潤性に差のある癌細胞間で発現しているmRNAの差異を検索し,2つの部分的塩基配列決定がなされた遺伝子を分離した.【材料と方法】ヒト舌原発巣から樹立されたSAS細胞から得られた高浸潤性クローンSAS-H1と低浸潤性クローンSAS-L1を用いた.方法は,高浸潤と低浸潤性細胞間で発現している差異のあるmRNAを,タカラのローダミン蛍光differential display kitを用いて検索した.すなわち,高浸潤と低浸潤性細胞間で発現している差異のあるバンドを切り出し,回収したcDNA断片をPCRで再増幅した.全ての断片は再増幅後も単一バンドで示された.cDNA断片は末端平滑化クローニングベクター組み込んだ.部分的cDNA断片の塩基配列決定はABI Genetic Analyzer 310シークエンサーを用いて行った.これらの塩基配列がなされたものを,DNAデーターベース(BLAST)によるホモロジー検索を行った.【結果】高浸潤と低浸潤性のSAS細胞を用いて対応するプライマーを用いてRT-PCRを行い,続けてmRNA differential displayを施行しLIEG-1とHIEG-1を確認された.Differential Display法で観察された発現パターンをRT-PCRで再現性を確認した.LIEG-1は低浸潤性細胞SAS-L1で強く発現していた.一方,HIEG-1は高浸潤性細胞SAS-H1で強く発現していた.低浸潤性で強く発現するcDNA断片LIEG-1は1番染色体に存在するRP5-926E3のヒトDNAに100%一致する結果が得られた.HIEG-1の塩基配列は,遺伝子銀行/EMBL DNAデーターベースで検索したが相同性のある既存の遺伝子は得られなかった.LIEG-1とHIEG-1の2つの遺伝子については,遺伝子全長のクローニングを実施中である.
著者
岡田 善雄 末松 安晴 島 康文 浅田 雅洋 荒井 滋久 古屋 一仁 金 在萬 石浦 正寛
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1985

1.HVJの細胞融合活性を担う2種類の糖タンパク質であるFとHANAのcDNAの採取と、全塩基組成の決定が行われた。2.cDNAを含むプラスミドを細胞に注入して、その発現が観察された。先ずSV40oriを含むプラスミドをCOS細胞に電気刺激で注入すると、充分量のF或はHANAの発現を見ることができた。COS細胞はプラスミドの増幅と共に次第に死減するため、一般の細胞を用いると、ほとんど発現が見られず、実験を先に進めることが不可能となった。このため、cDNAをアクチンプロモーターを含むプラスミドに組換え、一般の培養細胞での発現が検定された。現在のところ、確かに発現は見られるが、期待した発現量にいたらず、検討が引き続き行われている段階である。3.HVJによる細胞相互の融合は、1ケのHVJ粒子の外膜が、2ケの細胞膜と同時に融合するために可能になるのではなくて、(1)HVJの糖タンパクによって、細胞膜に障害がおこり、(2)外部のCaイオンが細胞内に流入して細胞膜内タンパク粒子の細胞質側のドメインと、その裏打ち系との結合が解除され、(3)膜内タンパクが細胞膜脂質層を自由に動けるようになり、(4)膜内タンパク粒子の均一な分布がくずれ、(5)裸の脂質層が露出し、(6)その部位で融合がおこることが示された。この現象は、多分生体膜融合の典型的なモデルであろう。4.HVJのFタンパクの活性化のためには、細胞内でF_0型で合成された分子がタンパク分解酵素でF_1とF_2に限定分解される必要がある。この限定分解を認識するアミノ酸配列とウイルスの毒性との相関がパラミクソ群で明らかなので、この知見を土台にして、ミクソウイルス、レトロウイルスの毒性の推定が行われた。
著者
田中 研之輔
