著者
中瀬古 哲
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

就学前 5 歳児の体育課業並びに課業づくりに3年間継続的に参加した(述べ7施設、総計 160回)。そこで、身体運動文化(運動遊び)の特質解明と類型化を試みた。その結果、以下のことが示唆された。(1)就学前に培うべき基礎的技術能力は、(1)姿勢制御、(2)物や人の動きに対する予測・判断、(3)スピード・リズムのコントロール、の三つに分類できる。(2)身体運動文化(運動遊び)は、幼児の生活課題・発達課題を含みんこんだ総合的な活動であり、それらを踏まえ内容化した学習課題を構想する必要がある。
著者
高尾 将幸
出版者
東洋大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究は第5回国民大会(愛知国体)を事例に、スポーツが荒廃した都市空間にどのような影響を与え、同時にその関係がその後のスポーツのあり方にどのようなインパクトを与えたのか、その一端を解明する作業に取り組んだ。
著者
湯川 聰子 湯川 夏子
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

この研究の最終目標は小学校の低・中学年の生活科と総合学習カリキュラムにおいて実施可能な,家庭科的視点からの教育内容を提案することと設定していた.新学習指導要領の実施に向けて,過重な負担感に悩む小学校教員を支援する意味をこめて,この研究は出発したのである.すなわち,低・中学年で無理なくできる調理活動を提示し,教員の指導可能性の予測が立てられるような資料を提供することである.この研究で明らかになったことは次の3項目に要約される.i 小学校教員自身の関心・経験と提案に対する反応の調査.ii 低・中学年児童の食生活に関する関心と,調理技能の現状把握 iii 実施可能な低・中学年向けレシピを提案し,授業化する試み.iは第2章の小学校教員対象の調査によって,現状を明らかにし,意見を知ることができた.iiは第1章の小学生対象の調査によって明快な回答が出たといえる.iiiは第3章,第4章に述べる実践研究によって,部分的にではあるが低学年向けの「お菓子つくり」メニューの提案,「国際理解」のためのレシピ提案という結果を,実験授業の協力を得て答えを,提案としてまとめることができた.ホームページでの公開を考えていたが,年度内にこの計画を実行することはできなかった.継続的な研究展開の中で教育現場との相互の情報交換を行い,実践支援の方向を展開していくことを考えている.
著者
八幡 俊男 清水 惠司 中林 博道 梶 豪雄 政平 訓貴
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

癌幹細胞は、悪性腫瘍を根治するために重要な標的として考えられている。本課題では、悪性脳腫瘍の細胞株から分離培養した癌幹細胞が、薬剤を細胞内から排出することで化学療法に耐性となる遺伝子(多剤耐性遺伝子)を高発現し、抗癌剤に対して低い感受性を示すことを明らかにした。また、癌精巣抗原遺伝子は、癌幹細胞においてエピジェネティックな因子の制御を受けて高発現することを見出し、免疫療法の標的分子となる可能性が示唆された。
著者
錦織 宏
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