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本年度は、米国現地調査、都市民族誌の最先端の蓄積のレビュー、フィールドワークの方法論の整理、ならびに都市民族誌の翻訳作業を平行して進めてきた。現地調査では、米国不法移民の労働世界と生活世界に迫るために日雇い労働者の一人としてストリートで仕事待ちをしてきた。具体的には、カリフォルニア・サンフランシスコ北部の郊外都市の路上で日々仕事待ちを続ける米国滞在資格をもたない主にメキシコ、グアテマラ、エルサルバトル、ニカラグア出身の男性達と一緒に、平均して、一日3時間、ときには、朝9時から5時まで8時間ストリートで仕事を待ち続け、ときには、賃金交渉人として、また、自身もこれまでに、引越し手伝い、物品搬送・搬入、ペンキ塗り(補佐)、屋根清掃、庭清掃、水道業、などの日雇い労働をしてきた。このようなフィールドワークの手法は、従来の参与観察法[Participant Observation]から観察参与法[Observant Participation]への認識論的・方法論的革新として位置づけることができる。これらの調査結果をもとに、昨年度までの国内での若年滞留層の社会的排除に関する研究との日米比較へと今後展開していく。都市民族誌の現代的到達点については、初期シカゴ学派都市社会学の都市民族誌の系譜から「バークレー学派」への展開について系譜を整理してきた。方法論においても、従来のフィールドワークから「リフレクシブ・フィールドワーク」の構築に向けて認識論に関する文献を読み込んできている。さらに、現代都市民族誌の代表的著作である、ロイック・ヴァカンの『身体と魂』とイライジャ・アンダーソンの『ストリートのコード』の2作の翻訳作業も計画的に進めてきた。これらの成果は、今後国内外の学会で報告される。
著者
山本 哲朗 方 青 土屋 卓也 陳 小君 小柳 義夫 QING Fang CHEN Xiaojun
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は,当初偏微分方程式解法の主力をなすGMRESとSOR解法を中心としてその数学的基礎付けを与えることを目指したが,以前から研究を進めてきた線形・非線形SOR解法の理解が一段と進み,最近になってかなり満足すべき成果が与えられた.この解法について得られた結果の大要は次の通りである.1. 非対称行列を係数とする線形方程式に対する収束定理としてOstrowski-Reichの定理,Householder-Johnの定理,Newmanの定理,Ortega-Plemmonsの定理等が知られているが,これらはすべてSteinの定理から導くことができることを明らかにした.これにより,従来複雑であったOstrowski-Riechの定理の証明に見通しの貞い別証明を与えることができた.近く取りまとめてどこかに発表したいと考えている。2. 非線形SOR解法の収束定理としてはBrewster-Kannanの結果が知られているが,それは反復が収束するパラメータ{ω_k},0<ω_k<2の列が存在することを主張するにすぎず,ω_kの具体的な選び方には触れていない.我々は,偏微分方程式の離散化と関連した定理としてOstrowski-Riechの定理の一般化に成功した.この定理は大域収束性を保証するが,SSOR,USSOR,ad HocSOR等にも適用可能なものである.また,この手法はD-K法のSOR型加速にも使える.さらに,近年滑らかでない方程式への関心が高まっており,この分野で多くの業績をあげている陳小君(島根大学)を研究分担者として追加し,Uzawa法と平滑化Newton法の数理についても研究した.Uzawa法は一種のGauss-Seidel的反復であるが,その数理について現在見通しの良いまとまった解説はない.本研究で得られた成果をもとに引き続き研究を行い,見通しの良い理論構築を目指し,今後どこかに発表することを考えたい.
著者
小野 寛晰 青戸 等人 鹿島 亮 石原 哉 外山 芳人 WOLTER Frank 酒井 正彦
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目標は、計算機科学に現われる数理論理学の問題を理論と応用の両面から解明しようとするものである。本年度に得られた成果のうちの主要なものを以下にあげる。1.代数的手法による縮約のない部分構造論理の一般論の展開(小野)2.部分構造論理におけるMaksimovaの変数分離の原理の研究(小野)3.直感主義的様相論理の研究(青戸、小野)4.項書き換え系における停止性および合流性に関する研究と関数型プログラム言語への応用(外山、青戸)5.弱い含意命題論理に対する証明論(鹿島)6.構成的数学の展開(石原)1)の縮約規則をもたない論理の一般論については、小野はその成果をポーランド、スウェーデン、スペイン、ドイツで発表した。また北陸先端科学技術大学院大学において、オーストラリアのM.Bunder博士、R.Gore博士およびアメリカのA.Scedrov教授とそれぞれ部分構造論理に関する共同研究をおこなった。2)については、いくつかの部分構造論理に対しMaksimovaの原理を証明論的手法により証明した。このようなアプローチはこの研究が始めてである。3)の直観主義様相論理については、青戸がその有限モデル性についての興味深い結果を示した。4)の項書き換え系とその応用については、外山と青戸が精力的に研究をおこない、優れた成果をおさめている。弱い含意論理におけるcut elimination theoremについては鹿島が、また構成的数学については石原がいくつかの成果をあげた。
著者
清藤 秀理
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

本年度は、以下の2項目について行った.1.スルメイカ漁業の環境影響評価手法の開発スルメイカ漁業は、夜間に集魚灯を使用する漁法である.この集魚灯には、光量規制が行われているが、発電のための使用重油量や排出二酸化炭素量について明らかとなっていない.そこで、スルメイカ漁業が周辺環境に与える影響を評価する第一段階として、夜間可視衛星画像と現場レーダー観測から、北海道南西海域におけるスルメイカ漁業の使用重油量と排出二酸化炭素量の算出を行った.その結果、2003年7月23日の北海道南西海域には、約315隻のスルメイカ漁船が漁業活動を行っており、使用重油量は、約189.000リットル、排出二酸化炭素量は、約509.9トンであった.また、同様の方法を用いて、7月の北海道南西海域における排出二酸化炭素量を算出した結果、約21400トンであった.これは、2001年度二酸化炭素量運輸部門の約0.03%を占めており、スルメイカ漁船が排出する二酸化炭素量は決して少なくない結果を示した.今後、スルメイカ資源の持続的利用と周辺環境への影響を考慮に入れた漁業開発が必要である.2.海色衛星データに基づく日本海におけるクロロフィルa分布の時空間特性日本海におけるスルメイカ漁場の予測を行う第一段階として、生態系の底辺に位置する植物プランクトンに含まれるクロロフィルa分布の時空間特性を海色衛星Orbview2/SeaWiFSデータを用いて調査した.従来、植物プランクトンの動態を明らかにする方法として、生態系モデルと海流モデルとを組み合わせて研究が行われてきた.しかしながら、それらは決定論的な方法であることから、モデル結果の解釈には慎重な議論が必要不可欠である.そこで、本研究では、それらの方法論とは異なる時系列解析を応用した時空間統計モデルを開発し、適用した.時空間統計モデルは、時点t毎に任意の空間上の点の変動が真北より45度毎の異なる4つの方位毎の線形結合によって表現されるものとみなしてモデルを定義した.その結果、春季ブルームのような変化の激しい時期の再現が難しいことが示唆された.逆に、変化の顕著でない時期の再現は概ね成功し、今後、春季ブルーム期の再現を可能にするモデルの開発が課題として残った.