NHK番組ドクターGに表現される医師の「診断」。近年は検査技術の発達に伴って、病歴や身体診察を駆使して診断する能力を身につけることが難しくなってきています。医学生が身体診察を学ぶ教育を充実させるため、我々はこれまで、具体的な疾患名(鑑別診断)を考えながら行う身体診察法に関する研究を進めてきました。今回の研究では、それを医学部の「試験」にするための基礎的な研究を実施しました。
著者
長谷 海平
出版者
東京藝術大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度は映画教育に必要な実践内容を提示するために、具体的な実践から学習者の反応を記録し、その記録に対して考察を深め論文化を行った。また、映画における学習効果に関する研究を行った。映画制作を用いた教育実践を行う上で、実践者が留意しなければならない事はその実践に見込まれる学習効果である。しかしながら映画制作は基本的に協同的な作業であるため、個別の学習者について学習効果を測定する事が難しい。映画制作を用いた教育の有用性が認識されているものの、手法に多くのバリエーションが存在しないのは、この学習効果の見込みや測定の困難さが原因の一つである。つまり、学習の目的を明確にしづらいため映画を用いた教育をデザインしにくいのである。そこから、本年度は学習者が映画制作を体験学習し、その学習から受けた影響がどのようなものであるかについて作品の分析を通じて行った。そのために、映画制作内でのそれぞれの学習者の役割を明確にし、個別の学習者と作品に反映された表現の関係性が明確になるように実践を行った。分析はショット単位で行い、結果として自ら映画言語を獲得しようとする創意工夫、すなわち学習者個人の映画的な表現が見られた。映画制作を通じた教育実践には協同学習的な教育的価値、映像情報形成の仕組みを知るためのメディア・リテラシー的教育的価値などが存在し、これらの観点から学習的な意味が問われる研究が広く行われているが、本研究では映画を通じた芸術教育の可能性を提示する事ができた。
著者
中村 生雄 岡部 隆志 佐藤 宏之 原田 信男 三浦 佑之 六車 由実 田口 洋美 松井 章 永松 敦
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、日本および隣接東アジア地域の狩猟民俗と動物供犠の幅広い事例収集を通じて、西洋近代率会において形成された「供犠」概念の相対化と批判的克服を行ない、東アジアにおける人と自然の対抗・親和の諸関係を明らかにすることを目的とした。言うまでもなく、狩猟と供犠は人が自然にたいして行なう暴力的な介入とその儀礼的な代償行為として人類史に普遍的であるが、その発現形態は環境・生業・宗教の相違にしたがって各様であり、今回はその課題を、北海道の擦文・オホーツク・アイヌ各文化における自然利用の考察、飛騨地方の熊猟の事例研究、沖縄におけるシマクサラシやハマエーグトゥといった動物供犠儀礼の実地調査などのほか、東アジアでの関連諸事例として、台湾・プユマ(卑南)族のハラアバカイ行事(邪気を払う行事)と猿刺し祭、中国雲南省弥勒県イ族の火祭の調査をとおして追求した。その結果明らかになったことは、日本本土においては古代の「供犠の文化」が急速に抑圧されて「供養の文化」に置き換わっていったのにたいして、沖縄および東アジアの諸地域においては一連の祭祀や儀礼のなかに「供犠の文化」の要素と「供養の文化」の要素とが並存したり融合して存在する事例が一般的であることであった。そして後者の理由としては、東アジアにおけるdomesticationのプロセスが西南アジアのそれに比して不徹底であったという事実に加え、成立宗教である仏教・儒教の死者祭祀儀礼や祖先観念が東アジアでは地域ごとに一様でない影響を及ぼし、そのため自己完結的な霊魂観や死後イメージが形成されにくかった点が明らかになった。またく狩猟民俗と動物供犠とに共通する「殺し」と「血」の倫理学的・象徴論的な解明、さらには、人間と自然とが出会うとき不可避的に出現する「暴力」の多面的な検証が不可欠であることが改めて確認された。
著者
横地 優子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

インドでは3世紀以降の女神信仰をヒンドゥー教大伝統に融合する流れのなかで、雑多な個別の女神たちを統合する<女神>概念が生み出された。8~9世紀にはその極点として、宇宙の最高原理としての<至高女神>が成立したが、この<女神>は王権を支持基盤とする<戦闘女神>を核として、シヴァ教神話における<配偶女神>を統合し、宇宙に遍満するシヴァの力(シャクティ)という概念を教理的基盤とすることで成立しえたことを解明した。
著者
柏原 正樹 有木 進 谷崎 俊之 中島 俊樹 加藤 周 三輪 哲二 SCHAPIRA Pierre KANG Seok-Jin VILONEN Kari D'AGNOLO Andrea
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