著者
水口 仁 千住 孝俊
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

「酸化物半導体の熱励起を利用した完全分解」に関して、以下に示す4項目の検討を行った。1.ディーゼル排気ガスに含まれるトルエン、ベンゼン、黒色粒状物質(PM)の完全分解。2.各種の酸化チタンのキャラクタリゼーションと最適酸化チタンの探索。3."酸素過剰下における完全分解"から発想を転換し、"酸素欠乏状態"でメタノールならびにメタンの部分分解による水素生成を達成。4.VOC等への応用を考慮すると、酸化物半導体の支持体への担持が要素技術となるので、粉体を電気泳動電着法により発熱体への担持する手法、ならびにアルミナボール上にチタンやスズが被覆された金属ボールの直接酸化で担持する手法を確立した。項目1のディーゼル排気ガスの完全分解はディーゼルエンジン対策のみならず、一般の有害ガス、悪臭等の浄化に極めて重要な技術となる。我々は流動床タイプの分解システムを使って、排気ガスの成分であるトルエン、ベンゼンの完全分解、ならびにPMの完全分解を達成した。この研究成果を実用化に結びつけるには、現行の粉体システムから粉体を支持体へ担持する方法が要素技術となると考え、項目4の担持方法の検討に入った。項目2のスクリーニングで選び出した最適酸化チタン(ST-01:石原産業(株))を泳動電着法でNi-Cr線のような発熱体に直接担持することに成功した。この担持法の優れた点は酸化チタンの熱励起に必要な発熱体がシステムに内蔵されていることである。さらに、最適な酸化チタンの特性を損なうことなく担持出来ることも大きな特徴である。また、TiあるいはSnを被覆したアルミナボールの直接酸化のメリットは、酸化物半導体層を簡便な手法で調製できることである。更なるメリットは本ボールを最蜜充填で配置しても常に26%の空隙率が確保でき、目詰まり等の心配がないことである。本研究で検討した担持化の手法は項目2で述べたメタノールやメタンの部分分解により水素を生成する際のシステムにも適用することができる。
著者
松井 克浩
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、被災と復興の過程における近隣関係の再評価や外部の民間やNPOなどの多様な諸主体との連携が、被災地内の種々の社会関係に影響を与え、関係の対自化を促し、それを更新していく様を新潟県内での事例研究および質問紙調査によって具体的に明らかにした。そこに東日本大震災を含む災害被災地の復興、さらには中山間地の再生の新たな可能性の端緒を見出すことができた。
著者
伊藤 守 杉原 名穂子 松井 克浩 渡辺 登 北山 雅昭 北澤 裕 大石 裕 中村 潔
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究から、住民一人ひとりの主体的参加と民主的でオープンな討議を通じた巻町「住民投票」が偶発的な、突発的な「出来事」ではない、ということが明らかになった。巻町の行政が長年原発建設計画を積極的に受け止めて支持し、不安を抱えながら町民も一定の期待を抱いた背景に、60年代から70年代にかけて形成された巻町特有の社会経済的構造が存在した。「住民投票」という自己決定のプロセスが実現できた背景には、この社会経済的構造の漸進的な変容がある。第1に、公共投資依存の経済、ならびに外部資本導入による大規模開発型の経済そのものが行き詰まる一方で、町民の間に自らの地域の特徴を生かした内発的発展、維持可能な発展をめざす意識と実践が徐々にではあれ生まれてきた。第2に、80年以降に移住してきた社会層が区会や集落の枠組みと折り合いをつけながらも、これまでよりもより積極的で主体的に自己主張する層として巻町に根付いたことである。「自然」「伝統」「育児と福祉」「安全」をキーワードとした従来の関係を超え出る新たなネットワークと活動が生まれ、その活動を通じて上記の内発的発展、維持可能な発展をめざす経済的活動を支える広範な意識と態度が生まれたのである。こうしだ歴史的変容が、町民に旧来の意思決定システムに対する不満と批判の意識を抱かせ、自らの意思表明の場としての「住民投票」を可能にしたといえる。
著者
雨宮 昭一 井上 拓也 斎藤 義則 帯刀 治 熊沢 紀之 河野 直践
出版者
茨城大学
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
2000

この研究の目的は、東海村臨界事故を地域社会における原子力事故危機管理の問題として総合研究するとともに、地域社会の学校教育や市民教育で活用されるべき原子力事故防災教材を開発することである。そこで参加メンバー各自が意思決定・影響評価・損害軽減・被害救済の4グループに分かれるとともに、人文社会系のメンバーはおもに総合研究を、また自然科学系のメンバーはおもに教材作成を担当した。またこの研究は、東海村および常陽地域研究センターと連携して実施された。人文社会系の研究実績としては、(1)茨城大学地域総合研究所を地域住民にとっての原子力事故情報データベースとするために、各種機関がまとめた臨界事故関連資料、海外諸国の地方政府が作成した原子力防災マニュアルなど、原子力事故や原子力問題に関する各種資料を収集した。また(2)東海村を初めとする11市町村の住民を対象にアンケート調査を実施し、原子力事故防災に関する住民の意識を分析した。そして(3)メンバー各自が、基本的には別掲した論題で、個別研究のための資料の収集・集計・分析を実施し、報告を作成した。自然科学系の研究実績としては、(1)学生や一般市民への防災意識の浸透を目的として、臨界事故の要因とその影響に関する考察、JCO事故以上の事故が起こった場合の化学的処理の方法、屋内退避や避難が必要な事故が起こった場合の対応などにつき、全4巻(各巻30分〜40分程度)の防災ビデオを作成した。また(2)一般市民や学生を対象に、「原子力施設と地域社会」と題する公開講座を実施した。また(3)モスクワ大学化学部との情報交換・研究交流を実施し、放射性物質拡散防止のための化学処理方法をはじめてわが国の土壌で試験検討した。そしてメンバー各自が、基本的には別掲のテーマ・分担に従って、個別研究のための資料の収集・集計・分析を実施し、報告を作成した。
著者
上原 邦昭
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

デジタル映像を対象とする検索システムが従来のデータベースシステムと大きく異なる点は,(1)検索のための効果的な内容記述方式を開発する必要があること.(2)映像コンテンツ自身による分類や構造化が必要なこと,(3)利用者の主観,視点,嗜好などを反映した感性的な検索や,映像のストーリやキーワードによる高度な意味的な検索が求められていることなどである.本年度は,前年度に開発した階層的内容記述形式を用いて,柔軟なストーリ検索が可能な知的映像検索システムを開発した.知的映像検索システムは,階層構造の上位レイヤに記述されたストーリを用いたストーリ検索機能,特定の人物の行動,場所,時相に注目した個別属性検索機能,ストーリに対応する映像をすべて表示させるか,もしくは部分的な映像を表示させる選択的映像表示機能,余分な挿話を省略して映像のダイジェストを作成する映像ダイジェスト機能などを有するシステムである.具体的には,Lehnertの提案したAffect Unitに基づく動画像の内容記述モデルを開発した.本内容記述モデルでは,予め典型的なシーンをプロトタイプとして用意しておき,ボトムアップのアプローチに基づいてストーリの内容記述を行っている.映像データの内容記述モデルでは,ユーザの記述コストが高くなることが問題となるが,本システムでは,プロトタイプを階層構造として管理して,ユーザの労力を軽減するようにしている.さらに,ストーリの内容記述を具体化して,ユーザの主観の差異をできる限り吸収するようにしている.また,本内容記述モデルを用いたシステムをプロトタイプ指向言語AMULETを用いて構築し,具体化についての実験を行った.