この5年間の表現論に関連した研究の成果として大きなものが3点挙げられる。第一は、確定特異点型ホロノミーD-加群のリーマン・ヒルベルト対応を不確定特異点型ホロノミーD-加群に拡張したこと(A. D'Agnoloとの共同研究)、第二は、余次元3予想の肯定的解決(K. Vilonenとの共同研究)、第三は、円分箙ヘッケ代数を用いた量子群の表現の圏化である(S-J. Kangとの共同研究)。
著者
西岡 昭博 香田 智則
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の結果、(1)従来にない斬新な米デンプンの変性法、(2)(1)の手法で得た改質デンプンと汎用プラスチック材料とのコンポジット技術の開発に成功した。具体的には、(1)において加熱とせん断を同時に印可することにより無加水で瞬時に米デンプンを非晶化できる技術を開発した。また、この技術を基盤に加熱・せん断型粉砕装置の開発に成功した。(2)では、(1)の研究結果から得られた非晶性デンプンと(a)エチレンメタクリル酸共重合体をNaイオンで中和したアイオノマー、(b)ポリブチレンサクシネート(以下、PBS)、(c)ポリ乳酸(以下PLA)の3種類の材料とのコンポジットを行い、分散性、熱安定性、機械特性、溶融物性を評価した。比較として米粉には、市販の米粉(結晶性デンプン)、市販の非晶性デンプンも使用した。本研究で得られた新規変性デンプンコンポジット材料の特徴は以下の通りである。(1) 結晶性デンプン、市販の非晶性デンプンと比較して、著しく分散性が優れる。(2) 重量分率10%までの添加では添加前のバージン材料と比較し、物性(機械的)が劣らない。このことは結晶性デンプンや市販の非晶性デンプンには見られない効果であった。(3) 重量分率50%までの添加が可能であり、本研究で用いた新規変性デンプンを添加した系は最も物性低下が少ない。(4) 新規変性デンプンは、優れた結晶核剤として作用することが分かった。本研究の結果、従来の手法と全く異なる手法でデンプン変性が可能であり、得られた変性デンプンが生分解性樹脂等の優れた添加剤となり得ることが明らかになった。
著者
浅子 和美 伊藤 秀史 伊藤 隆敏 加納 悟 宮川 努 渡部 敏明
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、日本経済の適切な政策運営に役立てるために、日本経済の現状をより早く、より的確に把握する体制の確立を目指した。具体的には、景気循環の局面判断の観点からの日本経済の現状分析を行うとともに、経済制度面での歴史的変遷を踏まえた上で、1990年代以降の経済成長率や生産性上昇率の鈍化の原因を解明し、技術革新の活性化や産業構造の転換による日本経済の中長期的パフォーマンスの向上の可能性を探った。景気循環メカニズムの理論的研究や統計学・計量経済学的分析手法の研究も進めた。
著者
村澤 尚樹
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、金属ナノ構造体に局在する光電場増強場が金属ナノ構造体近傍に配置したマイクロ・ナノメートルサイズの液晶液滴の挙動に与える影響を詳細に解析することで、光電場増強場の物理的描像を明らかにすることを目的としている。本年度は、液晶液滴の位置制御、及び液滴の位置検出のための実験システムの構築、金属ナノ構造体の設計・作製を行った。捕捉用レーザーとしてCW Nd:YAGレーザーの基本波1064nmを用い、レーザー光を偏光祁顕微鏡内に導入し、対物レンズで液晶液滴に集光照射することで液滴を捕捉した。プローブ光としてHe-Neレーザーを捕捉用レーザーと同軸で照射し、液滴の散乱光を4分割フォトダイオードに導入することで、1 nmオーダーで位置検出が可能なシステムを構築した。また、金属ナノ構造の設計として、高い光電場局在効果を期待できる3次元的に配列制御された金属ナノ構造の作製を行った。電子線リソグラフィー・リフトオフ法を用いて金ナノ構造を積層、あるいは3次元的に1 nmオーダーで制御することにより、2次元的に配列したときと比較して大きな光電場増強効果が表れることを実験的に明らかにすることに成功した。特に構造の頂点同士を近接させたナノギャップ金構造の場合、2次元的に配列した構造と比較して50倍の光電場増強効果が誘起されることが明らかとなった。今後、種々の構造を有する金属ナノ構造を用いて、構造の近傍に配置された液晶液滴のブラウン運動や液滴内部の分子配向の挙動を詳細に解析することにより、光電場増強場が空間的にどのように分布しているかが明らかになると考えられる。
著者
長谷川 信美 西脇 亜也 井戸田 幸子 福田 明 樋口 広芳 園田 立信
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