著者
今尾 昭夫 木原 康孝 福桜 盛一
出版者
島根大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

3年間にわたる本研究成果の概要は、以下のようである。1.今尾は、作物の有効な裁培手法として多用されているビニールマルチが、傾斜農地の縦畝に利用された場合の土壌侵食の挙動について実証的な検討を行った。実験は自然降雨、及び人工降雨を対象として、既設の野外傾斜土槽(野外実験)と室内可傾式土槽(室内実験)を利用して行い、粒度組成の異なる3種のマサ土を供試した。その主な結果を示せばつぎのようである。(1)野外実験の場合:降雨強度が大きくなるとビニールマルチ敷設による土壌侵食防止効果があると言えるが、それが小さい時には畝間の土壌侵食を促進する傾向がある。従って、畝間へ敷きワラ等のマルチングを敷設することが必要である。(2)室内実験の場合:大きな降雨強度の下における実験であるために、(1)と同様な結果を得ているが、細粒部分を多く含む土が土壌侵食量を増加させる傾向を示す。(3)両実験ともに、畝から畝間への土壌飛散、供給土量が予想外に多く、これらは降雨強度、傾斜度、及び粒度組成に密接に関連し、傾斜農地の土壌侵食に影響を与える。2.木原・福桜は、畑地におけるマルチングの効果を検証するために必要な土壌中の水分動態を正確に把握することにより、潅水量、及び潅水強度が土壌中への水分の浸潤に与える影響について実験的な検討を行った。その主な結果を示せば次のようである。(1)浸潤過程における水分動態は潅水量が支配的な要因となる。(2)現場圃場における水分動態は、潅水量や降雨量が多い場合、その相当量が下方浸透し、これは長期間継続する。(3)マルチングにより蒸発は抑制されているが、蒸散があるにも拘らず水分減少は僅かで、下層から水分の毛管補給があるためと考えられる。主として以上のような研究成果が得られたが、問題点も多く今後の研究にまつところが多い。
著者
藤原 輝男 日下 達朗 翁長 謙良 南 信弘 細山田 健三 今尾 昭夫
出版者
山口大学
雑誌
自然災害特別研究
巻号頁・発行日
1986

水食による農地災害防止の基礎的問題としての降雨特性と土壌特性との関連における土壌侵食の問題解明についておよそ次のような成果を得た。(1)南・小椋は25種の土壌について自然降雨による最大一時間降雨強度と土壌流亡量を一降雨毎に測定した結果、許容流亡土量を0.5t/haとすれば限界降雨強度は5〜30mm/hとなる結果を得た。(2)細山田は表土が黒ボクの土壌流亡の実測結果から、土壌因子Kの値が約0.04となり、また、たてうね,よこうねの土壌流亡量の比は中程度の侵食量の場合、前者が30〜40倍になることを求めた。(3)田熊はマサ土と赤色土の侵食性は、それぞれ220μmの粒径分と集合体の安定度が高い相関を示し、その両土の水食後の粒子の210μmの粒径分が対照的であることを明らかにした。(4)藤原・日下はこれまでに明らかにしてきた表面流と土壌侵食量の基礎的な関係に侵食要因を総合的な数値で表わす侵食係数を取り入れて展開し、降雨量から直接予測できる実用的な土壌流亡量推算式を提案した。(5)福桜は雨滴侵食に対する土壌面タン水の影響を明らかにするためにナイロン球を用いた実験を行なった結果、水滴の場合と明らかに異なって水深3mm程度のタン水時における衝撃のピークは認められなかった。(6)深田は水深がある場合に落下水滴による底面圧力を測定し、データを無次元量でまとめ、底面圧力と侵食量は密接に係わっていることを示唆した。(7)翁長は侵食試験区や室内実験の観測をもとに侵食に関与する傾斜要因を解明した結果、【E_I】値186以下の降雨条件下で侵食が極めて少くなる限界勾配(約1.5度)があることを実証した。また今尾は被覆による防止効果の発現は単作栽培に比較して早朝に発生すること及び帯状幅の長さには限界のあることなどを明らかにした。
著者
田中 礼次郎 福島 晟 松井 佳久 鳥山 晄司 福桜 盛一 今尾 昭夫
出版者
島根大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

1.暗渠の被覆材として、発泡スチロ-ル、モミガラ、園芸用疎水材を用いて現場試験、実験室試験によりその排水効果の比較を行った。その結果安価で耐用年数の期待できる被覆材として、発泡スチロ-ルを使用することの可能性を示唆した。2.干拓地土壌の牧草栽培による土壌構造変化の挙動と、土壌生態系の有機物への作用による土壌団粒化促進効果を各種調査、実験により明らかにした。3.干拓地の水や土壌中の陽イオン濃度の分析から、相互に相関の高い土壌イオンの存在すること、また干拓地内に地下浸透する湖水量は、湖水位と対応して周期的に変化する。湖水の浸透は土壌イオンの組成を変化させることなどを明らかにした。4.中海干拓彦名地区の土壌乾燥経過を各種試験で調査し、排水溝の効果が顕著であること、軟弱埋立て粘土層の圧密沈下量と乾燥沈下量の観測値と計算値の比較およびトラフィカビリチ-の経年変化を示した。5.雨水流モデルと長短期流出両用モデルを併合した流出モデルによる流出解析法を提示するとともに、その適応性を中海流入河川の高水、低水について検証した。また干拓地における長期および短期流出解析が可能なKWSTモデルを提案した。6.中海水域への代表流入河川である斐伊川、飯梨川等の日流量について年、および季節的特性を流況曲線等を用いて分析し、比較検討した。
著者
大岡 頼光
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ルター派プロテスタントを長く国教としたスウェーデンの共同墓は、生者が死者の冥福に何もできないという教義から出てきた。ルター派の労働観は、労働を重視する同じプロテスタントのカルバン派とも違う。修正された予定説のカルバン派は貧を滅びの証とし、貧者を助ける義務は国にないとする。だがルター派は「人は働いて初めて幸せになれる」と考え、徹底した就労支援を公財政で行う。このルター派の発想はインタビュー調査でも確認できた。
著者
浅野 晃 篠原 進 村上 征勝 西島 孜哉 谷脇 理史 冨士 昭雄
出版者
共立女子大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

17世紀後半の作家井原西鶴の文学の魅力は、千変万化する語彙を縦横に操った新しい文体にあると言うことができる。処女作『好色一代男』(1682年刊)の冒頭部分「桜も散るに歎き、月は限りありて入佐山、友に但馬の国、かねほる里の辺りに‥‥」は、西鶴の個性的な文体の創造をみごとに示した好例である。ところが、現在、われわれは、西鶴語彙の索引を共有してはいない。本研究は、西鶴研究者が共同して、西鶴作品の語彙について、その統計分析のための基礎作業にとりくもうとしたものである。本年度の研究業績は、以下の2点にまとめることができる。(1)第1は、語彙をコンピュータ化するための実験、つまり、語彙を機械化するに当って、その可能な範囲を探る作業を開始したことである。まず、西鶴の代表作『好色一代男』『好色五人女』『日本永代蔵』をとり上げた。作品をデータ・ベース化し、研究会活動を通して、語彙の統計処理について、基本的な問題点を討議した。異体字や漢字の字体、仮名処理などの基本方針の方向を定め、コンピュータのいわゆる字書作りの作業に入ったのである。こうした作業と平行して、西鶴の全作品のデータ・ベース化の仕事も続行している。(2)第2の研究業績は、正確な西鶴作品を提供するための基礎作業に取りかかったことである。これは、最終的には、新しい『西鶴全集』の刊行に連なるものである。『定本西鶴全集』第1巻が世に出たのは、昭和26年8月のことであるから、それからすでに40数年の歳月が流れたことになる。現在の西鶴研究は、この全集を手懸りにして展開しているが、作品のテキスト研究も進歩を見せているので、現段階において、望みうる最高の西鶴全集と、西鶴語彙の総合索引を共有することになれば、西鶴研究はさらに大きな前進を見せることになろう。本研究は、以上の2つの分野において、基礎的な研究業績を築きはじめたものである。
著者
日向 進 松田 剛佐
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

「連」と呼ばれる筏の規格が河川の流域によってどのように定められたかに注目して、京都周辺の丹波材、紀州の吉野材・熊野材、鳥取藩の智頭材について、各川筋における「連」の規格と変遷について史料調査を行った。丹波材14尺、吉野材は1間を7尺5寸、熊野材は13尺と15尺、智頭材は1間を7尺としていた。このような相違がみられることについては、各河川の浚渫状況や中継する材木市場などの相違が条件として考えられた。
著者
村田 拓司 福島 智 中野 泰志 伊福部 達 大西 隆 苅田 知則