中国青海省東チベット高原北部と南部の,土地の利用・管理方式と繁殖方式の異なる2つの地域において,ヤクの行動生態とその放牧地植生および生態系物質循環に与える影響を比較研究した。北部は青海省の優良放牧モデル地区で,南部は放牧地の荒廃と砂漠化の進行が懸念されている地域である。野草地の生態系を保全して劣化・砂漠化を防ぎ,ヤクの生産性を維持し,持続的に放牧利用するために必要な基礎的データを得ることを本研究の目的とした。平成15年8月より平成18年8月まで,玉樹蔵族自治州玉樹県で3回,海北蔵族自治州門源回族自治県で4回計7回の調査・実験を行った。成雌ヤクの3日間行動観察と排泄行動記録・排糞量測定,GPS受信機による行動軌跡記録,採食行動調査と採食植物観察,草地植生調査,糞・植物・土壌サンプル採取と成分分析を行った。4年間の研究の結果,南部は北部と比較し,寒季の反芻時間が短く,ヤクの糞排泄成分と量から推定した生態系物質循環量はほぼ1/2と低く,ヤクは嗜好性の低い植物種さえも採食しており,過放牧となっていることが明かとなった。現状のまま放牧を続けていけば,今後植生はさらに劣化し,裸地化・砂漠化することが懸念された。しかし,生態系が良好に保たれているとされていた南部においても,現在行われている暖寒2季輪換放牧方式では,特に暖季放牧地で植生の劣化が起きており,ヤクは繁殖に必要な栄養を十分には摂取できていず,現在の方式に代わる新たな放牧方式を今後検討する必要があることが明らかとなった。
著者
林 泉忠
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は研究代表者が提起した「辺境東アジア」という東アジア研究の新たな地域概念(『国際政治』135号掲載)に基づき、「中心」と「辺境」、「近代」と「前近代」が交錯し衝突する過程において現出した「辺境東アジア」地域のダイナミックなアイデンティティ・ポリティクスを解明するため、17年から19年まで三年連続、沖縄、台湾、香港そしてマカオにおいて、住民のアイデンティティ構造・特徴・要因を中心に、国際調査を行った。この四地域においてアイデンティティに関する国際調査は初めてとされる。調査は、琉球大学のほか、香港大学、台湾政治大学の専門調査機関の協力を得て、毎年の11月に、同時に、18歳以上の現地住民を対象に、それぞれ20以上の設問(一部は共通質問)を設け、電話調査を行い、それぞれ1000以上の有効サンプルを集めた。調査から得た主な所見は、1.帰属意識の構造に関し、四地域は、共に、複合的アイデンティティをもつ社会である。2.地元社会のへ愛着度やエスニック・アイデンティティについては、四地域は共に強いが、沖縄の方が特に強い。3.自立意識やナショナル・アイデンティティに関し、台湾が最も高く、ほかの三地域に広い差を付けた。4.若い年齢層は、他年齢層よりアイデンティティの複合性と流動性が高い、などである。調査結果に基づいた分析は、アジア政経学会、台湾政治学会、ハーバード大学フェアバンク研究センターおよびイエンチン研究所、北京大学、復旦大学、台湾大学、台湾交通大学をはじめ、日本、台湾、香港、韓国、インド、アメリカ、スイスなどの20以上の学術機関において発表を行った。また、書籍(共著)5冊、学術論文8本、新聞・雑誌記事20本を日本語、中国語、英語で出版した。なお、社会に報告するため、毎年、調査を行った翌月に、沖縄、台湾、香港、マカオ四地域の主要メディアに公表し、高い注目を受け、反響を及んだ。
著者
若松 寛 橋本 伸也 渡邊 伸 渡辺 信一郎 河村 貞枝
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