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.選挙のアクセシビリティの研究平成16年度:電子投票と選挙に関する新見での選管担当者と障害有権者への聞取調査の結果、有権者は同システムの有用性に満足するもそのアクセシビリティ配慮がより広範には活用できていないこと等が明らかになった。17年度:新見調査を踏まえ、都市部の四日市での同様の調査の結果、(1)高齢者の筆記の不安解消、点字の書けない全盲者や知的障害者が独自に投票できたが、(2)両市とも電子投票導入時や機種選定時の障害者の参加機会がなく、引きこもりがちな障害者向け啓発が困難で、配慮とニーズの齟齬があり、(3)電子投票の信頼性への要求が高く、(4)投票機も改良の余地があり、(5)第三者認証、最低限アクセシビリティの法文化も必要なこと等が明らかになった。2.総合支援システムの研究16年度:(1)模擬電子投票後アンケートの分析やバリアフリー専門家討論会による電子投票のアクセシビリティ調査、(2)上記の新見調査の結果、電子投票機の最低限アクセシビリティの確認と、より多様な障害者向けユーザビリティに残る課題、アクセシビリティ等の客観的評価手法やその配慮保障のための法制整備の必要性等が明らかになった。17年度:四日市調査等の結果、(1)点訳選挙公報等の情報入手が困難で、(2)知的障害者も支援次第で参加可能なこと等、選挙参加促進の総合支援策の必要性が明らかになった。3.選挙とまちづくりの研究16年度:バリアフリーのまちづくりのための当事者参加型ワークショップの分析の結果、投票環境整備にはまちの日々のあり方が重要で、障害者のバリアを、彼らを交えたワークショップを通して体験的に理解する必要性が明らかになった。17年度:四日市調査の結果、公共施設の投票所のバリアフリー化が進むも最寄りの小規模集会所等を投票所にするのに難があること等が明らかになった。
著者
満保 雅浩
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

民主主義的な手続きに基づく健全な電子社会を確立するために、現在必要とされる制約を可能な限り除去した、高い信頼性を有する電子選挙システムを構築することに取り組んだ。まず、公開検証型電子投票を、暗号技術の危殆化による過去の投票内容の暴露の危険性という観点から考察し、暗号の危殆化にも対応した安全な公開検証型投票方式の構成方法を示した。そして、電子選挙における投票時刻に着目し、投票し直しを許すことによる買収や強制への耐性の向上効果について検討をおこなった。更に、投票内容が正しく処理されたことを確認するための仕組みについても考察を行った。
著者
岩村 雅一
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

情景中の文字を認識するためには、一般に前処理として文字切り出しが必要であるが,既存の手法では文字列を成さない「孤立文字」や隣接した2文字が接触した接触文学などを切り出せないという問題がある.また,情景画像中の文字画像は射影変換の影響で文学画像が歪むことが知られている.そのような対象に対しては変形を許容するテンプレートマッチングが効果的であると考えられるが,計算時間がかかる問題があった.本研究では,情景画像中の文字切り出しを頑健かつ高速に行うため,変形を許容する高速なテンプレートマッチング手法である特徴点投票法(FPV法,Feature point Voting Method)を提案した.提案手法は局所的な特徴点を検出し,テンプレートから決まる投票ベクトルにしたがって投票してマッチング箇所を検出するもので,射影変換や字形の違いなどで生じる文字の変形を許容ずる能力がある.また,提案手法はテンプレート数の増加に対する計算量の増加が少ない.そめため,テンプレート数が一定以上であれは,提案手法の計算量は変形を許容しない単純なテンプレートマッチングを下回るという優れた特徴を持つ.さらに提案手法は従来の文字切り出し手法とは異なり,個別文字認識の手法ほどではないが,一定の文字認識能力がある.そのため.提案手法は文字の切り出しと認識の大分類を一度に行うととができる.提案手法を実際の画像に適用したところ射影変換や字形の違いに対して頑健であり,孤立文字である時計の文字盤等や,数式中の接触文字を良好に切り出せることが確認できた.