(1)本研究は、多様な生産形態・民族・言語・宗教・文化を基礎に政治的統合を達成した国家を帝国システムとして捉え、システム内部の諸要素の比較史的検討を通じて、世界史上における多様な政治的統合のあり方を解明すると共に、国家そのものの現在的意味を問いなおすことを目的とし、3年間共同研究を行ってきた。その成果は次のとおりである。(2)若松寛は、清朝による青海地方平定の後、ここに設置された旗の数に関し、当初の29旗が1746-1806年の期間のみ30旗あったことを解明した。(3)河村貞枝は、ヴィクトリア期からエドワード期にかけての帝国体制・帝国文化の中で形成されたイギリスの「第一波」フェミニズム運動をとりあげ、その本質が帝国主義の問題を中心に内包するものであったことを指摘し、インド女性との関係、ボ-ア戦争に対する姿勢、国際的なフェミニズムの連携に果たした役割などを考察した。(4)渡辺信一郎は、『大唐開元礼』に規定される唐王朝の元旦儀礼の訳注をおこない、元旦儀礼をつうじて象徴的に表現される皇帝と中央官僚との君臣関係、中央政府と地方政府及び諸外国・異民族との政治的従属関係の存在を指摘し、それらを唐王朝の帝国構造として把握した。(5)渡邊伸は、神聖ローマ帝国に関する近年の二つの研究動向に注目した。その一つは、帝国を「平和」のための法共同体とするものであり、いま一つは皇帝を中心とする人的結合関係から帝国をとらえようとする。そして事例考察から帝国システムの解明に後者の方向が有効と指摘した。(6)橋本伸也は、3次にわたるポーランド分割によってロシア領となった西部諸県の18世紀以来の教育的伝統を踏まえたうえで、19世紀前半のポーランド・シラフタを対象とした帝国の民族教育政策の転回について考察した。
著者
橘 秀樹 押野 康夫 山本 貢平 桑原 雅夫 上野 佳奈子 坂本 慎一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成10年に改正された「騒音に係る環境基準」では、環境騒音の状況に関して従来の点的把握から面的把握に変更され、評価指標としても騒音レベルの中央値(L50)から国際的に広く用いられている等価騒音レベル(LAeq)に変更された.また「環境影響評価法」でも大規模開発の際には環境の変化を正確に把握することが必須となった.このような背景の下に、本研究では、騒音のエネルギー的平均値を意味する等価騒音レベル(LAeq)によって環境騒音の状況を正確に把握あるいは予測し、その結果を客観的な形で表示する手法を確立することを目的として、以下の研究を行った。(1)道路交通騒音の予測・モニタリングに関する検討わが国における統一的な道路交通騒音予測モデルであるASJ RTN-Model 1998の内容をさらに充実するための基礎的研究として、大型車の影響や都市部における垂直方向の騒音分布に関する実測調査や、掘割・半地下道路からの騒音伝搬の計算手法の簡易化、きわめて複雑な特性を有する交差点周辺の騒音予測手法の開発などを行った。また、騒音対策として多用されている遮音壁の挿入損失の数値解析手法の検討や建物群による騒音低減効果などについても、検討を行った。(2)騒音伝搬特性の測定法に関する検討屋外では、騒音の伝搬に対して風などの気象条件による影響が大きく、またそれによって伝搬特性が時間的に変化する問題(時変性)が大きな問題となる。このような環境下において騒音の伝搬特性を精度よく測定する方法について、時間伸張(TSP)信号を用いる手法などについて、理論的・実験的検討を行った。(3)建設工事騒音の予測に関する検討最近では、各種の建設工事に伴って発生される騒音についても、環境アセスメントの対象となってきており、この種の騒音の予測手法を開発する必要がある。そこでそのための基礎的検討として、時間変動特性がきわめて多様である建設工事用機械類を対象とした騒音源データの測定・表示方法、LAeqを基本評価量とする騒音予測計算法の基本スキームについて検討を行った。
著者
清水 潔
出版者
皇学館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

研究課題を遂行するための基礎的調査として本朝月令、延喜式、新儀式の写本調査を行い、次の成果を得た。1、 本朝月令の諸本16本の伝来と書写系統を明らかにした。その結果、宮内庁書陵部所蔵九条家旧蔵本と尊経閣文庫所蔵旧金沢文庫本の二本が中世に遡る古写本であり、とりわけ九条家旧蔵本が鎌倉時代に遡る最古写本であり、近世の諸写本の祖本とみられること、近世の諸写本は二系統に分かれること、しかし今日流布する群書類従本はその二系統のいづれとも異なる字句の異同を示しており、しかも明らかに訂正を必要とする字句が散見し、改めて校定し直す必要があることを確認した。2、 上記の点を踏まえ、本朝月令の校定本を新たに作成した。これによって本朝月令に引用されている平安時代中期までに存在した典籍の本文校定及び逸文蒐集に貢献するであろうし、儀式行事の成立と由縁を考察する上により正確な資料を提供することになろう。3、 延喜式の頭注標目「弘」「貞」「延」のうち、少なくとも金剛寺本中務省式にみえるものは、信頼してよいと考えられる。4、 新儀式の8本の写本を調査したが、いづれも近世の写本であり、今のところ新たな知見を加えるまでには至らなかった。個別の儀式行事そのものについては、宇多天皇朝の成立と説かれる「元旦四方拝」、延喜式成立前後、光孝天皇朝には成立していたと説かれる「一代一度の仁王会」は、いづれも既に嵯峨天皇朝の弘仁式段階で宮廷儀礼として成立していたことを明らかにした。その他、延喜天暦期の儀式行事の実態を把握するために、当該期を中心とした関係記事を編年的に整理して、今後の研究の基礎的データを蓄積した。
著者
渡利 徹夫 江尻 晶 森下 一男 佐貫 平二 渡辺 二太 西村 清彦 天野 恒雄 成原 一途 岡本 正雄 笹尾 真美子 霍 裕平 沈 慰慈 沈 学民 李 健剛 張 大慶 王 孔嘉 兪 国揚 王 兆申 方 瑜徳 張 暁東 万 元熈 万 宝年 邵 育貴 朱 思錚 武藤 敬 関 哲夫 熊沢 隆平 大久保 邦三 岡村 昇一 足立 圭三 東井 和夫 佐藤 哲哉 孟 月東 藤原 正巳 羅 家融 藤田 順治 SHEN Xuemin SHEN Weici FANG Yude WANG Zhaoshen WANG Kongjia YU Guoyang HUO Yuping WAN Yuanxi WAN Baonian LI Jiangang ZHANG Daqing ZHANG Shaodong LUO Jiarong MENG Yuedong SHAO Yugui ZHU Sizheng 万 元煕 李 建剛 愈 国揚
出版者
核融合科学研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

本計画立案時点において、トーラス型プラズマ装置として核融合科学研究所(NIFS)ではJIPP T-II U及びCHSが稼働中であり、準定常運転を目指す大型のLHDが建設中、他方合肥の等離子体物理研究所(ASIPP)ではHT-6M装置が稼働中、準定常運転を目指す大型のHT-7が建設中であった。またこの時点では「高ベータプラズマの閉じ込め研究」を共同研究の主要なテーマとしたが、基本となるプラズマ加熱が未だうまく行かない状態にあったASIPP側では大電力イオンサイクロトロン加熱の実現をHT-6Mの第一優先項目としたので、本計画もこの方面への研究協力に力点を置くことにした。本計画の3年間に、日本から合肥への派遣延べ21名,合肥から日本への招聘延べ18名を含む交流が実行された。平成5年度:ASIPPは採用していたカーボンリミターの材料の選択に問題があるとしてこれを撤去した。引き続きイオンサイクロトロンアンテナのファラデイシールドと呼ばれる部分の構造に問題があるというNIFS側の指摘に基づきこれも撤去した。これらの結果として、加熱の効果を示す「アンテナの負荷抵抗の増大」が観測された。NIFSのイオンサイクロトロン加熱において実績のあるチタンゲッターをHT-6Mに持ち込み不純物の制御を試みた。その結果ターゲットプラズマの質が向上した。入射電力は多少増大したものの未だ本格的な加熱には至らなかった。平成6年度:NIFSにおいて実績のある、固体ボロンを使ったボロニゼーションを試みた。不純物の流入が減少し、表面加熱に関する実験を行なう事が出来た。不純物の問題はいくらか改良されたものの、アンテナは絶縁破壊が起り大電力入射を妨げている。これを解決するために「長いアンテナ」を製作することにした。NIFSは2イオン共鳴加熱に移行することを主張していたが、HT-6Mでは磁場を0.9T以上にする上での技術的問題とASIPP内の実験テーマの優先順位の問題があって、2イオン共鳴加熱への移行は持ち越すこととなった。NIFSではLHDのイオンサイクロトロン加熱のための技術開発研究を行なっている。この一部としてASIPPの同軸切替器を改造して使用することにした。平成7年度「長いアンテナ」を装着し、第2高周波加熱以外に2イオン共鳴加熱の実験も行なった。予備的なものであったが、水素と重水素の成分比等の基本データも
著者
SWANSON Paul MOLLE Andrea
出版者
南山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

モッレ、アンドリア氏は平成20年度には「日本の新宗教運動と武道」をテーマに、主に以前行われたフィールドワークに基づき、データベースを作成し、研究を纏めた。訪問先やフィールドワークの対象になったものとして、名古屋大学合気道クラブ、名古屋の居合道道場、少林寺拳法名古屋東道場、合気道大阪武育会、栃木県気Society本部、東京の合気会本部道場、合気神社などである。新宗教運動として主に崇教真光を中心に研究を進めたが、綾部の大本教にもより、インタービュウーなどの研究活動をすすめた。また、インターネットやメールを通しての情報収集を行ってきた。データ(研究ノート、写真、書類、など)はNvivoによって入力・管理し、データをStOCNETによって分析をしている。また、この研究に基づき、多くの報告(著書の章、学術論文、研究報告、書評、翻訳、インターネット上の報告、など)を発表した。最後の一年間には引き続きフィールドワークを実施し、データを纏め、さらなる論文を作成し、今後の研究につなぐ準備をした。
著者
上杉 和央
出版者
京都府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

沖縄県内に残る沖縄戦に関する慰霊碑について、ごく一部の離島を除き、すべての地域を踏査し、これまでに紹介されてきた慰霊碑一覧には掲載されていない慰霊碑があることを発見し、新聞資料等の調査結果とも合わせて、慰霊碑の建立(撤去)のプロセスには地域差があることを確認した。また、慰霊祭の現地調査や聞き取りを実施し、その実施状況・内容に地域差があることを明らかにした。